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フューチャーへの戦い
フューチャーへの戦い
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2014年12月12日
世界選手権の結果を分析を続けるにあたって、我々がデベロップの中でマジックの未来のために良いのか、あるいは悪いか分からないものをどのように考え出しているか、そしてどのようにそれを皆さんがプレイして楽しいものに仕上げているかを、試しに見ていきたいと思います。
内部世界 対 外部世界
デベロップが何枚かのカードのパワーとタフネスの調整や、カードのマナ・コストをあれこれ調節することに数ヶ月かけていると想像している方もいるかと思います――が、実際はそれより速いペースで行われています。私は、開発部に入った最初のころ素晴らしい体験をしました。FFLでテストをするためのデッキを作って、それをその日のうちに格下げして抹消するだけの1日です。さて、これはそのセットを使ったFFLの最初の数日で起こったことで、期待とはかけ離れていたころのものですが、大きな変更はこのセットの締め切りが来て筆を置くまで行われ続けるのです。
あなたがプロツアー『タルキール覇王譚』に出場することになり、そのための調整をしているところを思い浮かべてください。あなたとその調整グループは、上位だと判断したアブザン、ジェスカイ、そして赤緑モンスターズの調整に挑みました。あなたが最終的なデッキにかなり近づいたとき、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストからメッセージが届きました。
『タルキール覇王譚』アップデートのお知らせ
ええ、これはあなたの調整に少しは変更を及ぼすでしょう。突然、あなたが最強だと認識していたデッキが大幅な弱体化を受けました。あまり強くないと思われたいくつかのデッキはある種の相当な強化が施されました。そしてもっと重要なことは、あなたの全てのデッキについてアップデートの必要があるということです。プロツアー直前で、あなたはどれだけ苦境を乗り越えることができるか、どれだけあきらめなければならないか、そしてこの変更で全く新しいデッキが出てくることを考える必要があります。
このようなことが、フューチャー・フューチャー・リーグの全てのデッキで基本的に毎週起こります。変更は急速に行われます――通常、それは構築のトップクラスのカードの多くにではなく、他のものです。我々は楽しいカードをより楽しくし、構築フォーマットでのバランスのとれた形で調整しようと試みます。我々は多くのデッキを作り直し、同じように以前は十分な強さがなかったものの、今回強化されたカードを試すために新しいデッキを作らなければなりません。実際、我々はどのスタンダードの最終バージョンもテストしていません。例を挙げると、我々は『タルキール覇王譚』のカードに対して、『運命再編』がフューチャー・フューチャー・リーグの最新セットになるときまで変更を行っていました。
現実世界の結果に対応する
この部分は我々にとって難しく、そして年2回のローテーションが起こるようになればもっと難しくなるでしょう。パッケージ作業、印刷、翻訳、『Magic Online』へのコーディング等々のために、我々はセットのデベロップを発売2年前に開始し、数ヶ月前に終わらせます。私は多くの人々が、ウィザーズは『運命再編』に《ジェスカイの隆盛》への解答を持っているだろう、と仮定しているのを見ましたが、我々が対応策を持たせることができるのは、『タルキール覇王譚』が完成してから『運命再編』が完成するまでの間に、このカードが強すぎると判明したときだけです。そんなことは起こりません。《ジェスカイの隆盛》はかなり遅くに変更されたカードで、我々はそれにいくらかの懸念は持っていましたが、スタンダードでたくさんプレイしていたわけではないのです。
さて、《ジェスカイの隆盛》がスタンダードにある時間はかなり残っていますが、スタンダードを壊すようなことは起こらないと思います。その理由の一部は、我々は想定以上に強力なカードが1枚や20枚出てもスタンダード環境を制御できるように十分頑丈に作っており、そしてその多くは我々の想定よりも弱かったからです。我々の目的は、スタンダードを極めて限られた時間のプレイでは解明できないようにすることです。それは必然的にあちこちでミスが起こることを避けられないだろうということを意味しています。我々は、ミスをしたカードが強すぎるせいで他のデッキがプレイされないようになる状況が起こらないようにする必要があります。
我々の中では5つの楔全てがスタンダードで使われると信じられていましたが、どのデッキが最強であるかは不確かでした。どんどんセットを完成させていくにつれて、我々はどのカードやデッキが支配的かという情報を用いて、最強の楔を強化しているカードを少し引き戻し、プレイされていない楔の助けになるテコ入れを行います。正確には急旋回できませんが、その環境の面白さを数ヶ月間維持するように何かをを入れようとすることが可能です。
答えを蒔く
「新しいものを強すぎないようにする」と「新しいものを十分良いものにしないようにする」ということには、微妙な差しかありません。『テーロス』ブロックが発売される前の頃を見ると、「神」をスタンダードで使われるよう十分な強さにするために、我々は本当に強力なエンチャント対策を『ラヴニカへの回帰』ブロックには入れておらず、そして『ニクスへの旅』まで《神討ち》の印刷を待っていました。我々はスタンダードを多くプレイしますが、それは全てを知るほどではありません。最終的に、我々が想定するほぼ全てのものに対処できる、サイドボード向けカードが十分にあるようにしようと試みているのです。『テーロス』発売時に「神々」が強すぎたとして、そのとき多くの人が自分の緑信心デッキに《古代への衰退》を入れることには満足しないと思いますし、何か手があれば喜ばしいだろうと思っています。スタンダードにおいて、新しく印刷されたカードに対して極めて強力なカードだけでなく、新しいデッキが現れなくなるような極めて強力なメイン・デッキの戦略もまた排除したいと、我々は思っています。新しいものを使われるようにすることは環境の変動のために大事なことで、それらの戦略に呼吸をする余地を与えることは、カード・パワーのインフレを常時起こすことなく物事の面白さを保つことを可能にします。
我々が遭遇する最大のリスクは、デザインが立てた来年の計画を全部台無しにするカードがあり、かつそれがスタンダードのトップ・カードの1つであることです。例えば、我々が大量の「幻影」クリーチャーを持つブロックの計画を立てた場合、我々はたとえかなり弱そうに見えるものであっても、スタンダードにタダで他のクリーチャーを対象に取れるクリーチャー、特に何度も繰り返し使える能力を持っているものがいないようにする必要があります。我々が物事について間違った方向に向かい、そして「既存のデッキに簡単に負けるような、スタンダードに少しの影響も及ぼさないメカニズム」でこのブロックが満たされていることを発表しなければならないとしたら、誰も楽しくはならないでしょう。
1つの例を振り返ってみると、《無慈悲な追い立て》を5マナにする議論が起こったことがあったのですが、我々はそうしないことに決めました。それは神だけでなくエンチャント全般に対しても脅威的だからです、このカードがたとえ5マナだとしても、全体的に《至高の評決》より明らかに弱いと感じていましたが、我々はこれの強さを人々がメインデッキで使うかもしれないレベルにするというリスクは冒したくありませんでした。デベロップ中にある「エンチャントがテーマ」と分かっているこのブロックに敵対的すぎる手段が環境に突然入ることで、デザインの「このブロックをスタンダードで楽しいものにする」という意図から外れなければならなくなります。この教訓は、来年のスタンダード全体を危うくするのに見合う価値のあるカードは存在しない、ということです。
これからの展望
2014年の記事は以上です。我々はいろいろなものを見てきました――神々からフェッチランド、膨大な『コンスピラシー』と新しいドラフト・フォーマットに至るまで。そんな事情にも関わらず、私は皆さんがまだ見ぬ物事により一層興奮し、そして2015年がマジックの新たな最高の年になると信じていると言えます。我々は素晴らしいものの計画と、お見せするのを待ちきれない、いくつかのプレビューを持っています。
続く2週間はお休みとなり、私は新年夜明け前に『運命再編』のプレビューを持って戻ってきます! これらは全てがエキサイティングで、とてもとても素敵なタイムトラベルのお年玉とともに新年の鐘を響き渡らせるでしょう。
それではまた次回お会いしましょう。
サムより (@samstod)
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