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リミテッドにおけるアグロ・デッキ
リミテッドにおけるアグロ・デッキ
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2014年11月21日
今回はマルドゥ特集ということで、マルドゥの全てと言えるもの――速さについてお話ししたいと思います。もっと具体的に言えば、リミテッドでのアグレッシブなデッキ――このアーキタイプを我々が推す理由と、『タルキール覇王譚』がこのアーキタイプにもたらした課題についてです。
アーキタイプのバランス
マジックのセットに取り組むとき、我々にとって重要なのは、リミテッドのバランスを取るためにするべきことが、スタンダードのバランスを取る方法と同じように、アグロ、ミッドレンジ、コンボ/ランプ、コントロール、そして撹乱的アグロの「バケツ」全てが存在するようにすること、だということです。つまり、そのフォーマットに異なる速度とプレイ・スタイルの様々なデッキを存在させるための手段があるようにする、ということです。我々はリミテッドに、遅いデッキ、中速、そして速いデッキに加え、様々な速度の脇道戦略が健全な比率で存在することを求めています。
《消去》 アート: Zack Stella |
『ゼンディカー』のようなセットを見てみると、リミテッドにおける問題の1つは、コントロール・デッキが本当に存在しないことでした。このフォーマットはあまりに速すぎ、そしてブロックすることを咎めすぎました。もしあなたがちょっとゆっくりしているのが好きなら、あなたの戦略を成功させる、もしくは楽しむことはとても難しいのです。『ギルド門侵犯』も同じような問題を抱えていました――アグレッシブなデッキが最強のうちの1つであり、そしてしばしばそのフォーマット内の最も楽しく興味深いカードを唱えるのに十分な時間がなかったので、そのフォーマットの安定感のいくらかが流されてしまいました。
また、環境がその反対の状況になってしまうこともよくあります。リミテッド環境に優れたビートダウンがない場合、そのフォーマットが2対1交換を取ることが全てで、そしてしばしば手に入った爆弾カード全てをタッチするものになってしまう恐れがあります。リミテッドのバランスを取ることの一環は、人々がマナ基盤を欲張ったことを咎められるようにすることです。このことは、セットにおいてそれを防ぐことが十分にできていないときに、デザインとデベロップのプレイテストで多く発生します。どちらか1人が何度も2対1を取るか、復帰できないぐらいに土地を引かれるかどちらかになるまで、単に下準備をするだけになります。これは1回や2回のプレイテストだと楽しいかもしれませんが、すぐに古くさくなってしまいます。
各セット全体でリミテッドのアーキタイプのバランスを取ろうとする一方で、そのフォーマット全体の速度にも変化が存在します――フォーマットを異なった感じに保つための手段の1つです。「それしかすることがない」のでなければ、時々はアグレッシブなデッキがフォーマットで最強であることは構わない(そして良いことですらある)でしょう。
色のバランス
セットの一生においての(適正なメカニズムを得た後の)初期のデベロップ過程の多くは、プレイテストが多様性に富んで興味深いものになるよう、そのセットの色のバランスを取ることです。さて、ある1色が最強であり、別の色が最弱であるというのは常に起こることですが、我々はデベロップ・チームのメンバーそれぞれが、どれが最強でどれが最弱かの意見が一致しないようなものにしようとします――そうなれば我々は恐らく、色のバランスを人々にとって面白いものにするための適正な範囲内に持っているだろうということです。
全体のバランスのために色を適正なものにする以上に、各色に低速、中速、高速のデッキのためのいくつかの選択肢があるようにする必要がありました。いくつかの色は速いデッキになりがちです。例えば赤はほとんどのリミテッド環境において最も速い色になり、青は最も遅い色になる傾向があります。しかし、その色やその色の絡むペアの中でも、いくらかゲーム・プレイの多様性があるべきです。
そうする理由は色々ありますが、セットに最も求められているのは、異なるマナ域の多様性に富んだ興味深いカードを作ることができるようにすることです。例えばもし赤が超アグレッシブなだけの色であるならば、どんな赤いデッキであっても5~6マナのカードをプレイしたいと思わないので、その種の興味深いカードをたくさん作るのは難しくなるでしょう。同じように、もし緑が中速デッキしか強くない色であるならば、ほとんどの人はアグレッシブな軽いクリーチャーをピックしようとはしないでしょう――そしてピックしようとする人はあるはずなのに、存在しないデッキによって嵌められてしまうでしょう。それはまた、中速ではない緑と他の色の特定のペアをただ悪いだけの組み合わせにしてしまい、そのセットのリミテッドの再プレイ性に制限をかけてしまいます。
『タルキール覇王譚』でアグロを機能させる
『タルキール覇王譚』の最初期に、我々はアグロを適切に機能させることが難しいだろうということを知っていました。多色セット、特に3色セットの根本的な問題の1つは、人々が普通のセットよりもマナの問題を経験することです。それは紛れもない事実ですが、ゲームの決め手となる要因にならないように我々が取り組むことができるものです。多色デッキが罠にならないように、十分なマナ基盤を入れることは分かっていました。しかしやり過ぎた場合には3色から5色グッドスタッフにすることに大きな障害がなくなることも分かっていました。自分のマナベースに対して慎重ながらも楽観的な人々に、適切な圧力をかけられるアグレッシブな戦略が必要だったのです。
この問題の難点は、3色デッキをアグレッシブにすることはとても難しいということです。3マナが多すぎると、アグレッシブな楔クリーチャーを3ターン目にプレイする方法ではムラがありすぎて楽しくならないことが分かりました。アグレッシブなデッキが苦手なことの1つは、序盤のマナのトラブルから復帰することです。もっと言うならば、マナが上手くいかない人やマナ・カーブに沿った良い引きのできない人を叩き潰すことこそがこれらのデッキの最良の動きです。
我々が見つけた回答は、概して3色デッキよりもっとアグレッシブになりドラフトしやすい、2色デッキを推すことでした。2色デッキは堅実なマナ基盤を求める人々を惹き付けることができますが、(上手くいけば)人々が爆弾カードをパックから開けたり流されてきたりした場合にそれをタッチする余地が十分にありました。そのような理由から、メインとなる2色の戦略は全て敵対色なので、プレイヤーは爆弾をタッチしやすくなっています。例えば白黒戦士デッキは、戦士シナジーを持つ多くの2~3マナクリーチャーに依存しています。赤白は伝統のトークンとウィニーからの《ラッパの一吹き》に依存しています。もし3パック目に《兜砕きのズルゴ》が出てきたら......そう、この構造はそれをタッチするためにあります。あなたは自分のやり方を押し通すこともできますが、選択肢は存在します。
適正なバランスを取るという観点からの複雑な事態は、変異が過去からの復活メカニズムであること――そして3マナ2/2が基準となることです。私は皆さんがどれだけ『オンスロート』から『タルキール覇王譚』の間のリミテッドをプレイしたことがあるかは分かりませんが、全体的なクリーチャーの質、特にコモンは『オンスロート』の時代よりも今のほうが遥かに上です。つまり《灰色オーガ》と平均的な3マナクリーチャーの差がとても大きいということです。我々は変異クリーチャーの表側を『オンスロート』よりも基本的に強くすることと、《ゾンビの殺し屋》のような3ターン目にゲームを決めてしまう恐れのある最も面倒な「表向きになる」効果を削除することで、問題のいくつかを解決しました。しかし変異をトーナメント・レベルにして、アグレッシブなデッキを適正なパワー・レベルにする十分な余地を残そうとするには、まだ厄介な部分が残されていました。
率直なところ、これらの問題はある程度お互いに解決を助け合っていました。デベロップは(全体的に)変異の再録についてとても懐疑的でしたが、すぐに変異が楔のセットでどれぐらい上手く機能するかに気がつきました。色事故を起こしているプレイヤーがアグレッシブなデッキに対して3マナ2/2をブロッカーとして出せるということは、そのプレイヤーが対戦相手とのやり取りとゲームに参加できないとは感じないような、それなりの方法を持っているということです。同時にアグレッシブなデッキの方は、少なくともクリーチャーを唱えるためにマナを貯めることになり、そして対戦相手は好きな数のコンバット・トリックを使うことができます。また我々はアグレッシブなデッキが対戦相手にブロックするかどうかを考えさせる、マナ・カーブを外れて唱えることのできるクリーチャー(例えば《軍団の伏兵》、《無情な切り裂き魔》、《クルーマの盟族》)を作ることができました。
『タルキール覇王譚』のアグロを抑制する
アグロが機能するようになったと感じたら、次はそれらが常に正解とは言えないようにする必要がありました。我々がセットの中でとても気をつけていることは罠――つまり我々がプレイヤーが行うための何かを提案しておきながら、それが失敗と悪い経験だけになってしまうことです。『タルキール覇王譚』は本質的に3色セットです。つまり、最も一般的なデッキは(少なくともドラフトでは)実際に3色デッキであるべきだということです。我々が予想した異なる戦略の適正な住み分けについての見積もりは、各氏族が1人ずつ、2色デッキが2人、そして最後の1人はいずれかの氏族に相乗りするか5色デッキ、というものでした。このセットの簡単にタッチできる能力で、赤黒デッキが本当のマルドゥのカード3枚をタッチしたり、もしくは青緑変異デッキが色の合わない変異を何枚かの基本でない土地の支援で5色にするかどうかは難しい決断ですが、細かすぎることにまで配慮するのは困難です。何にせよこのセットは3色セットなので、その戦略が罠にならないようにする必要がありました。
これはどういうことかというと、平均的には、3色デッキが比較的序盤にマナを揃えることができれば大体は2色デッキに勝つようにする、ということです。私はそれが良いことだと思います。マジックのセットを毎年作ることの一部は、毎年何かが違うようにすることです。そして3色デッキの支援が今年我々のすることです。2色デッキが毎回マナの揃った3色デッキと互角になってしまうのなら、実際に3色デッキにする理由はほとんどないでしょう。
我々が「タップ状態で戦場に出る」土地でライフを得ることにした理由の1つは、色をタッチしたデッキが序盤に少し出遅れた場合、それを取り戻すことができるようにするためです。そして土地を見つけられないプレイヤーが、それらの土地を入れてテンポを失うリスクと、マナ・スクリューで負けるリスクを比べるようにするためです。我々は皆さんに基本でない土地をプレイしてほしいと思っています。同じ理由でこのセットの3色カードに多くの爆弾レアを作りました。楔は今年のテーマであり、来年にやって欲しいテーマではありません。今年のテーマとして実行できればできるほど、特に来年のテーマが今年のテーマとは非常に異なった場合には、来年はもっと異なった雰囲気を得られることでしょう。
今週はここまでです。来週はトップ8特集ということで、マジックのデベロッパーになってから得た、トップ8になる教訓についてお送りします。
ではまた来週お会いしましょう。
サムより (@samstod)
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