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隠された情報
隠された情報
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2014年10月24日
変異は問題児だ、とだけは言っておきましょう。3マナの《灰色オーガ》は実際リミテッドや構築でとても強いわけでもなく、懲罰に関したトーナメントでの問題があり、その能力は新世界秩序の下で我々がコモンに置く中で複雑なものの1つです。
では、何故我々はこれを引っ張り出してきたのでしょうか?
ええ、このメカニズムの動きはとても興味深いものです――隠された情報に基づいてプレイすること、そして変異をセットに加えることはその感覚を何段階か増やします。
知っていることを知る
マジックには多くの隠された情報があり、それらがマジックの成功を成し遂げてきたと私は信じています。チェスのように隠されたものが何もないゲームとは違い、マジックには通常対戦相手には見えないライブラリーと手札があります。しかしながら、マジックには多くの公開された情報があります――戦場、墓地、そして追放領域です。知っていると知っていることと、知らないと知っていることの組み合わせは、対戦相手の手札に何があるかもしれないのか、そして何に基づいてプレイするべきなのかを、各プレイヤーが知ることに近づこうとさせるため、マジックにとって非常に大事なことです。そのことは多くを推測する必要があるゲームを作り出し、それは正しく事柄を推測するためにとても良いことです。
当然、このことはプレイヤーをしばしば情報を与える効果をより多く求める方向へと導きます。そうすれば、より良い決定と多くの勝利が可能になるのです。リチャード・ガーフィールド/Richard Garfieldがマジックを作り出した時にこのことに気づいていたのは、彼がただ相手の手札を見るためだけに《ウルザの眼鏡》を作ったことからも明白です。もし対戦相手が何をするかを見たいなら、プレイヤーはカードを1枚使ってそうすることができます。この効果の問題点は、とても楽しくないことでした。時々ならば構わないのですが、多くのプレイヤーが隠された情報をこのゲームからなくすことは、マジックが提供しなければならない驚きを少なくし、それはこのゲームの楽しさを損なうと私は考えています。
全てが表になっているバージョンのマジックを想像してみてください――ライブラリーもです。そのゲームはもっと技術を試されるようになっているでしょうか? おそらくその通りですが、それぞれの決定に必要な情報が多すぎてほぼプレイが不可能になってしまうでしょう。あなたは勝利目前のトップデッキに対して文句を言うこともできなくなります。しばしば最序盤にどちらが勝つか見分けることができるようになりますが、相手がミスをしないかどうかを確かめるためにとても長い時間を費やすことになるでしょう。
私はこのバージョンのマジックが最悪の世界線のものだとは思いませんが、的外れでもないと思います。皆さんの多くもそうだと思いますが、私がマジックをプレイする理由の1つは、各ゲームで生じる謎が好きだからです――私の機転を使って対戦相手の手札にあるかもしれないもの、ライブラリーの一番上、そして次に自分が引くかもしれないものさえ解き明かそうとします。これを取り去ることは、戦場とライブラリー内のカードの素の機械的なパワーのゲームにしてしまい、人々の直感や読みと状況がマジックにもたらすカード・パワーの多くを取り除いてしまいます。
我々が犯した『テーロス』ブロックの2つの間違いは《思考囲い》と《クルフィックスの狩猟者》です。その理由はそれらのカード・パワーだけによるものではありません。どちらのカードも極めて強力なだけでなく、多くの情報を公開します。両方のプレイヤーが3ターン目の終わりの対戦相手の手札と、そこから表向きにプレイされた全てのカードを知っていることも珍しくありません。我々が今後強力な手札破壊に対し尻込みすることはないと思いますが、《クルフィックスの狩猟者》のようなライブラリーの一番上に関する大量の情報をもたらす強力なカードを印刷することはないと思います。
プロツアー『ニクスへの旅』を見ていて多くの開発部メンバーを苛立たせたことの1つは、プレイヤーが「次の」ターンに何を引くかを公開することが最もエキサイティングな部分だったのに、ということです。これは、奇跡メカニズムが多くの印象的なトップデッキの状況と、そのターンに起こる大きな出来事に広く興奮をもたらしたプロツアー『アヴァシンの帰還』とはかなり対照的でした。
少しの謎があれば全てが良くなる
さて、我々は奇跡を全てのセットに、もしくは頻繁には求めてはいないと私は思います。もしかしたら二度とは求めていないかもしれません。しかし、奇跡は人々を興奮させるマジックの一部分を浮き彫りにしました――トップデッキです。トップデッキが人々を興奮させるのは、そのランダム性によるものです。我々はこのゲームに逆転を求めますが、絶えずそうなることは求めていません。我々は2人のプレイヤーがどんなデッキの対戦でも勝敗は分からない程度の逆転を求めますが、全てのものがコインフリップになるほどは求めてはいません。
ほとんどのゲームにはある程度の逆転要素があるべきだというのが私の信条です――それがないゲームよりも、あるゲームのほうがずっと楽しいと思っています。この逆転の手段は異なるゲームの間で激しく変化することがあり、私はそれらの全てが公平に作り出されないと考えています。私はリチャード・ガーフィールドが、「チェスの変形でゲームの終わりにサイコロを振って6が出たらゲームの結果が逆転するというもの」を例えに使っていたのを知っています。確かにこれには弱い方のプレイヤーが1/6の確率で勝てる十分なランダム性がありますが、非常に満足のいく方法としては扱われません。チェスのゲームで勝ってから、サイコロの目がどうなるかを見るわけです。
マジックの逆転要素の大部分は、我々が最も楽しく取り組む部分であると見出すところ、プレイヤーのデッキの中身という隠された情報によって操作されます。我々は上記のマジックのバリエーション――各プレイヤーのデッキの情報を全て知っているが、多くのカードがランダムな結果を生み出すバージョン――を用いて、現在のものと同じぐらいの逆転要素があるバージョンのマジックを考え出すこともできました。しかしそれは本当により楽しくなるでしょうか? 勝敗を分ける唯一の違いが、あなたの《稲妻》が与えるダメージが3点か4点かどうかだとしたら?
隠された情報からの逆転要素の利点はプレイヤー間の多くのやり取りを可能にすることです。あなたがアグロ・デッキを使ってコントロール・デッキと対戦するとき、相手が全体除去を持っているかどうかを判断するのにどれぐらいの時間を要しますか? 対戦相手が全体除去の1枚目を5ターン目に唱えたとして、相手はそれまでに13枚前後のカードを見ており、それは相手が全体除去を1枚持っている可能性が十分あることを意味しています。そして1枚目を打たれた後、あなたは次のターンにどうしますか? 対戦相手が1枚目の全体除去を持っている可能性はかなり高いのですが、2枚目を持っている可能性はずっと低くなります。実際には、対戦相手が全体除去を0、1、2枚持っているかどうかは分かりません。アグロのプレイヤーは、相手が全体除去を何枚引いているか探る方法があるだけでなく、対戦相手のこちらの手札に対する情報の不足を活かせます――2枚目の全体除去からあなたのクリーチャーを守るカードを引いたという事実を隠すことによって、もしくは1体だけクリーチャーを出して相手がこちらが息切れしたと考えることを期待することによって有利に立てます。この不完全な情報のゲームをプレイすることは、マジックの隠された情報の量によってのみ可能になっています。
適正な割合を探し出す
この謎を生かし続けることが、変異がデベロップの課程を生き残った主な理由の1つです――マジックの隠された情報の様相だけでなく、アドバンテージを得るために対戦相手にあなたのカードが何であるかを推測する能力を提供します。前に書いたように、変異自体は裏向きのクリーチャーとして信じられないほど弱く、強くしようとした試みでは結局とても楽しくない結果に終わりました。なので、驚異的に強い「表向きになったとき」の誘発を強制しようと苦労するのではなく、我々は表側の強いカードを多く作り、そして人々が裏向きを選ぶ主な理由が「謎のため」になるように(そして裏向きにするのに十分な理由を提供するように)変異コストに十分な魅力を持たせる、という方法を用いました。
『オンスロート』を見てみると、このことは《鞭縄使い》と《焦熱の火猫》の両方(それと、ある程度は実際に表向きにするようデザインされた最大のカードの1つである《賛美されし天使》)で達成されていました。表側を強くすることは、その変異クリーチャーがデッキでプレイされるようにし、そのことはそれらが裏向きにプレイされることへの第一歩です。これはまた、これらの変異クリーチャーが何であるかを人々が確信が持てないようにするという我々の挑戦を助けます。これは《賛美されし天使》にあった問題でした。願わくば、誰かがティムールをプレイしていてクリーチャーを裏向きに唱え、その対戦相手がそれが《爪鳴らしの神秘家》か、《サグのやっかいもの》か、《灰雲のフェニックス》か、もしくは《頭巾被りのハイドラ》なのかを推測して、その人の疑念に基づいてその変異が何であるかを決断してほしいと思っています。
今週はここまでです。来週は『統率者(2014年版)』のプレビューと、統率者製品に入っているトーナメント級のカードの扱いに関する変更についてお話しします。
ではまた来週お会いしましょう。
サムより (@samstod)
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