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『タルキール覇王譚』のデベロップ
『タルキール覇王譚』のデベロップ
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2014年9月12日
ここ最近のセットでそうしてきたように、プレビュー・ウィークの第2金曜日である本日、『タルキール覇王譚』の全てのカードがカードギャラリーで公開されました。我々はこのセットについての議論をするつもりなので、まだご覧になっていないならばそれを見ると助けになるかもしれません。
『タルキール覇王譚』は楔のカード、変異、そして5つの氏族のキーワード能力があり、おそらく、長らく我々が発売してきたセットの中で最も複雑なセットです。内容がとても多いので、地元のプレリリースに行く前に時間をかけてこのセットを見てください――そうしたおいてよかったと思うことでしょう。
デベロップ・チームの紹介
ではまず、このチームに属するデベロッパーから始めたいと思います。そのブロックの各セットのリード・デベロッパー全員が第1セットに携わるのは慣例となっています。このことはそのブロックがテーマ及びゲーム・プレイでのある程度の一貫性を持つようにすることの助けとなります。
エリック・ラウアー/Erik Lauer:エリックは最も経験豊富なマジックのデベロッパーであり、主席デベロッパーです――マーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterがデザインの主席であることへの当然の帰結のようなものです。彼が以前関わったセットには『基本セット2010』、『基本セット2011』、『ミラディン包囲戦』、『イニストラード』、『ラヴニカへの回帰』、『テーロス』が含まれます。また彼は来年の秋のセット、コードネーム『Blood』のリードも務めています。
デイブ・ハンフリー/Dave Humpherys:デイブはプロツアー殿堂顕彰者であり、デベロップ・マネージャーであり、そしてまた『ギルド門侵犯』、『アヴァシンの帰還』、『ニクスへの旅』、そしてこのブロックの別のセットのリード・デベロッパーでもあります。デイブは恐らく変異の最大のファンであり、「Magic Online」で何百回も『オンスロート』ブロックのドラフトをプレイしました。
トム・ラピル/Tom LaPille:トムは最近デベロップから「Magic Online」の仕事へと異動しましたが、依然として開発部の重要な部分を担っています。彼はいくつかの――『基本セット2012』、『闇の隆盛』、『神々の軍勢』や、このブロックでまだ発表されていないセットのリード・デベロッパーを担当しています。
ショーン・メイン/Shawn Main:(カードのデザインとデザインの哲学を引き継ぐために)デザイナーがいることと、デザイン・チームの決定を説明でき、そのセットの完全性を保つようにするデザイン・チームのメンバーの両方がいることは、デベロップ・チームにとって重要です。今回のケースでは、ショーンは両方の役割を担当しました。ショーンは「グレート・デザイナー・サーチ2」(リンク先は英語)で見出されてウィザーズに入り、『コンスピラシー』のリード・デザイナーを務めました。
ダグ・ベイヤー/Doug Beyer:ダグもまたデザイナーとしてかなりの経験を積んでおり、『基本セット2013』のリード・デザイナーを務めましたが、彼の主な役割はマジックのクリエイティブ・チームのシニア・デザイナーです。基本的には、ダグはマジックのストーリー責任者の1人であり、彼を『タルキール覇王譚』のデベロップに迎え入れることで、このセットを世界と氏族の両面におけるクリエイティブのビジョンに適うものにすることができます。
アダム・プロサック/Adam Prosak:このデベロップ・チームの最も新しいメンバーの1人であるアダムは、『タルキール覇王譚』でインターンとして働き始め、我々のデベロップの手法を学びました。アダムは高レベルのトーナメント経験とおかしくイカれたゲームプレイへの愛を組み合わせたものをもたらしました。このセットで達成しようとしたいくつかの狂った事柄に、我々のターゲット層がどう反応するかについての素晴らしい基準を与えたので、彼が始めたときにこのセットに対する見解を得たことは素晴らしいことでした。ええ、そうです、このセット最大の再録メカニズムのことです。
変異の復活
『タルキール覇王譚』でのデザインの大局的な計画の1つは変異の復活でした。それはデザインが伝えたい物語を伝えることを助け、そしてマーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterは変異にある大きな改良を施すことができると感じました。
これは私が開発部を見てきた中で最も論争がなかった決定ではない、ということは言っておきます。変異はデザインとデベロップに多くの信者とアンチの両方がおり、変異をこのセットに入れるかどうかはっきりしない期間が長くありました。しかし最終的にはマーク・ローズウォーターのこのセットに対するビジョンが勝ち、変異の収録が確定しました。そこからは我々の最高の能力をカードの上で実行して、複雑さや個別のカードのデザインなど、変異のいくつかの難しい問題を解決しようと挑みました。
『タルキール覇王譚』のデザイン期間終盤の多くは、「《灰色オーガ》が使われていたころとは違う」というデベロップの懸念に基づいて変異を変更しようとする試みに費やされました。我々はかなりの量の時間を、変異を2マナ2/2の無色として試し、得ることができたカードにどれぐらい近いかを見ました。問題はそれがリミテッドで強すぎ、ほとんどの変異が《灰色熊》としてだけプレイされることでした。このことはこのセットの3色性の助けとならないことと同じくらい、つまづいて負ける人々を生み出しました。色のない変異をプレイすることは悪いデッキの証ではありません――唯一の問題は、マナ・カーブを機能させるために何枚プレイしなければならなかったのかです。
結局のところ、我々はかなり弱いサイズであるにもかかわらず、オリジナルの変異の数字で行くことが正しいと判断しました。これはつまり、我々はカードの表側と変異コストでのプレイの両方をプレイヤーがプレイするように調整しなければならないということでした。
この方法のうち最も成功した手段はおそらく、このセットにある3色の変異です。変異は色事故対策として使われました。あなたはかなり強力な5~6マナクリーチャーとしてプレイするか、3ターン目に裏向きでプレイして5ターン目に表向きにして大きなアドバンテージを得るかのどちらかが可能です。しかし、実際に唱えるマナがない場合は、単純に裏向きで出して盤面に影響を与える一方で、マナの問題を引き延ばそうと試みることができます。3色セットに取りかかるという観点から見れば、変異は色事故が起こりすぎることからゲームを遠ざけるために役立ちます。
変異に取り組むときに、デベロップはその能力を取り扱った2つのブロックを詳しく見直しました――『オンスロート』ブロックと『時のらせん』ブロックです。リード・デベロッパーのエリック・ラウアーが《乱打する岩角獣》や《スカークの猛士》のような、ブロックするかしないかについて激しい論争を巻き起こすカードをコモンに望んでいないことは分かっていました。3~4ターン目にブロックするかしないかでゲームが決まってしまうことが起こらないようにしたので、ブロックするかしないかに関する実際の決定は解決されました。
『オンスロート』ブロックを見てみると、《ゾンビの殺し屋》が出る前でさえ、3ターン目に変異をブロックすることが恐ろしいプレイだったことは痛いほど明白でした。あまりにも多すぎる変異が表向きになって戦闘で勝利し、サボタージュ能力持ちをブロックできるのは決まって次のターンでした。コミュニティがその戦略がそもそも何であったかについて多くの興味深い議論をしましたが、私は非常に多くのゲームと存在感を増した「Magic Online」がこれらの決断を急速に面白くないものにしたと信じています。
『時のらせん』は変異に独立して異なったアプローチを取っていました。その変異カードを見てみると、単純に4ターン目にブロックしてきた相手を食ってしまうようなカードはコモンやアンコモンには存在しません。《水深の予見者》を、ダメージがスタックに置かれた後(ダメージがスタックに置かれていた時に戻ってみてください)に表向きにすることができましたが、そうすると3~4ターン目では恐らく手札があふれてしまうことになるでしょう。我々が許可したかったものは、変異が出てきた直後の2ターンは簡単にブロックを決断できることです。一方もしくは双方がお互いの変異と戦うために、単にそれらを表向きにするコストだけでなくコンバット・トリックを使えるようにしたときの興味深い決断ができるようにしたいと思いました。なので、『タルキール覇王譚』には5マナ未満で単純に敵を「食べる」変異クリーチャーは存在しません。変異クリーチャーは相打ちやバウンスはできますが、それらは5ターン目までは単純にアドバンテージを得ることはできません。このルールに従うのは必ずしも簡単ではありませんでしたが、私はこのルールに固執したほうがこのセットの全体的な働きが良くなると考えています。
置くべきか、置かざるべきか、スタックに
変異がこのセットに入り、そしてそれが3マナ2/2であることが決まったのであれば、最後の問題はどのように変異を機能させるかです。変異は最近のマジックにあるほとんどの能力と異なり、スタックを介しません。変異を表向きにすることに対応して何かをすることはできず、これはかなり直感的ではありまあせん。このような動きをする理由は......そう、3マナ2/2バニラが使われるようになることはかなり難しく、さらに2002年の時点ではそれらを《ショック》に対して弱くすることは選択肢としてありませんでした。さらに2002年以来クリーチャーはかなり強化しており、したがって我々は変異と構築フォーマットとの距離をより一層心配していました。それでも、我々は個別のデザインの変異を構築に投入することができました――《賛美されし天使》は確かに使われていました――それゆえに我々が自身に問うべき問題は、多くの人々がそのカードを使ったときに最高の経験を得る方法でした。またそれの一部は、我々がカードを表向きにすることを特別な行動から起動型能力に変えるべきかどうかを決定することでした。
マット・タバック/Matt Tabakは、その提案されたルール・セットのもとで変異が機能するように、かなりの時間を研究とルールの調整に費やしました。問題は、変異を表向きにするためにそれが何であるかを公開しなければならない一方、能力の解決を待つためにはまた裏向きに戻さなければならないことでした。多くの人々は自然だと感じる行動をとり、表向きにしたまま能力を解決することになりました。しかし裏向きのカードは2/2バニラなので、それはゲームの状態を誤って伝えていました。総合ルールには、カードを公開して能力がスタックに置かれたとき、その能力が解決され終わるまでそのカードは公開されたままでなければならないと書いています。つまりこれはそのカードが行いたいことは、特別な行動としてクリーチャーを表向きにするコストを得るために何とかしてそれ自身を一瞬公開し、それから表向きにするためのコストをそのカードの余白に挿入する......これはあなたが想像できたように、恐らく直感的ではありません。マジックのカードを作るというのは簡単にはいかないものです。
私はマット・タバックの仕事をうらやましいと思ったことはなく、変異に取り組んでいる期間はルール・マネージャーがどれだけ大変かをよく現していました。私が近いうちにその分野に携わるようなことはないとだけは断言します。関係者全員にとっては幸運なことに、ほとんどのデベロッパーが変異にスタックを用いることはゲームの一貫性にとっていくらかのアドバンテージがあると発見したものの、ゲーム・プレイの改善がそのルールの変更の根拠として十分なものではないと感じていました。
今週はここまでです。来週は、ブロック構造に対して最近行われた変更と、そしてデベロップの将来にそれが何を意味するのかについてのお話をしたいと思います。
それではまた来週お会いしましょう。
サムより (@samstod)
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