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開発秘話

Latest Developments -デベロップ最先端-

よくわかる『基本セット2015』

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よくわかる『基本セット2015』

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2014年7月4日


 今回の「Latest Developments」でご紹介するプレビュー・カードはありません。セットの全カードをこちらで見ることができます。その代わりに、今回は『基本セット2015』に対するいくつかの洞察を提供できればと思い、このセットに関連したいろんな話題をご用意しました。

デベロップ・チーム

 先週のアーロン・フォーサイス/Aaron Forsytheの記事では彼がデザイン・チームについて語っていたので、私は同じようにデベロップ・チームをご紹介しようと思います。

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ビリー・モレノ/Billy Moreno

 『基本セット2015』はビリー・モレノの最初で最後のリード・デベロッパーを務めたセットとなりました。また彼は『アヴァシンの帰還』、『ラヴニカへの回帰』、『神々の軍勢』でデベロップ・チームのメンバーとして、そして『統率者(2013年版)』ではリード・デベロッパーとして取り組むという経験をしました。ビリーは故郷であるテキサスに帰り家庭を持つためにウィザーズを退職しましたが、彼の開発部の考えに対する貢献の多く(とビリーの定めた開発部の役割の修正)は開発部に残っています。


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トム・ラピル/Tom LaPille

 トムはこのセットのデベロッパーの中で最も経験豊富であり、『基本セット2012』、『闇の隆盛』、そして『神々の軍勢』のリード・デベロッパーを務めてきました。トムは最後の数ヶ月間『基本セット2015』のファイルを引き継ぎ、後期のFFLが必要とした変更の全てを行っただけでなく、2日間の集中したドラフトの後にリミテッドの最終調整を行いました。トムは豊富な経験をもたらして物事を助けただけでなく、我々が他の人が過去にぶつかった失敗から学ぶ助けもしてくれました。


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サム・ストッダート/Sam Stoddard

 私です! 『基本セット2015』は私が関わった(『ドラゴンの迷路』と『コンスピラシー』に続く)3つめのデベロップ・チームであり、『テーロス』の年に関わった唯一のセットです。また私は『マジック2015 ― デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカー』のプレイヤーのカード・プールとキャンペーン・コンテンツにも取り組んでいて、『基本セット2015』の知識を生かしてこのセットの最も楽しいカードを目立たせ、そしてデベロップの中で常に変化し続けるセットに適応させました。


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ショーン・メイン/Shawn Main

 ショーンは『基本セット2015』で2つの役割を担っています――デザイン代理としての役目と、デザイン・チームと『基本セット2015』デベロップ・チームの両方に参加しているメンバーとしての役目です。実際のところはショーンは3つの役目を持っていました――彼は15枚の外部デザイナーのカードも担当し、外部デザイナーと連絡を取り続けていました。彼は我々と外部デザイナーの間のコミュニケーションを助け最終的に印刷されたカードに両者が満足行くようにするという役目を果たしました。


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アダム・リー/Adam Lee

 アダムはクリエイティブ・チームのメンバーであり、『基本セット2015』に正しいフレーバーが置かれるようにする責任を負っていました。『基本セット2015』の目標の1つはクリエイティブが『マジック2015 ― デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ』で伝えたい物語と一致させることなので、彼は『基本セット2015』で描かれるキャラクターを期待したとおりにする責任を負っていました――その中にはオナッケのシャーマン(リンク先は英語)、アヴァシン(リンク先は英語)、そしてオブ・ニクシリスが含まれていました。彼はまた、このセットの残りのカードがクリエイティブ的に可能な限り素晴らしいものになるようにすることに大きく関わっていました。


外部デザイナー・カード

 私が『基本セット2015』について何度となく聞いた感想の1つは「『アルファ版』っぽい」です。この場合、人々はこの言葉をこのセットでは多くのとても異なる事柄が起こっており、個別のカードのデザインの多くが人々が慣れ親しんだ近代マジックとは異なるという意味で使っています。その理由は2つあります――『基本セット2015』のリード・デザイナー、アーロン・フォーサイスが(《氷河の壊し屋》や《スズメバチの巣》のような)変わったコンセプトのキュートなカードの大ファンであること、また最近のデザインやデベロップの考えの恩恵を受けておらず、極めて異なった見地からマジックのカードをデザインする人々のグループがいたことです。

 外部デザイナーが我々にもたらしたアイデアは驚くほどの多様性があって型破りでしたが、いくつかの問題も引き起こしました――特に彼らのアイデアの多くはコンセプトが強すぎるせいで、しばしば我々のマジックのセットの作り方に適応しませんでした。外部デザイナーの多くは現在のカード・パワーについての考えをほとんど持っていなかかったので、提出されたオリジナルのアイデアは弱すぎるか強すぎるかのどちらかでした。これはショーン・メインと残りの『基本セット2015』のチームの間だけでなく外部デザイナーにも、適切なパワー・レベルでありながら、マジックの開発部でない人々が作ったと感じさせる、満足行く妥協点を考え出す多くの仕事をもたらしました。

 最終的には、私はこれらのカードの出来映えにとても満足しています。私はこれらのカードが(《ザスリッドの隠し刃》のような)本当に楽しいトップダウンのデザインと、(《起源のハイドラ》のような)メカニズム的にとても楽しいカードと、我々が絶対に思いつかないであろうカード(《ゴブリンのドカーン物取扱者》)の素晴らしい集合体だと思います。私はあなたがこれらのカードを等しく好きになってほしいと思います。

世界を目覚めさせる者、ニッサ

 もうご覧になったかもしれませんが、ガラクは悪堕ちし、黒緑のプレインズウォーカーになってしまいました。ガラクは緑の定番プレインズウォーカーでしたが、彼の変化はガラクの位置を引き継ぐ新たな緑単色のプレインズウォーカーが必要だということを意味していました。これはつまり、我々はかつてガラクを使っていた立ち位置と似たようなところでニッサを使う必要があるだろうということです。

 これは、今度のニッサが彼女の最初の登場の時よりもエルフ中心ではなくなる必要があるということでした――彼女をもっと多様性に富んだようにする必要もありますし、我々は時々(テーロスやイニストラードのような)エルフのいない世界を作るからです。ニッサは、獣使いであり大型クリーチャーに焦点を当てたガラクと違ったことをしなければなりません。考えついた適正なデザイン空間は、ニッサをドルイド・タイプのプレインズウォーカーにし、ニッサが物語の流れの中でどんな成長を遂げたかに合わせて土地を操るようにしました。このデザイン空間は緑が明確に中心としているもので、エルフの部族なしで彼女のプレインズウォーカー・カードを使い物になるようにしました。

 この変化は《闇の領域のリリアナ》とは大きく異なります――あのときは、優れた個性をもつプレインズウォーカーが、大きくキャラクター性を損なった何か別のものに変わってしまったのです。《闇の領域のリリアナ》がリリアナらしくなかったということから、ダン・エモンズ/Dan Emmonsがプレインズウォーカーがその個性を保つようにする担当デザイナーになり、プレインズウォーカーをキャラクターとして強くするとともに、我々が独特なマジック的動きをするな新たなプレインズウォーカーを作ることを可能にしました。《世界を目覚めさせる者、ニッサ》はニッサの個性を発展させたものであり、我々は大いに満足しています。

 ダンのプレインズウォーカーへの仕事の中で、デザインとデベロップにとって明らかになった素晴らしいことの1つは、プレインズウォーカーをそれぞれが異なった雰囲気にする必要があるということで、過去には時として、個別のカードを面白く作ろうという欲望によって途中で見失われることがあったのです。我々は新しいプレインズウォーカーを作り続けるにつれて、ただ他のキャラクターの見た目だけを変えたバージョンよりも、それらのプレインズウォーカーのキャラクター性を感じさせる、新たなメカニズムの空間を探し続ける必要があると発見しました。おそらくいつかは、過去に能力の割り当てがぞんざいだったことから重なり部分が存在することになるでしょうが、いつかプレインズウォーカーの雰囲気の違いが理解されることで、彼らのこのゲーム内での存在感が改善されることになると考えています。

スリヴァー

 『基本セット2014』でのスリヴァーの変更に対する反応は大きく、そして『基本セット2015』で対処したかったものです。クリエイティブはスリヴァーが様々な形やサイズで現れうるという見解を示していました――そしてこのセットにいるスリヴァー達は『テンペスト』期の虫型スリヴァー(最も良くわかるのは《スリヴァーの巣》と《スリヴァーの首領》です)から『基本セット2014』の人型まであらゆる姿を取っており、その多くはその2つの中間に存在します。

 『基本セット2015』の目標の1つはスリヴァーに構築フォーマットで本当に輝く機会を与えることであり、我々はその目標を達成するためにこれらのスリヴァーの能力を選びました。《拡散スリヴァー》は黒単のような単体除去が満載されたデッキに対しての抵抗力を与えることを意味し、《好戦スリヴァー》と《毒牙スリヴァーVenom Sliver》は《クルフィックスの狩猟者》や《森の女人像》でブロックしてくる緑のデッキに対して有効な組み合わせです。そして《血吸いスリヴァー》はスリヴァー・デッキに他のデッキと競う助けとなる2マナ域を与えます。

 スリヴァーがプロツアー『基本セット2015』に大きな影響を及ぼすかどうかは分かりませんが、このデッキがスタンダードで非常に競技レベルに近いところに存在することは知っているので、問題はスリヴァーがメタゲームに居場所を見つけられるかどうかでしょう。様々なスリヴァーがもたらす多彩な能力は、メタゲームに存在するほとんどあらゆるデッキに対抗する能力を提供し、そのデッキに関連する手段を与えるはずです。時間が経てばこのデッキに対する我々のビジョンが現実世界と近いかどうかが分かるでしょう。

 来週はMファイル『基本セット2015』編をお送りします。(編訳注:日本語版は7月11日掲載となります。)

 ではまた来週お会いしましょう。

サム(@samstod)より

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