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デザイナー、デベロップをする
デザイナー、デベロップをする
Shawn Main / Tr. Takuya Masuyama
2014年4月4日
こんにちは! 私はショーン・メイン/ Shawn Mainといいます。私の誇るべき業績といえばエウリピデスの「バッコスの信女」をパンク・ロックと融合させたこと、 グレート・デザイナーズ・サーチ(リンク先は英語)で2位になったこと、そしてこの夏に発売される『コンスピラシー』のリード・デザイナーを担当したことだね。
それで、何でマジックのデベロッパーの話をせずに自己紹介なんかしてるのかって? サム・ストッダート/Sam Stoddardが彼に代わって「部外者であることについて」の話をできないかと、私に頼んできたからなんだ。うん、もっと具体的に話そう。彼の頼みはデベロップ・チームにおけるマジックのデザイナーの存在についての話をすることだ。
分派する2チーム
開発部は専門化が必然だという概念に基づいて構築されているけど、その相互作用は重大なものだ。この指針は我々の仕事の光景全てに見受けられる。例えばデザインとデベロップのチームはそれぞれ固まって座っているけど、奈落の中は低いパーテーションで仕切らられているだけで、お互いにやり取りができるわけだ。
デザインとデベロップ(とクリエイティブや編集やその他社内)は最終的に1つの目標を持っている。すごいカードとセットを作ることだ。その主な違いは、カードのライフサイクルの異なる段階でそれを扱っていることだ。そのため我々は異なる部分に注目し、そして結果としてデザインとデベロップにはちょっと違った技術が要求される。
本質として、デザインは構想に、デベロップは出来映えに責任を持っている。マーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterのよく言う例えに、デザイナーはデッキビルダーであり、デベロッパーはデッキチューナーだというのがある。私は演劇畑の出身なので、デザイナーは脚本家であり、デベロッパーは演出家だと言うほうがしっくりくる。この前者は物語を考え、そして後者は実際にそれらの物語に命を吹き込む作業に取り組むわけだ。
《演劇の舞台》 アート:John Avon |
結果的に、デザインは相当な量の絵空事を考え出す――「ギリシャ神話をマジックで表現するとどうなるんだ?」 その一方で、デベロップの取り組むことはもっと現実的だ――「この神々の言い回しは機能するだろうか? 単純にできないだろうか? 2色の神々が顕現する信心の数はいくつが適正だろうか?」
しかしそれぞれのチームが違ったところに焦点を当てている一方で、お互いがもう片方の仕事をよく考えなければいけない。デザイン・チームは常に、カードのコストや、後になって「このメカニズムはデベロップ可能なのか?」というような異議を申し立てられるようなことにならないよう、デベロッパーの仕事に責任を持つ。そして同じように、デベロップ・チームにはデザイナーが加わる。デベロップ・チームでのデザイナーの仕事の大部分は、単純にそのチームの一員としてプレイテストに参加し、何が機能していて何が機能していないかの意見を出すことだけれど、そのデザイナーには3つの特別な責任がある。
1.デザインの構想を忘れないこと
デザインの後期に、そのリード・デザイナーはセットの構想の詳細を書いた引き継ぎ文書を作成する。この文書に書いてあるのは、そのセットの目標や、それらの目標を達成するために行われたこと――テーマ、メカニズム、主なカードのサイクルなどだ。カードセットはデベロップの間に大きく変更されることがあり、個々のカードが消えたり追加されたりする中でもその構想は保たれるべきであるため、この引き継ぎ文書は重要な指針になる。
デベロップ・チームにいるデザイナーは、この文書の内容を守らせる責任がある。例えば『テーロス』のデベロップの時の私の重要な役目の1つは、場違いに見えるようなフレーバーあふれるデザインを保護することだった。《アクロスの木馬》は特にリミテッドでのアーキタイプに関係するわけでもなく、背景をはぎ取ると変なカードにしか見えないので、スペースを空けるためにセットから取り除いてしまいたくなるのだけれど、独立したフレーバーあふれるデザインは『テーロス』というギリシャ神話をイメージした世界を確立させるためにとても大事なものだ。
2.異なる視点を提供すること
私は仕事以外に、定期的にドラフトや統率者戦、プレインチェイス戦、モミール・ベーシックをプレイしてる。また「Gatherer-Terrible」と呼ばれる、Gathererでの評価の星の数が2未満のカードだけを使う構築フォーマットを考え出したし、このゲームの歴史で最もフレーバーあふれるカードで構成されたフレーバー・キューブをつい最近完成させたところだ。そして新しいプレイヤーにこのゲームを教えることは私がとても好きな事柄の1つだ。つまり、私が興奮するマジックのプレイ方法は、平均的なデベロッパーとはかなり違って見えることがある、ということだ。
デベロッパーは選りすぐりのマジックのプロ・プレイヤーで構成されている。これは彼らに競技プレイヤーの考え方に対する深い洞察力を与え、それは絶対的に重要なものだ。だが世界にはたくさんの異なるタイプのマジックのプレイヤーがいて、そのプレイ方法は千差万別で、そして我々はそれらの人々全てのためにこのゲームをつくらなければいけない。
何人かのデザイナーはトーナメントでの実績を持っている(ケン・ネーグル/Ken Nagleはプロツアーに出たことがあり、ダン・エモンズ/Dan Emmonsはジュニア・スーパー・シリーズのファイナリストだ)が、デザイナーはキッチンのテーブルでの経験を活かしたほうがよいこともある。そして異なる視点を提供すること、そして特に経験の少ないプレイヤーがカードをどう扱うかを気をつけておくのは、そのデザイナーの役目になる。
『Modern Masters』のデベロップ時に、我々はフェアリーやストームのような構築フォーマットで人気のあったアーキタイプを作りたかったのだけど、いくつかの色のペアで戦略を見つける必要があった。私はドラフトの変なアーキタイプが大好きなので、『神河物語』3つのドラフトにあった、クリーチャー0体の《思考の鈍化》デッキを試してはどうかと提案した。すでに《木霊の手の内》や《深遠の覗き見》のようないくつかの秘儀が必要だと分かっていたので、この戦略は適応し、プレイヤー達に史上最もユニークな戦略のうち1つを再び体験させることを可能にしたんだ。
3.カードをデザインすること
開発部の誰もが個別のカードをデザインすることに長けている。本当だ。私はどのデザイナーとデベロッパーも、少なくとも1枚はあなたが心底大好きなカードを作ったことがあると確信している。じゃあ何故デベロップ・チームがカードをデザインできるのに何でデザイナーの仕事になっているのかって? うん、デザイナーはデベロッパーよりもデザインするのが早いからだ。我々は進んで新しい事柄をたくさん試そうとするので、これは価値のある技術だ。我々がセットにカードを加えて、プレイテストをして、審査をして、ダメならそのカードを殺して、そして新しいカードをまた試すことで、常に変化が起こり続けるようになっている。
例えば『テーロス』のデベロップ時に、いくつかの授与能力の入れ替えと、最もそれに理に適っている能力をコモンで使い切った後、我々はアンコモンの授与カードをシンプルなテキストで作らなければならなくなった。我々はそこで会議を切り上げて、次回にアイデアを持ち寄るようにすることもできた。しかし私はこのチームのデザイナーであり、そしてエリック・ラウアー/Erik Lauerはたくさん提案を出すよう私に目線を送ってきた――テキストが単純で、共感できて、親しみやすく、そしてオーラとクリーチャーの両方で楽しそうなものを。それからデベロッパーはそれらの提案を熟考し、議論を重ね、そしてファイルに、後に《ヘリオッドの使者》、《タッサの使者》、そして《エレボスの使者》となるカードを加えた。
多彩な役割
私は3年前に開発部に入り、その中で私にとって最も驚いたことの1つは、重複している仕事が同時に行われている数だ。私は「Making Magic」と「Latest Developments」を最初からずっと読んでいるけど、その範囲に関する準備ができてはいなかった。今進行中のことを伝えると――2つのセットがデザイン中で、1つのセットが事前デザインで、1つのセットがデザインの前にちょっと会議をしている段階、3つのセットがデベロップ中で、そして3つのサプリメントがデベロップ中だ(何か忘れてるものが無ければね!)。これらはわずか6人の中核デザイナーと8人の中核デベロッパーによって行われており、数えてみると皆たくさんの仕事をしていることになる。
このことによって、ときどき焦点が多すぎて首が回らなくことがある。ある事前デザインの初期の会議では、世界のデザインと他のセットとどう違うのかを三幕に分かれたストーリー構造と絡めて語り、その次の会議では、各色の間のコモンのバランス取りについて語る――そこでの質問はデベロップの「このクリーチャーは3/3にするべきか3/4にするべきか?」というようなものに集中した。しかし複数のセットに渡って仕事をすることはすぐに有意義な相互作用を生み出す――あるセットのデベロップ計画についての知識を持ち込むことは、多くの場合その次のセットのデザインにとても役に立つ。というわけで、我々は2つのチームに分かれている一方で、その過程はあらゆる段階で流れ作業的ではなく、もっと双方向的なものになっているんだ。
違った風景からのデベロップについて、部外者の話を読んでくれてどうもありがとう。
(熊に追われて席を立つ)ショーンより
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