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構築フォーマットのプレイテスト
構築フォーマットのプレイテスト
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2014年3月21日
何週間か前にこの記事でリミテッドのプレイテストについてお話ししたので、今週の記事では構築フォーマットのプレイテストについてお話ししようと思います。この記事のほとんどは実際のメカニズムについてではなく、リミテッドのプレイテストの理由と方法の骨組みについて焦点を当てることになるでしょう。
奈落で行われるプレイテストは、いくつかの理由から現実世界のプレイテストとは少し異なっています。
- 目的は単に最強のデッキを見つけることではなく、単一の戦略やデッキに支配されない深く魅力的なフォーマットを作り出すことである。
- 我々の関心は、両方のプレイヤーのゲームの体験がバランスの取れたものにすることよりも、ゲームをお互いに楽しめるものにすることにある。
- 我々はこれらの目標を達成するためにカードに変更を加える力がある。
楽しく満足のいくレベルでバランスの取れたゲームを作ることは、完璧なバランスが取れているだけのものを作るよりもはるかに困難です。チェスは可能な限り完璧なバランスの取れたゲームですが、にもかかわらず毎年新たなゲームが発売されています。もしバランスが究極の目標であれば、毎年新しいゲームが出るようなことはないかもしれません。その割合こそが重要なのです。我々が作ろうとするものは、新しく、興味深く、人々に学ぶ機会を提供するものです――私はマジックがその点で他よりも優れていると信じています。我々の目標は、百万人のプレイヤーを支えるのに十分な頑丈さを持つと同時に、我々が予想もしなかった新しい事柄を発見できる環境を提供することです。
初期のプレイテスト(「デヴァイン」――構造のデベロップ)
セットに取りかかるとき、我々がリミテッドから始めるのは、最もデザインの意図に対して敏感であり、すでに完成したそのブロックの他のセットから最も大きく影響を受けうる、という2つの理由からです。リミテッド向けに適正なカードを得ることは、カードの個々のパワー・レベルよりも、そのセットの基本的な形に影響されます。
これら初期の段階で我々は、危険な感じがするが、このゲームに何かクールで興味深いものを加えられるカードを試そうとします。初期のプレイテストは大きな変更をするために行い、大多数の変更はここで起こります。時々、我々はカードを1〜2マナ重くすることがあります。そして時々、我々はそのカードを誰も唱えられないコストにすれば大満足すると気がつき――それをセットから外します。
時々、最終的にカードのマナ・コストを重くするのはそのカードの強さが我々の予想をはるかに超えたものだからで、そうしなければ数字を見るまでもなくそれをプレイすることでしょう。
デザインから最初に引き渡されたカードの多くはそのまま最終バージョンにはならず、さらに多くのカードがマナ・コスト、パワーとタフネス、もしくは起動コストなどを調整されます。他にも単体でクールであったり、果たされていない特定の役割を行う新しいカードを入れる場所を作るために、セットから取り除かれるカードもあります。
これはこの段階で行われることがカードの弱体化だけだということではありません――我々はかなりの数の、もっと強ければ楽しいに違いないと思うカードを強化しています。《波使い》は、このような方法でスタンダード級のカードにすれば楽しくなるだろうと思われたために強化されたカードの例です。オリジナルのこれは、{4}{U}の3/1で、2/0のトークンを出していました。
古代のマジックでは、競技プレイヤーがそれを好むと考えられていたせいで、除去呪文、打ち消し呪文、そしてカードを引く呪文は常にとても強く作られていました。ある程度は真実ですが、私はほとんどの競技プレイヤーがそれらを好んでいたのは、それらが強いカードだからだと思います。競技プレイを見ているとき、「人々がプレイしているカード」と「人々がプレイしたいカード」を重ねるのは危険なことです。プレイヤーは(ほとんどの場合)冷静な判断を下してデッキを作り、強いカードをプレイするので、従ってデッキの中身を見ただけでは、人々が本当にプレイしたいものは伝わってきません。私はプレイできるデッキの範囲が信じられないほど狭く、いくつかのフォーマットの柱となるものに焦点が当たっているのとは対照的に、カードのパワー・レベルがより平均的で、楽しく興味深いデッキがもう少し競争する余地があれば、人々はもっと満足できると考えています。
確かにある人々は《電結の荒廃者》を強さに関わらずとても楽しんでプレイしていましたが、それが環境の最強デッキからほど遠いものなら、それらのプレイヤーが同じことをできる一方で、《歯と爪》や《水晶の破片》を唱えたいプレイヤーも自分のやりたいことができたことでしょう。私は《電結の荒廃者》を本当に楽しんでプレイしていたほとんどの人が、他の全ての対戦がミラーマッチでなければもっと楽しめたのではないだろうかと疑問に思っています。時間が経つとともに、我々はそれが強ければ楽しくなるだろうというカードを見つけることが上手くなり、そしてそれらをそのように作ってきました。構造のデベロップの終わりまでには、我々がそのセットでリミテッドを上手くプレイできるようにし、構築フォーマットに影響をもたらすカードが十分な数にできているのが理想です。
中間プレイテスト(フォーマットのデベロップ)
構造のデベロップの後はデザインがとりまとめをしているのでいったん休憩です。セットが戻ってきたときはフォーマットのデベロップであり、その性質上変更されることは少ししかありません。ある意味で、構造のデベロップの間、セットは外部と隔離されています。フォーマットのデベロップが始まるまでには、その前のセットのほとんどは確定されており、そしてその新セットは構築とリミテッドの両方が統合されていなければなりません。
この期間、我々は新セットのどのカードが構築フォーマットで新しいデッキを可能にするかを見るだけでなく、最新セットのカードをデベロップするために既存のデッキに加えることに重点的に取り組みます。『神々の軍勢』を見てみると、《歓楽の神、ゼナゴス》は最初から赤緑怪物デッキに加えるためのカードの例です。彼は何度も繰り返しの過程を経ましたが、我々は彼がこの種の戦略に適応するようになることは分かっていました。一方で《苦痛の予見者》と《責め苦の伝令》は既存のデッキにうまく適応しなかったので、我々はそれらを中心にしてデッキを組めるようにし、パワー・レベルを我々が他に引けを取らないと思うレベルまで引き上げました。
我々は常に正解にたどり着くわけではなく、マジックの本質と我々のプレイテストの働きによっていくつかの物事を見逃してしまうこともあります。我々が構築での必須カードだと考えていたものが全然活躍しなかったり、はずれだと考えていたものが必須カードになったりします。我々がカードの適正なパワー・レベルに注目していて、選択ミスを大量のカードで犯さない限り、最終的にはその多くは相殺されるでしょう。基本的に、我々はデッキのパワー・レベルや作成を正確に把握していませんが、メタゲームの分類の全体な構造は正しく掴んでいます。
分類された基本的な戦略を繰り返すために、我々はメタゲームのバランスを助けるスタンダードの主な戦略のデッキが十分存在するようにします。その基本的な概要は以下の通りです。
これの詳細についてはこちらの記事に書いてありますが、簡単に言うと上記のデッキの構造が矢印の先2つのデッキに対して最も強く、逆方向の2つのデッキに対して最も弱いというものです。ミッドレンジはサイズで上回り除去があるので純正アグロや撹乱的アグロに強く、ランプ/コンボや伝統的なコントロールに対しては不利、ということです。逆に撹乱的アグロ(アグロに打ち消しや手札破壊呪文が入ったもの)はコントロールとランプ/コンボに強いのですが、純正アグロやミッドレンジを倒すのは困難でしょう。
これの目標は完璧なバランスを取ることではなく、メタゲームを変化させ続けるために各バケツに楽しく魅力的なデッキが存在するようにすることです。この構想は、例えばミッドレンジが人気を得すぎた場合、それを倒すためにランプ/コンボやコントロールが浮上し、アグロ・デッキがそのメタゲームに戻ってこられる穴を開けるようにする、というものです。これは常に機能するわけではありませんが、メタゲームにバランスと十分な広さがあるようにするための多くの方向性を我々に与えてくれます。もし分類のうち1つが欠けているように感じたなら、我々は楽しそうなカードをいくつか探し、その欠けている分類が競技レベルになれる十分な強化ができるようにそれらのカードを推すでしょう。
最後の仕上げ(洗練する)
そのセット全体のデベロップが正式に止まったあと、タイプセットして印刷に送らなければならないギリギリまでに、少しの時間があります。この時間に発生する主な仕事は、FFLからの意見に基づいて調整を行い、カードの強化と弱体化を繰り返して、全体としてより楽しくバランスの取れた環境を作ることです。これにつながっている次のセットはフォーマットのデベロップ中なので、物事を改善するために両方のセットで変更を行うことができます。
《奈落に住まう騙し屋》 アート:Svetlin Velinov |
この時点でイラストは全て発注済みであり、追加のイラストを急いで描いてもらう正当な理由がない限り(そんなことは稀です)、我々の仕事はイラストの範囲で調整するか、イラストの交換をするかのどちらかに限られます。つまり、クリーチャーのパワーやタフネスを少し増やすことはできても、飛行をつけたりはできないということです。これはまた我々を問題を解決する創造的な方法へと導き、そしてその方法は多くの個性的なカードへとつながります――時には非常にフレーバーの乏しいカードを作る言い訳になってしまいますが。
これは多くの「デベロッパーっぽい」テキストをカードに加える傾向にある過程の一部です。時には、我々は(例を挙げるとプロテクション(白)を持ち《スフィンクスの啓示》対策のテキストを持つ《嵐の息吹のドラゴン》などの)メタゲームで強力なデッキに対して有効なカードといった極めて具体的な役割をするカードが必要なことを実感し、またある時は(ここではお話しできないような)未来のカードの場所を作るために少しカードが必要なことを実感します。いずれにせよ、ここでの微調整はほとんどそれだけです――我々がいったんとても良い動きをすれば、数週前よりもはるかにうまくメタゲームを制御できます。カードは大抵、そのセットが締め切りの瞬間に近づくにつれてあちこちで小さな変更が行われ――しばしばより良いテンプレートにすることに集中され――ますが、あらゆる意味でプレイテストの焦点は次のセットへと移っていきます。
今週は以上です。また来週お会いしましょう。
サム(@samstod) より
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