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より良いセットをデベロップする
より良いセットをデベロップする
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2014年3月7日
前回の「Making Magic」で、マーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterは繰り返しがどのようにデザインを助けているかについての話と、セットを作る人々へのアドバイスをいくつか語りました。デベロップは、まさにその本質において、繰り返しに基づく過程なのです。そこで、同じようにセットをより良くデベロップするいくつかのアドバイスを、デベロップを目指す人やキューブを作っている人にお送りしようと思います。今回の記事は、私がこの2年でマジックのセットのデベロップについて学んだ、いくつかの法則をお話しします。
《マイアの保育器》 アート:Alex Horley-Orlandelli |
デベロップは構造(我々がリミテッド環境に取り組むパート)とフォーマット(構築フォーマットに取り組むパート)の2つのパートに分類されます。セットの大きさによって(大型セットは小型セットよりも時間がかかります)、デベロップは構造のプレイテストを10〜14週間行い、フォーマットのデベロップに5〜7週間を費やします。それと、セットが引き渡される準備期間の「デヴァイン」がその前に8週間ぐらいあります。この締め切りはとても早いのですが(何しろイラスト、パッケージ、プロモカードなどが必要ですので)、実験する時間がないということではありません――事実、我々に仕事をする時間があり、それがほんの数週間でない理由は、我々が実験する時間を持てるようにすることだからです。
最初から上手くはいかない
「鹿を追う者は山を見ず」――これは私が受けた大学の文学の授業で言われていたことで、マジックのセットのデベロップにピッタリと当てはまることです。特に初期において、優秀でバランスを取れたものだけに注目することの問題は、改良するべき点が上がってこないことです。私は、ほとんどの人にとって、その気持ちは自然と各プレイテストの前に正解について向かっていくものだと思っていますが、それはプレイテストにおいて最も重要な部分の1つを取り除いてしまいます――それは科学することです! 我々がセットを実際に世に送り出すときのプレイ経験の目標は、新しく、楽しく、異なったものであることですが、実際のところ初期段階では楽しさの部分は重要ではありません。もちろん楽しいことは良いことですが、目標は最良の完成品を作ることであり、それはリスクを背負って、何が機能して何がそうでないかを見ることを意味しています。
《倍化の立方体》 アート:Mark Tedin |
マジックのセット単体を素晴らしくしていることの多くは、他の環境では巧くプレイできない何かを取り上げ、そしてそれを巧くプレイできる方法を見つけることです。『イニストラード』は陰鬱とフラッシュバックを使って、多くのセットにとって得に働かない墓地に、普通よりも大きく焦点を当てることを行っています。セットがその何かに基づいて作られている場合、我々はそれを利点に変えることに焦点を合わせられます。同じように、『テーロス』はクリーチャーを大きくすることに極めて重点を置いており、それはイライラさせるものかもしれませんが、我々がそれを中心に作るならば環境として機能します。
マジックの素晴らしいメカニズムの多くは、初期の過程における大量の不満によってもたらされています。我々はどうすれば好ましくない事柄を減らし、そして行おうとすることを増やし改善するかを考え出すことができるからです。我々はマジックの新セットがこのゲームに新しい何かを加えることを望んでおり、それは境界線のテストをすることを意味しています。物事をテストするということはつまり、時々その物事が駄目になってしまうということです。このテストの多くはデザインから始まりますが、彼らは本当に見込みのあると感じるものだけを渡してきますので、我々は正しい割合を考え出せるかどうかを見せることになります。
間違ってみる
直感では分かりにくいかも知れませんが、間違った物事から始めることは、正しいと信じていることよりも有用になり得るのです――どの方向に出発したかを知っている限りは、ですが。結局のところ、何が間違っているかを知っているほうが、何かが正しくて間違っていると感じられないことを知っているよりも、修正が簡単なのです。
《不死のコイル》 アート:Dan Scott |
例えばあなたがキューブを作っていて、白にエンチャントのテーマを加えたいとしましょう――当てずっぽうで正しいと思う枚数を入れ、そして誰もそのデッキをプレイしないとしたら、あなたはそこから何を学びますか? 十分なカードが出なかったか、個々のパックからたまたまより強力な戦略が現れてしまったのかもしれません。もしくはそのテーマを支援するカードがもっと必要である可能性もあります。もし誰かがそのデッキを試してみて、十分な強さがなかったとしたらどうでしょうか? そのデッキが競争力を得るにはどれぐらいのものを加える必要があるでしょうか? もし健全な限度を越えて強くしすぎ、しかしそうでなければ機能しない場合、単に何枚かカードを減らすよりも、もう一回やり直した方が適正な数にはるかに近づくことができます。
しばしば、私はプレイヤーたちから「今より低い授与コストを試してみたか?」というような質問を受けることがありますが、もちろんやってみました。様々なカードの配列を試し、我々が推したい物事からどれだけ離れているかを見ないようでは、我々はデベロッパーとして仕事をしているとは言えないでしょう。授与コストをより低くすればより強力になりますが、それはまた楽しさを損なうことになります。我々はそれをどうやって知ったのでしょうか? ええ、実際にやってみました。そしてそれは楽しくありませんでした――何もなくても5ターン目にはすごい合体ができた人が、あまりに多くのゲームでいたのです。それを試し、コストの設定が不満足に終わることを示す明確なデータと実際の感覚を得て、我々はこのメカニズムに求めている方向性を理解し、現在、皆さんが知っているものにコストを引き上げました。
セットに変更を加えるとき、重要なのは自分自身が物事を調整する立ち位置を見失わないことです。デベロップの初期で、各プレイテストで少なくともある程度は科学していないのであれば、長い目で見るとそのセットを十分な改善をしているとは言えないでしょう。
一度に全部修正しようとしない
これは新人デベロッパーが最も学ぶのが難しい事柄かもしれません――少なくとも私はそうでした。セットを検討し、そしてゲーム・プレイを改善する多くの変更を行うのは魅力的かもしれませんが、一度に多くのことをやり過ぎると、そのシステムに多くのノイズが生じてしまいます。そうすると問題は物事は改善されますが、その変更が本当に良くなっているのか、そして何が悪くなっているかを知るのは難しくなります。我々はセットをデベロップする時間の割り当てを決めていますが、完璧かもしれないものの激しい変更を数多くするよりも、時間をかけて研磨して品質を改善し続けるシステムを使うほうが良いのです。
《Delif's Cube》アート:Mark Tedin |
あなたがセットのリミテッドに取り組んでいて、全てが上手く行っていないとしましょう。人々はそのセットはアグロ寄りすぎると苦情を言い、序盤で有利になった人が常に勝っています。というわけで、あなたは黒と赤のカードを何枚か弱体化させ、青と白のカードを強化し、緑と赤に新しいメカニズムを加え、そしてさらにマナ基盤に修正を加えました。次のプレイテストのときに、プレイヤーは楽しさを得ましたが今度はコントロールデッキが強くなりすぎました。今度はどうしますか? 一度に多くの変更をしたせいで、あなたはどの変更が機能して、どれがそうでないかを掴むのが難しくなってしまいました。もしかしたらコントロールを強くしすぎたのかもしれませんし、アグロを弱くしすぎたのかもしれません。もしそのかわりに変更を半分だけ、黒と赤の弱体化と色の調整だけをしていたならば、どの変更がこのセットに影響を与えていたかがよく分かり、その反響を赤と緑に新しいメカニズムが本当に必要かどうかの判断材料として使うことができます。
これは何か大きな全面的な変更をプレイテスト中にできないということではありませんが、通常それは明確な目的と厳密な数字をもって行うべきです。あなたが『オデッセイ』に取り組んでいて、スレッショルドに当てはめる数字とそれを支援するカードの適正な割合を試しているとして、同時にフラッシュバックの働きを根本的に変更したいとは思わないでしょう。結局、有用な反響があり結果が明らかなプレイテストは、そうでないものよりもはるかに生産的です。
今日の答えは明日の問題
あなた自身のデベロップの選択に固執しすぎないでください。そのセットの目標は時間をかけて繰り返し改善するものであり、それはしばしば、開発過程の初期にあなたが考えたそのセットの理想型がそのセットの完成を阻むことを意味します。
《テフェリーの細工箱》 アート:Donato Giancola |
セットがデザインから回ってきたとき、それには多くの荒削りな部分が存在します。デザインの仕事はできることの境界線をテストすることであり、デベロップの仕事はそれらの決定を実行する最良の手段を考え出すことです。このことから、デベロップはメカニズムに結びつけられる上手い方法、もしくは機能させる色のペアを考え出します。この手の探求は良いことですが、それらが最も良いものとは限りません。
具体的な例を挙げてみましょう――あなたは手札の枚数に関わるメカニズムがあるセットに取り組んでいます。あなたは「ああ! このメカニズムがバイバックと相性がいいのは分かってる! 呪文を唱えても手札が減らないからな!」と言います。あなたはそれをセットに加え、しばらくの間は上手く行っていました。そのメカニズムは素晴らしく、プレイヤー達はより大きな楽しさを得て、あなたにはどの手札の枚数に関わるカードが楽しいか、またどれが楽しくないかを考え出す時間がありました。さらにはバイバックと似たようなデザイン空間を使うが、異なる働きをする他のメカニズムを考え出す機会さえも得ました。
その後バイバックが同じことの繰り返しになって、ゲーム・プレイを停滞させているというプレイテストの反響が届き始めます。それを軽減するためにあなたはバイバックを持つカードに調整を加えましたが、プレイヤー達は今度はゲーム・プレイがエキサイティングなものではないだけでなく、それらのカードが魅力的に見えないという苦情を言ってきました。デベロッパーとしては、バイバックがこのセットへの全ての問題のシルバーバレット的解答ではなく、むしろ有害になるようなところへとセットの様相が進化したという事実を考慮するのが重要です。
今週はここまでです。また来週お会いしましょう。
サム(@samstod) より
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