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開発秘話

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スタンダードのための『基本』のデベロップ

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スタンダードのための『基本』のデベロップ

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2013年7月12日


 基本セットの狙いを定めるというのは難しいことです。どんなマジックのセットでもどうやって構築に影響を与えるか狙いをつけようとすることは技術的にかなり難しいのですが、基本セットを作る場合はエキスパンションとは少し違う多くの課題が存在します。基本セットは常にスタンダードのカードプールが最大のときに発売され、このセットに含まれるカードが他のエキスパンションよりも強力ではないと仮定すると、基本セットがスタンダードに即時に与える影響は数学的に最も小さいということになります。我々はカードパワーを上げることもできましたが、各基本セットをその前のものより強くし、そして対応して大型セットがより強くなっていくことは長期に渡る災いの素でしかありません。確かに、これは原始のタイタン》++《墓所のタイタン》++《太陽のタイタン》++《業火のタイタン》++《霜のタイタン》">タイタンにあった問題の1つでした。それらは使用可能な間ずっとスタンダードの原動力になり、フォーマットにある他の多数のカードよりも圧倒的に強く、スタンダードがブロックではなくそれらを中心にして構成されているように感じられました。《戦隊の鷹》、《野生の狩りの達人》、《悪斬の天使》のようなカードがスタンダードに顕著な影響を与え、活躍するためにはそれが無くてはならないデッキを可能にするのは良いのですが、単純にそのフォーマットを支配させずにカードにこの種の影響を持たせるようにする良いアイデアを思いつくのに我々は少し時間がかかってしまいました。

 基本セットには、単にそれをプレイする人々にカードを供給するだけでなく、様々な目標があります。我々が今試みているのは、基本セットを、使用可能な15ヶ月全体のスタンダードを第一に定義するような強さにならない範囲で、そのカード達が大きな影響を与えるよう位置づけることです。それらのカードはスタンダードを去るカードと上手くプレイされ(また、もうすぐローテーションするカードに新しい使い方を与え)、最近のブロックのいかなる戦略も強くしすぎることなくそのブロックを支援し、さらに来たるべきブロックのためにいくつか種を蒔いておく必要があります。我々は基本セットに強力でエキサイティングなカードを供給することを求めていますが、結局スタンダードを面白く新しいものに保ち続けているのはエキスパンションごと、そして毎年のローテーションとブロックの構造です。これは我々が強力なカードを基本セットに入れたくないという意味ではありませんが、基本セットは周りに依存しないものであるよりも、周囲のエキスパンションと協力して動くべきです。

種まき

 今『基本セット2013』を振り返ってみると、何をラヴニカへの回帰・ブロックを支援するために収録したかは簡単に分かるでしょう。多くの知識あるプレイヤーが《遥か見》、M10ランド、《東屋のエルフ》、そして《火打ち蹄の猪》サイクルがどのようにラヴニカへの回帰・ブロックのショックランドを支援したか、そして他の構築フォーマットをプレイする人々のためにエキサイティングなカードを提供したかを挙げました。もちろんそれは今となっては明らかですが、このセットが発売される前にはこれらのカードがどのように使われるか多くの疑問がありました。我々が異なる土地のサイクルを入れる可能性もありましたが、それらが基本土地タイプをもっていたのは間違いないでしょう。それらの支援カードを『ラヴニカへの回帰』ではなく基本セットに入れたことで、我々はそのブロックがどのようにプレイされるかをより良く調節できました。この1年は多色呪文に焦点が当てられていました。来年もいくつか多色呪文があるかもしれませんが、我々は来年のスタンダードを異なった雰囲気にしたいと思っており、その方法の1つがその種となるカードのいくつかを1年だけ存在させることです。

 同じように、『ミラディンの傷跡』期のスタンダードは『基本セット2011』の《鋼の監視者》や、《羽ばたき飛行機械》、《脆い彫像》のようなカードで種を蒔いて、アーティファクトデッキが、ミラディンの傷跡・ブロックだけから全てのパーツを得て旧ミラディン・ブロックの親和のレベルに達するような「ブロックの怪物」になる心配をせずに、存在するための手段を持つようにしました。我々が『基本セット2012』に取り掛かる頃には、我々はアーティファクトデッキをどうするかについてのかなり良い扱い方を得ており、それがまだ存在するために《鋼の監視者》を必要としている場合、我々はそれを収録するか、それに似たような支援の役目を持つ他のカード選んで与えるかすることができました。しかし我々はそれらのカードを徐々に取り除き、それでも《鍛えられた鋼》デッキは依然として4人のプレイヤーを2011年の世界選手権のトップ8に送り出しました。

 テーロス・ブロックの種は何か? それをお伝えるすることはできませんが、よく見ればそれを見つけることができるでしょう。それらはラヴニカのショックランドの基本土地タイプに対するほど大胆ではありませんが、確かに存在します。

塩まき

 マジックのデベロップの循環のため、基本セットは我々が去年予想していたよりも強力だったカードに対しての回答を提供するのに最適な場所です。しばしば我々はまだ現実世界には出ていないカードについて、既に印刷に回された後になって少し強すぎたのではないかと心配することがあります。そんな場合、我々は、前年のブロックの戦略の動きを全て防ぐほどではないけれども、それらの戦略にいくらか圧力を加えるのに十分な程度に強力な回答を基本セットに入れ、そして次の年のブロックがスタンダードに影響を及ぼす最良の機会を与えます。

 『基本セット2014』ではこれは《鬼斬の聖騎士》や《精神灼き》のような色対策クリーチャーのサイクルで最も良く表されています。多分これらのカードは実際にメタゲームが傾かない限りメインデッキには入らないでしょうが、多色戦略に対してサイドボードとしてよい働きをします。《鬼斬の聖騎士》は赤黒のデッキに対して最適なのは明らかで、赤か黒のクリーチャーにぶつかる可能性が単純に高くなる、多色カードであふれている環境でも輝くでしょう。同じように、《燃え立つ大地》は基本でない土地ばかりのデッキを罰します。これらのカードや他のいくつかは、あなたが今のスタンダードでよく見かける、3色で基本土地の入っていないデッキに対する圧力としてデザインされました。これらのデッキの働きを全て防ぎはしませんが、うまくいけばそれらのデッキが来年のスタンダードを支配することを防いでくれます。

 しかし、この全体的な戦略にはいくつかリスクがあり、我々は過去の過ちからそれを心配しています。《スラーグ牙》は、FFLと(その当時は)規模は小さいものの現実世界で猛威を振るっていた《秘密を掘り下げる者》デッキに対抗するために作り出されました。これはその目標を達成しましたが、その犠牲として他のとても多くの戦略に対しても効果的すぎてしまいました。後から考えれば、我々が本当に達成したかった目標のためにはこれのコストを{3}{G}{G}にして4/3トランプルにし、多くのデッキにタッチすることを少し難しくすることで、このフォーマットの5マナクリーチャー全てを締め出さないようにするべきでした。我々は基本セットのカードのあるべき適正な値を見つけることがかなり上手くなったと信じていますが、さらに将来のセットを助けるために実験と反復を通して学ぶことはまだ沢山あります。

収穫の時

 基本セットの最終的な目標は、スタンダードから去るブロックと組み合わせて巧く働き、またローテーションの後そのカードが機能しないほど極度に依存しないようにすることです。しばしば、これはカードにローテーションの前後で違う役割をさせることを意味します。我々が見つけた、スタンダードに丸1年あるには強すぎるかもしれない相互作用も、3ヶ月の間なら楽しく興味深いものです。これはまた我々に、前の年には全く結果が出なかったかもしれないデッキのアーキタイプを使えるようにし、トーナメント・シーンで最後に一花咲かせるために必要な力を与えてくれます。例えば《怨恨》は感染デッキにスタンダードで3ヶ月の間輝く時間を与えましたが、それからしばらくの間、呪禁バントが人気を得た最近になるまで姿を消していました。我々は《怨恨》を感染を支援するために『ミラディンの傷跡』に入れようと元々は計画していましたが、それが強すぎる(そしてその結果リスクが大きすぎる)ことが分かり、2年間収録を待つことを選びました。

 『基本セット2014』では《ザスリッドの屍術師》は《教区の勇者》と友達になるか、《アヴァブルックの町長》を使った人間寄りのジャンドデッキに組み込まれます。『テーロス』には《ザスリッドの屍術師》と一緒に機能する人間が多くいるかもしれませんが、彼の今の最強のシナジーはイニストラード・ブロックの人間部族のものです。同じように、《テューンの大天使》は単体でも強力なクリーチャーですが、3ヶ月間は《熾天使の聖域》によってさらに強化されます。《未練ある魂》に加えて《イニストラードの君主、ソリン》と彼の絆魂を持った吸血鬼と組み合わせて、かなり強力な白黒トークンデッキが数ヶ月間使えます。コンボ寄りのデッキの分野では、《獣の統率者、ガラク》は3ヶ月の間3種類の1マナの加速クリーチャー、《東屋のエルフ》、《アヴァシンの巡礼者》、《エルフの神秘家》、さらに3マナの《エルフの大ドルイド》と重なっており、その他素早く戦場に出せる方法によって、手札に再びクリーチャーを集めます。ガラクの[-3]能力は、デッキがさらに多くの力を得て4ターン目にとんでもない量のダメージを与えることを可能にするために《孔蹄のビヒモス》を出す手段として理想的です。《東屋のエルフ》、《アヴァシンの巡礼者》、そして《エルフの大ドルイド》は全て3ヶ月でローテーションし、9月にはガラクを支援する別のマナ加速クリーチャーが現れますが、彼をプレイする方法は少しだけ異なるでしょう。

 『基本セット2014』でスタンダードにすぐに影響をもたらすのは何でしょうか? 《漁る軟泥》はリアニメイトの対象を食べたり、アグロデッキと対戦するプレイヤーのライフを取り戻したりしてスタンダードに居場所を見つけるでしょうか? 《若き紅蓮術士》はチャンドラの期待に応えるでしょうか? そしてチャンドラ自身はどうでしょうか? 私はどうなるかについて予想していますが、次の数週間でそれのプレイ方法を見つけ出すことを楽しみにしています。

 ではまた来週お会いしましょう。

 サムより

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