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デカブツの居場所はどこにある

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デカブツの居場所はどこにある

Sam Stoddard / Tr.Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2013年11月15日


 もしあなたが10年以上マジックをプレイしているならば、かつては戦場の内容のほとんどが土地だったものから、クリーチャーが多く、さらには大きくなっていることにお気付きなのではないかと思います。その原因のいくらかは攻撃とブロックを推奨するプレインズウォーカーによるもので、またいくらかは単にカードのパワーレベルが以前よりも上がっていることによります。この動きが起きたのは、マジックをよりメジャーなブランドにして、より多くプレイされるようにするフレーバーを推し進めるためです。

 話をもっと進めたいところですが、まず最初に少し巻き戻したいと思います。私にとっての最初のスターター・デッキである『リバイスド』を開けたとき、私は2枚のレアと対面しました――《シヴ山のドラゴン》と《極楽鳥》です。1つは私がそれを唱えたゲームのほとんどに勝てるほどの超強力な飛行クリーチャーで、もう片方はドラゴンでした。もちろん、その当時の私はそうだとは知りませんでした。私は純真にもその強そうなドラゴンが本当に唱えたいものだと考えており、「鳥」は彼を実際に唱えるための手段の1つに過ぎませんでした。ミドル・スクールの友人とプレイして、《シヴ山のドラゴン》がいかに弱いかを理解するのには長い時間がかかりました。これは《恐怖》や《剣を鍬に》で殺され、打ち消し呪文に打ち消され、そしてさらに酷いときには《支配魔法》されたのです。

 雑誌のデッキリストを見てから、スパイク寄りなプレイヤーたちが《サバンナ・ライオン》、《白騎士》、《アイケイシアの投槍兵》、そして《ハルマゲドン》を唱えるようになるのにさほど時間はかかりませんでした。それを受けて、私のたまり場のマジックのプレイヤーのグループは以下のような新しいルールを考案しました。「1ターンに2枚土地をプレイでき、2枚カードをドローする」。「《対抗呪文》は実際に呪文を打ち消さず対象をオーナーの手札に戻す」。「デッキの中の各除去呪文は1枚しかプレイできない」。

 さて、何故我々は《シヴ山のドラゴン》や《大地の怒り》のようなカードに有利なルール変更をわざわざ行ったのでしょうか? それは、我々はそれらのカードを良くしたかったからです。我々はカードショップに行ったときに各色の「Mox」や《Black Lotus》、《Ancestral Recall》を見つけるのはとても難しいことを分かっていましたが、それを気にしませんでした。我々はただ《大喰らいのワーム》のセットでプレイを膨らませる必要があっただけでした。そして多分ラッキーなことに、その時は《大喰らいの巨人》やエルダー・ドラゴンさえも使える時期でした。我々はドラゴンを召喚し味方にして戦わせることのできる強大な魔法使いのゲームをプレイしているのだから、ドラゴンを召喚したかったのです!

 時間を現在に戻しましょう。我々は今、天使やドラゴンそしてハイドラをトップレベルのスタンダードのトーナメントで見かける世界に住んでいます。これは偶然ではなく、この地点に到達するためのデザインとデベロップ両方の長期目標でした。デベロップとはただカードのバランスをとるだけではありません。それはできる限り多くのプレイヤーのためにマジックのプレイ経験を改良することであり、我々にとってよりよい意味がある事柄は、「実際にプレイできる最高品質のクリーチャー」と「象徴的クリーチャー・タイプ」を統合することでした。我々はドラゴンや天使を、それぞれコンボ・デッキのパーツや《霊体の地滑り》デッキの1クリーチャー以上のものにしたいと考えました。一目見てクールなそれらのクリーチャーが、実際にも強くあることを求めていたのです。

怪物を戦場へと誘う

 『基本セット2010』はマジックの性質のルネッサンスでした。このセットの目標の1つは、『アルファ版』を振り返ってその教訓から将来のセットの形をより良いものにすることでした。我々がセットから失っていた確かな事柄の1つは、トップダウンで得るファンタジーの題材による単純な芳醇さでした。我々は「『ミラディン』にはどんなゴブリンがいるか」「ラースのマーフォークはどのようなものか」に長い年月を費やしてきましたが、「クールな天使とは?」や「物語の背景から独立したクールなクリーチャーとは?」については振り返りませんでした。《蟻の女王》や《悪斬の天使》、《警備隊長》、《変幻のハイドラ》、《エルフの大ドルイド》、そして《ゴブリンの酋長》のようなカードで、初期の基本セットの時代に我々の多くを惹きつけた、シンプルながらクールなカードを作ろうと試みています。

 しかしながら、我々はそれらのカードがただ存在するだけでなく、トーナメントでプレイするところが見られるようにしたかったのです。トレード用のバインダーの中でクールであることは、ゲームのプレイでクールであることに比べれば重要ではありません。我々は当時、《悪斬の天使》のようないくつかのカードが、スタンダードでプレイヤーに5マナのクリーチャーを使わせることを納得させるために必要だと分かっていたので、それらをかなり激しく推しました。ネタばれ注意:それは成功しました。もちろん、我々は確かに時々やりすぎました。5色のタイタンは6マナクリーチャーをスタンダードでプレイさせるようにする、内部で論争になっていた試みでした。多くの人は、それは不可能であり、どれだけ強くとも戦場に出ることはない、と信じていました。

 時間はそれを間違いであると証明しましたが、その考えに良いところがなかったという訳ではありません。プレイヤーがスタンダードで当たり前に4マナより大きいクリーチャーを唱えるようになってから長い時間が経っていました。もちろん、タイタンは必要以上に強すぎたのですが。大抵はタイタンを唱えることはゲームの勝利への中間地点で、攻撃することでそれを確かなものにしました。我々はクリーチャー、特に大きなクリーチャー、除去の中にあっても合理的な脅威になりえるものを求めましたが、フォーマットの柱を求めていたわけではないのです。『基本セット2011』発売後の一般的な見解は「スタンダードは広く開け放たれている。どのタイタンでも好きなのをプレイしよう」で、それはかけ離れたものでした。

 同じように、《スラーグ牙》は我々が求めた対策カードの仕事に近いことをしました――競おうとする他のあらゆる軸のクリーチャーをスタンダードの外へ押しやってしまいました。個人的には、《死橋の大巨虫》、《スラーグ牙》、そして《ウルフィーの銀心》がどのようなメタゲームでも最良の座を争っていたならスタンダードはより楽しくなったと思いますが、1枚のカードが強すぎる場合それは起こりません。ここに我々が心に刻んだもう1つの教訓があります。我々が注意しなければならない事柄です。それは、我々がこれらの怪物を強力にしたい一方で、その多様性を狙ってもそれらが適正なレベルでないと作用しないということです。

野獣のバランスを取る

 大きなクリーチャーを使えるように推し進めることは、もっと攻撃させることでゲームを簡単にすることではありません。我々はメタゲームの上位の範囲で見ることができる範囲を広げています。我々はあらゆる種類の異なるプレイ(我々はそれらをアグロ、ミッドレンジ、コンボ/ランプ、コントロール、撹乱的アグロに分類しています)が生存できるように多大な努力をしています。異なるプレイ・スタイルが同じパワー・レベルになるようにすることの目的は、人々が楽しみを見つけることを可能にし、そしてそれが罠ではないことです。

 これは大型クリーチャー入りのランプ・デッキがこの環境のバランスの再調整から逃れて無傷だった、と言うことではありません。かつては《不屈の自然》、《木霊の手の内》、そして《桜族の長老》(それどころか「印鑑」も)が同時に存在したフォーマットがありましたが、大きな問題はありませんでした。現在と何が違うのでしょう? ええ、我々はより良いマナの使い道を与えているだけです。《春の鼓動》デッキは6マナ以上出すには最高ですが、6マナクリーチャーを出すところが頂点であとは急速な下り坂です。そして現実問題としてそれらの6マナクリーチャーの多くが強力ではありませんでした。現在の6?7マナクリーチャーのパワーと除去耐性は過去のものよりも高く、それらに対処する選択肢は少し狭くなっており、それはマナ加速してファッティを出すデッキの利点が自然と高くなっていることを意味しています。我々はプレイヤーたちにとって、大きなクリーチャーを唱えることがトーナメントで勝つための必須条件ではなく、トーナメントで勝つための戦略の1つとして可能であるようにしたいと考えています。

 『テーロス』のデベロップの時に、我々は《森の女人像》に加えて《不屈の自然》を入れ、3ターン目に《高木の巨人》や《嵐の息吹のドラゴン》、《世界を喰らう者、ポルクラノス》も頻繁に出せるように試しましたが、それはやりすぎでした。それどころかバント・コントロールが規則的に4ターン目の《太陽の勇者、エルズペス》を出せてしまえたのです。確かにこれらに対処する方法はありますが、それはアグロをプレイすることがかなりの悪手であるということで、コントロールでさえ4ターン目に《至高の評決》がなければ簡単にランプ・デッキに負けてしまうかもしれません。我々はこの状況を解決するためにこれらのクリーチャーや《太陽の勇者、エルズペス》を弱体化させることもできましたが、マナ加速をして出す6マナの何かは常に存在するでしょう。その代わりに、我々はマナ加速の選択肢を抑制する決定を下しました。

 《ニクスの祭殿、ニクソス》はとりわけプロツアー「テーロス」で三原槙仁が使用したコロッサル・グルールのようなランプ・デッキの戦略のパーツとして最近かなり使われています。これはいくつかのデッキに恐ろしい量のマナ加速を提供しますが、その方法は相手の干渉の余地のあるものです。《ニクスの祭殿、ニクソス》でマナ加速をしたいプレイヤーは戦場の展開に全力を傾けなければならず、彼らが呪文を唱えるために極度にこれに依存している場合は全体除去に対して無防備です。3ターン目に爆発的な展開が可能ですがそれは稀なことで、より頻繁に他の戦略に反撃されます。

未来の怪物たち

 全体的には、デベロップは最近のスタンダードの進歩にとても満足しています。『ラヴニカへの回帰』の年は全体的にとても多様性があり、「グッドスタッフ」が少し多すぎたとは言え我々は満足でした。我々にとって最も良かった知らせは、最良のデッキが何であるかの意見が一致するのは1週か2週で、それより長いとしても、稀にしか起きなかったことでした。これは我々が推進するために激しく取り組んだメタゲームの形で、そして我々はそれが機能したのを見て大変嬉しく思っています。

 『テーロス』のスタンダードは、少なくとも今のところ、個々のカードよりもシナジーのあるデッキのほうが多く見えており、それは良いことです。さらに、このセットの鍵となる構成要素――英雄、神々、そして怪物――はスタンダードに影響を与えています。我々はまだ『テーロス』ブロックのかなり序盤にいますが、私はこのブロックの残りのセットで用意しているものが楽しみです。

 ではまた来週お会いしましょう。

 サムより

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