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統率者戦のデベロップ
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統率者戦のデベロップ
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2013年11月1日
少し前の記事で、私は『統率者(2013年版)』とエターナル・フォーマットのデベロップについてのお話をしましたが、『統率者(2013年版)』はそれだけに向けてデベロップされているのではありません。何といっても、我々はそれらを統率者戦向けにデベロップしています。ほとんどのデザイン・チームのメンバーはこのフォーマットにより密接に関わっているプレイヤーかもしれませんが、デベロップもこれの状況を把握しようと務めていますし、もちろん他の製品に使われている原則をこのフォーマットに適用しようとしています。
《堕ちし番人》 アート:Brad Rigney |
『統率者(2013年版)』のような製品は、我々がスタンダード以外のフォーマットに向けた製品を作る数少ない場所です。このセットのカードにエターナル・フォーマットで役割を与えることは重要ですが、これはまた1対1の競技マジックの性質が原因となって使われていないマジックのデザイン空間の巨大な部分を使うことを可能にします。また我々はいくつかのカードについてリミテッドでの影響を心配せずに正しいバランスをを見つけることができます。色々な意味でこれは我々が自由にでき、新しいことに挑戦できるセットです。
統率領域
初期のプレイテストの一部で、我々は「統率領域にあること」を用いる統率者を、その領域が使えるか、そしてどれぐらいの余地があるかを確かめるために多く考えました。最終的に我々はそれをかなり切り詰めることになりましたが、私はそれを将来の統率者セットで必ず使うだろうと考えました。最初にも言いましたが、このようなセットの目的の1つは普通のエキスパンションには入れないようなカードのデザイン空間を発掘して試すことであり、そして普通のカードは基本的に(紋章以外は)統率領域に干渉しないので、そこが記念すべき最初の場所になるのは自然な流れでした。
新しい事柄に挑戦することはデベロップにとって非常に大事なことですが、それは想像されるものとは大きく異なります。これのデザイン・ファイルは、使われていないデザイン空間を見つけるいくつかの強力な試みを、統率者が統率領域でできることのために実行しました。その中にはご存知の(《老いざる苦行者、アローロ》を除いた)費やしたマナの数を参照する誘発型能力を持ったカードや、エンチャントのような能力を戦場か統率領域のどちらかにあるときに発揮するカードもありました。
何回かのプレイテストの後、我々はこれらのデザインのうちいくつかを削減しましたが、今後の取り組みを改善するために身に付けたものを使用しました。我々がこれらのカードで発見したことは、これらと対戦すると非常にイライラするということでした。《老いざる苦行者、アローロ》の、統率領域にあるときに2点のライフを得る能力が強力すぎるだなんて想像もつかないでしょうが、その能力は多くのテストプレイヤーに辛酸を舐めさせました。この効果はプレイテストで各プレイヤーの統率者が異なった効果(《踏査》など)を加えていたところで強化され、そしてゲームを我々が統率者戦だと考えていたものから全くの別物にしてしまい、例えるなら普通の統率者戦をチェスのゲームとすると、この累積する効果はゲームを早指しチェスのようなものに変化させました。チェス・ボクシングほど別物というわけではありませんが、我々が撤回する根拠としては十分なものでした。
このアイデアはかなり良さそうに見えました。全体的な効果を持った統率者は唱えなおすことができ、したがって少し弱いものの永続的な効果を作ることは面白く見えました。ただ、どんなに小さな効果であってもそれらに対処する方法がないことはゲームにとって良くありませんでした。問題の一部は、それぞれのプレイヤーの考える「小さな効果」にかなりのばらつきがあり、他のデッキよりも信じられないぐらい有効に使うデッキがあることでした。したがって(例えば)全員が継続的な《踏査》の効果を使えても、他のプレイヤーよりも多くの土地をプレイし、多くのカードをドローできるプレイヤーが利益を得ます。誰かが遅れを取ったとき、そのプレイヤーは劇的なやり方としか呼べない方法でそれを行いました。
私は統率領域に我々が通常のマジックでは使わない、新しく興味深い効果を見つける多くの余地が残っていると考えましたが、もちろん我々はこの空間の将来に注意し、このゲームを興味深いものにし続けるために十分なやり取りがあるようにしています。
拡大される効果
多人数戦で使ったときに拡大される効果は、我々が通常のブースターを発売するときにより意識するようになっていることですが、『統率者(2013年版)』の発売において入念にテストプレイしていると自信を持っています。大昔はカードの「対象の対戦相手」、「対象のプレイヤー」、「各対戦相手」にほとんど理由はありませんでしたが、今ではそのセットのリード・デベロッパーとリード・エディターの両方が合意の上で意識的に決定する傾向にあります。
対戦相手だけを対象にできることの大きなアドバンテージは、「Magic Online」でのクリックが簡単になることです。大したことではないように見えますが、もし実際に古いセットをドラフトした場合、あなたは自分に有益な効果を対戦相手に使うか尋ねてくるカードの多さに驚くことでしょう。例えば、移植はどのクリーチャーにもカウンターを置くことができます。開かれたデザイン空間は《細胞質の操作者》を可能にしましたが、それは対戦相手のプレイしたクリーチャーに1ゲームあたり「No」を6回以上クリックすることを要求します。私の考えでは、このメカニズムのために与えられたデザイン空間はオンラインでのプレイの成功には見合っていません。一方で、《吸魂》が各対戦相手にダメージを与えるという事実は、初登場からすぐにこのカードを多人数戦での人気カードにしました。これらのカードの範囲の大小を考え出すのは、セットのデベロップと編集の段階で発生する多くの仕事のうちの1つです。
統率者戦においてカードをより強力にする最も手っ取り早い2つの方法は、コストと効果を大きくすることと、コストと効果はそのままで範囲を複数の対戦相手に影響するようにすることです。『テーロス』では、《アスフォデルの灰色商人》は当初どのプレイヤーも対象に取ることができましたが、結局は統率者戦のプレイヤーからの意見に基づいて全ての対戦相手に効果を及ぼすようになりました。どれぐらいの能力を拡大できるかには確かに限度があります(全員に効果のある《思考の粉砕》を期待しないでください)が、それは我々が実際にカードが1対1から多人数戦に変わったときに急激に強くすることができる領分の1つです。
このセットでは《破砕団の兄弟》のようなカードがそうです。このカードは1対1の通常のマジックでも強力かもしれませんが、真価を発揮するのは統率者戦のような「各対戦相手」の一文が、1対1交換から1対2、3、4以上へと変わるフォーマットです。また統率者戦は《悪意の力》のようなカードで各アップキープに利益を得られるフォーマットでもあります。これらのアドバンテージは個人戦では小さなものですが、より人数の多いゲームではより面白いものになります。
政治的陰謀
言うまでもないことですが、統率者戦において政治的駆け引きは不可欠です。これは多人数戦の風景の中で私が最も気に入っているものです。私は通常のデュエルよりも多人数戦を見るほうがより面白いことを知りました。それは明らかにカジュアルな観戦者にとって良いことです。このゲームの大部分は政治的駆け引きなので、個々のカードの挙動を気にする必要がありません。誰が攻撃されるかついての議論だけでなく約束をしたり破ったりすることや、また勝ちそうなプレイヤーに対する他の皆の団結した明確な政治的な動きは見ていてとても楽しいものです。私はあなたにそのカードの動きを知る必要がないとまでは言いませんが、その複雑さは知らなくてもかまいません。
《継承順位》 アート: Magali Villeneuve |
最初の『マジック:ザ・ギャザリング 統率者』で、我々は「誓約」サイクルのようなクリーチャーを強化するが自分に攻撃できないオーラだけでなく、《フォモーリのルーハン》のような、4マナ7/7という信じられないマナ効率を持っているものの無作為に攻撃してみんなの脅威になるカードを作り出しました。加えて、我々はこれらのカードを通常のブースターに入れて発売しないでしょうが、これらはこのフォーマットの長所を演出し、そしてそれはマジックが過去に挑んでこなかった新しく興味深いデザインの分野でもあります。
誘引は1対1のマジックでは実にシンプルな能力です。これの対処は簡単で、唱えられた相手がその誘いに乗ることはほとんどありません。我々は基本的にどのような状況でも対処可能されるカードは好みませんが、多人数戦となると話は全く変わってきます。この呪文が真価を発揮するのは多人数戦で、この誘いに乗らなければあなただけが遅れを取ります。そして誘いに乗ればこの呪文を唱えたプレイヤーがより大きな効果を得たことで狙われることにつながります。どんな結果になるか分からないので、私のようなスパイクにとってこの呪文を唱えるのは難しいことですが、またそれがこれの楽しいところです。
加えて、統率者戦は《幻術師の計略》のような通常のセットでは意味がないような無茶苦茶な効果を生み出すカードを印刷することを可能にしました。私はこれに近い働きをするカードを普通のセットで作る方法があると信じていますが、その能力を全て活かすことができないという事実は理想的ではありません。これらの統率者戦向けのデザインを救うことは、個人戦と多人数戦の両方で同じように機能しなければならないという我々の負担を取り除き、統率者戦の素晴らしさを最大限にしてくれます。
未来を統率する
我々は、2011年に最初の『マジック:ザ・ギャザリング 統率者』が生み出されたときには不確かなものだった、こうした統率者向けのデザインに対する需要を確信しています。それは、これらのカードを『統率者』のようなセットか、もしくは通常のセットで生きるべきかを分けてくれるので良いことだと思います。もちろん、我々は通常のセットで統率者戦に楽しくて関連のあるカードを作り続けます(『テーロス』の神サイクルは統率者戦とスタンダードの両方に影響を与えるカードの素晴らしい例です)が、最も統率者向けのカードは専用のセットのために取っておかれます。統率者戦や他の多人数戦は数年前と比べて明らかに劇的に我々の意識の中にあるようになり、それは革新的でゲームの新鮮さを保つアイデアを我々に与え続けてくれます。
ではまた来週お会いしましょう。
サムより (@samstod)
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