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リミテッドのプレイテスト

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リミテッドのプレイテスト

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEURA "Pao" Kaoru

2013年7月26日


 セットがデザインからデベロップの手に渡るとき、大まかな形は出来ているものの、ゲームとしてうまくプレイできる状態とは程遠いことがあります。それはつまり私の仕事があるという意味なので、それでいいのです。それぞれのデザイン・チームにはデベロップのメンバーがおり、カードのコストやリミテッドのバランスがある程度取れるように助けていますが、デザイン・チームの真の目的はバランス取りではなく新しく楽しいカードをデザインすることです。それらのほとんどはリミテッドのプレイテストを通して行われますが、彼らの感性は当然デベロップのそれとは多少異なり、従って常にデザインが手渡したものとデベロップがそのセットにとって正しいと信じるものの間にはいくつかのずれがあるでしょう。しばしば、デザインから渡されるセットはそのセットの中で新しくエキサイティングなものばかりです。デベロップの役目は最も良く作用するものを強調し、人々がプレイするのに慣れている基本的なバージョンのマジックにそれを組み込むことです。

 そのセットのバランスを取るのがデベロップの仕事ですが、同時にそのセットを可能な限り楽しくすることにも焦点を当てています。しかし我々はまたより広い観点から、コモンの語数と複雑さ、色のバランス、そしてそのセットが50回以上プレイするのに十分な深さを持つようにすることに気を使わなければなりません。我々はこれらの全てを達成するためには相対的に限られた量の時間しか持っていないので、従って我々はどのようにするか、何をするか、そしてプレイテストを可能な限り有益にするためにいくつかの過程を思いつきました。

全ての始まりの地点

 デベロップがリミテッドのプレイテストを行う前に、そのチームがセットの簡易評価に時間を費やしておくこと、そしていくつかの一番基本的なバランス取りを完了させ、(少なくとも初回通過の時点で)全ての色が同じパワーレベルになるよう試みておくことは重要です。簡易評価とは我々が用いるリミテッド用にそのセットのカードをA+、A、B、Cの異なるカードパワーの分類に分けるシステムのことです。

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 名前が示しているように、これはカードを互いに適応するのに100%正確ではなく、作業を手早く終わらせる方法として意図されています。これは我々がセットの強さがどのあたりになるのかを全体的に理解するのにはちょうど十分です。これらの数字にはいくらか構築フォーマットでどれぐらい強いかも反映されますが、正確なものからは非常にかけ離れています。例えば《強迫》のようなカードはリミテッドでは全く強力ではありませんが、明らかに構築級のカードです。一方、《大型化》は『基本セット2014』リミテッドでの緑のカードの中で最強の1枚ですが、いかなる現実の構築フォーマットでも見ることは多分ないでしょう。簡易評価の目的はそのセットの完璧なバランス取りではありませんが(それはどのカードが現在の環境で予想よりも良かったかの学習と時間に付随するでしょう)、あるコモンが強すぎたり、ある色が他よりもはるかに強いことだけを確かめるリミテッドのプレイテストの数を減らしてくれます。

 本格的なリミテッドのテストをする前に我々はもう1つすることがあり、各色のトップコモンを一覧にして、色だけでなくカードの動きの間でも適正に配分されるようにします。我々は赤と黒の最良のコモンは除去であるだろうと一般的に予想していますが、もしそのセットの優秀なコモンが全て除去だったならば我々は多分問題を抱えてしまうでしょう。同じように、もし青と白の最良のコモンの点数で見たコストが同じなら、そのフォーマットの青白デッキはマナカーブに深刻な問題を抱える可能性があり、それが起こらないように数枚のカードを少し変更するのは良いことでしょう。

フォーマットの検討材料

 我々が行うリミテッドのプレイテストの大部分はシールドです。プレリリース後に行われるリミテッドの大部分はドラフトなので、これは意外に思われるかもしれませんが、シールドはドラフトに比べていくつかの先天的なアドバンテージがあり、すなわちそれは自動的に修正されるフォーマットではないということです。ドラフトのデータ、とりわけ初期のプレイテストのものに頼りすぎることの問題は、もし色のバランスがかなり悪くても、誰もが40枚のデッキを組まなければならないという事実によって簡単に隠れてしまい、そして人々は単に十分取られていない色に流れる傾向があります。ドラフトが終わってから人々がプレイしているのを見て色のバランスが取れていると判断するのは簡単ですが、実際には誰もが黒に行こうとした場合ほとんど失敗し、そして2人のプレイヤーが1パック目の9手目に初めて青のコモンをピックして嫌々青に行く羽目になりました。

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 シールドデッキにはこの問題は起こりません。もし赤と緑が飛びぬけて最強の色であるなら、ほとんど誰もがシールドのプレイテストで緑と赤をプレイすることになるでしょう。それはいくつかのカードを修正するべき時だという実に分かりやすい兆しです。同じように、もしある色が弱い(少なくとも魅力的ではない)場合、人々はシールドでその色を単純に無視するでしょう。我々が得たシールドデッキは色のバランスがかなり良く取れているので、1つの色が避けられていたのを見分けたり、将来のプレイテストに向けてどうやって解決するかを考え出すのはかなり簡単です。

 しかしながら、我々がドラフトをしないというわけではありません。ドラフトも多くやっています。ただしそれは過程の後のほうに来る傾向があり、そのときにはほとんどの主要なバランス問題は解決された後です。ドラフトのプレイテストはどんなリミテッドのアーキタイプがプレイされるのかを強調するのにとても良く、そしてもちろんそのリミテッドのフォーマットがどれぐらい深いかをシミュレーションします。我々がMagic Onlineで発見した事柄の1つは、とてつもない数の人々が優れたリミテッド環境で20回以上ドラフトしているということです。我々は、作り上げるそのリミテッド環境をその回数のドラフトに耐えうるものにしたいと思っています。実際のドラフト経験が楽しく意味深い選択を含むことは、ゲームそのものが楽しく意味深い方法でプレイされるようにするのと同じぐらい重要です。これらの要素のうちどちらかを失うと、そのリミテッド環境はしばらくの間楽しくても、すぐに飽きてしまうかも知れません。

 平均的なプロツアーのプレイヤーが、我々がドラフトのためのデベロップ全体で行ったよりも多くのドラフトをプロツアーの週までにしたとしても(そして彼らのドラフトは最終的なカードプールで行われ、我々はそれでほとんどドラフトしていません)、我々はチームとして、プレイヤーが時間と共に新たな事柄を発見するのに十分な深さがある環境を事柄を積み上げることを自負しています。

数字を記録する

 全員がシールドデッキを組み終えるなりドラフトをし終えるなりしたなら、プレイする前に全体として何が起きているかをより良く把握しするため、我々は通常ホワイトボードに数字を記録します。これの目的はセットのリーダーにシールドやドラフトのプレイテストを自然に整える方法の名案を提供することです。

 下記にそれらの数字がどんなものかサンプルを作ってみました。

? アーティファクト 土地 レア
SPS 8 10/2 3/2 2 2
EVL 9 13 1 1 2
TML 11/1 11/1 1
DH 10 12 1 2
BM 4 3 2/1 9/1 1 4 2
ID 14 6 3 1 1
BH 9 14 3
MM 21 2 2
合計 31 24/2 36/3 42/1 34/2 8 8 15

 探しているものは、ある程度均一な色の配分(と金色を表すスラッシュ)、異なる色の組み合わせをプレイする人々、そしてプレイされている適度な数のレアです。

 最後の点に関して言うと、これが表しているのはリミテッドを何度プレイしても楽しくしている事柄の1つとして時々現れる強力なレアの存在があるということです。シールドのプレイテストで、我々はあなたの引いたレアがあなたのデッキを組み立てる主な原動力(ではあるがそれだけではない)の1つだと想定しています。もしレアがほとんど毎回プレイされているのを見かけるなら、それは多分それらのレアがリミテッドで強すぎるというサインですが、もしレアをほとんど見かけないなら、それらが弱すぎるというサインでしょう。ドラフトでは、我々はレアがそれらの意図された目標の1つである、プレイヤーが色を決定する助けになるようにしています。これらの数字が我々に伝える情報は完璧ではありませんが、我々に適度な開始地点を与えてくれます。

 上記のドラフトでは、青と白が少し弱く見えます。赤は1人の人物が赤単色をプレイしていることから来ているかもしれないので、我々はそれをプレイする恩恵が高すぎないようにするでしょう。さらに、2人が赤白を、他の2人が黒緑をプレイしていました。データの1つの点ではあらゆる決定を下すのには十分ではないかもしれませんが、我々がさらにドラフトをしてそれらの色の組み合わせが他のものよりも飛び抜けているのを見た場合、我々はどんなシナジーがその2色の間にあるかを見て、それらが強すぎるのか、もしくは他の色の組み合わせをする動機付けが十分でないのかを確かめます。

意見を残す

 問題の最後の部分は開発部内のwikiです。それぞれの会議の後に、誰かがこのページへのリンクを残し、開発部の人々はそのセットで経験した良かったことも悪かったことも意見を残すよう推奨されています。この内容は様々で、そのセットがシールドデッキを作るのが難しすぎると感じたかどうか、いくつかのカードをプレイして楽しめたかどうか、テーマが実際に成功せず初手のピックに騙されたと感じたかどうかなどなどです。

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 セットがその過程を通過していくと共に、我々はデベロップ・チームのメンバーだけでなく社内の色々な人々とドラフトをしようと試みます。デベロッパーだけが楽しめるドラフトのフォーマットをデベロップするのは我々にとって簡単ですが、我々は自らが典型的な消費者でないことを知っているので、様々な見解を得るのは大事なことです。単純に経験の少ない人々やセットに慣れていない人々がどんな反応を示すかを知ることは重要であり、それは実際にそのセットが印刷されてブースターパックが開封されるときまでに可能な限り広い層にとって魅力的であるようにし、そのリミテッド環境が可能な限り多くの人が楽しめるようにします。

 デベロップ・チームにとって最も役に立つ意見は実用的な意見です。それは人が酷い目にあった明確な理由や単に好みではない相互作用、単に一般的な「楽しかった」や「楽しめなかった」以上のものです。デザインからデベロップがセットを得る時間には限りがあり、我々に可能な修正を与える意見は、セットの変化の方法を決定する点ではもっと大きくなります。

変化を作る

 いったんカードが作られて意見が反映されたら、そのセットのデベロップ・チームが集まって変化を作るときです。最初は、これらは異常な速さで行われることがあります。10から20枚のカードがプレイテストごとに変更されることがあり、セットのプレイ方法が劇的に変化します。

 デベロップの義務は単にセットのバランス取りだけではなく、デザインの定めた目標を満たすことです。それらのいくつかは単にマナ・コストやカードの中の数字を動かすことで達成できますが、他の部分はそのセットを大きく作り直すことを要求してきます。それは単に過程の働き方の違いです。セットは、ラヴニカのギルドのシステムのプレイやエルドラージを支援できるリミテッド環境の作成のような、デザインが推している高尚な考えに個々のカードよりも大いに関係があります。デベロップの初めと終わりの間に大部分のカードが少なくとも僅かには変更が加えられ、そして多くは構築とリミテッドの両方でそのセットに欠けている隙間を埋めるためにデベロップが作ったデザインに差し替えられます。デベロッパーの作ったカードは全てプロテクションかスタンダードを狙いとした奇妙なルールテキストを持っているという認識があり、あなたは《気紛れな薬術師》のようなカードがデベロッパーの作ったカードだとは思わないかもしれませんが、これはこの過程で作られたものです。

 我々はフューチャー・フューチャー・リーグがどんな仕事をしているかについてはたくさんお話してきましたが、我々がどのようにリミテッドのプレイテストをしているかについては少ししかお話していませんでした。もちろん、今回お話した全てよりもっと多くのことがセットを作るために費やされますが、あなたが我々が何を行うかについての基本的な概要を楽しんでいただけたらと思います。もしもっと興味がお有りでしたら、もっと詳しく続きをお伝えすることができます。もっと知りたいという方は、私あてにメールを投げてください

 ではまた来週お会いしましょう。

 サムより

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