READING

開発秘話

Latest Developments -デベロップ最先端-

ミラーマッチの対策

読み物

Latest Development

authorpic_samstoddard.jpg

ミラーマッチの対策

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2013年4月19日


 先週の記事で、私が『ドラゴンの迷路』は濃密なセットだと言った時のことを覚えていますか? 私が読んだプレビュー特集の反応は、あなた方のほとんどと意見が一致しているように見えます。我々は大・大・小のブロック構成を以前に一度も経験したことはありませんが、その構成は多くの興味深い可能性のために開始されました。《化膿》や《静寂宣告》のような『ドラゴンの迷路』の多くのカードは、元々は『ラヴニカへの回帰』や『ギルド門侵犯』のファイルにあったけれども収録されなかったものです。いくつかのカードは、初期のセットから多くのプレイテストの後に足りないと感じたものから来ています。今日のプレビュー・カードはその2番目の区分からのものです。

 ミラーマッチは健全なメタゲームの重要な部分です。しばしば、1つのデッキがある期間に頭角を現します。これは2つの事柄を引き起こします――1つは私が先週話したように、他のデッキがそのデッキに対して有利になるように自らの構成を変化させること、そして第2にそのデッキがそのデッキ自体を倒す方法を考え出すことです。この動き自体はそのデッキを勝ち組から叩き落すことがありえますし、もしくは少なくともフォーマットの他のデッキに勝利のためのよりよいチャンスを与えます。

 スタンダードは今現在信じられないほど多種多様ですが、我々は1つのデッキがメタゲームの1/3、ひょっとするともっと多くを占める期間を長く過ごしてきました。これは理想的な状況ではありませんが、我々デベロップが考慮すべき現実です。我々は、競技でのデッキ構築の選択肢の助けを求めるプレイヤーのために、フォーマットにミラーマッチを打破するカードが含まれるようにします。最良のデッキのリストの中身が絶えず変化し続けることは、理想的には、そのデッキが実際に全く動かないよりもより開かれたメタゲームを維持することになります。ミラーマッチで有利になればなるほど、高いレベルでバランスが取れたものになるまでは、環境の他のデッキに対してより不利になるのです。


アート:Tyler Jacobson

 我々はフューチャー・フューチャー・リーグ(以下FFL)で完全なミラーマッチをプレイすることは基本的に現実世界で起こるよりも少なく、なぜかと言うと...んー...我々はカードについて、別デッキの対戦よりも、ミラーマッチを通して学ぶことは少ないからです。デベロップの段階では多くの異なるカードのテストが必要で、そしてそれは少なくとも一人が大抵新しくてまだテストされていない何かをプレイしていることを意味しています。我々はこれがセットのカードがどのようにプレイされるかを見る最良の方法であると発見しました。

 我々が多くプレイしているのは不完全なミラーマッチです。リストがちょっと違う、もしくは似ているが同じ目標を持った異なるデッキです。エスパー・コントロールはトリコ・コントロールに対して何をしますか? 我々の好きな《遥か見》ベースのコントロール・デッキはありますか? それはメタゲームのどこに収まりますか? 我々は、2?3種類の違いがあるコントロールがメタゲームの中に存在することが、一般的に最も良いということを発見しました。例えば、赤白青、または4色か5色のバント・タップアウト・コントロールはコントロール・デッキの中で攻撃的なクリーチャーデッキに対して最も良い立ち位置にあり、《戦導者のらせん》のようなカードはライフ獲得とクリーチャー除去の両方を兼ねています。これらのデッキはしばしば第1ゲームには強力な打ち消し呪文が入っていないので、従ってそれらのデッキはしばしば重い呪文を打とうとするランプやコンボデッキ、そして打ち消し呪文を使うコントロールデッキに負けるでしょう。しかし、それらの打ち消し呪文は攻撃的なデッキに対して最初に外されるので、この種類のデッキは攻撃的なデッキに対して不利な立ち位置にあります。タップアウト・コントロールとカウンターを使うコントロールは、ぱっと見は似たように見えますがメタゲームの中で違った立ち位置を持つでしょう。

 我々の構築テストのほとんどはスタンダードで、それはスタンダードが構築イベントにおいてもっとも一般的なフォーマットだからです。いくらかのテストはブロック構築で行いますが、それは去年の影響力のあるカードに左右されない生のカードパワーのデータを我々にもたらす最良の方法だからです。このテストがもっとも成果を出すのはブロックの3番目のセットがFFLに入ってきたときで、それはローテーション後の段階でスタンダードがどのように見えるかの優れた構想を我々に与えてくれて、そして基本セットや翌年の秋のセットに極度に頼ることなく、我々が注意して第3セットに加えるべきカードが何かを浮き彫りにします。

 我々がいびつな部分がほとんど磨き落とせたと感じたとき、各自がそれぞれ最良だと信じているデッキで試合をします。これは現実の感覚でのイベントではなく、我々はただ記録をとり3本先取のマッチをするだけです。これらは参考になる結果をもたらしてくれる傾向にあります。時には特定のアーキタイプに対するサイドボーディングの選択肢の大穴が見落とされていることを明らかにし、時にはほとんどのプレイヤーが同じデッキを持って来て、そしてそのことはおそらく1?2枚のカードを弱くする必要があることを伝えてくれます。

 ある問題が明るみになったのは、ラヴニカへの回帰・ブロックのコントロールのミラーマッチのテストが込み入っていた時でした。打ち消されない4マナの《神の怒り》(《至高の評決》)、同名カードを無力化してまう《拘留の宝球》、《幽霊議員オブゼダート》のレジェンド・ルールのすり抜け、そして《静穏の天使》をぐるぐる回すことなどが原因で、コントロールのミラーマッチの多くが決着がつかないことを発見しました。あるプレイヤーが大きな《スフィンクスの啓示》を打てて、対戦相手に《ラクドスの復活》を打っても、対戦相手が強力な呪文をトップデッキしてしまうとゲームを終わらせることはできないのです。

 ミラーマッチが一番いい感じのものでなくてもそれはそれで構いませんが、しかしもしあなたのデッキがミラーマッチに勝つためにデッキを変化させる選択肢が実際になく、そしてそのデッキが最終的に最強のデッキになってしまったなら、メタゲームは停滞するかもしれません。『ドラゴンの迷路』はデベロップ中であり、そしてこのクリーチャーのための完璧なスロットがありました。そいつはコントロール・デッキに対して有用で、アグロ・デッキに対してはそれほどでもないクリーチャーにする必要がありました。我々が求めていたのは《至高の評決》を生き残り、そしてレジェンド・ルールや《アゾリウスの魔除け》で死なないような何かでした。過去のミラーマッチ用カードから発想を得て《変異種》を強化することを決定し、結局この形に落ち着きました。

vhlr9buvxs_JP.jpg

 《霊異種》は「ぼくのかんがえたさいきょうのくりーちゃー」みたいですが、冗談で作ったのではありません。

 戦場に出てきた《霊異種》を対処するのは難しいなんてものではないでしょう。打ち消しを除けば、いったん着地したこいつをどうにかできるのはマジックのカードの歴史を見てもほんのわずかです。《真髄の針》はこいつの起動型能力を封じるでしょう。《占有》はこいつを盗むことができます。《もみ消し》ならばこいつが帰ってくるのを防げます。《突然の死》は戦闘ダメージの後かパワーを上げた後ならば目的を達成できます。《永遠からの引き抜き》は追放されたこいつを墓地に叩き込めます。《標本集め》は追放されて戻ってくるこいつのコントロールを奪えるでしょう。

 何が言いたいのかと言うと、このリストは大きなものにはならないということです。

 このクリーチャーの目標は、青のデッキに単体でゲームを終わらせることができる、極めて除去しにくいクリーチャーの選択肢を与えることです。このクリーチャーはコントロール対コントロールの対戦で使うようにデザインされたかもしれない一方で、また《首席議長ゼガーナ》を売りとしたバント・ミッドレンジでも使うことができます。対戦相手がラスゴを打ってきた? 《霊異種》よりもよりよい回答がありますか? こいつはあなたを勝利への道へと戻してくれるでしょう。よりテンポ志向の赤青白のデッキに対してはどうでしょう? 《戦導者のらせん》はそれらのデッキに『ドラゴンの迷路』以前よりもより多くの除去の選択肢を与えますが、ミラーマッチではお互いすぐにサイドアウトしてしまいます。《霊異種》はこの組み合わせでもやはり頼れる存在です。

 《霊異種》は多才ではありますが、結局のところ最重要というわけではありません。単にそのオーナーと同じぐらい頑丈なだけです。あなたが死んでしまったら、一緒にあなたの《霊異種》も死んでしまいます。こいつは攻防において素晴らしい働きをしますが、あなたが本当にダメージを早く与えたいのならばマナがかかります。また《変異種》のように被覆を与えるのではなく《霊異種》の明滅能力は戦闘からこれを取り除くので、攻撃だけを重視するデッキでは信頼性に欠けます。《殺害》はこいつを殺すことは永久にできませんが、1ターンの間《霊異種》がブロックに参加できないように退けさせるでしょう。そして《霊異種》のブロックしてからの明滅能力は巨大なクリーチャーに殺されることを防ぎますが、元からのトランプルや《ゴーア族の暴行者》でトランプルを得た場合あなたへのダメージを軽減できないでしょう。

 《霊異種》はあらゆる状況で最良のクリーチャーというわけではありませんが、我々の内部テストのどれかのように現実世界でもプレイされたなら、《霊異種》はメタゲームにおいて力を発揮するでしょう。これからの数ヶ月間、あなたが《霊異種》を使っても使わなくても、あなたのデッキがこれに対して弱いのなら、対戦相手が脇にどけている15枚のカードからこれを入れてくることに対し、何か策を持っていたほうがいいでしょう。

 今週はここまで、そしてプレビュー特集も終わりです。この月曜日に(訳注:この記事は4/19に掲載されたものです)全カードリストがDailyMTG.comに掲載されます。私はそこで新しく公開されるたくさんの素晴らしいものを楽しんでくれることと、週末の『ドラゴンの迷路』のプレリリースの準備をすることを期待しています。それはもうすぐやってきます!

 来週は『ドラゴンの迷路』のリミテッドについてのお話をする予定で、それが作り出す経験の解説と、できればプレリリースとリミテッド・フォーマットを前進させる洞察をお伝えしたいと思います。

サム

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索