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マジック2013のカード達 特別編
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マジック2013のカード達 特別編
Zac Hill / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2012年8月3日
私は先日、マジックの独立ウェブサイトを運営している、シアトル地域のプロツアー予選の常連、ザイエム・ベッグ/Zaiem Begと話をした。「話をした」というのは「マジック2013のドラフトで彼に叩きのめされた」ということで、そして彼は本当に私に助けとなる意見をくれた。
「あいつみたいにはなりたくないね」と彼は言った。「読書が好きで、部屋の隅に掛かっている船の絵画の話に顔を出すような奴。なぜ船なのか、なぜ絵画なのか、そして何故それが部屋の右ではなく左に掛かっているかについて延々と話し続けるようなやつ。あらゆるものには隠された意味があって、ダ・ヴィンチ・コードみたいな。でも実際は、ただ船の絵が部屋に掛かっているってだけなんだ」
「だが」彼は言った。「俺がM13のリミテッドをプレイするほど、そんな風な気分になる。本当に複雑に組み合わさって見える小さいシナジーがあるが、俺にはお前らがその多くの材料を一緒に前に置いたように見える。そう・・・俺はおかしいのか? あんたらは本当にツイていて、全てが上手くいったってことか? それとも、セットを作った時にこの材料について考えたのか?」
もちろん、真実はその間のどこかにある。何かが君の満足の行く方法で上手くいく時には、常にある程度の運が絡んでくる。そしてマジック2013だけでなく全てのセットが、何千もの人と時間のテストで何百万もの相互作用を得て、従って我々は相当深いところまで行き着いた。しかしマジック2013のリード・デベロッパーとして、私はどのようにこの過程がこの特定のセットに働いたかについてより多くの考えを持っており、そしてその豊かさ、構成、頑強さを伸ばすためにいくつかの微調整を加えたことを話したかったのだ。
《硬化》
オーライ、私はまず最初に《硬化》が今までにデザインされたカードの中で最も優雅ではないことを認めよう。それは変わったテキストを持っており、それは間違いなくとても大きな足かせになっている。我々は特に基本セットで理解しやすさを優先することがいかに重要かについて話すのと同時に、その時に100%をそちら側に寄せてしまうことは正解ではない。時には、それがたとえ使いにくい道具であっても、使うことで状況を改善しなければならないことがある。
《硬化》の場合、二つのことが起こっている。一つ目はデザインから、マジック2013にはいくつかの強力なアーティファクトがあった。扱いやすさの理由から、基本セットは多くの支払いに可変性のあるメカニズム(フラッシュバックやキッカーのような)をエキスパンション・レベルの製品のようには持っておらず、ゲームが長引いたときに、そのマナで物事を行えるように意図的にスペースを切り開かねばならないことを意味している。実際問題として、これは一般的には《大剣》や《ジェイムデー秘本》のような短期的な投資を長期的な利益に変えるアーティファクトを入れることを意味している。この場合は5種類の指輪、《ジェイムデー秘本》、《帆凧》そして《交易所》や《狂乱病の砂》などの多くの長いゲームを支配するアーティファクトがゲームを決定づける事を意味している。赤、緑、白はこれらのカードに比較的直接的な解答を持っており、そして黒はデザインからアーティファクトに弱い傾向がある。しかしながら青が持っているのは限定的な《否認》と非常に重たい《巻き直し》だけで、盤面のアーティファクトに触ることができない。
二つ目の出来事は剣(そして規模は小さいが《ルーン唱えの長槍》)によって構築が支配されているということだ。赤をタッチして《古えの遺恨》を入れたり白をタッチして《神への捧げ物》を入れたりするのは確かに剣そのものを押さえ込むのにより効果的だが、しかし《硬化》は剣かあるいは厄介なクリーチャーを《脱水》する青らしい選択肢を与えてみることにした。相互作用の異なる軸に沿った脆弱性があらわになって、しばしばアーティファクト専用の対策をプレイする余裕がないということが前提にあった。我々はその特定の欠点を回避できる役割のカードを作りたかった。これはすごく効果的というわけではないが、しかし少なくとも、選択肢にはなり得る。
それらの結果をまとめてから、《硬化》をアーティファクトにエンチャントでき、起動型能力を即座に取り除くよう調整したのは、君がアンタップ状態のパーマネントにこのカードをプレイしたときに相手に「最後の一発」与えることにならないためである。
《リリアナの影》
長い間、《リリアナの影》は他の「シェイド」の例に倣って、マナコストに含まれる黒マナは一つだけだった。その発想はたった一つの沼から始めることができ、そして望むなら君のクリーチャーをさらに能力で強化するというものだ。
しかし、おかしなことが起こった。我々は極めて慎重に、このセットの強力で、ゲームを終わらせるコモンとアンコモンのダブルシンボルのカードを企画した――《セラの天使》《ターランドの発動》《溶岩噴火》《歩哨蜘蛛》《夕暮れ谷のワーム》――そしてこの議論に最も顕著な《殺害》と《吸血鬼の夜鷲》などだ。《リリアナの影》が起こした問題は、クリーチャーとしてカード・アドバンテージを生み出し、さらに2/2と相打ちでき、(直感に反した方法で)お手軽に色をタッチして入れられるというものだ。そうしたなら、《殺害》と《吸血鬼の夜鷲》をタッチするためのコストは徹底的に減少し、そしてそれは全体の敗北につながる。私はほとんどの場合、色の最高のカードはその色をプレイしたことの報酬として機能する必要があると強く信じている。それらのカードは全てのデッキに入るべきではない、なぜならそれぞれの色がゲームを決めるカードにアクセスすることがリミテッド環境のバランスを取る方法の一つだからだ。もし白に《大天使》が、青に《大気の精霊》、黒に《センギアの吸血鬼》、緑に《踏み荒らし》があって、しかし赤には《分解》(例えば)があるなら、赤は不当な扱いを受けていると言える。君はこの理念を貫きすぎるべきではない。タッチすることは環境の多様性を維持するために重要なので、それは何%かは起こって欲しいことだ。しかし、色の間の意味ある区別を維持するのは重要なことだ。
とにかく、タッチすることができる2枚目の《沼》を得る方法はこの問題の一因となっていた。従って、我々はこのカードを{2}{B}{B}へと移動させた。
《真珠三叉矛の人魚》
マジックが能力を持たないただの1マナ1/1バニラを印刷するのは何年ぶりだろう。我々はこのカードが収録されることが《真珠三叉矛の達人》が印刷されることにどのように結びついたかについて以前話したことがある。 (ざっくり言えばアルファ版的に)歩兵が将軍の助けを借りて多くの実質的な成長をすることができるところから来ている。しかし、だからといってなぜこのカードがファイルに入ることになったのかを示してはいない。
我々は、入門するプレイヤーへの複雑さを最小化するために、基本セットの全ての色に2枚のバニラを入れてみた。それらは複雑さを最小化するために入れられたとはいえ、ゲームプレイの中で仕事ができないという意味ではない。それらを上手くデザインできれば良いのだ! 私のお気に入りの例はイニストラードの《腐敗した沼蛇》で、ルール・テキストが全く印刷されていないが、陰鬱のメカニズムとゾンビのアーキタイプの両方の支援に寄与している。
《真珠三叉矛の人魚》と共に我々が発見したのは、青のデッキの多くが《モグの下働き》からの《無謀な粗暴者》で始まる赤の早いデッキに先手を取られるということだ。青の最序盤に出てくるクリーチャー《天空のアジサシ》はそれを阻むことはできず、また《クラーケンの幼子》は(無意味ではないが)《モグの下働き》をパワーアップさせる《無謀な粗暴者》を戦場に残す。さて、我々はこの問題に対処するために明らかにスロットにパワーとタフネスを備えたいずれかのクリーチャーを入れることができたが、しかし印刷されるカードが良いほど、恐らくそれを慎重に使おうとする人を悩ませる。いつかは、カードはパワーレベルだけでピックされてしまうようになるだろう! 解答は青いデッキが13番目か14番目に取ることができるようなとても弱いクリーチャーを印刷することで、この問題に対処するためだけにサイドボーディングするようなカードなのだ。
《金屑化》
元々は、マジック2013の赤の火力の一式は《炎の斬りつけ》、《灼熱の槍》、そして《チャンドラの憤怒》だった。赤のより微妙な癖の一つは、ルールテキストの単語が一つ違い、ダメージ呪文の細かい品種違うだけで、実際には全く別の呪文であるということだ。それは、「クリーチャー1体を対象とする。(カード名)はそれに4点のダメージを与える」と「プレイヤー1人を対象とする。(カード名)はそれに4点のダメージを与える」はそれらが生み出すゲームプレイの相互採用の面で基本的に関係はないが、それらは非常に似たように見えるので両方の効果を同じセットに詰め込むのは厄介だ。このため、赤の一枚ごとのカラー・パイはしばしば他の色よりもはるかに狭く見える。「ダメージ」と言う用語は実にとても多くのものを意味しているのだ!
とにかく、私はセットの各ダメージ呪文が何か違う働きをすることを確認したかった。ご存知の通り、《ショック》と《灼熱の槍》と《電撃破》の違いは単にアラビア数字しかなかった。このようにして、我々は(a)クリーチャー1体に固定ダメージを与える(b)クリーチャー1体かプレイヤー1人に固定ダメージを与える(c)プレイヤー1人と各クリーチャーに固定ダメージを与える(d)固定ダメージを複数のクリーチャーとプレイヤーに割り振って与える(e)可変のダメージをクリーチャー1体かプレイヤー1人に与える、へと至った。ほとんどの部分において私はこの分布を気に入っており、そして使い切れないほどの選択肢を含む未使用の置換がこの中にある。
問題はスタンダードで《炎の斬りつけ》が《瞬唱の魔道士》と組み合わされると全く狂ったことになるので、我々は別の選択を見つけなければならなかった。我々はクリーチャーだけを撃つものを求めているのは分かっていた、そして我々が1か3点のダメージを与えるものを求めていないのも分かっていた。最終的には、指輪サイクルが我々が最初に想像していたよりも強力だと分かったので、我々はそれらを抑制する助けになるカードを入れることにした。我々は《金屑化》に落ち着き、そしてまた《自然の伝令、イェヴァ》を4/4へと下げた。彼女がタフネスが5点なのは《炎の斬りつけ》に対して耐性を持たせるためだったのだ。
《テューンの戦僧》
賢明な読者は全体の「ゲームを終わらせるコモンとアンコモン」の議論から省かれた2枚のカードが《平和な心》と《忘却の輪》であることに気づくだろう。フォーマットの中でベストの2枚! 再録に関する挑戦のうちの一つは、そう、君はそのテキストに縛られるということだ。《忘却の輪》は確かに(例えば){1}{W}{W}のマナ・コストにしてもいいほど強力だ。しかしこのカードは構築で我々のために良いことをして、そして私は《ぬいぐるみ人形》や《ニンの杖》に対処するために(たとえば)赤黒のデッキに《忘却の輪》をタッチする選択を提示したい。
しかしながら、《金屑化》や《焼炉の仔》などを入れた赤ベースのデッキよりも《平和な心》と《忘却の輪》をプレイできる白ベースのデッキの方が少なくなるのは明らかだ。その解決法は、白ベースのデッキにそれらのタッチに対してそれらの「ホーム」の色がわずかに有利になる、罰する方法を与えることだ。《テューンの戦僧》は2マナ2/2でほとんど必ずメインデッキに入るだろうが、場合によっては対戦相手の最高のピックの一つに対して《火炎舌のカヴー》のように巨大な威力を発揮するだろう!
いくらでも話し続けられるが、そろそろ言葉の限界が来たようだ。それは奇妙で、私は一年半同じようにほとんどのこれらの決定で考えておらず、そして思い出すと多くの時間を捧げた恐ろしく見える分も忘れるのは簡単だ。《全知》のコストは9であるべきか10であるべきか、《ニンの杖》(当時は「大魔道士の杖」) はカードを引く効果を機動型能力に埋め込むべきかどうか、《軍用隼》は兵士と騎士の両方にレアでクリーチャータイプ「ロード」の利点を暗示するかどうか、そしてまさに実際《ゴブリンの戦囃し》のタフネス2が《ラッパの一吹き》デッキの《刃の雨》と《居すくみ》の被害を受けやすさを少なくさせるのは良いことか悪いことか!
しかしながら重要なポイントがある。我々は皆がマジックを愛してるのを知っているし、我々もそうだ。多くの人が関心を寄せる何かを作ることを助けるのは名誉であり特権であるし、そして我々はとても深刻に君達がこのゲームに費やすエネルギーと全ての時間に応えたい。それは私がより真剣に受け止めることができなかったものだ。マジックは単純にそうでなければ出会わなかった人々の間に生涯に渡る関係を育て、無数のつながりを築いてきた。その関係のために必要とされる高い水準を維持することは我々の義務である。
私は、現在、過去、そして未来に渡ってそうでありたいと願っている。
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