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プレインズウォーカーのための『霊気走破』案内 その1
2024年12月10日
来年、マジックは『霊気走破』でレースに挑みます! 2025年最初に発売されるスタンダードで使用可能なセットでは、多元宇宙の各地から10のレーシングチームが集い、マジック史上最もハイリスクな競争を繰り広げます。それがギラプール・グランプリ、3つの異なる次元にまたがり、レーサーたちは勝つためにあらゆる手段を講じます。チャンドラは何らかの巧妙な策略を繰り出さねばならないでしょう……優勝賞品である霊気灯を獲得しようというなら。
ですがその「霊気灯」とは何なのでしょうか? そして、この熾烈で危険極まる競争の舞台となる次元は何処であり、どのようなレースチームがあるのでしょうか? これらの質問の幾つかに答えるために、ミゲル・ロペスが「プレインズウォーカーのための『霊気走破』案内」をお届けします。『霊気走破』のストーリーは2025年1月13日(訳注:米国太平洋標準時)からここで始まります。空前絶後のレースに備えましょう。
『霊気走破』は2025年2月14日発売、予約受付中です!プレイ・ブースター、コレクター・ブースター、統率者デッキなどをお近くのゲーム店、Amazonなどのオンライン小売店、その他マジック:ザ・ギャザリングの製品を扱う販売店で予約注文できます。さあ、「プレインズウォーカーのための『霊気走破』案内」に飛び込みますよ。掴まって!
「プレインズウォーカーのための『霊気走破』案内」へようこそ!
この「案内」記事では、多元宇宙の新たなプレミア次元間レースイベント、ギラプール・グランプリを紹介する。その1では現代のギラプール・グランプリ、このイベントの歴史、今年のレースに参加する10のグランプリチームについて解説する。その2ではギラプール・グランプリの開催次元であるアヴィシュカー、アモンケット、ムラガンダについて簡単に説明する予定だ。各項目で最近の出来事や次元の歴史について詳しく説明するが、事前に知っておくべき少数の事柄がある。
- アヴィシュカーとは、これまでカラデシュと呼ばれていた次元の新たな名称だ(詳細はこちらの記事を参照して頂きたい)。カラデシュ次元を率いていた領事府も、民衆によるほぼ無血の革命によって廃止された。この次元は新政府であるアヴィシュカー議会のもとに統一され、首都は引き続きギラプール市となっている。
- アモンケットにはナクタムンがそびえ、ルクサ川は澄み切って流れている。ボーラス時代の神々のうち、ハゾレト、蝗の神、スカラベの神だけが残っている。ケトラモーズとサブ=スネンという新たな神々も現れている。
- ムラガンダはギラプール・グランプリの開催次元ではあるが、このレースにチームを参加させてはいない。
ギラプール・グランプリ
アート:Julian Kok Joon Wen |
ギラプール・グランプリ(The Ghirapur Grand Prix/GGP)は、アヴィシュカーで長く続いているレースが領界路出現の影響を受けて変化したものだ。このレースは何十年もの間、ギラプールの非合法レース界になくてはならないものであった。グランプリが多次元へと開かれてから、そして合法で宣伝される催しになって今年で2年目となる。ファイレクシアの侵略と藍革命によって旧領事府が崩壊して以来、このグランプリはギラプールの新たな夜の大臣、ゴンティによって推進されてきた。ゴンティの指導のもと、このレースは規模や演出を向上させている。もはやギラプールとその周辺を駆けるだけの、無茶苦茶で違法で知る人ぞ知るスピードラリーではない。今や合法的なスポーツイベントとなったグランプリではあるが、その運営や経路や参加者の通過後の状況に関する条件を受け入れるよりも、損害賠償を支払う者の方が多い傾向にある。
グランプリの歴史
ギラプール・グランプリは数十年前、発明博覧会に伴って行われた非公式かつ非公認のレース、ギラプール・スプリントとして始まった。スプリントは夜間に開催され、参加者はギラプール中を巡り、チェックポイントからチェックポイントへとレースをしながらレースの行程表を埋めていく。優勝者は行程表を埋め、各チェックポイントを通過したと審査員に示すことができ、そして最終チェックポイントを最初に通過した者だ。この催しは毎年開催され、運び屋、霊気密輸人、動的芸術家、大胆な技術者、勇み肌の操縦士、その他自身や機械の限界を試そうとするはみ出し者、革命家、急進派を引きつけた。彼ら参加者たちは、まとめて新進文化党(New Culture Collective/NCC)と名乗った。
新進文化党は、急進的な文化や芸術や学術思想の安息地であるギラプール市で生まれた。無数の革命的イデオロギーの本拠地であるNCCは、領事府が禁止するものを自分たちは追求すべしという態度を広く採用した。指導者たちは顔と名を隠して声明、布告、マニフェストを発し、領事府の執行官を逃れながら革命的な熱狂を煽り立て、アヴィシュカー(旧カラデシュ) の学術機関を攻撃した。次元の情勢を抑圧的に管理する領事府も標的だった。新進文化党はレースやショーを主催し、新聞を発行するだけでなく、学生集団や技術者評議会、工場の現場でも扇動活動を行った。だが彼らが最も好んだ人員採用手段はギラプール・スプリントだった。
アート:William Tempest |
ギラプール・スプリントは新進文化党が主催する唯一のレースではなかったが、規模と人気は最大で、最も危険なレースだった。領事府はスプリントに備えることを覚え、新進文化党に潜入してこのレースを中止させ、NCCの指導者や扇動者、宣伝係、活動家を投獄しようと多大なリソースを費やした。数年の間彼らは成功し、これらの逮捕を社会統制の行き届いた証拠として、および反領事府集団との協力がもたらす危険性として宣伝した。新進文化党とギラプール・スプリントは犯罪者集団であり、詐欺師や狂人やギャンブラーの巣窟であると領事府は主張した。それは完全な間違いではなかった――新進文化党はそのレッテルをはぐらかさなかったのだ。領事府の敵となることで彼らの数は増え、政治的にはまったく異なっていようとも、同様の目標を共有する資金提供者の目にとまるようになった。
アート:Ignatius Budi |
NCCには、スプリントと同等の大規模なイベントを開催するための資金はなかった。何千もの小口寄付者と一部の業界スポンサーはついていたが、スプリントは金儲けの場ではなかったのである。損害賠償の支払い、賞金の提供、賄賂など、参加するレーサーが増えるほどスプリントには金がかかるようになった。参加費を高くしたくない新進文化党は、ギラプールの地下犯罪組織に声をかけた。国が「犯罪者」と分類した人々が、霊気や部品や報道や賞金を提供してくれるというなら、新進文化党はそれを受け入れるつもりだった。資本の注入は、彼ら自身と仲間たちを絶望から救うことを意味する。そして、国はすでに自分たちを犯罪者と分類している。提供された金を受け取り、現在進行形で反抗している社会の圧力から自分たちを解放するために使わない理由はない。
アート:David Alvarez |
このいたちごっこの駆け引きは、ファイレクシアがアヴィシュカーを侵略するまで続いた。次元の空に無数のポータルが開くと、新進文化党は通常の活動と反領事府の立場を一時棚上げにした。ファイレクシア人を倒すことが最優先だったのである。新進文化党はアヴィシュカーの防衛に加わるようにと構成員たちに呼びかけ、指導部は輸送、兵站、避難活動の調整に着手した。アヴィシュカーの各都市、相互援助ネットワーク、隠れ家、機敏で大胆で機転の利く操縦士と技術者の集団について新進文化党が持つ、地に足のついた知識は非常に貴重だった。新進文化党は次元の防衛において重要な役割を果たした。
ファイレクシアの侵略が終結すると、続いて藍革命が起こった。旧改革派の革命家、新進文化党の構成員、そして戦後の不満をもつ民衆の勢いが結集し、旧領事府は素早くかつ無血で倒された。次元統治の根本的な変化を記念してアヴィシュカー議会が最初に採決した措置のひとつは、次元の名前をカラデシュからアヴィシュカーに変更することだった――厄介で苦しい歴史の重荷を背負う古い言葉から、この次元と人々の前向きで革新的な精神を反映する名前へ。カラデシュがアヴィシュカーとなって以来、新進文化党は公に受け入れられ認知される政党となり、公然と活動し、アヴィシュカー議会で相当数の議席を獲得している。ギラプール・スプリントはギラプール・グランプリと改名され、ギラプールの夜の大臣ゴンティが監督する独立統括団体によって運営される正当なスポーツイベントとなった。
グランプリの現在の構造
アート:Brian Valeza |
『霊気走破』で繰り広げられるギラプール・グランプリは年に一度の多次元間レースであり、今年は第二回。前年の初回から範囲と規模が拡大されている。最初のGGPの成功を基に、アヴィシュカー議会はギラプールとアヴィシュカーの外でもこの祝祭を開催し、多元宇宙全体からチームや代表団を招待することを目指している。彼らの願いは、GGPが毎年恒例の多元宇宙の祝祭にして披露会となり、侵略後かつ藍革命後のアヴィシュカーの素晴らしさを知らしめる場となることである。現代のグランプリは、もはや反抗的で非公認の路地裏レースではない。多次元間の物流、管理、調整、文化的豊かさ、および経済力を管理する新政府の能力を示す、極めて重要なものなのだ。そのためギラプール・グランプリの統括団体はアヴィシュカーだけでなく多元宇宙全体で活動しており、繋がった次元に代表者を派遣して、GGPスタイルのステージレースの現地版を認可および分類している。これらのレースは、アヴィシュカー全土で開催される認可イベントとともに、参加者をギラプール・グランプリに送り込んでいる。
ギラプール・グランプリ自体はアヴィシュカーの暦で年に一度、一週間に渡って開催される。ギラプール・スプリントが夜間に始まっていたことにちなみ、ギラプールの中心部で日没時から開始される。準備には数か月を要し、必要な管理作業は膨大だ。複数の部署(交渉、展開、放送、セキュリティなど)の作業を複数の次元にまたがって組み合わせ、観衆にとっては調和した祝祭の雰囲気を、参加者にとっては一貫したコースを作り上げるのである。
アート:Borja Pindado |
グランプリの第一ステージは、まずギラプールの中心から郊外へと向かう。今年のレースでは安定した領界路を通ってアモンケットへと進み、選手たちは復活したルクサ川の緑豊かな岸辺を駆ける。そのステージの終点にある領界路から、選手たちはムラガンダの荒野へと送り込まれる。高架の安全なコースからこの原始の次元の樹冠を探索するのだ。そこから再びアモンケットへと戻り、今度は荒れ狂う砂漠を駆け抜け、そしてギラプールの中心にある最終ステージへと帰還する。
設置されたチェックポイントは通過したチームを記録し、不正行為が書類上は不可能であることを保証する。優勝者は、可能な限り最も単純かつ直接的な方法で決定される――つまり、最初にゴールラインを通過したチームだ。
アート:Konstantin Porubov |
このイベント全体がギラプール・グランプリと呼ばれている。ただこのイベントは複数のレースの祭典であり、多元宇宙でも比類のない多次元規模の取り組みであり、何千人ものスタッフ、技術者、指令役を雇用する巨大な事業であると知っておくことが重要だ。アヴィシュカー中のファンが集まって観戦するイベントはグランプリと呼ばれる。グランプリが大々的にスタートを切った後には、一日限りの短距離レースから長距離レースまで、複数の下位部門のレースが開催される。格の高いものから低いものの順に、イベント一覧は次の通り:
- グランプリ(『霊気走破』の中心)
- GPアスパイア(『霊気走破』で目にするいくつかのイベント、チーム、相互交流)
- トップ部門
- クラス1
- クラス2
- クラス3
- エキシビション
グランプリの下位部門
アート:Alexandre Honoré |
グランプリに参加する10チームの下では、何十という小規模なチームが下位部門のレースで競い合っている。これらのチームには、翌年のGGP出場権を争うセミプロのGPアスパイアチームから、メインレース終了後にGGPコースで行われるシングルステージ・スプリントやフルレングスの挑戦で人生を変えるような賞金を競う熱心なアマチュアまで、さまざまな選手が集まる。エキシビションカテゴリを除き、すべてのレーサーは直上カテゴリへの昇格を勝ち取れる立場にある。一方でプロモーターの裁量により、一部のチームはGPアスパイアへの招待を通じてその資格を放棄することもできる。
GPアスパイアのレースでは通常、多元宇宙の各所から20のチームが集い、翌年のグランプリへの出場権を競う。これらのチームのほとんどは各地の公認レースで勝利することでGPアスパイアへの出場権を獲得しているが、招待されたチームや抽選に当選したチーム、アヴィシュカーに独自の資金提供を行ってスポンサーとして出場権を得たチームなどもある。
霊気灯
アート:Donato Giancola |
ギラプール・グランプリの優勝賞品は毎年異なり、かつて旧領事府が秘蔵していた膨大な数のアーティファクトや宝物から選ばれている。今年の賞品は「霊気灯」と呼ばれる素晴らしいアーティファクトだ。
領事府の倉庫の奥深くから回収されたこのアーティファクトのメモによれば、霊気灯はプレインズウォーカーの灯を身体から分離して維持し、使用を可能とする唯一無二の装置である。調べたところ、この装置は灯をひとつ保存し、装着した者は誰でも使用できるように機能すると思われる。装置の使用者は、内部の灯が自身のものであるかのように次元を渡ることができると推測される。だがこの装置の発明者は作成過程を記録していなかったか、ファイレクシアの侵略で設計図が失われてしまった。その結果、霊気灯はまだテストされておらず、装置の正確な機能は完全に理論上のものである。疑問は多い――アーティファクト内の灯は使用者と共に次元間を移動するのだろうか? 一度装置を使用したら消費されてしまうのだろうか? この装置は最初の使用者以外にも使用できるのだろうか? そもそも設計通りに機能するのだろうか? 答えは勇敢な者によって確かめられるだろう。
今は領界路の時代であるため、アヴィシュカー政府は霊気灯の解析調査に興味を示していない。領界路は豊富にあり、これら安定した経路を通じて大量輸送、貿易、外交を可能にする実証済みの技術が存在するのだ。かつてであれば、霊気灯は戦争を引き起こしたかもしれない。だが今では過去の遺物に成り下がった独特かつ魅力的なアーティファクトである。名声、多元宇宙、霊気、そして危険を組み合わせたグランプリのあらゆる側面を体現する象徴的な物品であり、グランプリのレーサーが追い求めるに相応しいトロフィーなのだ。
グランプリ出場チーム
アヴィシュカーとアモンケットのホストチーム(それぞれエーテルレインジャーズとチャンピオンズ・オブ・アモンケット) に加え、もう8つのチームがグランプリとその下位部門にメンバーを派遣している。
エーテルレインジャーズ
アート:Ioannis Fiore |
ムラガンダを除き、ギラプール・グランプリの開催次元はそれぞれグランプリ出場チームを編成している。アヴィシュカーの参加チームはエーテルレインジャーズだ。このチームは人間、エルフ、ヴィダルケン、ドワーフで構成されており、アヴィシュカーとアヴィシュカー議会の栄光を目指して競う。霊気に乗るこの操縦士と技術者たちは世代や地位を超えた同志たちであり、革命以前のアヴィシュカーの最高の部分と希望を追い求める新世代の仲間が結託している。
エーテルレインジャーズの機体もまた、未知への希望に溢れたオープンな態度を表現している。レインジャーズの機体は軽量で頑丈、乱戦の先頭を走り、乱戦の上を飛び、逆境を突き抜け、ラムジェット噴射の霊気の流れに乗って閃光のように素早く突き進むように作られている。エーテルレインジャーズは主任技師のピア・ナラーと、ギラプールの様々なレース界のスター、謎めいた仮面の民衆英雄スピットファイアが共同で指揮をとっている。グランプリチームに加えて、エーテルレインジャーズはアヴィシュカー議会の資金提供を受けたチームをいくつかの下位部門に派遣している。
エーテルレインジャーズの一番のライバルは、昨年のギラプール・グランプリの優勝チームであるクラウドスパイア・レーシングだ。そして今年のクラウドスパイアの共同キャプテンはチャンドラ・ナラー。これはクラウドスパイアが成し遂げたまさしく大成功であり、今年のエーテルレインジャーズに火をつけた。
チャンピオンズ・オブ・アモンケット
アート:Simon Dominic |
アモンケットは誇大妄想狂で残酷なペテン師、王神の陰謀によって陥落した。そして王神の下、アモンケットの生者は誰もが悲惨な境遇に置かれていた。プレインズウォーカーの介入と多次元間の戦争によって漸くそのペテン師は倒され、アモンケットは解放された。今、二度目の終末戦争であるファイレクシアの侵略を経て、アモンケットは生者と死者が手を携えた努力によって再び立ち上がりつつある。
アモンケットの民は苦難を知っている。そのため彼らが築きつつある新たな未来では、剣を振るう者だけでなく戦で剣を振るわない英雄たちを育てながら、スポーツや自由時間や遊びの余地を作るよう意識的な努力が続いている。この新たな方策の支持者のひとりが、ニコル・ボーラス以前の失われた時代から来たアンデッドの戦車兵、レオニンのザフールである。新品の包帯を巻いて上等な衣服をまとったザフールは、バスリ・ケトと生者や不死者からなる戦車兵の一団とともに、アモンケットの代表団を率いている。彼らは駆ける――栄光を勝ち取るために、そしてナクタムン、ハゾレト神、新たな神々、そして歴史の廃墟から自分たちの新たな次元を築こうと奮闘するアモンケットの民に名声をもたらすために。
クラウドスパイア・レーシング
アート:Josiah "Jo" Cameron |
昨年のギラプール・グランプリの優勝チームがクラウドスパイア・レーシングである。領界路の開通後にケイレムからアヴィシュカーに移住した熟練のレーサーと技術者で構成され、高速・低抵抗の機体を特徴とする。このチームは初の多次元間ギラプール・グランプリで優勝してファンを驚かせ、その勝利は地元のエーテルレインジャーズに火をつけた。アヴィシュカー出身のチャンドラ・ナラーがレインジャーズではなくクラウドスパイアと契約したというレース前のドラマも相まって、この次元のすべてが観戦に集まることは間違いない。
クラウドスパイア・レーシングは系譜、プロ意識、個性を重視している。その操縦士と機体はスターであり、希望を抱かせる英雄かつレースの模範となる。マシンは畏敬の念と興奮を喚起するように作られている。彼らのイメージ戦略はレーススタイルと同じほどに攻撃的だ――速く眩しく騒々しく、繊細さやニュアンスがほとんど感じられない一方で、苛立つほどに際立って優れている。クラウドスパイア・レーシングは、合法性の境界線を越えて直接ぶつけることは決してないが、決して先に引き下がることもない。彼らが掲げる格言は「レースとはこすり合わせること」だ。
クラウドスパイアの共同キャプテンはチャンドラ・ナラーとコロディン、後者は昨年の単独キャプテンだった。チャンドラがエーテルレインジャーズではなくクラウドスパイアへの入団を選んだことは、アヴィシュカーの人々に衝撃を与えた。彼女は母と共に地元チームの共同キャプテンになると誰もが思っていたためだ。だが恋人ニッサのために霊気灯を勝ち取りたいという願望が、他の忠誠心を上回ったのである。常にチームプレーヤーであるコロディンは、できるだけ摩擦を起こさずに彼女をチームに組み込むよう努めている。
ガイドライト・ボヤージャーズ
アート:Kenn Yap |
ガイドライト・ボヤージャーズは、単一の精神たる機械「雲水核」が率いる不可思議な自動機械の集団である。ガイドライトの自動機械たちはひとつの巨大な知性の手足のように機能し、多元宇宙の次元間を反復可能な方法で移動するという単一の目的のために団結し、制御可能な基準値に新たな変数を導入するべくアプローチを迅速に変更しつつ、故郷への帰還方法を見つけ出そうとしている。
ガイドライトはファイレクシアの侵略直後、領界路が開いた際に初めてアヴィシュカーへと現れた。彼らはその次元を許容できると感じたものの、到着には不安を覚えた。通過してきた領界路がこぞって彼らの周囲で開き、彼らをアヴィシュカーに降ろしたのだった。しばしこの次元をさまよった後、雲水核はグランプリに遭遇した。
雲水核の指導のもと、彼らはそのレースのインフラこそが自分たちの大胆な計画を試すための完璧な反復実験場であると判断した――それは領界路を通過し、アヴィシュカーに来た時の状況を逆方向に再現し、故郷に帰るというものである。ガイドライト・ボヤージャーズは最初のギラプール・グランプリへの出場を果たした。そして信頼できる、とはいえ予測可能な戦略を採用した堅実な中位チームとして終了した。だが今回ガイドライトは作戦を修正し、新しく予測不可能なレースの手法を試みている。レースの何かが変わったのだ。ガイドライト・ボヤージャーズがグランプリの端で何かを探していることは誰もが理解しているものの、それが何であるかを他のチームは知らない。
スピードデーモンズ
アート:Leroy Steinmann |
長く寂しい道に灯る一組の明かり。アスファルトをさまよう哀れな生物が最後に見るもの。沈みゆく太陽の熱、その中で声を震わせる孤独なシルエット――半分は蜃気楼、半分は地獄の鋼鉄。それは死か、それとももっと悪いものか? 実際に捕らわれない限り知る術はないが、そうなって欲しくもない。
それがスピードデーモンズ――取り憑かれたレーサーと、同じく死霊に取り憑かれた機体を駆る彼らの拷問者たちの一団。それを率いるのは、レーサーたちの故郷からの遠出を許可した同名の悪魔だ。そのスピードデーモン自身も悪魔的番人として憑依された者や罪人たちと共にレースを行い、チームキャプテンのウィンターを苦しめている。ウィンターはダスクモーンの生存者であり、その次元の大悪魔であるヴァルガヴォスから一時的な許可を与えられて霊気灯を勝ち取ろうとしている――無論、ヴァルガヴォスなりの理由から。ウィンターが(または彼の同輩のレーサーが)優勝すれば、彼は自由を与えられるかもしれない。だが失敗した場合、スピードデーモンはウィンターを無理矢理にでもダスクモーンに連れ帰るつもりである。ヴァルガヴォスの怒りに直面させるために。
ウィンターの見通しは厳しいと思われるが、切り札がひとつある。領界路を上手く進む不思議な能力を持つ幼獣、おたからだ。ウィンターとスピードデーモンはおたからを捕らえており、レースで彼の能力を利用しようと計画している。
ゴブリン・ロケッティアーズ
アート:Chris Seaman |
ゴブリン製のロケットと聞いて安心する者は滅多にいない。多元宇宙は概して、高速で精製された化学爆薬を装備したゴブリンという不安定な組み合わせに対して慎重な態度をとっている。ロケッティアーズのゴブリンにとってこの恐怖は、<ブーストゴッド>御自らが点火装置を押したロケット動力による完璧な発射の素晴らしさを決して理解しない、いくじなしで狭い心の持ち主の意見である。
ロケッティアーズのゴブリンたちは、とある非恒常的領界路を介してアヴィシュカーに一時的に接続された未知の次元からアヴィシュカーに現れた。ロケッティアーズの現共同キャプテンであるレッドシフトは、自分と乗組員たちは単に幸運な領界路から転げ落ちたのではなく、打ち上げミッションを達成したのだと信じている――<ブーストゴッド>を多元宇宙から遠ざける速度制限を突破するためのものだ。打ち上げは成功し、彼らを故郷の空とその先へと送り出したロケットは、ゴブリンという種が作った中で最強のものだった。非常に危険な試みだったが、それは彼らが乗ったロケットのせいではなく、<ブーストゴッド>の宿敵であり名を口にしてはいけない完全停止の神によって彼らの次元に課された速度制限のためだったのだ。レッドシフトと彼の乗組員たちは死へと挑み、そして残酷で目に見えない速度制限の壁を突き破り、一時的な領界路を通ってアヴィシュカーに到着した。
当初は途方に暮れ、ギラプールの喧騒に混乱していたレッドシフトとロケッティアーズだったが、ギラプール・グランプリの周囲で活動するレーサーやメカ好きの中に居場所を見つけた。そこには彼らにとって馴染みあるものがあった。<ブーストゴッド>への崇拝――たとえその名が他のレーサーに知られていなくとも――そして豊富な燃料。彼らは速度限界を超えるという当初のミッションを放棄し、新たな活動を開始した。資金の大半は、同じくアヴィシュカーに取り残されている、彼らの後援者であり共同キャプテンでもあるダレッティが提供した。目的は、グランプリで優勝すること。自分たちには速く走れるマシンがある。ならば他のマシンと競わせてはどうだろうか? 結局のところ、競争も一種の科学ではないだろうか?
アラクリアン・クイックビースト
アート:Andrey Kuzinskiy |
スタートラインに並ぶエンジンの轟音の中、勝利の雄叫びがひとつ響き渡る。それはアラクリアン・クイックビースト、自然世界の強大な化身とその乗り手たちが、筋肉と骨で鋼鉄と霊気と戦うためにやって来たのだ。乗り手と乗騎のチームで活動するクイックビーストは、GGPの競技者たちの中でも独特である。彼らは主と獣であるというだけでなく、レースにおけるパートナー同士でもあるのだ。
クイックビーストとは、アヴィシュカーと恒常的領界路で繋がっている次元アラクリアの巨大生物である。霊気を糧とするクイックビーストは驚くほど素早く、持続的な移動が可能であり、餌を摂取する合間に数日間に渡って乗り手とともに多様な地形を高速で進むことができる。彼らは古代から存在する知的な生物であり、パートナーとして選んだ乗り手から高く評価されている。彼らは種父であるクイックビーストから名誉と伝説を受け継いでおり、しばしばアラクリア全土の都市地区の魂とみなされる。クイックビーストの乗り手になるためには広範囲にわたる教育と訓練を受けなければならず、それでも獣の同意が必要となる。そしてそれを達成したなら両者は結びつき、共にその地区の伝説のふたつの面を構成する。
今年のグランプリに出場するアラクリアン・クイックビーストのチームは、アラクリアの最強チームを代表し、故郷の名誉をかけて競う。チームを率いるのは乗り手のカラドーラとクイックビーストのラゴリンだ。元々両者はパートナー同士ではなかったものの、故郷で起こったとある悲劇によってレースのペアを組むことを余儀なくされた。
スピード・ブルード
アート:Bartek Fedyczak |
スピード・ブルードは、翻訳不可能な名前を持つ次元から来た奇妙なレーサーチームであり、同様に翻訳不可能な理由でグランプリに参加し、アヴィシュカーの報道陣を大いに沸かせている。彼らは不可解ではあるが、それを脅威と誤解しない方がいい。個々としての彼らはグランプリのガレージにおいて社交的な存在であり、多声の合唱、茶の時間、上質な織物の取引を好む。彼らは夜行性で、レースをしていないときは落ち着きがなく、いつでも話好きだ――たとえどちらも相手の言う内容を理解できなくとも。
アラクリアン・クイックビーストと同様に、スピード・ブルードは共生関係を築いてきた生きた機体に乗る。だがクイックビーストとは異なり、スピード・ブルードのレーサーは複雑な儀式で機体を成長させる。その儀式では仲間のひとりが外骨格を脱ぎ捨て、長い変態の過程を経てひとつの機体へと変身するのだ。これはスピード・ブルードにとって大いなる名誉であり、生涯の終わりに最も優秀なレーサーだけが受けられるものである。ただ機体に搭乗するのではなく、スピードそのものになるのだ。
スピード・ブルードのチームキャプテンは、スピード・ブルードのラジアンであるアーチックだ。「ラジアン」とは、確かでまっすぐな運命の路に突き動かされて未知の世界へと突き進む、模範的なブルードのメンバーに与えられる敬称である。ラジアンはまた、想定される運命に近づきつつある指導者でもある。アーチックはグランプリで優勝する(または好成績を収める)ことで、いつでも変身できると自らを証明したいと考えている。
キールホーラーズ
アート:Lius Lasahido |
ギラプール・グランプリに出場するキールホーラーズは荒っぽい集団だ。彼らはコルダタンと呼ばれる人型のサメと空気呼吸をする人型魚類、人間の仲間で構成される。そして高速で簡素な乗り物――多くは露出した霊気駆動エンジンにエンジン室をくくり付けただけのもの――と、レース司令役が許可する限界を試すような猛烈な戦略を好む。彼らは高度に発達したチームであり、競技のすべての部門に複数の人員を派遣している。そして最も大胆かつ無謀なキャプテンであるハウラーが、グランプリで彼らのトップチームを率いている。
コルダタンは非恒常的領界路を経由してアヴィシュカーに到着し、たちまちその沿岸地域にて食物連鎖の頂点に躍り出た。運命の結果かあるいは未知の多元宇宙的メカニズムによるものか、コルダタンは霊気に強い親和性を持っており、アヴィシュカーに到着したことでその潜在能力を完全に発揮した。彼らは霊気への認識を、冒険や力やスピード、栄光への呼び声と表現している。活力を与える物質である霊気はあらゆる形態でコルダタンの儀式において重要なものであり、液体霊気は彼らの霊気機体の燃料として使用されている。
ハウラー船長に加え、キールホーラーズはアヴィシュカーの悪名高い空賊カーリ・ゼヴとその相棒ラガバンをレースへの案内役兼ギラプールへの使節として雇っている。
ジ・エンドライダーズ
アート:Bryan Sola |
エンドライダーズはガスタルの出身だ。ガスタルは死にゆく次元であり、定住あるいは襲撃先となる希少なオアシスを求めて、乗騎を駆る物あさりや放浪の民が黄昏に染まる大地を行き交っている。水や食料や平和は乏しいものの、彼らの故郷は滅びの時にあってもガスと油は豊富だった。開けた道と底なしの燃料タンク以外には何も残っていないため、次元の住民は轟音を立てるマシンに乗り、死者を残して栄光を追い求めた。
ファイレクシアの侵略が終結して領界路が開かれると、エンドライダーズのギャングはガスタルをバックミラーで見ることもせずに、マシンに乗って自由へと旅立った。彼らは意気揚々と多元宇宙への襲撃に繰り出そうとしたが、新たな問題に遭遇した。食料、水、休息は豊富にあるが、ガソリンは乏しかったのである。それはよく言っても規制品目であり、最悪の場合知られてすらいなかった。マシンを全速力で運転することに慣れていた彼らはたちまち燃料切れを起こした。立ち往生したエンドライダーズは機体に燃料を補給する別の方法を探し、あらゆる類の傭兵稼業に就いた。
ファー・フォーチュンのギャングも、ガスタルを出発して地平線まで走り、その後ガス欠を起こした集団のひとつだった。だが幸運なことに彼女たちはアヴィシュカーで立ち往生し、すぐにギラプール・グランプリとその霊気燃料マシンにたどり着いた。現在、エンドライダーズは鋭く大胆な競争者で構成された人気チームとなり、勝利を目指してレースに挑み、終わりのないドライブに燃料を補給している。
以上が、ギラプール・グランプリと今回の出場者たちの簡単な歴史です。『霊気走破』の舞台と物語についてさらに詳しく知りたい方は、明日掲載されるこの素晴らしい大会のホスト次元への旅をご覧ください。2025年1月13日に始まる『霊気走破』の物語でレースを追いかけ、2025年2月14日のセット発売時に勝利を目指しましょう。『霊気走破』はお近くのゲームストア、Amazonなどのオンライン小売店、その他マジック製品を販売している場所で今すぐ予約できます。
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