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プレインズウォーカーのための『ブルームバロウ』案内 その1

Neale LaPlante Johnson
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2024年7月11日

 

 ようこそ! 『ブルームバロウ』はその名の通り、擬人化された動物の次元ブルームバロウへの初めての旅です。このセットではブルームバロウ次元でも「渓間」と呼ばれる地域を探索します。豊かな生命があふれる田園地帯であり、住民はすべての訪問者を歓迎します。

 すべての訪問者を歓迎する、と言いました。その通り、私から特別なおもてなしをご用意しています! ちょうど良くここにある領界路を抜けるだけで到着です。夕食の心配もご無用、向こう側で私の良き友がとっても美味しいものを用意して待っていますのでね。

 君は領界路に踏み入り、その中を全力疾走し、小さな空き地の真ん中に逆さまに着地する。四方八方から賑やかな喧騒が聞こえる。そして私を探して辺りを見回し、やがて何かが自分の足を引くのを感じる。そこにいるのは……ハツカネズミ?

 毛深くなっているとか羽毛が生えたとか鱗が生えたとか、そんなことを心配する時間はない。私には約束があるし、いつでも戻ることはできる。けだるく垂れた枝の下へと私は身振りをし、階段を上る。

 大勢のざわめきが近づいてきた。私は扉を開け、君を招き入れる。

 君はあちこちを見回す――元気よく乾杯をするアライグマとハツカネズミ。頬を大きく膨らませたカエルは、腹の底から笑っているということだろうか。そして大鍋に立てかけられた梯子の上で背伸びをして立ち、今にも吹きこぼれそうなほどいっぱいの中身を丁寧にかき混ぜているウサギ。君が入ってきたことに気付き、群衆は静まり返る。彼らは辺りを見回し、仲間と視線を交わし、君へと無言の視線を投げかけ、そして……喜びの大合唱! 挨拶の集中砲火の中、私は群衆を押し分けて君を店の中へと進ませる。鍋をかき混ぜているウサギの隣に辿り着く頃には、君は新しい友達を両手の指の数くらいは作っているはずだ。

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アート:Marta Nael

 そのウサギは私たちへと顔を向けて言う。

 「いらっしゃい、旅行者さん! 三本木市へようこそ。道に迷ったのかしら、それともここを目指してやって来たのかしら? とにかく席についてくつろいで下さいな。温かいものを用意しますからね」

 ウサギは大きなおたまをつかみ、木製の深い椀にシチューを注ぐ。何日も、あるいは何年も煮込んだ香草と野菜の贅沢な香り。スープは濃厚だが明るい色をしている。

 「自己紹介を忘れていましたね。私はバンブルフラワー夫人、この宿を切り盛りしていますよ。渓間は初めてですね? ようこそ、よく来てくれました! お友達からお聞きしましたが、歴史や色々なものを教えてもらいたいのだそうですね」

 シチューを味わう君へと、バンブルフラワー夫人は語りはじめる。英雄と伝説の物語を、そしてそのすべてがいかにして起こったのかを……

渓間の歴史

混沌の季節

 遥か昔、まだ渓間が渓間という名前ではなかった頃。世界の車輪がどのように回転しているのか、大いなる季節の満ち引きがどのように大地を形作るのかを誰も知らなかった頃。この世界には魔法が荒れ狂っていました。大きなものは小さなものを食べ、強いものは弱いものを餌食にしました。その中でも最強だったのが、災厄の獣です。見上げるほどに大きく、言葉は話さず、吹雪や洪水や干ばつや疫病をもたらす、自然すらも超えた存在です。一歩踏み出すたびに世界を揺らし、想像もできないほどの力に敵うものはありません。災厄の獣は、生きた季節です。

 災厄の獣が残す爪跡はとても大きく恐ろしく、そのため自分の力だけで対抗できない者たちは団結しました。そんな恐ろしい力のもとでは、誰もが平等です。こうして団結した者たちはアニマルフォークと呼ばれるようになりました。彼らは地下に逃げ込みました。地上の世界には災厄が暴れ回り、それに対しては何もできなかったのです。アニマルフォークたちは安全な場所で、文化と友情を育んでいきました。

ヒイラギ葉の騎士団

 ですが、渓間の地下深くのトンネルでの生活は不便で辛いものでした。地上での自由な生活を手に入れるため、様々なアニマルフォークが団結してひとつの集団を作りました。赤い実をつけたヒイラギの茂みの陰で、彼らは誓いを交わしました。それは魔法の契約となり、家と平和を手に入れるまでお互いを結び付け、そして自分たちと大地を結びつけたのです。ヒイラギの葉は彼らの象徴として衣服に織り込まれ、武器に飾られました。私たちは彼らをヒイラギ葉の騎士団として今も覚えていますが、ほとんどのアニマルフォークにとってはただの伝説です。

 その契約から生まれたものがもうひとつありました。大地から湧き出るエネルギーを引き出せるようになったのです。彼らは自然の力を、おもちゃのように自由に扱えるようになりました。周りの大地の形を変え、敵に雷を落とし、死者を蘇らせ、さらには時間を思い通りに操ることさえできました。この技を特に上手く使える者は織り手と呼ばれ、その技は魔法織りと呼ばれるようになりました。彼らの言葉と行動は、とてつもない力という布地を生み出す糸だったのです。

燃えがら戦争

 魔法織りの力は強くとも、災厄の獣たちはその恐ろしく新しい力に屈しませんでした。二世代も続く戦いが渓間で繰り広げられました。アニマルフォークも抵抗し、災厄の獣の中でも特に弱いものを殺しもしました。ですがその時、最も偉大な災厄の獣が現れました――猛焼。炎の季節、原初の火、この世界の境界を越えて隣の世界までも焼き尽くす「一掃する大口」です。

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アート:Dominik Mayer

 ものすごい炎の嵐が吹き荒れ、アニマルフォークたちが手に入れたわずかな進歩を消し去りました。樫の巨木は火と雷で裂かれ、今もくすぶり続けています。自然の力の記念碑です。希望は失われ、アニマルフォークたちは地下の棲家に追いやられました。地上の炎がどんどん熱くなるにつれて、もっともっと深く掘らなければなりませんでした。そんな激しく燃え盛る炎の下で生まれたのが、リリーです。

渓間のリリー

 リリーが生まれ育ったトンネルには、所々に大きなキノコが生えていました。リリーはそれを刈ってつつましく生きていましたが、ある時、家や巣穴が重みと炎で崩れてしまいました。そこで家族とともに引っ越しましたが、やがて渓間の中心まで追いやられてしまいました。どこを向いても死に囲まれています。織り手たちは激しく戦い、岩や木で壁を築いていました。ですがその守りも破られ、命が奪われるのは時間の問題でした。

 災厄の獣が迫ります。顎が歯ぎしりをします。自然そのものの力で、獣の足元や翼の下の大地が割れます。リリーは何世代も前に交わされた誓いの力に繋がり、力強く立ち向かいました。その魂の中で何かが動きました――友達、家族、そして心から気にかけてきた世界への愛から何かが生まれたのです。災厄の獣でも敵わない再生の力、種の炎です。

 種の炎は猛焼の力をほとんど奪うと、リリーを輝く太陽のように変化させました。災厄の獣と同じほどの力を持つアニマルフォークに。その光は三日間も燃え続けて渓間に広がり、獣たちを押し返し、弱らせていきました。この戦いの最後の瞬間、リリーは猛焼と最後にもう一度戦い、その歯を欠けさせると、災厄の獣を茨野原の向こうへ、渓間の外へ追い払ったのでした。

内なる災厄

 織り手たちの力は、弱くなった災厄の獣を押し留めてくれるはずでした。ようやく平和が訪れました。今日私たちが知る渓間は、ここ三本木市の小さな一本の若木から始まったのです。けれど、織り手の魔法はそのままではいられませんでした。リリーに救われた後、アニマルフォークたちはだんだんと贅沢をするようになっていきました。魔法の力はとても強くなり、元は小さな争いだったものがだんだんと大きくなり、渓間の支配を力で争う戦いになってしまいました。

 ものすごい魔法のエネルギーが逆流し、織り手たちを変身させてしまいました。彼らは、野蛮な怒りと勢いだけで動く怪物になってしまったのです。彼らは止められないほど暴れ回り、やっと手に入れた小さな平和に危機が訪れました。もしかしたら、災厄の獣はそうやって生まれたのかもしれません。それほどの力は祝福だけではなく、呪いなのかもしれません。

 同時に、この地にこれまで訪れていた季節はだんだんと気まぐれになっていきました。かつては災厄の獣が、荒々しくはあっても運んできた自然の理がなくなり、混沌がやって来たのです。雪の降る朝は、ハリケーンが荒れ狂う夜に変わってしまいました。災厄の獣を追い払いはしましたが、それはひとつの痛みを別の痛みと取り替えただけだったのです。

渓間の成立

 織り手たちが混乱をもたらしたため、英雄たちの一族は最も強力な知識を封印することにしました。魔法織りは無くなりはしませんでしたが、最も強力な魔法は失われ、二度と教えられることのないように渓間の奥深くに隠されました。「岩山炎」と名付けた猛焼の歯と自分の鎧を子孫に残し、リリーも茨野原へと去っていきました。その剣は今、誠実な心を持つ英雄がその炎を目覚めさせる時を待っています。

 強い織り手がいなくなったため、災厄の獣は渓間に戻ってきました。それは今日まで続いています。私たちの祖先は、もっと工夫をこらしてかつての敵に対処することを学びました。

 嵐を追うカワウソフォークが渓間の中で災厄の獣を追いかけ、その先にどう動くのかをカエルフォークが予測するようになりました。ラットフォークは渓間の知識の守り手として、沢山の知識を蓄えました。その頃の渓間で生まれ育ったリザードフォークは、自分たちが少しだけ持っていた魔法織りの技を鍛えて、強い呪文を唱えることを学びました。リスフォークは災厄の獣を崇めるようになり、災厄の獣の骨の力を使って死者を蘇らせました。ラクーンフォークとバードフォークは谷をくまなく探しまわり、災厄の獣の巣を見つけると危険を避けるためにその場所を記録しました。バットフォークは星々と話をして、アニマルフォークの領域を超えた守りと力の儀式を探し求めました。ラビットフォークは全員のために食事を作り、喜んで土を耕し、収穫の贈り物を分け与えました。そして小さなマウスフォークはいつも勇敢に挑み、今や渓間のあちらこちらにある村や町から敵を追い払いました。

 時が経つにつれ、渓間を救った英雄たちとその行いは伝説になっていきました。渓間は栄えて、この土地を世話するアニマルフォークたちの結束も強まりました。私たちは今でも時々けんかをしますが、大切にしている土地への愛は、世代から世代へと受け継がれています。

幕間

 何てわくわくする物語なのでしょう! バンブルフラワーさん、ここからは私が引き継ぎます。お忙しいでしょうからね。

 さて、それでは渓間について、そしてそれを特別なものにしている方々について私からお話ししましょう。

渓間とは?

 渓間は、ブルームバロウの広大な平原の中の小さな一地域です。気候は温暖で、小さな沼地や池、岩だらけの丘や花畑といった自然のランドマークが広がり、多種多様な野生生物が生息しています。

 訪問者が最初に気付くのは、この地の自然の規模です。群葉は森のように頭上にそびえ、木々はひとつの街を支えられるほど大きく、大きな岩は渓間の住民にとっては山です。渓間の内には、あらゆる種類の動植物を支える5つの自然環境が存在します。

草地
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アート:Piotr Dura

 渓間の草地は、自生する花々や琥珀色の草が生い茂るカンバスです。背の高いススキやノコギリソウはその下を移動するアニマルフォークたちに屋根を提供し、太陽が頭上高くにあっても地面を涼しく保ちます。春と秋にはタンポポの種が雪のように宙を漂います。背の高い草の茂みの間には、柔らかな日差しの中でよく育つカモミールやパートリッジベリーの花が育つ一帯が広がっています。こういった場所で地元のアニマルフォークたちは春と秋に様々な薬草を収穫し、乾燥させて冬に備えます。

 アニマルフォークの農場は草地の中によく見られ、周囲の自然へと繊細に溶け込んでいます。春と夏には、トマトやトウガラシやネギの長い列が畑にひしめきます。寒い季節にはキャベツやハツカダイコン、ニンジンが収穫されます。ベリーは一年中育ち、季節や特定の環境に応じて様々な種類が繁茂しています。

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アート:Lorenzo Lanfranconi

 渓間には池が点在し、アニマルフォークたちはその岸で農作業や釣りをします。睡蓮の葉でいっぱいの池もあり、半水棲のアニマルフォークたちに息継ぎと休息の場所を沢山提供しています。疲れた旅行者は水を見ると安堵するものです――近くに集落がある証拠ですからね。大きな池の澄んだ綺麗な水は地下水路によって、あるいは遠くへと水を運ぶ商い屋の瓶に詰められて、渓間のあらゆるアニマルフォークへと届けられています。

 森の上からはるばる沼地へ、そして渓間の先まで流れているのが長川です。どこでも魚が泳ぎ回っており、忍耐強くそれらを捕まえるアニマルフォークたちにとって滋養のある食糧源となっています。長川はどの池にも流れ込んでいません――池はすべて孤立した水面であり、雨水で満たされています。一方でこの川は沼地へと流れており、その水源は渓間の土地のはるか後方にあります。

 渓間でも最大の池には噴水港があります。これは匠の技が作り出した驚異であり、アニマルフォークたちが友達に会ったり、池を眺めたりするために訪れる人気の場所です。

沼地
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アート:Thomas Stoop

 川の支流が干上がり、ぬかるんだ岸の間に泥と堆積物の層が露出する所に沼地が現れます。背の高い草の陰にはラットフォークの村の入り口が存在し、岸を貫くトンネルからはるか地下の洞窟まで続いています。渓間の至る所から流され、打ち上げられたカタツムリの殻や骨が地面に散らばっています。

 この場所には生命が満ち溢れていますが、そのほとんどは水面下に隠れて見えません。川岸には貝類が生息しています。堆積物に覆われた岩の露頭にはムラサキイガイが育ち、川底の砂にはハマグリが隠れています。これらの貝は時々泥や細砂を吐き出しますが、これは厄介で時には危険となる習性です。不運な放浪者が汚れをかぶったり、宙に飛ばされたりすることすらあるのです。水が干上がると岸に生える植物の根が露出し、よどんで浅い小さな水たまりと節くれ立った迷路を作り出します。昆虫は沼地を頻繁に訪れ、栄養分が豊富な泥の中に卵を産み付けます。

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アート:Samuele Bandini

 渓間の丘の勾配は緩やかで、尖った岩の塊が突き出てアニマルフォークたちに日陰を、そしてこの地を故郷とするリザードフォークには日光浴の場所を提供しています。丘のいくつかはかつて水没していたため、その岩は浸食されて滑らかになっており、背の高いその中に住民が暮らしています。高い影が日光を遮るため植物はまばらですが、岩の割れ目からは野の花が芽吹き、木々は背の高い幹や太い根で大岩を支えています。

 こういった丘の頂上を地面から見るのは難しく、最も小型のアニマルフォークたちに驚きと感動を与えます。岩の頂上まで登るには何日もかかるかもしれませんが、登ったならきっとそれを自慢できることでしょう。

茂み
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アート:Alayna Danner

 渓間の森には瑞々しい群葉が広がり、苔むして蔓に覆われた木々や岩が至る所で見られます。ツタは巣や家を隠してアニマルフォークたちへと安全な隠れ場所を提供しています。この場所のオーク樹の幹は丸く太く、地面近くで又に分かれています。節くれだった外観はその樹齢を示しており、多くの木は何百という季節を生きてきたもので、規模もそれに見合っています。ここの木々は街がまるごと入るほど巨大であり、渓間じゅうからやって来たアニマルフォークたちが調和して暮らしています。

 川沿いの大きな森の端には、三本木市が座しています。アニマルフォークの仲間意識が成し遂げた偉業ともいえる街です。ここは渓間でも最もアニマルフォークが密集した場所となっています。あらゆる種類のアニマルフォークが住んでおり、旅行者や冒険家にとっての主要な拠点となっています。

三本木市
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アート:Grady Frederick

 三本木市は森と長川が接する場所にある巨大な街であり、絡み合った三本の古木を中心に建てられています。ここは渓間でも最大の居住地であり、あらゆる類のアニマルフォークが住んでいます。ここの建物は最小から最大のアニマルフォークまでに対応しており、さまざまな大きさの出入り口や幹線道路に沿った複数の小道、高い天井の公共建築物などで調和のとれた環境を作り出しています。キノコを栽培して作られた傾斜路や階段が、木の側面から樹冠まで伸びています。

 三本木市の建築には、あらゆるアニマルフォークの様式が混ざり合っています。素朴かつ愛らしい方法でぎこちなくまとめたものもあれば、空間と利用性の最大効率をめざして入念に設計され、建設されたものもあります。

有名なロケーション

 樹冠:三本木市の最高地点です。遊歩道が整備されており、冒険家や訪問者、観光客の待ち合わせ場所としてしばしば利用されています。頂上からは渓間全体を見渡すことができ、その素晴らしい景色を一目見ようとアニマルフォークが至る所から訪れます。

 キルト地区:街の中心、三本の木のうち最大のものには一枚のキルトの旗がかかっており、この街でも非常に多様かつ密集した地域を見下ろしています。街を訪れた、あるいは街に居住するあらゆるアニマルフォーク種族が、このキルトに自分たちの意匠をそれぞれ提供しています。

 港湾地区:長川が三本木市に沿って流れる場所は港湾地区と呼ばれており、筏や桟橋、その他の浮遊構造物が広がっています。

噴水港

 渓間でも最大の池に位置するのが噴水港です。大規模かつ多層の構造物で、渓間の水域を航行する多くの船の拠点であり港でもあります。支配者であるグラルブ王はカエルフォークの魔術師であり、強制ではなくほのめかしによって力を振るいます。アニマルフォークたちは村へと向かう長い旅の間、新鮮で冷たい水でくつろぐためにここを訪れます。

 この街に居住するアニマルフォークのほとんどは水棲であり、王の命令で常に何かを祝っているように見えます。街の基部には大きな落とし格子があり、街の下にある埠頭への立ち入りを制御しています。埠頭はタッドプールと呼ばれる騒々しい港湾地区に囲まれており、そこでは王や臣下の監視を逃れて取引を行うことができます。街の各階層には住宅や店舗が自由に水に浮かんでおり、必要に応じて繋ぎ止められます。各階層からその下の階層へは、滑り台や滝で移動が可能となっています。最上部にはグラルブ王の玉座があります。その周囲では睡蓮の彫刻から水の芸術作品が伸びており、王の地位を象徴しています。

文明の先

 渓間の居住地域は平和で穏やかですが、村や街を外れた辺鄙で自然豊かな場所には多くの危険が潜んでおり、そういった地域は「茨野原」として知られています。渓間から出なくともアニマルフォークたちは茨野原へと冒険に踏み出し、神聖な文化的遺跡、古代の遺物が溢れる場所、あるいは存在すると噂されているだけの独特な自然環境を訪れることができます。最も勇敢で大胆な冒険家は渓間の境を越え、災厄の獣の巣穴へと旅をします。無限の魔法エネルギーと多くの未知なる驚異がそこには宿っているのです。

根の迷路

 ラクーンフォークたちは渓間のどこか、広大でのたくる根の迷路に今すぐには役に立たない貴重な遺物のコレクションを隠しています。根が分厚く絡み合う屋根の下の小道が、他のアニマルフォークにはほとんど形容しがたい、あるいは理解できない無限のゴミや宝の山に続いているように見えます。渓間やその先のあちこちを旅するラクーンフォークの学者たちは、ここに隠された秘密に興味を抱く冒険者に喜んで道案内をしてくれます。とはいえ、正しい答えに辿り着くためには「自分の足を信じろ」と言われる可能性の方がはるかに高いでしょう。

永久燃えの樫

 渓間に住むリザードフォークの中には、くすぶり続ける一本のオーク樹を崇める者がいます。これはとても古いもので、自然が秘める破壊の力を象徴しています。リザードフォークにとってこの木は創造と破壊、利用と再利用の循環の象徴です。若いリザードフォークはこの木まで旅をして、くすぶる残り火を木の中心から素手で集めます。鍛冶師はこの残り火を炉の燃料として使い、暗殺者は残り火を陶器や金属、ガラスの容器に入れて持ち歩きます。この容器はリザードフォークの共同体ごとに独自に作られるものです。熱はやがて消えますが、残り火の強力な魔法はリザードフォークの一生に近い間に渡って持続します。残り火が消えると、そのリザードフォークは自分がもうすぐこの世を去るのだと察します。

英雄の崖

 渓間でも最も高い丘では太陽が沈まないと言われています。その丘はあまりに高いために草もまばらで、木々ではなく岩が空へとそびえています。その中に、ひときわ巨大な岩がひとつ突き出ています。マウスフォークたちは勇気と意志の強さを、そしてチームワークと仲間意識を示すためにこの岩に登ります。経験豊富なマウスフォークの集団は一致団結してこの挑戦を素早くこなしますが、若者が初めて登る時には年長者の指導を仰ぎます。岩の頂上では頻繁に、登山者が持ち運べるものは何でも使って、賑やかな祝賀会が催されます。

災厄の墓場
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アート:Christina Kraus

 ここは渓間でも最も危険な地形であり、災厄の獣の骨と広大なタール孔によって形成されています。生と死という原初の循環を奉じるため、リスフォークは定期的にこの場所を訪れます。彼らはその循環が世界を支えていると信じているのです。また、ここは渓間の死体使いが屍術魔法に使用する骨の最高の供給源でもあります――その死体使いがここに踏み入るほど勇敢で、宝物を持ち帰れる限りは。

茸の谷

 謎めいて魔法的な力線が谷底を流れるおかげで、この谷にはおびただしい数の巨大な茸が自生しています。色鮮やかな菌類、食用には適さない植物、奇妙な昆虫がここに繁殖しています。リスフォークたちは有毒で危険な植物を集め、菌類を栽培し、強大な災厄の獣の残骸を漁るためにこの地へと挑みます。

知識の納骨堂

 沼地の中、その地下深くには知識と歴史の保管庫である納骨堂が沢山隠れています。とある無名の村に位置する「知識の納骨堂」はその中でも最も古く、強力な魔法の数々や献身的な戦士たちが納骨堂の中身を守っています。訪問者に納骨堂の中身を見せる許可を出せるのはラットフォークの長老だけですが、その場合でも、安全のために案内者が同行する必要があります。

星界のクレーター

 未知の宇宙的出来事によって、黒曜石で覆われた広大なクレーターが形成されました。夜更けになるとその表面に水が結露し、頭上の天空がクレーターのあらゆる壁へとプリズムのように屈折して映ります。バットフォークはこのプラネタリウムのような構造の底へと旅をし、星界の反射を見つめ、宇宙の奥深くへと入り込み、月光を魔法のエネルギーへと変換します。過去世代のバットフォークは、夜空が秘める永遠の真実の中で祖先に加わります。上空の天体の並びには、彼らから受け継がれた霊的な知恵もまた秘められているのです。

不吉な彗星

 渓間の地下深くのとある池に、ひとつの彗星が浮遊しています。彗星は重力によって周囲の世界を歪めており、ラットフォークがそれを崇拝しています。複雑な洞窟網から水が漏れ出て、彗星の上や周囲を流れていきます。彗星周囲の水は分かれて凍り、その真下には乾燥した氷が一面に張ります。そこは試練場として利用されており、ラットフォークの若者は洞窟の中心に辿り着いて凍れる岩から一塊を削り取らねばなりません。これは力よりも機知と創意工夫を試すものです。過酷で暗く、凍れる洞窟に立ち向かうためには、ありとあらゆる道具を用いる必要があります。

光罠の尖塔

 不安定な尖塔が果てしなく積み重なり、まるで短剣の束のように空を突き刺しています。一日に二回、陽光と月光がそれぞれ尖塔を通過し、渓間にひとつの壮大な影を投げかけます。沢山の鏡がこの光をとらえ、尖塔に沿って散乱し、反射し、やがて尖塔群の中央に埋め込まれた巨大な乳白色の宝石に注ぎ込まれます。年老いたバットフォークは目覚めている時間の視界をここで捧げ、渓間を越えた領域の視界を得ます。その後の彼らの目には星雲にも似た独特の模様が映るようになります。これは上位の司祭の地位へと昇った証です。

燃え立つ沼

 決して燃え尽きずにくすぶり続けるこの沼は、渓間の終点とその先の神秘の地の始まりを示しています。危険で一見果ての無いこの場所にはラクーンフォークの若者たちが訪れます。彼らは当初は生き延びる方法を知らなくとも、自然を信頼し、乗り切るための技術を学びます。ラクーンフォークの楽士はしばしばこの地について歌い、この地を故郷とする奇妙で空想的な生き物の物語を紡ぎますが、それらの物語がどれほど誇張されているのかはラクーンフォーク以外にとっては謎に包まれています。

鉄の森

 断層線の上に立つ深い岩山の中に、リザードフォークの巡礼地が隠れています。鉄でできた古代のトネリコの森です。木々は今も成長しており、枝は次第に鋭く尖り、一方で樹皮は酸化して錆びていきます。この森は鉄の重要な供給源であり、鎧や武器に用いられます。木が太ければ太いほど、中心に近い金属はより貴重で純粋になります。中心から外れた「年輪」には不純物が多く含まれています。最古の木の芯は純粋な鋼です。

花園

 下生えに護られて隠された神聖なる花園は、あらゆる年齢のラビットフォークにとって巡礼の地です。その中心に至る曲がりくねった道は何世紀もかけて整備されたもので、訪れるラビットフォークによって一本の花も傷つくことのないよう、細心の注意が払われています。どれかの花が枯れ始めたなら、それを目撃したラビットフォークが花弁やその他の部位を集めて渓間に持ち帰り、住処を飾ります。古い花が生えていた場所には、再び花が咲くことを願って種が植えられます。花が予期せぬ場所で育った場合、道は永遠に変化します。

空中庭園

 渓間のどこか、とある滝の裏にひとつの陥没泉があります。その壁面は垂れ下がった蔓や苔やその他の植物で覆われており、水面に触れるほど伸びています。この泉は浅く、水面にはおびただしい数の睡蓮の葉が浮いており、陥没泉の入り口の真上に太陽がかかる正午には、カエルフォークが日光浴のためにやって来ます。

古の苗床

 この苗床は渓間で育つ多くの種子の産地です。手つかずの原野であり、独特の野菜や果物が育ち、収穫できる場所として昔から知られています。ここで育つ作物の多くは渓間のそれのように洗練されてはいませんが、ラビットフォークはここで見つかる品種を取り入れ、他の品種と交配して収穫量や風味や大きさを増やす方法を知っています。

ヒマワリの聖域
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アート:Aaron Miller

 手入れの行き届いたこの聖域には背の高いヒマワリが育ち、多くのアニマルフォークが冬に備えて種をここで調達します。一部のアニマルフォークにとってその背は高すぎるため、真夏の間にバードフォークが多くの種を収穫します。気前のよい彼らは、自分たちの取り分を熟成のために高木の隠し場所に保管した後で残りを他のアニマルフォークへと惜しみなく与えます。

災厄の獣

 災厄の獣は巨大で恐ろしい生き物であり、知性は持たず、季節や天候の変化を告げる存在です。彼らは渓間のアニマルフォークよりも遥かに大きく、それが接近する兆候を見た者は慌てて安全な場所へと隠れます。アニマルフォークにとってそれらは神話に近い存在、畏れや恐怖や興奮を呼び起こすものです。危険ではありますが、災厄の獣は新たな季節をもたらすため、生態系の重要な一部となっています。そのためアニマルフォークは作物の不作を災厄の獣のせいであると考えますが、同じほどに豊作も彼らのおかげであると考えるのです。

 すべての災厄の獣が肉食性というわけではありません――中には単にとてつもなく巨大であるため、その存在自体が脅威となっているものもいます。アニマルフォークたちはこうした脅威に対処するため、様々な道具や制度を作り上げてきました。ですがどれほど備えたとしても、彼らとの衝突を回避できる保証はありません。

災厄の獣の力
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アート:Martin Wittfooth

 渓間のアニマルフォークたちは、災厄の獣を大まかに二つのグループに分類しています。非常に強大な獣たちにはそれぞれ名前がつけられており、一体として同じものはありません。小型の獣はより頻繁に見られますが、その力の規模と影響は大型のそれよりも小さなものとなっています。

 災厄の獣の力は魔法エネルギーの現れであり、制御も予測も不可能、生きた自然災害とも言えます。炎をまとって周囲の森を燃え上がらせる狼、一歩ごとに冬をもたらす大鹿、翼に夜を乗せて空を闇で覆うフクロウなどがいます。災厄の獣でも小型のものには、これらに近いながらもより穏やかな力を持つものもいます。空気を燃え上がらせるのではなく熱する、足元の水を凍らせるなどです。渓間のアニマルフォークにとってこれらの違いは途方もなく、時には生死を分けます。

 災厄の獣がいつどこに現れようとも、それらの周囲の世界は変化します。葉は萎れて枯れ、丘は焼けて割れ、あるいは作物が一瞬にして開花します。これらの影響により環境は恒久的に歪み、クレーターや有毒な表土、新たな池が現れます。一方で、災厄の獣とともに訪れては去るものもあります。

季節

 ブルームバロウにおいて、季節は自然に訪れるわけではありません。それらは災厄の獣の出現によってもたらされます――彼らの移動によって気温や環境が変化し、それが季節と呼ばれるのです。渓間では、天候は決して偶発的ではありません。冬は渓間内を移動する吹雪の大鹿によってもたらされます。太陽の鷹は乾いた熱で大気を焦がし、夏の始まりを告げるでしょう。アニマルフォークたちはすべての季節に名前をつけています。一世代に一度だけ起こるものもあれば、毎年必ずやって来るものもあります。各季節は、それを引き起こす災厄の獣の力にちなんで名づけられています。


今すぐ予約を

 『ブルームバロウ』は8月2日に発売されます。お近くのゲーム店Amazonなどのオンライン小売店、その他マジック:ザ・ギャザリングの製品を扱う販売店にて今すぐ事前予約できます。

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