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プレインズウォーカーのための『カルロフ邸殺人事件』案内
2024年2月1日
『カルロフ邸殺人事件』はラヴニカ次元を舞台としているが、これまでのセットとは異なり、その中心となるのは10のギルドではない。ラヴニカで起こっている殺人事件の謎を軸として展開しているのだ。探偵と共に謎を解き明かし、事件を解決し、一見不可解な出来事の背後にある秘密を発見しよう。探偵たちの背景や動機はさまざまかもしれないが、究極的にはひとつの同じ目標を共有している――謎の核心へと切り込み、議論の余地のない唯一の真実を発見することだ。
このセットの出来事は『機械兵団の進軍』からおよそ一年後に起こっている。ラヴニカはファイレクシアの侵略を退けはしたものの、代償を伴わないわけはなかった。この「案内」ではラヴニカのいくつもの探偵事務所と、それらが隆盛するきっかけとなった社会的大変動について詳しく解説する。
『カルロフ邸殺人事件』の物語が好きであれば、ぜひこれらの記事を詳しく読んで頂きたい。また、地元のゲームストア、Amazonなどのオンライン小売業者、およびマジック:ザ・ギャザリングが販売されているその他の場所で、現在予約受付中の製品を調査するのも良いだろう。
これまでのラヴニカ:ファイレクシアからの侵略
ファイレクシア化したヴラスカに導かれた侵略樹はラヴニカの地底街に突き刺さり、その区画をそっくり隆起させた。そして都市次元の朽ち果てた下層をこの数世紀で初めて外気にさらし、ファイレクシア化したゴルガリ団が街へと殺到する道を開いた。他のギルドは何が起こっているのかを理解すると、すぐに結集して反撃を開始した――ほとんどは。イゼット団とシミック連合の一部は防衛側で戦ったが、新ファイレクシアがもたらす技術的・生物学的好機に興味をそそられ、侵略者の側に引き寄せられた者たちもいた――そして過ちに気付いた時には手遅れだった。
侵略から一年が経過した今、ギルドは依然として新たな均衡を見出そうともがいている。民衆の要求に応えようとする中、人員の減少した自分たちの限界を感じているギルドもある。本来の目的をほとんど放棄して閉じこもり、内部の問題を解決することに集中することを選択したギルドもある。進行中の混乱を利用して独自の計画を進行するギルドもある。元より不安定な状況は更に複雑化し、ギルド間の関係に亀裂が生じ、意見の相違や闘争へと発展し、脆弱な状態にあるこの次元は試されている。
各ギルドの現状
10のギルドはラヴニカの力の基盤であり、何世紀もの長きにわたって存在してきた。それぞれが独自の特徴と街における役割、多様な種族やクリーチャー、比類ない文化を保持している。10のギルドはギルドパクトという契約魔法に縛られている。これはラヴニカの都市機能において各ギルドに一定の役割を定め、都市の成長と拡大を促すものである、
現在のギルドパクトの体現者は、灯争大戦中にその座を引き継いだニヴ=ミゼットである。
アゾリウス評議会
侵略が終結するとアゾリウスはいつしか困り果て、参ってしまった。次元外からの侵略戦争中に行われた、あるいは侵略が原因となって行われた数多の犯罪行為を既存の法律は適切に網羅していなかった。そのためアゾリウスの時間と労力の大部分は、ラヴニカが遵守する広範な法典の解釈と更新に費やされている。法律の再構築に重点が置かれたことで、他の業務には最小限のリソースのみが投入される状態となり、まもなく法廷は未解決の訴訟を処理しきれなくなってしまった。
訴訟事件表を片付けるため、アゾリウスは明確な事件と率直な逮捕を優先する方針を定めた。適度以上の時間とリソースの投入を必要とする複雑な犯罪は、優先順位を下げられるか永久に保留され、アゾリウスがリソースの制限を解いてそれらを対処できる不確定な未来を待っている。不満の声が高まるにつれ、彼らはこれらの事件をラヴニカ魔法探偵社へと委託し、自分たちに代わって犯罪を捜査するよう指示した。
《空騒ぎ》| アート:Dominik Mayer |
アゾリウスのギルドマスター代理は灯争大戦以来その職を務めるラヴィニアである。当初は不承不承その座に就いた彼女であったが、次第に自身の責任を受け入れるとともに、職務の遂行に忠実かつ熱心に取り組んでいる。
オルゾフ組
オルゾフ組は理事や聖職者や寡頭政治家からなる精緻な階級構造を成しており、富をその支配者に注ぎ込むことだけを目的として存在する。宗教組織と銀行業務という二重の外面をまとってはいるが、オルゾフ組の本質は犯罪組織であり、この次元のあらゆる商取引へと手を伸ばしている。階級の頂点に座す支配者たちは、何世代もの昔からオルゾフ組に属し、途方もない資産を所有するエリートの家系の出身である。
《Covetous Elegy》| アート:Deruchenko Alexander |
ラヴニカのすべてが悲劇に直面した一方で、オルゾフは商機を見出した。侵略戦争中はオルゾフも他と同じく、ラヴニカの防衛のため懸命に戦った。だがひとたび共通の敵が敗北すると、その後の混乱と不確実性を利用するために迅速に行動した。彼らは契約書を作成し、融資を実行した――どれも法外な高金利で。
とはいえオルゾフは、これらの強欲な行為が世間からいかに批判的な目で見られるかを承知していた。そのため、いくつかの華々しい再建と修復工事を自費で依頼することで、世間の認識を和らげようとも努めた。新たに建設されたラヴニカ博物館の運営管理や展示されるアーティファクトの修復など、そのいくつかは好評を博した。一方でカルロフ街の建設のような計画は、単なる富の誇示にすぎないとみなされた。
ギルドの指導者はテイサ・カルロフである。彼女は侵略戦争中にケイヤからギルドの支配権を奪い取った。だがテイサはギルドの日常業務にはほとんど関らず、蓄えた富をカルロフ一番地に新築した邸宅にて味わう方を好んでいる。ほとんどのギルド業務は引き続きトミク・ヴロナが手掛けている。
ディミーア家
ディミーア家は灯争大戦にて公然と表に出ざるを得なかったが、彼らはそれを決して快くは思わなかった。そのためファイレクシア人がラヴニカに到来すると、再び大衆の記憶から自分たちの存在を抹消するべく一丸となって努力した。侵略を隠れ蓑にし、目撃者と圧倒的な物的証拠を揃え、ディミーアは指導者全員の「抹殺」を仕組んだ。ギルドは壊滅的な打撃を受け、監督も指示もなく、その活動は遅々として最低限の監視と情報収集に留まったのは自然なことのように思えた。ディミーアの構成員ですら、誰が、あるいは何が責任を負っているのかを完全に確信している者は誰もおらず、ギルドの曖昧な状態に本物の説得力を加えてこの策略を確かなものとしている。
ディミーアはラヴニカで最もよく読まれている報道冊子を公然と印刷し、配布し続けているが、密かに他の多くの小規模な報道冊子も街の至る所で販売している。それぞれが異なる、頻繁に矛盾する視点を持っており、それによって彼らは独立性という虚構を維持している。そのようにしてディミーアは一般の人々が入手できる情報を注意深く厳選し、自身の活動から世間の注目を逸らし続けている。ディミーアは彼ら自身が主張するよりも実は活動的なのではないかと多くのギルドが疑っているが、その大半は自分たちの問題で手一杯であり、噂の実証に多くの時間やエネルギーを費やすことはできていない。
《顔を繕う者、ラザーヴ》| アート:Wisnu Tan |
ギルドマスターのラザーヴは誰にも、それどころか自身のギルド員にも気づかれることなく、ディミーアの複数の下級構成員の顔と役割をまとった。そしてその状態から秘密のネットワークを構築する一方、徐々にギルドを世間の目から遠ざけている。ラザーヴと接触を持つのは配下の屍賢者たちだけだが、彼らですら決して直接対話することはなく、秘密の受け渡し場所を用いた情報交換や暗号化された伝言を通じて指示を受けている。
イゼット団
皮肉なことに、侵略戦争からの再建の大部分はイゼット団が主導を務めた。彼らは荒々しく破壊的な実験を棚上げし、再建と公共事業を優先した――通例であれば彼ら自身の大切な計画に比べたなら二の次にされるものだが、理屈上はそれがギルドの中核となる目的なのだ。イゼットは当初、シミックやゴルガリと同様に完成化に手を出したとして非難された。だが再建に対する彼らの予想外に献身的な姿勢により、一般大衆は好意的ではないにしても中立的な見方をするようになった。
その多くは、目下のところ個人的な実験に厳しい制限を課しているギルドマスター、ラル・ザレックのおかげである。この現実的な取り組みはイゼット団以外からは好評であるものの、内部的には多くの軋轢を引き起こしている。多くのギルド員がこの制限に憤慨した。彼らはそれを創意工夫に対する高圧的な制約とみなして屈することを拒否し、かなりの人数がギルドを脱退した。彼らの多くは独立した研究所や工学系企業を設立し、予算は少なくとも好きな実験を続けている。その結果、探偵が使用する捜査用機器のような低価格の補助装置の開発が予想外のブームとなっている。これはニッチな分野ではあるものの、立派に利益が得られることが証明されている。
《カイロックスの電位闊歩機》| アート:Volkan Baga |
再建資金の大半はオルゾフ組からまかなわれている。ラルとトミクの関係のおかげで、極めて有利な条件でイゼットは資金を借り受けたのだ。それでも再建の進行は不安定であり、しばしば困難に見舞われ、他ギルドからの継続的な敵対行為によって幾度も妨害を受けている。
ラクドス教団
復興が進み、当面の命の危機と再建の必要性が徐々に薄れていくにつれ、ラヴニカ人は娯楽に没頭できる機会を、惨劇の悲しみを多少なりとも和らげる機会をますます求めるようになった。そしてラクドス教団は喜んでそれに応じてきた。突発的なパレードや街頭でのお祭り騒ぎに加え、ナイトクラブやサーカスのテントが一夜にして出現した。ギルド員が十分に揃っているなら、これらの自由奔放な光景はいつでも、どこにでも発生した。廃墟の建物に囲まれて瓦礫が満ちる街路を、精巧で騒々しいラクドス教団のパレードが練り歩く様は珍しい光景ではない。ラクドスが提供する娯楽の数は増加し、その内容も非常に乱暴かつ混沌としたものへと成長していった。そのためボロス軍の介入がますます増え、両ギルド間の衝突も頻繁なものとなっている。
《Frenzied Gorespawn》| アート:Kekai Kotaki |
名目上はギルドマスターを務めるデーモンのラクドスは、ギルドの運営にはほとんど興味を示していない。彼は教団のトップスターたちが興行の緻密さと衝撃的要素で競い合う間、ほとんどの時間を自身の隠れ処で過ごすことを好んでいる。
ゴルガリ団
ファイレクシアのラヴニカ侵略の先鋒を務めたギルドとして、ゴルガリ団は今なおその成り行きに苦しんでいる。ゴルガリは他のギルドから満場一致で非難されており、何とか生き残った、あるいはかろうじて完成を免れたその構成員は疎まれ、罵られている。生き延びたゴルガリ団員の多くは大挙してギルドを脱退した。わずかに残った人々は二種類に分類される――ひとつは今なおギルドを信じており、再建を見届けると決意している者。もうひとつは悪名が高すぎて他に選択肢がない者である。
《地底街の掃除屋》| アート:Quintin Gleim |
現在、ギルドの長として活動している者はいない。前ギルドマスターのヴラスカは侵攻の終結とともに失踪し、それ以来姿を見せていない。女王不在の中、ゴルガリ団の諸勢力に残る指導者らは稀な団結を見せてヴラスカを大々的に非難し、彼女の行為と自分たちとは無関係であると示すためにその称号を剥奪した。各勢力は自分たちでギルドマスターの地位を得たいと考えているものの、決定的な勝利を収めてギルドを再び統合できるほどの構成員を集めることができた勢力はない。
グルール一族
グルールは侵略の後に残された廃墟を素早く占領し、あるいは権利を主張し、大胆にその縄張りを拡大した。この動きは瓦礫帯の複数の区域でほぼ同時多発的に発生したため、グルールの様々な氏族が連携してアゾリウスとボロスの弱体化の隙をついているのではないかと多くの人々が疑うようになった。実際には、各氏族はすべて独自の考えで行動していた――彼ら全員がほぼ同時にそのような行動に出たのは単なる偶然である。ラヴニカを再建する取り組みは、グルールからの積極的な妨害を絶えず受けている。
《ボーラク族のぶん回し屋》| アート:Warren Mahy |
この急激な拡大により、グルールの縄張りは彼ら自身がたやすく防衛できる以上の広さとなってしまった。支配を維持しようとグルールが奮闘する中、主にボロスの侵入に対して暴力的な衝突が勃発している。
グルールに単一の指導者はいないが、ここしばらくの間は炎樹族の長である腹音鳴らしが大体においてその立場にあった。そして侵略戦争にて獰猛に戦い、多大な尊敬と忠誠を得たことでその地位は更に強固なものとなっている。腹音鳴らしの力に対する唯一の潜在的な対抗者はザル=ター族だけある。その長であるニーキャは、締め付け蔓の魔術を用いてゴルガリ団の地表への拡散を食い止めたのだ。
ボロス軍
侵略戦争以来、ボロス軍は信念の危機に見舞われている。生き延びたギルド員の多くが、思っていたように次元を守れなかったとして罪悪感と自責の念を抱いているためである。ギルドマスターのオレリアはこの損失をとりわけ深刻に受け止めた。現在、彼らは自らが失敗とみなすものを補うかのように、自分たちが伝統的にラヴニカへの脅威とみなしてきたギルドの――具体的にはゴルガリ、シミック、ラクドス、グルールの――破壊的活動の取り締まりをこれまで以上に積極的に行っている。
《Ordruun Mentor》| アート:Loïc Canavaggia |
この決定は、ボロスの兵力が著しく減少しているという事実によって込み入ったものになっている。ファイレクシア人に対する最前線の戦士として、ボロスは大きな損失を被った。この不均衡を是正するためにボロスは門なしの人々の間での募集活動を強化しており、結果として未熟な多数の新兵が街路を巡回するようになった。加えてボロスの魔道司祭たちは、これまでは高位のギルド員だけが用いていた戦闘魔法を軍団の一般兵へと開放し、その訓練に着手している。
セレズニア議事会
侵略戦争が終結すると、直ちにセレズニア議事会は自ら閉じこもり、部外者との接触を絶った。再建に取り組む間ずっと、彼らは他ギルドからの援助や支援の申し出を一切拒否し、頑なに自給自足を貫いた。またギルド外の者を助けることも拒否し、何よりも自身の回復へと全力を注いだ。
《聖域の壁》| アート:Josu Solano |
ここ数か月間はラヴニカに対して再び門を開きつつあるが、ギルドの内情については以前よりも秘密主義を貫いている。部外者にとって、議事会の現状はひとつの謎である。ギルドの内部に不和がある、世界魂との繋がりが失われている――そのような噂が飛び交っているが、議事会の外にいる者は誰も確かなことを知らない。共に議事会を率いる三位一体のドライアドであるトロスターニは、ヴィトゥ=ガジー中心部の奥深くにある隠し部屋に閉じこもり、ギルド外の者は何か月もの間彼女たちの姿を見ていない。彼女たちはトルシミールやイマーラ・タンドリスといったギルドの精鋭を頼りに、御目通りを求める者たちを排除している。
シミック連合
防衛に回ったギルドの中で、ファイレクシアに最も接近したのはシミックだった。結構な人数のギルド員が、変異原についてのさらなる洞察を得るために進んで完成化を受け――この善意の行動は悲惨な結果を招いた。侵略戦争中、シミックの主要派閥は互いの相違を脇に置いて協力していた。だがそれが終結すると、ゼガーナは指導力の弱さがシミックの無分別な決定の主な原因であると論じて主席議長の座を奪還しようとした。
《進化した謎、ヴァニファール》| アート:Uriah Voth |
だがヴァニファールは他のギルドに援助を求めるという異例の行動をとり、強力な支持を得た。ラヴニカの指導者層に大いに支えられて彼女はその地位を守り抜いたが、ギルド内では依然として彼女の権威に対する絶え間ない挑戦に直面している。
多くの人々が部分的な完成の後遺症によって傷つき、あるいは重度の障害を負った。そのためシミックはラヴニカ社会の善良な施し手に戻るべく治療を提供している。皮肉なことに、彼らが行ったファイレクシアの油の実験はこれらの医学的治療に役立つことが判明した。患者の多くは彼らの所に行くことを躊躇し、怖れている。だが結局のところ、ファイレクシアの痕跡を身体から完全に除去し、元の状態を取り戻したいなら他に選択肢はない。
新たな重要地点
ラヴニカ博物館
《草萌ゆる玄関》| アート:Kamila Szutenberg |
休眠中のヴィトゥ=ガジー内部に収まるラヴニカ博物館は、オルゾフとセレズニア両ギルドの共同事業として設立された。これは侵略戦争後にセレズニアが部外者と協力した唯一の事例である。この博物館には、ラヴニカの過去の試練と勝利を祝う記念品や美術品が多数展示されている。最初のギルドパクト文書のレプリカ、ギデオン・ジュラの黒き剣の破片、永遠神オケチラのラゾテプの残骸といった、ラヴニカの最も象徴的な瞬間や遺物の多くがここに所蔵されている。
ヴィトゥ=ガジーの公共エリアはあらゆる訪問者に開放されているが、樹の内部の大半は依然として議事会員以外は立ち入り禁止となっている。公共の博物館とギルド本部の空間は絡み合っているものの、決して交わることはない。秘密の入り口が数か所存在するが、それらは木材を形作る魔法で封鎖され、ギルドの重要な場所を防衛するエルフの射手団の精鋭によって守られている。ヴィトゥ=ガジーの中心には、セレズニア議事会のギルドマスターであるドライアドのトロスターニがいる。その根はヴィトゥ=ガジーの生きた木と絡み合っており、一見して両者は切り離せない。
カルロフ街
新興地区であるカルロフ街は目に余るほどの富と華やかなひけらかしが集まる、最も人気の高い――そして最も贅沢な――居住区である。幅広の舗装道路が伸び、広大な敷地にラヴニカの裕福なエリートたちが居を構え、優雅で近代的な邸宅は空へと届くよう。鉄の門は魔法で護られ、許可を得た者のみが私有地に立ち入ることができる。
《華やかな支配者、テイサ》| アート:Chris Rallis |
カルロフ街の中心は、オルゾフ組の長にして誰もが認めるラヴニカの歴史上最も裕福な人物であるテイサ・カルロフ、その住まいであるカルロフ一番地である。この邸宅はテイサの富を臆することなく誇示するものであり、その隅々まで畏敬の念を呼び起こし、ラヴニカの社会的階層の頂点というテイサの地位を確立するように設計されている。公園のような広大な敷地は細心の注意を払って整備されており、精巧な窓が並ぶファサード、ガラスの尖塔、アーチのかかる空中通路がその上に伸びている。訪問者が邸宅にたどり着くまでには、長く曲がりくねった道を登って行かねばならず、玄関に着く前からテイサの領域の全容を賞賛することを強いられる。カルロフ街に居を構える多くの企業やその他の世帯は、テイサ・カルロフの贅沢な生活を支えるためだけに存在している。テイサが主催する特別かつ豪華絢爛な祝賀からの招待を受けることは確かな社会的地位の証であると考えられており、非常に人気がある。
ナイトクラブ「地獄騒ぎ」
日が沈んだ後に見たり見られたりするなら、地獄騒ぎをおいて他にない。その中で常連客は夜ごとのダンスや音楽やパフォーマンスを楽しみ、そこでは観客と演者の境界は曖昧になる。ドレスコードは厳格に適用され、騒々しい行為が熱心に奨励されている。ラクドス教団の新星たちは、主要演目であろうとそれ以外であろうと、地獄騒ぎの舞台上でパフォーマンスを披露する機会を求めて競い合う。
地獄騒ぎは西広場に位置している。長年この広場を所有してきた多くの人々はそれを悪趣味で行き過ぎた享楽主義とみなして嘆き、憤慨している。
このナイトクラブのオーナーはジュディスであり、しばしば夜の主要演目の主役として登場する。
ギルドパクト庁舎
《都市の承認》トークン| アート:Carlos Palma Cruchaga |
ギルドパクト庁舎は二度の破壊を被ってきた。一度目は灯争大戦にて、そして二度目はファイレクシアの侵略にて。現在は二度目の破壊から再建中だが、資金の欠乏とギルドからの支援の不足により、その工事は何度となく遅れている。にもかかわらずニヴ=ミゼットは移転を拒否しており、ギルドの高官らは引き続き、がたついて隙間風が吹く現庁舎の骨組みの中での謁見を強いられている。
地底街の隆起
侵略戦争中、地底街の大部分が侵略樹の枝によって地上に持ち上げられ、この数世紀で初めて地下の層が外気に触れた。地下の動植物が日光にさらされ、新たな光に適応して新種や植物の亜種が進化した。これまでに誰も見たことのない植物種が今や地表に存在し、日々新種が発見されている。
門なしの台頭と各ギルドへの不満
ラヴニカ社会の現状は「脆弱」という一言で要約できる。ファイレクシアの侵略によって打ち砕かれ、復興はギルド間の不和と民衆からの信頼の欠如に妨げられ、遅々として安定しない。侵略戦争によって数を減らしたギルド員たちは多くの要求を課せられ、通常の公務や責任の多くを削減せざるを得なくなっている。ラヴニカの事実上の統治構造が崩壊したため、民間人はしばしば自力で身を守ることを余儀なくされた。
《ハズダーの自警団》| アート:Tomas Duchek |
ギルドが体制を整えるのを待つのではなく、多くの人々が自ら奉仕の提供を開始した。その中には防犯パトロールや社会設備の修繕といった、伝統的にギルドに属する分野も含まれている。そしてそのような奉仕として存在するのが、調査会社および探偵会社である。
ギルド外の探偵たち
ラヴニカの歴史の大半において、探偵という職業は重要視されてはいなかった。ボロスとアゾリウスの両ギルドがあらゆる犯罪捜査の管轄権を主張し、ギルド関連の問題は内部で処理される。独立系探偵社は主に民間の小規模な問題を扱い、会社の規模は控えめであった。
しかしながら、各ギルドが通常の任務遂行にも苦労する状況となり、独立系探偵会社が次第に目立つようになった。当初の各ギルドは外部の探偵と協力することを拒否し、門なしの調査員たちを出しゃばりとみなしていた。特にアゾリウスとボロスは、伝統的に自分たちが影響力をもつ分野をギルドに属さない探偵たちが乗っ取ることに激しく反対した。だがギルドの困難が続く中、彼らはしぶしぶ援助を受け入れることを余儀なくされた。
やがて、ギルドと探偵会社は均衡に達した。暗黙の了解により、真の犯罪者が直ちに適切なギルドに引き渡されたなら、ギルドは探偵の捜査に干渉することを避ける。代わりに探偵は捜査と謎の解明のみに集中する――犯人を逮捕したり、投獄したり、判決を下したり、その他の裁きを行うことは固く禁じられている。
捜査を容易にするために、通常はギルド員以外は触れることのない領域へのある程度の立ち入りが探偵へと許可されることもしばしばある。事実多くのギルドの方でも、自分たちで対処するリソースや能力を持たない問題を調査するために探偵を雇うことがよくあるのだ。ほとんどの探偵はギルドとの関係を友好的に保つために最善を尽くしているが、これら非公式の境界線が捜査の厳しい現実にぶつかる際にはしばしば摩擦が生じる。
あっという間に、ラヴニカの探偵事務所の数は10倍に増加した。中でも最も著名なものは、すぐにギルドにも匹敵するような規模へと成長した。それがラヴニカ魔法探偵社である。
ラヴニカ魔法探偵社
ラヴニカ魔法探偵社(The Ravnican Agency of Magicological Investigations/ R.A.M.I.)の歴史
R.A.M.I.は当初、明晰さと真実という対の理想を追求する門なしの執政官、エズリムの追随者による小規模かつ献身的な教団として始まった。
《探偵社社長、エズリム》| アート:Jason A. Engle |
何世紀も前、エズリムはアゾリウスと緊密に提携していた。だがすぐに評議会の終わりのない事務手続きにうんざりした。彼はまた、仲間のアルコンの多くが耐え難いほど独りよがりで、官僚制度の付属物という立場に満足しすぎているとも考えていた。最終的に彼は真実探求者の新たな組織を設立するため、厳選した少数の追随者を連れてアゾリウスからの離脱を選択した。
エズリムの真実教団はゆっくりと成長していった。積極的な勧誘は行わず、新入りの加入は自身の理想を追随するにふさわしいとみなす者をエズリムが見つけた場合に限られていた。この真実教団は次第に捜査原則を洗練させ、困窮する人々の支援に重点を置いた。できるだけ多人数へと援助を提供できるよう、彼らは奉仕に対して最小限の料金のみを請求した。
真実教団は適度な規模になるまで成長を続けた。そして侵略の後、事件の数は現在の団員たちが処理しきれない程に急増した。そのため急速に新たな団員を獲得し、より正式な会社へと拡大を始めた。現在では捜査を手伝うための探偵と多くの補助職員を雇用している。大規模となった組織を支える必要ができたため、奉仕に対する料金も増加している。R.A.M.I.の中核にあるのは今もエズリムの根本方針への深い信念であるが、この組織は成長するにつれてより実用性を重視し、その姿勢は事務的・効率的なものへと変化しつつある。
探偵社本部
R.A.M.I.の本部は浮遊する壮大な建築物であり、すべてを見通す巨大なひとつの目を思わせる。人工的な滝が建物の底から流れ出してその下の地面を常に霧が覆い、「謎という霧の先にある真実を明らかにする」R.A.M.I.の役割を示唆している。地上からその建物に直接至る道はなく、訪問者は自力で飛ぶか、探偵社が提供するグリフィンの乗騎を利用する必要がある。
《一望の反射鏡》| アート:Alfven Ato |
この本部は、歴史的に各ギルドの中立地域であった第10管区広場の一等地に位置している。そこに本部を構えるという選択は、R.A.M.I.の独立性をはっきりと主張している――理論上は。実際には、R.A.M.I.が扱う事件の多くはギルド絡みのものであり、各ギルドの構成員もさまざまな役割で頻繁にR.A.M.I.へと出向している。
本部内はエズリムの体格に合わせて広大な動線が確保されている。中に入ると訪問者はまず大きな中央アトリウムに辿り着き、そこから執務室や研究室、記録庫といった蜂の巣状の施設へと分岐する。エズリムの執務室は最上階にある。
《行き届いた書庫》| アート:Sam Burley |
記録庫には、R.A.M.I.がこれまでに取り組んだすべての事件が解決・未解決を問わず包括的に保存されている。最古の記録は多くの場合、R.A.M.I.がまだ真実教団であった初期の時代に遡る、紙切れに走り書きされた一連のメモにすぎない。記録庫は本部の中心に位置している。そこに通じる通路は魔法的に防御されており、R.A.M.I.の徽章を身に着けていない者には決して感知されないようになっている。
進行中の事件で得られたすべての試料、証拠、その他の物理的資料は建物内で最も厳重に警備され、厳しく入室が制限された証拠保管庫にしまわれる。証拠の改竄を防ぐために複数の対策が講じられている。捜査員が証拠保管庫へと物品を直接追加する、あるいは証拠保管庫から物品を直接持ち出したりすることは禁じられている。保管庫を直接利用できるのは証拠管理者のみであり、各証拠カプセルには、これまでにそれを取り扱ったすべての人物の記録が魔法で保存されている。
検死解剖や遺体の様々な異常を発見するための剖検室も存在する。R.A.M.I.の監察医の多くは元シミックまたはゴルガリのギルド員である。
各ギルドとの協力
他のどの探偵会社よりも、R.A.M.I.はギルドからの独立とギルドとの協力との間で微妙な平衡を保っている。彼らの仕事の大半はギルドからのものであり、捜査を支援するためにギルド員がR.A.M.I.に出向するのも一般的な慣行となっているためである。
《有能な調査員》| アート:Jodie Muir |
しかしながらエズリムは探偵社の自主性を維持することを主張しており、ギルド関連の仕事が多すぎると考える場合は事件の引き受けを拒否することもある。
階層と部門と役割
階層の頂点に立つのはエズリム自身である。彼のもと、探偵社は捜査と支援というふたつの主要部門で構成されている。
捜査部門は10 の部局で構成されており、それぞれがラヴニカの 10 管区いずれかで起こる事件についての業務を監督・管理している。捜査の対象は大まかに次のいずれかに分類される。
- 殺人:違法かつギルド非承認の殺人事件と原因不明の死の捜査。殺人事件の捜査はほとんどの場合、ギルドとの協力のもとに行われる。通常はアゾリウスまたはボロスのどちらかであるが、その死亡事件が発生したギルドの縄張りによってはその他のギルドが関与することもよくある。
- 犯罪捜査:ラヴニカの法に違反する非殺人事件。
- ギルド捜査:犯罪を伴わないギルド関連の事件。ほとんどの場合、これは関係するギルドから直接依頼され、R.A.M.I.とギルドとの間に多大な協力を必要とする。
- 民事捜査: その他すべての、犯罪を伴わない、かつ門なしの事件。
支援部門には探偵の捜査を支えるその他すべての役割が含まれており、3つの異なる部局が存在する。
- 調査分析:支援部門内で最大の部局。証拠分析、剖検、鑑識を扱う。監察医、鑑識魔道士、外科医が人員の大部分を占めている。
- 記録管理:文書管理者は事件記録庫の保守を、証拠管理者は証拠保管庫の保守を担当する。
- 総合支援:各ギルドとの連絡や設備の維持管理といった、R.A.M.I.を円滑に運営する他のすべての機能を担当する。
その他の探偵社
R.A.M.I. はラヴニカで最大かつ最も有名な探偵社だが、多くの小規模な探偵事務所や私立探偵も同様に手堅いビジネスを行っている。彼らの仕事のほとんどはギルドではなく一般市民からの依頼で、遺失物の捜索や仕事仲間の詐欺に関する証拠の収集など、民間の問題で構成される傾向にある。これらの会社はR.A.M.I.ほどのリソースを持たないものの、R.A.M.I.よりも安価にすることで、あるいは書類手続きや堅苦しさを軽減することで独自の地位を切り開くことに成功している。
探偵と各ギルドの間には暗黙の了解がある。だが小規模な探偵社は事件を他へと渡さないために、情報を公開せずにいたり、あるいはギルドに意図的に誤解を与えたりしながら捜査を続けることも珍しくはない。
ハズダー調査局
ハズダー調査局は主として、主要な都市部の郊外地域やいわゆる田舎で活動している。ハズダーはボロス軍が管轄権を持たない地域を担当する有志の法執行部隊であり、ハズダー調査局はその分隊にあたる。彼らはR.A.M.I.よりも粗暴で規律に欠けており、仕事を成し遂げるために乱暴で攻撃的な方法に頼ることも多い。
門外の目
門外の目は独立した私立探偵の緩やかな集団であり、正式な契約や何らかの仲間意識ではなく、必然性と職業上の敬意によって結束している。この探偵たちは主に単独で活動するが、必要に応じて集団全体でリソースや情報を共有している。
アマチュア探偵
謎を捜査する者全員が専門的に調査を行うわけではない。時には鋭い目と決断力だけが――あるいは単に適切な時に適切な場所にいて、何かがおかしいと気づくことだけが――必要な場合もある。
《妨げる若者》| アート:Matt Forsyth |
これらのアマチュア探偵は、元気いっぱいの記者から、ただ近所に目を配っている隠居した老人たちまで、誰でもなり得る。彼らは専門的な機器や正式な調査方法ではなく、人脈や地元の知識、間に合わせの道具を利用することが多い。
商売道具:捜査用機器と鑑識魔術
探偵業界の成長により、ニッチな捜査用機器産業が生まれた。これらは既存の物品を改良したものから、専門家向けに特別に設計された真新しい道具まで多岐にわたっている。
《犯行現場》| アート:Jokubas Uogintas |
新たに発明された捜査用機器の例をいくつか紹介する。
- 詳細な現場作業用の様々な道具とレンズを組み込んだ工具ベルト
- 証拠を目立たせ、現場での改竄を防止するための証拠タグ
- 魔法の残留物を読み取る霊的レンズ
- 光を当てると特定の粉塵が際立って輝くブラックライト
- 物体を魔法的に密封し、停止状態に保持して汚染を防ぐ証拠カプセル
- 捜査現場を封鎖し、傍観者が立ち入りを防ぐために使用される障壁護法
鑑識魔術は、探偵の捜査中に使用されるすべての魔法として広義に定義されている。これらの中にはギルドの魔法を再利用したものや、最近になって創案されたものも存在する。一部の会社は独自の技術や魔法を開発し、企業秘密として厳重に守っている。
《こっちに行ったぞ》| アート:Andreas Zafiratos |
R.A.M.I.は独自の技術や魔法を所持してはいないものの、エズリムの影響のおかげで調査に使用する魔法技術の有効性が向上している。
最新セットの伝承とアートを通して、侵略戦争後のラヴニカを見て頂けただろうか? 『カルロフ邸殺人事件』の各種ブースターや統率者デッキを予約注文するには、地元のゲームストア、Amazon などのオンライン小売店、その他マジック製品が販売されている場所を確認して頂きたい。
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