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『ラヴニカ・リマスター』をデザインする
2023年12月13日
こんにちは、ゲーマーの皆さん!
私はカルメン・クロンパレンズ/Carmen Klomparens、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストのプレイデザイン・チームのゲーム・デザイナーです。本日は今度発売される 『ラヴニカ・リマスター』のデザインについて話しにきました! 私は贅沢なことに熟練のマジック・デザイナーであるマーク・グローバス/Mark Globusとセットを共同リードをして、私達はシンプルなコンセプトから始めてセットを実現させた素晴らしいチームになりました。しばらく隠していましたが、マジックの製品のリードをするのは初めてなので個人的にはこれ以上ないぐらいワクワクしました。
さて、こういうセットを作ることの中には何が含まれるでしょう? 通常のマジックのセットと比較してリマスターのセットに取り組むことの最大の違いは、カードに微調整を加えることができるか、完全に変更するしかないかです。 通常のセットでは、デザインに問題があった場合、マナを増やしたり、タフネスを減らしたり、少し違う効果に変更できる余地があります。全再録セットに取り組むということは、やりたいことに合わせて新カードを大量に作ろうとするのではなく、やりたいことを選んでそれができる既存のカードを選ばなければならないということです。キューブを作るように、これはやりたいことを設定するということです。幸い、マークにはアイデアがありました。
ギルドはスター
ラヴニカで一番クールなものといえばギルドです。こう言うと当たり前に聞こえるかもしれませんが、ラヴニカは様々な人にとって様々なことを表現しているということで、そしてラヴニカに私達が何度も訪れているという事実はみんなが少しづつ正解だということです。ラヴニカがプレイヤーから大きな共感を得ているのは、自己を投影できる複数の景色があるからです。あなたはアゾリウスの魔道士にもボロスのプレイヤーにもなれるし、お気に入りのギルドのマークのタトゥーを入れることだってできます。プレイヤーが『ラヴニカ・リマスター』をプレイしながらこのセットにつながることができることを確実にすることが、最高の体験を提供することであり、そして開発全体を通しての導きであり、私がこの記事で何度も参照することです。
取り掛かってみると、『ラヴニカ・リマスター』は10のギルドを分割して発売していた過去のラヴニカのセットのほとんどとは違って1セットに10のギルドすべてを入れるので、この仕事は私達に向いているとわかりました。『ドラゴンの迷路』は例外ですが、これには私たちが積極的に避けようとしていた3色以上を使ったテーマがたくさんありました。つまり、私達はこのセットをただの多色カードのセットではなくギルドに関するものにしたかったのです。ここで問題が生じました。青緑デッキとシミックのデッキの違いは何でしょう? 最も大切なのはそのギルドです。
ラヴニカには、シミックのデッキの動きについての明確なメッセージが存在し、グローバスの展望はその各ギルドのデッキのゲームプレイがギルドごとの特徴を強調するようにするというものでした。ほとんどの部分でこれは簡単でした——ゴルガリは墓地にあるものを利用し、ボロスは軍勢をもたらし、イゼットは呪文を唱えることを扱います。いくつかはわかりにくいものもあり、デッキを伝えるためにメカニズムに頼ることはできませんでした。たとえばディミーアは変成、暗号、諜報というように2つのカード選別メカニズムと弱いカードが多すぎてデッキを構築できないメカニズム1つを持っています。これはつまり、私達はディミーアの名前付きメカニズムを中心として組まれていない沼と島の入ったデッキがディミーアらしくなるように挑んだということです。
この考え方は、私達がオリジナルのラヴニカ9セットに含まれないカードを探し始めたときに役立ちました。結局のところ、すべてのラヴニカのカードがこれら9セットから来たわけではありません。
カードプールを打ち出す
リミテッド環境で役割をこなすことができるカードやこのセットにピッタリのカードを探すとき、私達は名前付きメカニズムを持つカードよりも見た目と雰囲気がラヴニカらしいものを重視することに決めました。これはつまりクレンコはラヴニカに住んでいるので《クレンコの命令》はOKですが、セレズニアのメカニズムを持っていても《シヴ山の枝焼き》は明らかにドミナリアのセットにいるので駄目ということです。
『灯争大戦』の位置づけをどうするかが、この打ち出し作業の最後にしたことの1つでした。このセットはラヴニカが舞台でありラヴニカのテーマを持っていますが、このセットの多くの部分がプレインズウォーカー・カードに関するもので、そして物語上の大事件が起きたセットなので私達はどれを収録するかについて長い議論をしなければいけませんでした。
最終的にギルドの一員に見えるカードは明らかに問題ないとしました。結局のところ、それらはラヴニカの住民です。それ以外では『灯争大戦』をラヴニカから差別化しているメカニズムを避けようとしました。動員は存在せず、アンコモンのプレインズウォーカーは0枚、増殖はほんの少しだけあります。
展望とカード・プールが決まると、マークは骨組みの固定に取りかかりました。カードが収録される前から、そのカードがどのギルドを代表しているかがブックマークされていて、可能な限り多くのギルドの代表がいるようにすることが優先されました。それをするための最もわかりやすい方法は各セットにあるギルド固有のメカニズムを使うことでした。『ラヴニカ・リマスター』には使用可能な29のメカニズムのうち26個が収録されています! では、どれが脱落したのでしょう? なぜ脱落したのでしょう?
宿根と暗号はパワー・レベルが理由で脱落しました。私達はここで試したカードを強力にプレイすることやデッキを作ることができず、またデザインの美学的なもので優れたゲームプレイを妨げたくはありませんでした。
一方光輝はパワー・レベルの理由で最終的に省略されました。光輝を持ったカードを使ったプレイヤーのほとんどが相手にも効果を及ぼすことに不意打ちされました! 私達はマスターズやリマスターのセットをドラフトするプレイヤーの多くが大体セットごとに1〜2回しかドラフトをしないことを認識していて、彼らが想定しているものと違う動きをするカードのせいでそのフォーマットをプレイする大事な機会のうちの1ゲームが台無しになるリスクは負いたくありませんでした。《恐慌の扇動》は想定通りにプレイされる可能性が十分あったかもしれませんが、この呪文はそのスペースにもっとエキサイティングなカードを探したほうが楽しいと思うのに十分な弱さでした!
セットのバランスを取る
このセットのバランスを取ることはある意味では通常のセットよりも簡単ですが、別の意味では難しいです。『ラヴニカ・リマスター』ではカードをまるごと入れ替える以外には変更を行えないことについては先程触れましたが、そのことが最終的にバランスをとるときに最大の課題を作り出してしまいました。ラヴニカのセットにはコモンのレベルの2マナのクリーチャーは多くないので、私達はある中から選びました。これは一定のレベルまでしか物事を改善できないということなので、ある意味ストレスになりますが、全く同じ理由で楽にもなれます。周りに何があってもお構いなしに強いカードもあるので、多くの場合これは何をデザインする必要があるかを特定する助けになります。
印鑑とギルド魔道士のサイクルはオリジナルのラヴニカを思い起こさせ、大勢に愛されているカードであることは最初からわかっていました。最大の問題点は、これらが同時期の似たようなレアリティのカードより大幅に強かったことです。つまりこれは2マナのアーティファクトによるランプを中心にバランスを取り、1マナか2マナでギルド魔道士に対して妥当な対策が必要だったということです。またドラフトの卓に存在するマナ基盤の数によってそのドラフト全体が大きく変わることもすぐに判明しました。このマナ基盤に踏み込んでみましょう。
卓全体の全10ギルドのマナ基盤の量を適正なものにするため、各ブースターにマナ基盤専用のスロットを設けるというアイデアにたどり着きました。ここからはギルド門、印鑑、ショックランドなどが出てきて、運が良ければ《彩色の灯籠》も出てきます。
この変更は2つの意味でドラフトに良い影響を与えました。ドラフト全体で最低でも24枚のマナ基盤が出てくるので、早い手順でマナ基盤よりもクールな呪文を気楽に優先できるようになりました。また2色半や3色のデッキを組もうとするプレイヤーがマナ基盤不足でそのドラフトを大失敗しないということでもあります。後者の問題を解決するもう一つの方法は、私が「スープ問題」と読んでいる問題を避けられないぐらいマナ基盤に索引をつけることでした。
この名前はプレイヤーが色んな多色セットで自分のデッキに「N色スープ」というラベルを付ける傾向にあることに由来しています。マナ基盤が増えたことで、リミテッド環境で一番強い動きであるひたすらマナ基盤とカード・ドローと除去をドラフトすることが可能になり、アーキタイプとの結びつきはあまり意味がなくなってしまいました。マナ基盤と除去が1人のプレイヤーに吸収されてしまうことでドラフトの卓全体におかしな方法で影響し、そしてその1人とのゲームは対戦相手にとって楽しいものではありません。各ギルドがそれぞれ独自のゲームプランを持ち、プレイヤーがギルドの一員としてプレイすることは私達にとって大事なことでした。これと戦う方法がいくつかありました。
ミクロの視点では、この問題と最もうまく戦う方法の1つは払うコストが大きくない場合テーマに沿ったカードにしようとすることでした。例えば、《イゼットの魔除け》と《電解》を選ぶとき、複数対1を取ることよりも状況に応じて有効なインスタントを持つことのほうが重要なので《イゼットの魔除け》を選びます。
もう1つの手段は色拘束の強いアンコモンを多めにすることです。これらはタッチが難しいので2色デッキを推奨するのに効果的な手段です。これは《悲哀をもたらす悪魔》など多くのアンコモンがそうでしたが、特に《引き裂くシャーマン》などのクアドラプル・シンボルのアンコモンははこの明確な目標を意識して最初から収録されていました。
マクロの視点では、遅く退屈なゲームプレイに対抗する別の手段は、シンプルに攻撃することをもっと強くすることです。可能なときに先に動くことをプレイヤーに推奨したことは、その後のプレイテストで単に印鑑と除去とボムだけを取るのではなく強力な動きとしてギルドと結びつくことをより重視させる素晴らしい仕事をしました。
このセットに取り組んでいる間、私達は特にうまくプレイできないラヴニカの象徴的カードに悩まされていました。製品設計チームと話しあった後、私達は両方の世界に一番良い方法を見つけました。そのようなカードの一部をコレクター・ブースター専用にすることでドラフトの楽しさを維持することができました。特に《群れネズミ》はドラフトでその足跡を目立たせたくないレベルの不愉快さでしたが、このブースター・ファンの仕様はドラフトが終わったらみなさんが《群れネズミ》があることに満足してくれるだろうと実際に思いました。これらのカードはレアリティにもよりますがリミテッドではほぼ機能しませんが、構築フォーマットや統率者戦では楽しむことができます。
アーキタイプ
これらすべてを踏まえて、ギルドの着地点はどこになったでしょうか? 『ラヴニカ・リマスター』で私が「定義済み」のラベルを貼ったアーキタイプは12個あり、10のギルドと枠組みから外れたい人向けの「隠し」アーキタイプが1つあります。
アゾリウスはテンポ・ビートダウンです! 序盤に効率のいいクリーチャーをプレイし、バウンス効果と留置メカニズムで対戦相手を押し留めます。
ディミーアは昔ながらの青黒コントロールです! 回避能力持ちクリーチャーが相手を倒す前にリソースで圧倒するために除去とカード・ドローを活用します。勇気があるなら対戦相手を切削し尽くすことにも挑戦できるでしょう!
ラクドスは早く強く相手を殴りたがっています! 大量の小型クリーチャーを展開し、可能な限り早くダメージを与えることにすべてのリソースを費やします。絢爛は少し展開しすぎることに報酬を与え、暴勇は「すごく」展開しすぎることに報酬を与えます。
グルールは大型クリーチャーと攻撃することが全てです。パワーとタフネスが何より大事で、グルールのカラー・ペアはその軸では最高の費用対効果を与えてくれます。相手のクリーチャーをサイズで圧倒し、湧血メカニズムを使って戦闘の後ろから勝利を手助けします。
セレズニアは好機を待ち自分のクリーチャーを押し留めて召集のリソースとして活用します。最終的にはそれを理解するために《圧倒》のようなカードを使えます。トークンがこのアーキタイプには必須であり、そしてあらゆる種類の召集つきコンバット・トリックが使えます。
オルゾフはじっくりと時間をかけるのが好きで、こっちで何点、あっちで何点と、手遅れになるまで少しづつ対戦相手を追い詰めていきます。そのカードの多くがアグレッシブに見えるにも関わらず、そのどれもが最低ライフ2点分の価値があるというのは秘密です——それらを合計20点分にする方法を見つけるのがコツです。
イゼットはその長所をみんなが知っているギルドの1つです。呪文を唱えることだと! 《弾けるドレイク》や《プテラマンダー》のような後半の飛行クリーチャーが相手を倒すまで、カード・ドローとコンバット・トリックと火力で相手を翻弄します。
ゴルガリがやることはいつでも墓地関係で、そしてそれはここでも同じです。発掘と活用は墓地のリソースを再利用する方法を提供し、そして墓地に落ちるクリーチャーの数を考えるとゴルガリのカードの多くはシンプルに普通のマジックをプレイしているだけでうまく機能します。
ボロスは軍勢を集結させて活用します。大隊は大量の小型クリーチャーで攻撃できるように序盤にそれを並べることを要求し、教導はその中の最小の兵士であってもゲーム中盤から後半にかけて成長することを約束します。
成長といえば、シミックはそのクリーチャーすべてをあらゆる環境に応じて進化・順応させようとします。当然、それらは最初は小型ですが、ゲームの進行を通してカウンターで成長させていくのが成功の秘訣です。
さて、私達は『ラヴニカ・リマスター』で誰も4色や5色のグッドスタッフをドラフトしないだろうと思うほど純粋ではありません。ただ少し一般的ではなくなります。プレイヤーがその道に進もうとするとき、そのデッキには門がたくさん入ることはわかっていたので、このアーキタイプを助けるカードを少し入れておきました。
全体的に、このセットに取り組んだのは夢のようでした。少し贅沢を言うと、私が最初に読んだマジックの小説はアグルス・コスの出てくる初代ラヴニカの話で、私が読んだことをはっきり覚えている最初のプレビュー記事は《稲妻のらせん》で、それを今の人にもたらすという大役を果たせたことにはずっと感謝するでしょう。今回の舞台裏の紹介をみなさんが楽しんでくれると嬉しいですし、もっと大事なのはみなさんが『ラヴニカ・リマスター』を楽しんでくれることです。
(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)
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