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翻訳記事その他
日没を遅らせる者、テフェリー
2021年9月8日
私がデザインするのが好きなカード・タイプはいつでもプレインズウォーカーです。プレインズウォーカー・カードにはたくさんの能力と調整するべき数字、それに強いフレイバーとそのキャラクターの個性を伝える機会があります。作業と調整と反復工程を行い続ければ正解にたどり着くといつも感じています。デザイナーは現実世界ですべてが常に自分の思った通りにはいかないということをすぐに学びますが、その旅路と足跡には満足があります。
多くのセットのプレインズウォーカーの顔ぶれは前もって計画され、取り上げたいキャラクターという点においてはアートやストーリー・チームとの共同努力であり、異なる色やゲームプレイのスタイルを出すようにするという点においてはゲームバランス・デザイナーとの共同努力です。
昼夜のサイクルが日常生活において重要な要素であるイニストラード次元にはテフェリーのような時間魔法の専門家は適任であり、彼は『イニストラード:真夜中の狩り』の物語で重要な役割を果たすことがわかります。我々はテフェリーのカードを過去の彼のデザインと同じように白青にしたいと考えました。これは『イニストラード:真夜中の狩り』とその周辺のセットでの他の色のプレインズウォーカーで釣り合いを取るという意味もあります。我々はそれ以外はメカニズム的にまっさらの状態から出発しました。どこから始めましょうか?
まず完成版のカードを見て、それからどうやって我々がテフェリーの最終的な能力と数字にたどり着いたかを話していきましょう。
時間魔法のデザインは大変なものです。これぞ時間魔法といった感じの呪文の多くは、追加のターンを得るとか手札をカードで満たすなどの巨大で派手な効果を持っています。他にはクリーチャーをバウンスしたりライブラリーの一番上に置いたりといった反復的ゲームプレイを生じさせるものもあります。どちらのカテゴリーもプレインズウォーカーの能力と忠誠値の構成を組み立てるときに注意が必要なデザイン空間です。うまくする秘訣は時間に関係あるような感じだけれども、単独の忠誠度能力に入る「一口サイズ」の能力を見つけ出すことです。
実際、このカードの初期バージョンのいくつかを内部のレア投票でテストしてみて、我々の新しい時間魔法的フレーバーの能力の試みの多くは、うまく使うのがとても難しそう、もしくは相手にすると楽しくなさそうという否定的な意見をもらいました。私はここにあった能力は将来楽しいものに形作ることが可能な細かい要素があると思うので、その詳細を公開するつもりはありません。しかしとりあえずはそれらは構想に戻ることになりました。
白青のテフェリーをデザインする中で、我々はプレイヤーが過去のバージョンのテフェリー、特に『灯争大戦』の《時を解す者、テフェリー》や『ドミナリア』の《ドミナリアの英雄、テフェリー》と比較するだろうということを分かっていました。どちらのデザインもパワーレベルの観点からは我々が内部で想定したよりも少し多く使われていました。私の《日没を遅らせる者、テフェリー》 用アイデアは、依然として強力であるがどこででもは使われないように、もう少し基柱カード寄りに着地させるというものでした。
私は何年か前の『統率者(2014年版)』の最終デザイン・リードだったので、インスピレーションを得るために最初のテフェリーのプレインズウォーカー・カードである《時間の大魔道士、テフェリー》を見てみました。私はこのカードに使われた、パーマネントをアンタップする能力が本当に好きで、そしてそれを各パーマネント・タイプごとに1つに制限すればこの能力をコストを軽くしてつけながら興味深いデッキ構築を促せると考えました。特に、アーティファクトやクリーチャーがない場合に追加の用途を持たせるために、対戦相手のパーマネントをタップするという選択肢を追加しました。
もしテフェリーの能力でマナを生み出すパーマネントを複数アンタップできればかなり強力です。我々が内部でテストした相互作用はテフェリーと緑のマナクリーチャーや『フォーゴトン・レルム探訪』の《宝物庫》を含むマナを出すアーティファクトと組み合わせることでした。また、キューブの多くは強力な無色のマナ生成手段がたくさん入っているので、私はこれがキューブにも良く合うと思いました。
我々は最初の能力がこのカードに少し基柱カード的性質を与えたことに満足すると、もう少し汎用的で使いやすい2番目の能力を目指しました。最初の能力はテンポ・アドバンテージに焦点を当てていたので、2番目の能力をより長期的にカード・アドバンテージを取るものにするのは理にかなっています。我々は占術、ルーティング、《占いの達人》のような逆《闇の腹心》能力など、いくつかの異なる能力を試しました。
いくらかの議論を経て、1つ目の能力にライフ獲得があったほうが良く、2番目の能力は短くて素敵な《予期》効果が我々が求めたものを簡潔に行えると判断しました。(プレインズウォーカーのデザインのもう1つの課題は、すぐに文字数が多くなり望んだ能力を書くためのスペースを使い果たしてしまうことです。)カードを引く能力にいくつか追加の選択があるということは最初の能力とうまく機能する他のカードを簡単に見つけられるということであり、それはテストの中で満足感のあるものだということが判明しました。
テフェリーの奥義は最後に決まった能力で、奥義が最後に決まるというのはプレインズウォーカーをデザインするときにはよくあることです。おかしなことに、プレインズォーカーの奥義というのは普通そのカードの一番派手で最高にクールなことが書いてある部分ですが、大抵はバランス調整に一番鈍感な側面です。プレインズウォーカーの奥義は通常我々が「勝ちすぎ」と呼ぶカテゴリーで、数ターンの間対処されなかったプレインズウォーカーがいてもう勝っている状態でしか発生しないということです。奥義とは無関係にそのゲームに勝つ可能性は高く、そしてプレインズウォーカーの奥義は「勝ち方」であっても勝つために必要な「勝因」にはなりません。
とはいえ、我々はプレインズウォーカーの奥義にそのカードの他のプレイパターンの弱点を補うために特定の目的を定めることがよくあります。今回の場合、私は盤面が空っぽ、もしくは小さい盤面で停滞した状態で、テフェリーはゲームの状況をあまり進めずに戦場に残って[+1]能力を毎ターン使うことができると考えました。そのため、私はそのゲームの状況を速やかに動かし始める奥義が欲しいと思いました。追加のカードを供給することで、この紋章はゲームプランの進展を助け、パーマネントがアンタップされるので、隙を見せる心配をせずに気軽に攻撃したりマナを使ったりできます。また、多人数戦でプレインズウォーカーを維持するのはとても大変な場合があるので、我々はこの紋章が多人数戦で規模が大きくなるところも気に入りました。
満足の行く能力が手に入ったら、次はプレイデザイン・チームと協力して、忠誠度の数字を設定し、このカードのテストを行います。カードにある数字のバランスを調整するとき、我々はよく似たようなもので現実世界において良いパワーレベルで使われる可能性の高い過去の例を参考にします。
私はテフェリーの最初の能力を《野生語りのガラク》のマナを出す用の[+1]能力と比較しました。テフェリーの能力のほうが高い可能性を秘めていますが、どんな状況でも常にその可能性を最大限に発揮できるとは限りません。私の推測によれば、この能力は平均するとガラクのものと同じぐらいの強さです。
テフェリーの2番目の能力について私が比較したのは、ライブラリーの上から3枚のカードの中から選んで手に入れるという点で似ている《思考を築く者、ジェイス》の[-2]能力でした(ジェイスの能力の方がやや強力です)。我々は通常、4マナプレインズウォーカーの忠誠度は3か4から始めます。それは序盤のクリーチャーがプレインズウォーカーを攻撃しても完全に蹴散らすことにはならない程度のちょうどいい値であり、どの忠誠値能力をどういう順番で使うかという興味深い選択に繋がります。《思考を築く者、ジェイス》と比較し、(典型的なゲーム状態におけるこのカードの「最低値」として)[-2]能力を続けて2回使うと大体《抽象からの抽出》になることを踏まえて、我々はこれの初期忠誠値は4が良さそうだと考えました。
もちろんこれは内部での議論をちょっと簡単にまとめすぎたものですが、我々がどのようにしてテストを始めるのにのにちょうどいい数字の設定を見積もることができているか、感覚を掴んでもらえたら幸いです。結局のところ、正しい完成版の数字にたどり着くのは実際のプレイテストの後です。今回は、我々の最初の見積もりがうまくいき、テフェリーはいい感じのパワーレベルになりました。また、我々はこれを出した最初の2ターンの間にどの順番で[+1]と[-2]の能力を使うかによるゲームプレイのパターンの違いにも満足しています。
最終的に、我々は柔軟性と強さを兼ね備えたと思うプレインズウォーカーのデザインにたどり着きましたが、その潜在能力をフルに発揮するためにはある程度のこれを中心としたデッキ構築が求められます。カードが最終的にたどり着く素晴らしい場所です! 私はみなさんがこのテフェリーのプレイを楽しんで、そして『イニストラード:真夜中の狩り』の残りのカードを、我々がそれのデザインを楽しんだのと同じぐらい楽しんでくれることを願っています。
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