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『イコリア:巨獣の棲処』のメカニズム

Matt Tabak
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2020年4月2日

 

 最新セット『イコリア:巨獣の棲処』では、皆さんのような冒険好きなプレインズウォーカーも思わず息を呑むような、他にはない光景が広がる「イコリア」次元を訪れます。巨大なクリスタルの地層や底の知れない洞窟、そびえ立つ高峰など、雄大な自然が皆さんを待ち受けているでしょう。ですが今回のセット名は『イコリア:厄介な観光客の棲処』などではありません。この世界は「巨獣の棲処」なのです。あなたは巨獣とともに生きられるでしょうか? それとも彼らのエサになるでしょうか? 今回新たに登場する能力への習熟度が、運命を分けるでしょう。

サイクリング

 「サイクリング」は、ライブラリーの上の方にある切り札を手に入れる助けになる人気のメカニズムです。

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 サイクリングは、手札のカードを入れ替える能力です。ゲーム後半に、手札にある《ドラニスの刺突者》では勝利を掴めないとき。《ドラニスの刺突者》をコントロールしていて、あと1点のダメージが必要なとき。そんなときに、サイクリングは必要なものを引き込むチャンスを増やしてくれます。

 サイクリング能力は、この能力を持つカードがあなたの手札にあるときに起動できます。サイクリング能力はコストを持ちます。今回のセットではマナのみですが、過去のカードの中にはマナ以外のサイクリング・コストを持つものもありました。コストを支払いそのカードを手札から捨てれば、サイクリングを起動できます。サイクリング能力が解決されたら、あなたはカードを1枚引きます。

 サイクリングを持つカードの中には、サイクリングしたら追加の効果を発揮するものもあります。それらは「[カード名]をサイクリングしたとき、[効果]」の形で書かれています。追加の効果はサイクリング能力によるドローの前に発揮されます。また、《ドラニスの刺突者》のようにあなたが他のカードをサイクリングしたときに誘発する能力を持つパーマネントもあります。それらは、あなたが他のカードをサイクリングした時点でその能力を持つパーマネントが戦場にある場合のみ誘発します。

キーワード・カウンター

 『イコリア:巨獣の棲処』では、「キーワード・カウンター」が登場します。+1/+1カウンターが置かれたクリーチャーは+1/+1されるのと同様に、キーワード ・カウンターが置かれたパーマネントはそのキーワード能力を持ちます。これにより、一部の呪文や能力がいくらか持続するようになります。

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 どのクリーチャーがどの能力を持っているのか記録しやすいように、パンチアウト・カードをご用意しました。使用は任意ですが、さまざまなキーワード・カウンターが盤面に広がった状況でとても便利なのでおすすめです。

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 これらのカウンターは同じものが複数個置かれる場合もありますが、その場合も特に追加効果はありません。これらがクリーチャーでないパーマネントの上に置かれた場合はすぐに機能するわけではありませんが、そのパーマネントがクリーチャーになったら機能しますので、ご注意ください。(ただし接死カウンターと絆魂カウンターは例外で、クリーチャーでないパーマネントの上に置かれてもそのパーマネントがダメージを与えれば機能します。)

変容

 「変容」は、クリーチャーを新しい方法で組み合わせてより強力な怪物を作り上げる、新たなキーワード能力です。もちろん、楽しく刺激的ですよ。

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 変容を持つクリーチャーはすべて、2通りの唱え方があります。1つは、皆さんご存知の通りマナ・コストで唱える方法です。安全安心の方法ですね。きっとあなたの役に立つでしょう。もう1つは、ちょっとわくわくする唱え方です。そのクリーチャー・呪文をただ唱えるのではなく、戦場にいるクリーチャーを「変容」させるのです! どうなるのか詳しくお伝えしましょう。

 あなたがクリーチャー・呪文を変容コストで唱えるとき、挙動がいくつか変わります。まず、支払うのはマナ・コストではなく変容コストになります。それから、その呪文は対象を取るようになります。対象を具体的に言うと、「あなたがオーナーであり人間でないクリーチャー1体」です。イコリア次元の人間は生き残ることだけに全エネルギーを消費しているため、彼らの細胞は変容に対応していないのではないかと私は考えています。変容はその呪文を唱える場合のみ使えます。変容を持つクリーチャーが他の方法で戦場に出る場合は、単にそのクリーチャーが戦場に出るだけです。

 変容で唱えたクリーチャー・呪文が解決されると、それは戦場に出る代わりに対象にしたクリーチャーと1つに混ざります。変容で唱えたクリーチャー・呪文のコントローラーは、それを対象にしたクリーチャーの一番上か一番下に置きます。最終的にカード(やトークン――これについてもすぐにご説明します)が重なるように置かれ、それら全体で1体のクリーチャーとして扱われます。そのクリーチャーは一番上のカードの特性をすべて持ち、さらにその下に置かれているカードすべての能力もすべて持ちます。

 例えば、《苔毛のゴリアク》を対象に《雲貫き》を変容コストを支払って唱えたとしましょう。《雲貫き》が解決されて、あなたは《雲貫き》を《苔毛のゴリアク》の上に置きました。その場合は、変容と到達と、この後すぐに説明する誘発型能力、そして警戒を持つ赤の5/4の恐竜になります。《雲貫き》を《苔毛のゴリアク》の下に置いた場合は、同じ能力を持つ緑の2/4のビーストになります。

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 大抵の場合、上か下かを決める基準はパワーとタフネスになると思います。いくつかの能力を持った5/4と同じ能力の2/4では、普通5/4の方が良いですからね。ですが、クリーチャーの名前や点数で見たマナ・コスト、色、クリーチャー・タイプはすべて一番上のカードにもとづいて決められることにはご注意ください。珍しいケースですが、大型クリーチャーを倒したり追放したりできる呪文を回避するためにあえて小さい方のクリーチャーを選ぶ場合もあるでしょう。

 変容で唱えたクリーチャー・呪文は、解決されても戦場に出ることはありません。すでに戦場にあるクリーチャーの特性を変化させるだけです。元のクリーチャーがタップ状態であれば、その新しいクリーチャーもタップ状態です。元のクリーチャーの上にカウンターが置かれていたり、オーラや装備品がつけられていたりしても同じです。そして変容させたクリーチャーは引き続き「あなたがオーナーであり人間でないクリーチャー」であるため、それを対象にまた別の変容を持つクリーチャー呪文を唱えて3枚重ねにすることもできます。この場合もルールは同じです。新たに追加されるカードを一番上か一番下に置いて、変容先のクリーチャーの特性を変化させます。でも、同じクリーチャーを何度も変容させる理由は?

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 「このクリーチャーが変容するたび」の誘発型能力がその1つです。変容で唱えたクリーチャー・呪文が解決されたら、変容後のクリーチャーが持っていて条件を満たした誘発型能力がすべて誘発します。(変容前の)戦場にあるクリーチャーが持っている能力も、新たに重ねて置かれるクリーチャー(変容で唱えたクリーチャー・呪文)が持っている能力も誘発します。それらの能力すべてが誘発し、好きな順番でスタックに置かれます。

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 この《逆毛の猪》のように、自身のカード名が書かれた能力を持つものもあります。ですがルール上、能力に自身のカード名が書いてあった場合、それは「それ自身」を指すだけなのでご注意ください。例えば、変容で《逆毛の猪》の上に《雲貫き》が置かれた場合でも、《逆毛の猪》の能力は機能します。

 すべてうまくいけば、あなたの手で変容した巨獣が対戦相手を打ち砕き、あなたに勝利をもたらすでしょう。しかし、相手が運良くあなたのクリーチャーを戦場から取り除く方法を持っているかもしれません。除去された場合はどうなるのでしょう? 変容したクリーチャーが戦場を離れると、それを構成するカードはすべて移動先の領域に置かれます。つまり変容したクリーチャーが死亡すれば、すべてのカードが墓地に置かれるのです。なお「あなたがコントロールしているクリーチャーが1体死亡するたび」などの誘発型能力は、1回しか誘発しません。追放される場合も手札に戻る場合も、ライブラリーに置かれる場合も同様です。ライブラリーの一番下や、一番上から3枚目など、特定の場所に置かれる場合は、置く順番をあなたが決めます。

 さて、ここまでは変容で唱えたクリーチャー・呪文が解決された場合の挙動をご説明しました。では解決されなかった場合は? スタック上にある間は変容で唱えたクリーチャー・呪文も呪文であり、打ち消せます。それが打ち消されたら、皆さんの予想通り墓地に置かれます。さて、ここからは予想と異なるかもしれません。クリーチャー・呪文を変容で唱えたものの、その対象が不適正だったり戦場になくなっていたりする場合は、変容で唱えたクリーチャー・呪文はそのまま解決され、戦場に出ます。だから「オールイン」のリスクは大きくありません。ただし1つだけご注意ください。その呪文は解決され、クリーチャーが戦場に出ますが、「このクリーチャーが変容するたび」の誘発型能力は誘発しません。

 それから、クリーチャーを変容で唱える際の対象の要件は「あなたがオーナーであり人間でないクリーチャー」であることを思い出してください。(厳密に言えば、変容で唱えたクリーチャー・呪文とオーナーが同じであり人間でないクリーチャーとなりますが、あなたがオーナーでない変容を持つ呪文を唱えるケースは極めてまれです。)要件の中に「トークンでない」の文言は含まれていません。つまりトークンも、トークンでないパーマネントと同様に変容できるのです。変容したクリーチャーの一番上がトークンなら、そのクリーチャーはトークンです。トークンでないカードが一番上なら、それはトークンでないパーマネントです。

 変容はルールに多くの革新をもたらすキーワード能力であり、馴染みにくいかもしれません。ですがこれだけは言わせてください。あなたが率いる怪物たちをかけ合わせて超強力な怪物に育て上げ、ライバルを蹴散らすのはこの上ない快感です。皆さんがどんな組み合わせを見せてくれるのか、楽しみで仕方ありません。

相棒

 『イコリア:巨獣の棲処』には10体の「相棒」がいます。どれも伝説のクリーチャーであり、それぞれデッキ構築のルールに関わる相棒能力を持っています。あなたの開始時のデッキがそのルールに沿っていれば、その伝説のクリーチャーはあなたの相棒として戦ってくれます。例えば、壮大なる友人のケルーガを相棒として選ぶ場合、あなたの開始時のデッキに点数で見たマナ・コストが1や2のカードを入れることはできません。

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 相棒として選べるのは、1ゲームに1体のみです。選ばれた相棒は、ゲーム開始時にはメインデッキに入りません。代わりに、サイドボードに入ります。(サイドボードを用いないカジュアル・プレイでは、ゲーム外部のコレクションに置いておきましょう。それで同じルールが適用されます。)つまり、プレイしているフォーマットの最小デッキ枚数を満たすには、相棒を含めずにその枚数にする必要があります。構築フォーマットでは、相棒は15枚のサイドボードのうち1枠を占めることになります。ゲームを始めるに際し、あなたは相棒として選んだカードをすべてのプレイヤーに公開します。そしてゲーム中に一度、あなたは選んだ相棒をサイドボードから唱えることができます。その行動にはクリーチャー・呪文を唱えるための通常のルールが適用されるので、唱えられるのはあなたのメイン・フェイズ中だけです。

 選んだ相棒をサイドボードから唱えたら、あとはそのままゲームに残ります。その呪文はスタックに置かれ、解決されればあなたのコントロール下で戦場に出ます(イエーイ!)。打ち消されれば墓地に置かれます(えー!)。そのゲーム中は追放されたり、手札に戻ったり、ライブラリーに戻ったりします。ゲームが終了するまではサイドボードに戻りません。

 相棒のデッキ構築ルールが適用されるのは、あなたの開始時のデッキ、つまり各ゲームでプレイを始めるときのデッキだけです。サイドボードに入っているカードは考慮されないので、サイドボードまでデッキ構築ルールに従う必要はありません。加えて、デッキ構築ルールを無視して相棒を持つクリーチャー・カードをメインデッキに入れることもできます。これは特に、デッキ構築ルールに沿うのが恐らく不可能なブースタードラフトに関係するでしょう。もしドラフトで実現できれば、栄光の勝利が待っていますよ。

 さて、相棒は伝説のクリーチャーで、開始時のデッキに入っておらず、デッキ構築に大きな影響を与えるとのことでした。どこかで聞いたことがあるような? そう、統率者戦ですね。統率者戦を楽しむ皆さんは、サイドボードがなくても相棒との戦いを楽しめます。「統率者デッキ」には相棒が含まれているのです。それはゲーム開始時にはゲームの外部にあり、デッキの100枚に含まれません。なお相棒を使うにはデッキの他のカードと同様に、あなたの統率者もデッキ構築のルールに沿ったものである必要があります。

 怪物が闊歩するイコリア次元では、人間の存在などちっぽけなものかもしれません。ですが少なくとも、あなたはひとりではありません!

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