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不和のトロスターニ

Melissa DeTora
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2018年9月14日

 

 DailyMTG読者のみなさんこんにちは! この記事はみなさんに『ラヴニカのギルド』の新しいプレビュー・カードを紹介するべく、開発部プレイ・デザイン・チームのメリッサ・デトラがお送りします。今回紹介するカードはこのセットの中でもわたしのお気に入りのうちの1枚です。これはプレイ・デザイン・チームがその完成までを厳しく監視し、わたしたちの多くのデッキでその中核となったカードです。これがそのカードです。

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 もうご存知の方も多いかもしれませんが、『ラヴニカのギルド』でのセレズニア(白緑)のメカニズムは再録メカニズムである召集です。召集はこれまでにスタンダードのセットのメカニズムとして何度か使われてきました。メカニズムを再録するとき、わたしたちはそれの新しい工夫、もしくは独特な使い方を探します。『ラヴニカのギルド』のプレビューを見るとその例がいくつかあるとと思います。召集を持つ呪文を唱えるときにより強くなるカードのように、それらを唱えることを助けるためにクリーチャーを使うことで利益が得られるカードが存在します。

 構築フォーマットで成功するメカニズムを作るために、わたしたちは前段カードと受益カードという2種類のカードを必要とします。前段カードはマッドネス・デッキの《マーフォークの物あさり》のような、そのメカニズムを支援するためにデッキに入れるカードです。受益カードはそのメカニズム自体を使うことで利益が得られるカードです。マッドネスを例にすると、《床下から》は捨てることで払ったぶんのマナに応じた大きな効果を発揮して恩恵を得られるカードです。

 プレイ・デザイン・チームが構築フォーマット向けのメカニズムに関連したカードのデザインをするとき、その目標の1つはプレイヤーがどのようにデッキを組めばいいのかを示す方向性を用意し、そのメカニズムを軸としてプレイヤーが興奮できるように強力な前段カードと価値ある受益カードを作ることです。

 《不和のトロスターニ》が最初にプレイ・デザインに引き渡されたとき、それは召集に恩恵を与えるカードでした。セット・デザイン・チームはセレズニアのメカニズムを使うことでプレイヤーに恩恵を与えるレアか神話レアに興味を持っていて、トロスターニはその試みの1つでした。最初、これは呪文を召集するたびに+1/+1カウンターを与えるテキストを持っていました。これは『ラヴニカのギルド』の召集呪文を全部試させようという気にさせる楽しいカードでしたが、そのデザイン自体がわたしたちの好まないプレイパターンをもたらすものでした。

1.これは罠だった

 カードに「あなたが召集したとき」と書いてある場合、そのカードが最も強くなるように、可能な限り多くの召集を持つカードを使うことが求められます。これは同時に、召集カードを有効に使うために軽いクリーチャーやトークンを出すカードをプレイする必要があるということになります。このデッキは極めてA+Bで、最初にクリーチャーかトークンを引き、次にトロスターニを引き、最後に召集カードを引かなければ回りません。間違った順番でなにか引いてしまうと、デッキ全体が機能しなくなります。

2.これは脆すぎた

 結局その仕込みの後に残されたものは大きなクリーチャーです。特に結局はこのカードをプレイしなければならないので、わたしたちはこのカードをプレイしたことの恩恵を得られたとは感じませんでした。このカードのデザインは白紙に戻ってしまいました。

 さらにプレイテストと会議を行った後、プレイ・デザイン・チームはわたしたちが間違ったものに対してプレイヤーに報酬を与えていたことに気が付きました。召集を持つカードをプレイしたことに見返りをもたらすことはとても狭く、方向性が決まりきっています。わたしたちはデッキがそれ自身を作ることを望んでおらず、プレイヤーに自分たちで戦略やコンボを見つけてほしいと考えています。召集カードをプレイすることに恩恵を与えるカードがあれば、あなたは召集カードをプレイするでしょう。それはプレイヤーにデッキを構築する方向性を与えますが、創造的なデッキ構築を促しはしません。わたしたちは違った種類のセレズニアのデッキを可能にするための新しいトロスターニのデザインを探しました。

 わたしたちは、どうやってトロスターニを純粋に召集に恩恵をもたらすカードにせずに召集を奨励するテキストにするかを決める際に、いくつかのことを話し合いました。頌歌(《栄光の頌歌》が由来の、自分のクリーチャーに恒常的に+1/+1するパーマネントを表す用語です)効果が取り入れられたのがこの時です。トロスターニが頌歌なら、プレイヤーは大量のトークンと小さなクリーチャーをプレイしたくなり、クリーチャーの大群と相性が良いので召集カードをプレイする方向に目を向けるでしょう。

 プレイヤーに召集デッキを組む気にさせるもう1つの方法がトロスターニを前段カードにすることでした。トークン生成がついたのがこの時でした。戦場に出たときにトークンを生成する誘発型能力があれば、プレイヤーは自然と召集呪文をプレイしたりトークンを強化するなどのそれらのトークンでできる事柄を探すでしょう。

 最終的に、トロスターニはトークンを生成して自軍に+1/+1する防御的なクリーチャーになりました。彼女は自身で5のパワーと、8のタフネスを用意できるのでデッキに他のトークン生成手段がなくても使われるかもしれませんが、多くのクリーチャーやトークン生成手段、そして召集呪文をプレイすればもっと強くなります。

 
アート:Chase Stone

 カードをデザインするときに、プレイ・デザイン・チームが頻繁に目を向ける物事の1つがクリーチャーのサイズ設定です。トロスターニはなぜ具体的に1/4なのでしょうか? セレズニアは基本的に全体除去に弱く、そしてわたしたちは彼女を全体3点ダメージを含む何種類かの除去に対して生き残れるようにしたいと考えました。頌歌が定番除去でやられてしまうのは悲しいことなので、これのタフネスを4にして《稲妻の一撃》や《轟音のクラリオン》から生き残れるようにしました。

 こぼれ話:《轟音のクラリオン》はアンドリュー・ブラウン/Andrew Brownによってデザインされ、元々の名前はBronadoと言いました。プレイ・デザイン・チームは今でもこれをそう呼んでいます。

 では最後に、この一番下の文章は何なのでしょうか? トロスターニには神話レアですが、複雑さがとても低く、またド派手というわけでもなかったので、わたしたちはこれにもう少しスパイスを効かせたいと考えました。スタンダードのプレイテストを続けるとともに、わたしたちはフューチャー・フューチャー・リーグ(社内で将来のスタンダードをテストするフォーマット)で穴とカードを改善する方法を探しました。

 わたしたちは《人質取り》を多くプレイしていて、そしてセレズニアは最も除去の弱い2色のペアであり、アドバンテージを得る手段がほとんどなかったのでこのカードにとても弱く、特にこのカードでクリーチャーを盗まれたときはそれが顕著でした。わたしたちはトロスターニに《人質取り》や将来スタンダードに作る《支配魔法》の類に対抗する手段として《家路》のテキストをつけることにしました。さらに、この《家路》のテキストは統率者戦のようなよりカジュアルなフォーマットで強く、競技スタンダードの外側にいるプレイヤーに対して訴えかける部分を持つカードがあることは追加の利点です。

 《支配魔法》といえば、今日はもう1枚プレビュー・カードがあります。そのカードはレアの分割カード・サイクルの1枚です。わたしたちの分割カードにおける目標は、それぞれの半分に狭いけれども強力なカードを持たせることでした。それぞれの半分は限られた用途しかありませんが、2つを組み合わせると影響の大きなカードになります。これが《詭謀 // 奇策》です。

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 わたしの『ラヴニカのギルド』のプレビューは以上です。このあと数週の間に、プレイ・デザイン・チームのメンバーのダン・マッサー/Dan Musserとアンドリュー・ブラウンが「Play Design」でFFLのデッキとMファイルを掲載する予定なのでお見逃しなく! 私はたまにしか記事を書きませんが、毎週月曜の午後2時から5時(米国太平洋時間)にtwitch.tv/magicで配信している「weekly R&D」やTwitter(@MelissaDeTora)で会うことができます。

 読んでくれてありがとう、ではまた次に会うときまで『ラヴニカのギルド』プレビュー・シーズンを楽しんでください!

メリッサ・デトラ

(Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru)

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