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『基本セット2019』を作り出す
2018年6月19日
『基本セット2019』のプレビューへようこそ! イーサン・フライシャー/Ethan Fleischerです。『基本セット2019』のデザインをリードしました。皆さんにこのセットが何であるか、そして我々がどのようにこのセットを作ったかについてお話したいと思います。
基本セットとは?
基本セットは、比較的新しいマジックのプレイヤーにとって理想的な初めてのブースター体験の役割を果たすスタンダードで使用可能なブースターです。基本セットは素敵な新カードと新しいリミテッド環境を経験豊富なプレイヤーに提供するという二次的な目標も持っています。
基本セットのデザインを深く掘り下げる前に、『基本セット2019』に取り組んだチームの紹介をしたいと思います。下をクリックするとこのセットに生命をもたらした有能な人たちの紹介がご覧になれます。
展望デザイン・チーム
セット・デザイン・チーム
新規プレイヤー向けのセット
マジックは偉大なゲームです。最も偉大なゲームだと思うこともあります。私がマジックから長年に渡って得た素晴らしい事柄を新しいプレイヤーにも得てほしいと考えました。しかし、入門レベルのプレイヤーに対する参入障壁は大きなものでした。
最大の障壁の1つは複雑さです。私はマジックよりも複雑なゲームがあると聞いてショックを受けました。私は複雑なゲームプレイが好きで、もしあなたがマジックの大ファンで、この記事を読んでいるなら、多分同じだと思います。この基本セットでは、その学習曲線を少し緩やかにするためにいくつかの分野で複雑さを下げました。我々は通常のセットよりもバニラ・クリーチャーを少し多くしました。このセットには常盤木以外のキーワードは存在しません。さらに新しいプレイヤーが最初の数ゲームで知る必要が少ないいくつかのキーワードを削除しました。
プレイヤーがゲームで遭遇する複雑さは各カードの挙動を理解することだけではありません。盤面の複雑さ、つまり戦場にあるパーマネント全ての相互作用を理解することは、なんとかする必要がある別のタイプの複雑さです。クリーチャー中心の現代のマジックでは、把握できなぐらいパーマネントが大量に出た状態で戦場が膠着することが時々起こり得ます。自分のクリーチャーで安全に攻撃できるかどうかを考え出すのは難しく、そのことがより大きな戦場の混雑を呼び起こすことがあります。
戦場にパーマネントが増えすぎることは展望デザイン・チームで一緒に働いていたデザイナーのひとりであるジャッキー・リーの主要な懸念要素でした。彼女は盤面の複雑さを増加させるパワーとタフネスの割合や、ゲームごとの戦場のパーマネント数やその他の要素の分析を多く行いました。プレイヤーがクリーチャーで安全に攻撃できるかどうかの判断を簡単にするための彼女の提案の1つが「[カード名]は[色]のクリーチャーによってはブロックされない」というテキストでした。対戦相手がコントロールしているクリーチャーがそれぞれ何色かはとても見やすいので、攻撃するかどうかを決めるときににその色のクリーチャーを素早くふるい落とすことができます。私は試しにこの能力を持ったクリーチャーのサイクルを作ってみるというアイデアが本当に気に入りました。
もちろん、プレイヤーがそのクリーチャーを実際に使わなければ望むように複雑さは軽減されません。「[カード名]は赤のクリーチャーによってはブロックされない」というテキストをだけがついた白のクリーチャーはスタンダードでは使い物になりません。我々はこのサイクルを構成する各カードに適切な方法で敵対色を対策となる能力を1つ加えました。
このサイクルのためのクリエイティブ的な処遇を見つけることはかなり困難でした。私はこの5枚のカードにまとまりのあるコンセプトの要素を求め、そしてそのコンセプトはブロックされない能力に焦点を当てたいと思いました。他の能力にはプレイテストの結果に応じて変更できる柔軟性が必要なのは分かっていたからです。このセットのクリエイティブ・リードであるジェームズ・ワイアット/James Wyattは素晴らしい答えを思いつきました。何千年もの間人々の想像力に火をつけ、ファンタジーの定番であり、マジック:ザ・ギャザリングではひどく過小評価されているクリーチャーといえば? 馬です! これこそこの記事におけるプレビュー・カードの最初の5枚をもたらすものです。
もうすでに最新シーズンの「Spellslingers(英語動画)」の冒頭で《蔦草牝馬》を見たことがあるかもしれませんが、そのデザインをもっと深く見ていきましょう。
少し時間を遡って『ドミナリア』の展望デザインの時、リチャード・ガーフィールド/Richard Garfieldは『アルファ版』などからの初期のマジックのカードのアップデート版を数多くデザインしました。彼のデザインの中でとても有望そうだったものの1つは、「ラッキー・チャーム」サイクルを基にしたアーティファクト・クリーチャーのサイクルでした。
この手のカードはいつでも経験の浅いプレイヤーにとても人気がありました。それらのプレイヤーはライフを得るのが大好きで、デッキ構築に明確な方向性を与えてくれるカードを好みます。これらのカードの問題点は、これらがとても弱いことです。純粋にライフを得るだけの呪文は、ほとんどの場合カード1枚分の価値がありません。リチャードの答えは、同じ魅力的な効果を別の面で実用的なアーティファクト・クリーチャーにつけることでした。どういうことか、マジック25年の歴史の中で、誰もそれをやろうと考えたことがなかったのです。
『ドミナリア』に入れる枠はなくなってしまいましたが、私はこのデザインを『基本セット2019』へ熱心に持ち込みました。しかしこのセットで反復工程を行うにつれて、私もまた空間が足りなくなってきました。オーノー! 私は『マジック・オリジン』の《プリズムの指輪》から発想を得て、5枚のカードを1枚に凝縮しました。それが次のプレビューカード、《金剛牝馬》です。
さて、隠さずに言うと、このカードのアートについては少々議論がありました。ある人はこれがマジックの典型的なスタイルから離れすぎていると言いました。他の人は境界線を広げているのでこれが好きだと言いました。しかし双方ともこれが最も1988年の「Trapper Keeper」に登場しそうなマジックのアートであることには同意しました。個人的にはこれが大好きです! もっと近くで見てみましょう!
アート:Alayna Danner |
これらの新しい馬で、馬デッキはスタンダードで輝く時が来るのでしょうか?
最初にゲームを始める前にルールブックを端から端まで読むことを好む人もいます。すぐにゲームを初めてプレイしながら学ぶほうが好きな人もいます(私もそうです)。そういうプレイヤーのために、我々は『基本セット2019』に何枚か「ティーチング・カード」を入れました。マジックの例外ベースのルールのシステムとは、つまりカードが通常のルールの例外を作るということです。我々はプレイヤーに例外を作るカードを見せて、通常のルールが何であるかを教えることで、このシステムを強みとして使うことができます。
速攻を持つクリーチャーは、プレイヤーに召喚酔いについて教えます。
警戒を持つクリーチャーは、プレイヤーにクリーチャーが攻撃するときに普通はタップされることを知らせます。
「[カード名]は、2体以上のクリーチャーによってブロックされない」は、プレイヤーに普通は複数のクリーチャーで1体のクリーチャーをブロックできることを教えます。
これら全ての単純さと教えることは誰でもマジックを好きにさせるわけではありません。基本セットで重要なことは我々のゲームの楽しさ、興奮、独特さを表すことなのです。我々はプレイヤーの心を揺さぶり、このゲームには彼らの最初のコレクションよりも多くのカードがあり、正しい組み合わせれば信じられないぐらい強力なことができるということをほのめかす必要があります! これらのコンボはプレイヤーにデザイナーが想定外の相互作用であるビデオゲームでの裏技を見つけたような気分にさせるべきです。我々はプレインズウォーカー・デッキにこれらのコンボの種を蒔いておきました。
このセットの残りがプレビューされれば、あなたはより強力な他のコンボに遭遇するでしょう。それらのいくつかは我々が意図的に種を蒔いたものですが、実際いくつかは我々の想定外のものです。幸運を祈ります!
我々が用いた『基本セット2019』をよりとっつきやすくするための他の道具が、芳潤なコンセプトとトップダウンのデザインです。たとえ文章の多いカードがあったとしても、それがなじみのある物語を持っていれば理解しやすくなります。あなたは昔の小説や映画やロールプレイング・ゲームで見覚えのある、たくさんの古典的ファンタジーネタを見ることになるでしょう。また我々は1977年の「アドバンスド・ダンジョンズ&ドラゴンズ」モンスターマニュアルの中で見つけられない比喩を引用するようにマジックをアップデートする機会にも恵まれました。
私にとって、スケルトンはレイ・ハリーハウゼン/Ray Harryhausenの古い映画の動く骨の束です。骨はバラバラになって、主人公を脅かすためにまたくっつきます。
しかし私の子供たちにとっては、スケルトンは弓を持って木の後ろに隠れていて待ち伏せして矢を射るものなのです。我々はこれや他のいくつかの21世紀のファンタジーのコンセプトを『基本セット2019』で採用しました。
生きることは大変です。マジックは多くの人にとっての現実逃避のファンタジーであり、人生がもたらすストレスから逃避し、強力な魔法使いの役になれる手段の1つです。人々が他人をメディアの中の自分自身のように見ることができることはものすごく貴重なことかもしれません。それはすごく歓迎されることです。我々はさまざまな人種、性別、体格のキャラクターを提示し、表現を強化する努力をしてきました。これはおそらく新しいセットにカードイメージギャラリーを見ることやブースターを開けることで触れるような経験あるプレイヤーにとっては明白なものではありませんが、我々はウェルカム・デッキやプレインズウォーカー・デッキを通してマジックに出会うプレイヤーがさまざまなキャラクターに出会うようにするための対策を講じてきました。
『基本セット2019』は新しいプレイヤーに紙のマジックのプレイを紹介するためにデザインされた製品群の1つです。ウェルカムデッキ、プレインズウォーカーデッキ、デッキビルダーセット、ブースターパックは全てお互いに影響を与えています。通常、我々はブースターのセットをデザインし、そして他の製品はデザイン過程の外でなんとかするしかなく、それらは他の製品のニーズよりも経験豊富なドラフトのプレイヤーや構築フォーマットのプレイヤーのニーズに焦点を当てています。基本セットでは、我々はこれらの製品を連動させてデザインしていて、ウェルカムデッキのニーズを、例えばこのセットのリミテッドのゲームプレイに伝えることができます。これにより入門用製品に必要な手段が得られましたが、経験豊富なプレイヤー向けのリミテッドのゲームプレイの深さに妥協はしませんでした。
経験者向けのセット
我々は『基本セット2019』が経験豊富なプレイヤーにも多くのものを提供する必要があることを分かっていました。コモンが通常よりシンプルであることと新しいキーワードのメカニズムが追加されないことで、我々はリミテッド向けに深みと複雑さを与える別の方法を見つける必要がありました。
各色は2色目へ越えて入っていける強力な主要テーマを持っていました。我々はプレイヤーが時間をかけて発見できる、5つの他のより微妙なリミテッドのアーキタイプを重ねました。スパイスを加えるために、我々はプレイヤーのピックする順番に影響を与えうる基柱カードをたくさん収録しました。そして最後に、5枚の3色カードを神話レアに収録しました。これらは毎回ドラフトで出てくるわけではありませんが、出てきた場合はそれをドラフトしたプレイヤーにいつもとは違うデッキを作るように促すでしょう。
スタンダード向けのカードを作ることは夏に出るセットにとって多少問題です。スタンダードは夏のセットが出たときよりも大きくなることがありません。『基本セット2019』のカードを主に使用する、まったく新しいデッキを導入する望みはほとんどありませんでした。基本的に、スタンダードでかなり強いけどれも、完全に十分な強さではないデッキに適応する新しいカードを追加するほうがより効果的です。またスタンダードで特に強力なデッキ(もしくは少なくとも『基本セット2019』が完成した時期である数か月前には特に強力だったデッキ)を抑えるカードを導入することもできます。他にも別々に使われていたいくつかの強力なカードを新しいデッキでつなげる機会を得ました。
あなたは何枚かのとても変な見た目のレアカードに気づいたかもしれません。これらはモダンを意識してデザインしたものかもしれません。我々の考えは、もしこのセットがスタンダードに影響を与えるのに少し苦戦するなら、その分を補うために他のフォーマットのためにいくらか空間を費やすべきだというものです。
私のことを少しでも知っている人は誰でも、私が統率者戦をどれぐらい好きかを知っています。全てのフォーマットの女王は『基本セット2019』で多くの愛を得ています。まず我々はそれぞれがこのセットの主要テーマとメカニズム的に繋がりを持った単色の伝説のクリーチャーから始めました。また我々は、3色の伝説のクリーチャーのサイクルをそれらが表しているキャラクターに基づいてトップダウンでデザインしました。詳細はまた後で。
マジックの最新フォーマットであるブロールは、我々が『基本セット2019』をデザインしたときにはまだ生まれていなかったので、ブロールを意識してこのセットを計画していませんでした。幸運にも、ブロールは『基本セット2019』で20もの統率者を手に入れました――その半分はプレインズウォーカーです!
ヴォーソス向けのセット
『基本セット2019』が『基本セット2019』になる前、開発名『Salad』という『ドミナリア』ブロックの小型セットが2018年の夏に予定されていました。我々は『Salad』のデザイン過程に入って数週間してから計画の変更を決定しました。なぜこの変更が行われたかについての詳細な情報はマーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterの記事をご覧ください。
その切り替えが行われる前、『ドミナリア』の物語の計画はまだ進行中で、私は心配していました。我々は最も重要な悪役の1人を中心とした大きな物語の只中にいました。私はニコル・ボーラスが1つの次元の悪役にはやりすぎなのではないかと懸念を抱きました。彼はここ10年ぐらいの間、物語の中に現れては何か邪悪なことをして姿を消していました。ボーラスが壮大な計画を練っていたことは、観客には明らかになっていたでしょうか?
私はストーリー・チームに「ねえ、『ドミナリア』の物語で何かボーラスの設定情報を出すべきですよ」と催促を続けました。しばらくの間、梅澤哲子か、アジャニか、もしくはボーラスに関係のある誰かがゲートウォッチ(と観客)にこのエルダー・ドラゴンの動機と計画を説明するのに役立つかのように見えました。しかし『ドミナリア』の物語は込み入っていて、最終的にリリアナの話が優先されたので、ボーラスの背景を語るのは無理そうに見えました。
『Salad』ではなく基本セットを作ることが決まったとき、私はもっと心配になりました。我々は連続する物語の真っ只中にいるのです! その途中で3か月離れることはできません! そこで私は一石二鳥の考えを思いつきました。我々は「ボーラスの背景設定」のアイデアを発掘して、最新セットを連続する物語とつなげることができました。ギデオン、ジェイス、リリアナ、チャンドラ、ニッサのオリジン・ストーリーに焦点を当てた『マジック・オリジン』と同じように、『基本セット2019』ではニコル・ボーラスのオリジン・ストーリーに焦点を当てることができました。彼のオリジン・ストーリーは広大で、1セット費やすのに十分な複雑さがありました(加えて、私には彼が誰かとスポットライトを共有するところは想像できませんでした!)。
なので、私は自分のカードのうちどれがどうなるべきか分かっていました。一面は伝説のエルダー・ドラゴン・クリーチャーのニコル・ボーラスで、もう一面はニコル・ボーラス・プレインズウォーカーである両面カードです! このような感じにね。
『基本セット2019』の展望デザイン初期に5つの単色のプレインズウォーカーデッキを作ることが決まりました。私はそれらのプレインズウォーカーのキャラクターを何らかの方法でニコル・ボーラスの邪悪な策略に結びつけたいと考えました。我々はそれをこのように計画しました。
白:アジャニ
アジャニは『アラーラの断片』ブロックでニコル・ボーラスと戦ったことがあります。ボーラスはアラーラに大規模な戦争を引き起こし、その戦争によって解放されたマナを吸収しました。アジャニはボーラスの分身を召喚して膠着状態にさせることで、彼が以前の神の如き力を取り戻すことを食い止めました。
アジャニの戦略は小型クリーチャーの軍勢を支援し、スパイスとしてライフ獲得を少し持っています。
青:テゼレット
テゼレットは長い間ボーラスの手先をしています。現在彼はこれからのストーリーで重要になる強力なアーティファクトを1つ以上盗んでいます。我々は最終的にテゼレットがカラデシュから《次元橋》を盗んだことに焦点を当てることにしました。彼は《次元橋》を自らの体内に取り込みました。
テゼレットの戦略はアーティファクトを基にしたデッキを支援します。
黒:リリアナ・ヴェス
リリアナはある時はボーラスの手先であり、またある時は敵対者でした。ボーラスはリリアナに4体の強力な悪魔との契約を仲介しました。リリアナには知られていませんが、彼女の契約は4体の悪魔全てが死亡すると債権はボーラスに移ります。そうです、ボーラスは彼女を騙しています。
リリアナの戦略は墓地からクリーチャーを再利用することでカード・アドバンテージを得るコントロール・デッキを支援します。
赤:サルカン・ヴォル
サルカンは捕食者の王であるとして執着しています。彼はボーラスがドラゴンらしさの究極の具現であると信じて彼の手中に落ちました。ボーラスは多元宇宙の恐怖であるエルドラージの解放を狙って彼をゼンディカーに送り込みました。ボーラスは彼の計画の一部として英雄的なプレインズウォーカーのチームを必要とし、そしてグループにはチームを結成する最初の冒険が必要です。エルドラージとの戦いはゲートウォッチを結成するための完璧なシナリオだったのです。
サルカンの戦略はドラゴン・部族を支援します!
緑:ビビアン・リード
緑までは上手く物事が進んできました。単純に緑単色のプレインズウォーカーがそんなに多くいなかったのです。
ガラクはここのところ《鎖のヴェール》の呪いに苦しめられていました。我々が彼を『基本セット2014』の《獣の統率者、ガラク》に戻してみると、観客は戸惑った反応を見せました。「ガラクはまだ呪われているの? 何が起きてるの?」 さらに、ガラクはボーラスと物語上の接点が全くありませんでした。
ニッサはボーラスとの説得力のある物語上の接点を持っていません。Jiang Yangguはまだ『Global Series Jiang Yanggu & Mu Yanling』に取り組んでいて、そして我々は自分たちの過程をその製品とそれに取り組むチームと絡ませたくありませんでした。フレイアリーズは死んでいて、彼女もボーラスとの物語上の接点を持っていません。我々は緑の混じっている他のどのキャラクターの緑単バージョンを作ることも良く思いませんでした。
もし毎年基本セットを作ることになって、各基本セットに5人の単色プレインズウォーカーが入れることになって、そして何度も同じキャラクターを作りたくないのなら、単色のプレインズウォーカーのキャラクターを増やす必要があると明らかになりました。これにより我々は望む能力の組み合わせを持ったキャラクターを自由にデザインでき、彼女に最高にクールな設定を与えてからボーラスの敵対者になった物語を書くことができました。
近い将来にその設定が詳細に語られるわけではありませんが、簡単に説明するとこうです。ニコル・ボーラスはビビアンの故郷の次元であるスカラを破壊しました。ビビアンは辛うじてスカラの動物たちの精霊を強力なアーティファクトであるアーク弓の中に留めました。彼女は敵に矢を射ることでこれらの精霊を戦場に呼び出すことができます。
ビビアンの戦略は加速して大型クリーチャーを出すことです。
ご覧の通り、これらの戦略のいくつか(横並べ、加速してクリーチャーを出す、墓地の再利用)はそれらの色の独自性の中核ですが、その他(ドラゴン、アーティファクト)は少し変わっていて、その色の独自性の端に近いものです。プレインズウォーカーのラインナップとデッキのテーマを組み替えることによって、我々は将来の基本セットに複雑さや追加のキーワード能力を加えることなく独特なものにすることができます。
『基本セット2019』のブースターパックでは、これら5人すべてのプレインズウォーカーの、より軽く強力なバージョン、ボーラスの物語における彼らの役割を暗示するカード、ボーラスの現在の動機が分かる過去の重要な場面を表したカードが入っています。
これらのものを全てセットに入れた後、私はまだ何かが足りないように感じました。ボーラスは物語と現実世界の両方で本当に古い存在です。我々が言及したことは全て物語中の直近60年間の出来事であり、現実世界での直近11年間のことでした。我々は始まりに、ニコル・ボーラスの幼年時代に戻る必要がありました。
ニコル・ボーラスの初出はマジック最初期のエキスパンションの1つである『レジェンド』です。彼はエルダー・ドラゴン・レジェンド・サイクルのうちの1枚でした。
これらのカードは1994年の発売当時はものすごくクールでしたが、現在の基準では少し役に立たなさそうです。私はアップデート版を作ることにしました。多くの人々がデザイン案を出し、我々は多くのバージョンを経てきました。しばらくした後、私はフューチャー・フューチャー・リーグから《クロミウム》を「エスパー・コントロール」デッキのフィニッシャーとしてデザインし直してほしいというリクエストを受けました。私は袖をまくって自らそれに取り組みました。
クロミウムはボーラス自身を除けば最も設定がはっきりしていたエルダー・ドラゴンでした。彼は1990年代のマジックのコミックに何回か登場しました。その物語の中の1つで、彼は姉妹であるパラディア=モルスが人間を虐殺することを止めるために眠りの呪文を使いました。彼は人間に変身したので、気づかれずに生活しそして定期的にその呪文をかけ直すことができました。私はその話からインスピレーションを受けてデザインし、それこそが本日最後のプレビュー・カードです。それでは《変遷の龍、クロミウム》をご覧ください。
こぼれ話
あなたを帰す前にもう少しだけ私の個人的な話をします。
もともと私は『Salad』のセット・デザイン・チームのリードをする予定でした。念のため説明すると、セット・デザインはデザインの最終段階であり、カードは互いに洗練してバランスが取られます。本当に基本的な細かいことです。カードはこの時にコンセプトが与えられてアートがつけられ、最終的にそのセットは仕上げのために編集に渡されます。私はセット・デザイン・チーム(もしくは旧システムで言うところのデベロップ・チーム)をリードしたことはありませんでした。
『Salad』を解体して基本セットを作ることが決まったとき、私は少しの間(3週間ぐらい)展望デザイン・チームを、続けてセット・デザイン・チームをほぼ通常の期間リードしました。これは極めて異例のことです。一般的に、展望デザイン・チームのリードがセット・デザイン・チームをリードすることは許されていません。この過程全体は私にとってものすごく大きな学習体験になりました。私は本当にゲームのバランスを掘り下げ、編集、世界構築、プレイ・デザインの各チームと一緒に仕事をしました。このプロジェクトで働いている間、私は自分自身とデザイナーとしてレベルが上がったと本当に感じていました。私は今、開発部の誰とも異なる技能一式を持っています。
いくつかのスケジュール上の問題によって、私は数週間3つのチームをリードすることになりました。補助的なブースターの展望デザインが始まり、『Baseball』の先行デザインが始まりましたが、まだ『基本セット2019』デザインの仕上げは続いていました。私はその数週の間、目のけいれんを起こしましたが、それがなければこれらをまとめていたと思いたいです。タフ、それが私です!
私が紹介したい最後の話は、 アリソン・ルーアズ/Allison Luhrsがセット内の名前を決定する前の私も宛先に含まれていたメールについてです。日本のSMEが当時「Vaevictis, the Dire」と呼ばれていたカードについて以下のような内容を送ってきました。
《Vaevictis Asmadi》は「Vaevictis」が肩書であるかのように日本語に翻訳されています。「Vaevictis, the Dire」をどう翻訳するといいでしょうか。
- 「Asmadi, the Dire」として訳す
- Vaevictisを肩書のような「暴虐の覇王」として訳す
- Vaevictisを新規に音訳して「ヴァエヴィクティス」とする(日本のプレイヤーはつながりを見つけられないでしょう)
『レジェンド』の元々のこのカードは日本語では《暴虐の覇王アスマディ》として、「Vaevictis」が名前ではなく肩書のように翻訳されていました。新しいカード名、「Vaevictis, the Dire」は日本のプレイヤーには意味が通じないのです。なのでアリソンはこのカード名を「Vaevictis Asmadi, the Dire」に変更しました。(SMEコメント:それを受けて、日本語では「Vaevictis」の旧訳語である「暴虐の覇王」から取って「暴虐の龍、アスマディ」としました。)
何にせよ、これは我々が注意し続けなければいけない事柄の中で、あなたがまず間違いなく考えたことがないであろう、ちょっとした舞台裏です。
残りのプレビューを楽しんでください!
私は本当に、我々がマジックへの入門としての紙のマジックの経験を作ることに関して大きな進歩を遂げたと思います。そしてセットの残りの部分に入れられる限り、クールなカードを詰め込みました。プレリリースで古き良きマジックを楽しんでください!
(Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru)
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