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『ドミナリア』におけるカード枠、テンプレート、ルールの変更
『ドミナリア』におけるカード枠、テンプレート、ルールの変更
Aaron Forsythe
2018年3月21日
マジック:ザ・ギャザリングは大きな節目を迎えます。マジック25周年となる今年、ついに始まりの地たるドミナリアを再訪するのです。この記念すべき瞬間に、誰もが大きな期待を寄せていることでしょう。私たちもまた、記念すべきドミナリアへの回帰を迎えるにあたり、およそ1年をかけてカード自体の刷新に取り組んできました。
カードの見た目やテキストについては、1999年の『第6版』におけるルール刷新から(2014年の)『基本セット2015』におけるカード枠更新まで、これまでも大きな変更が行われてきました。今回の『ドミナリア』にて行われる変更は、マジックというゲームを常に現代的で新鮮で直感的なものに保つための取り組みの一環です。これまでの変更とは規模が違いますが、それはゲーム体験を大きく向上し、私たちがここ数年にわたり抱えていたいくつかの問題を解決する手段となります。
製品の発売スケジュールの都合上、今回の変更は『ドミナリア』に先がけて発売される『デュエルデッキ:エルフ vs 発明者』にも反映することができました。ここで、変更が反映されたカードの姿をひと足早くお見せできるのです! 新規アートや新たなルールとテンプレートは、『デュエルデッキ:エルフ vs 発明者』のカードイメージギャラリーでご覧いただけます。
ここでは、変更を3つの項目に分けてご説明します。ひとつはゲームプレイに影響がないカードの見た目の変更。ひとつは特定の表記についてのテンプレート変更。そしてもうひとつは、大きなルール変更です。
なお今回の変更が正式に適用されるのは、『ドミナリア』に伴うルールの更新が行われてからになります。過去のカードがどのような影響を受けるかにつきましては、イーライ・シフリン/Eli Shiffrinによる『ドミナリア』の「Update Bulletin」でご説明しますので、続報をお待ちください。(『デュエルデッキ:エルフ vs 発明者』に収録されるカードはオラクル更新後のテキストで印刷されていますが、それが正式に適用されるのは『ドミナリア』プレリリース以降です。「ひと足早く見ることができる」だけなのでご注意ください!)
それでは、『デュエルデッキ:エルフ vs 発明者』のカードを参照しながら変更点を見ていきましょう!
カードの見た目の変更
テキストを分ける線
1996年の『ミラージュ』で現在のような注釈文が始まって以来、今日に至るまで(訳注:英語版で)注釈文とフレイバー・テキストがまったく同じフォントを使用していることは、マジックのカードに見受けられる奇妙な点でした。フォントや文字の処理を増やさなかったからすっきりした見た目になっているという面もありますが、ルール・テキストとフレイバー・テキストの境目がわかりにくいことも多々ありました。新規プレイヤーはどこまでがルール・テキストでどこからフレイバー・テキストなのかわからず混同し、経験豊富なプレイヤーでもイタリック体に挟まれた2番目や3番目の能力を見逃すことがあります。
この問題は長年にわたり私たちを悩ませ、私たちは代替案をいくつも考えてきました。ひと目で見分けがつくよう、フレイバー・テキストを灰色にする、どちらかの書体を変える、どちらかを枠で囲む......そして最終的に私たちは故きをたずね、『Portal』(今度出るアプリではなく1997年に発売されたセットです)からアイデアを借りることにしました――ルール・テキストとフレイバー・テキストの間に罫線を引くというものです。
新たな罫線は『Portal』の頃よりも目立たないものになっており、ルール・テキストとフレイバー・テキストの両方が書かれたカードにのみ使われます。実にエレガントですね。《エーテリウムの彫刻家》をご覧ください。
伝説のカード枠
今後『ドミナリア』の詳細が明らかになるにつれて、このセットがドミナリア次元にいる伝説のクリーチャー(かつての、そして現在の英雄たち)に注目したものであることがわかるでしょう。それはゲームプレイにも反映され、新たに素敵な方法で強調されます。何と言ってもキャッチフレーズが「伝説の結集」なのですから! ゲームプレイへの影響を鑑みて、ひと目で伝説のカードかどうかを見分けられる視覚的な情報が必要だと私たちは考えました。そこで生まれたのが、王冠のような装飾でカード名を囲むというアイデアです。まさに印象的で伝説を感じられるその装飾は、黒枠の部分にも広がります。私たちはこのアイデアを大いに気に入り、『ドミナリア』に留まらず今後すべての伝説のカードに採用することにしました。(プレインズウォーカー・カードはすでに十分に見分けがつくので、適用されません。)
エルフの主力カード、《背教の主導者、エズーリ》をご覧ください。
表記の更新
「加える」
マジック開闢以来、土地カードには「あなたのマナ・プールに」という表記がつきものでした。しかし現在「マナ・プール」はゲームプレイ上大きな意味を持たず(大抵のプレイヤーは単に土地をタップして、生み出したマナをそのままコストの支払いに使います)、「あなたのマナ・プールに」という表記はマジックの遊び方を学ぶ上で混乱のもとになっていました。
そこでほとんど意味を持たない表記を削り、マナを生み出すカードのテンプレートを短くしました。「あなたのマナ・プールに[マナ・シンボル]を加える」から「[マナ・シンボル]を加える」となります。テキストがスリムになった《シヴの浅瀬》をご覧ください。
こちらが現在の表記です。
{T}:あなたのマナ・プールに{C}を加える。
{T}:あなたのマナ・プールに{U}か{R}を加える。シヴの浅瀬はあなたに1点のダメージを与える。
単数形の「They」(日本語版では変更ありません。)
常に正確な表記が求められるマジックのルール・テンプレートでは、「Chicago Manual of Style」の表記法にならい、性別が定かでない人物を指す場合「he or she」という表記が使われてきました。「him or her」や「his or her」という表記もあります。
しかしこの表記には、好ましくない点がいくつもあります。文字数が多くなるのも問題ですが、そもそも実際にこの言葉を使う人はいないのです。現在の日常会話では「they」を単数形で使っています。言葉が移り変わるにつれて、正しい言葉を定めるルールも変わってきました。それに合わせて表記を変えることを躊躇する必要はありません。やりましょう!
残念ながら『デュエルデッキ:エルフ vs 発明者』にはこの新しいテンプレートを使用するカードはありません。ここでは 《強迫》を例に挙げましょう。現在の表記と『ドミナリア』以降の表記をご覧ください。
現在の表記:
Target opponent reveals his or her hand. You choose a noncreature, nonland card from it. That player discards that card.
『ドミナリア』でのオラクル更新後の表記:
Target opponent reveals their hand. You choose a noncreature, nonland card from it. That player discards that card.
この変更により文字数を抑えることができ、さらに「he」と「her」のどちらでもない方にも配慮した素晴らしいテキストになるのです。
「この呪文」
唱える際にカードの能力が使用されることを明確にするため、テキスト中にあるそのカード名を「この呪文」に置き換えます。《タララの大隊》をご覧ください。
こちらが現在の表記です。
トランプル
タララの大隊は、あなたがこのターンに他の緑の呪文を唱えていたときにのみ唱えられる。
他にも例を挙げるなら、《意志の力》や《墓所這い》、《爆片破》などが該当します。新しい表記の《爆片破》の姿はすぐにお見せします!
ルールの変更
プレインズウォーカーの移し変えルール
今回変更されるルールはひとつだけですが、その規模は極めて大きなものです。私のTwitterをフォローしてくださっている方や、「Magic: The Gathering Arena」のクローズドβテストに参加された方は、すでにこの変更を予想していたかもしれません――これは長年にわたり取り組んできたものなのです。
私たちは「戦闘ダメージでないダメージを対戦相手のプレインズウォーカーへ移し変えることができる」というルールを削除し、代わりに呪文や能力がプレインズウォーカーにもダメージを与えられるようカードに(古いカードについてはオラクルに)明記します。
これは極めて大きな変更であり、エラッタを受けるカードはおよそ700枚にのぼります。また、テキストに変更がないカードについても、その機能は変わります。それでもこの変更により、マジックはさらに合理的になります。2007年発売の『ローウィン』で初めてプレインズウォーカー・カードをデザインしたとき、私たちはダメージを与える呪文がプレインズウォーカーにも直接ダメージを与えられるよう、ルールを変更したいと考えました。しかし当時はこの新しいカード・タイプが定着するかどうかわからなかったため、大量のエラッタを発生させるのを避け、プレイヤーの分身になるようなルールを制定しました。しかし「《稲妻》をジェイスへ」のような省略を認めたとはいえ、直感的でなく望ましくない相互作用が常にあったのは事実です。例えば《神聖の力線》があると《稲妻》でジェイスを撃つことは不可能でした。ダメージをジェイスへ移し変えるためにはまず《稲妻》で呪禁を持つ対戦相手を対象に取る必要があったのです。また、《取り繕い》はプレインズウォーカーを倒すべく撃ち込まれた火力呪文を打ち消せません。《弧状の稲妻》は、プレインズウォーカーとそのコントローラーの両方にダメージを割り振れません。《忌むべき者のかがり火》は対戦相手のクリーチャーを一掃できますが、プレインズウォーカーはどれか1体にしかダメージを与えられず、そうした場合には相手自身はダメージを受けません。
こういった相互作用は長年のプレイヤーでさえも混乱させるものであり、プレイヤーたちの直感に合うルールの必要性は高まり続けてきました。ダメージを与える呪文や能力は、プレインズウォーカーも対象に取れるべきです。今回の変更は、それを実現するものです。
でもそのためには、大量のカードに「プレインズウォーカー」という言葉を加えることになるのでは? 実は、それほどでもありません。『アルファ版』でリチャード・ガーフィールド/Richard Garfieldが生み出した最初の《稲妻》のテキストには感服するばかりです――私たちが辿り着いた答えは、クリーチャーかプレインズウォーカーかプレイヤーにダメージを与え得るカードで「any target」の文言を使うことでした。(日本語版では「クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする」と表記されます。)先ほどお約束した通り、《爆片破》を例に挙げましょう。
「any target」は「クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする」という意味です。なので《爆片破》を《島》へ撃ち込むことはできません。墓地へ放つこともできません。もちろん、皆さんがやりかねないと思っているわけではありませんよ。
カードに加えられるエラッタは、以下の4つに分類されます。
- 「target creature or player(クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする)」は「any target(日本語版では、クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする)」 へ変更。例:《稲妻》《歩行バリスタ》《爆片破》。
- 「プレイヤー1人を対象とする」は「プレイヤー1人かプレインズウォーカー1体を対象とする」へ変更。例:《溶岩の撃ち込み》《ボロスの魔除け》《ケッシグの不満分子》。ただし、対象のプレイヤーの情報を参照して与えるダメージ量が決まる呪文に関しては、テキストは変更されず、プレイヤーにのみダメージを与えるようになります。例えば《突然の衝撃》はプレイヤーの手札にあるカードの枚数に等しい点数のダメージを与えますが、これはプレインズウォーカーには適用されません(プレインズウォーカーは手札を持たないため)。今後は、《突然の衝撃》でプレインズウォーカーにダメージを与えられなくなります。
- 「対戦相手1人を対象とする」は「対戦相手1人かプレインズウォーカー1体を対象とする」へ変更。ただし、上記と同様の例外があります。この分類に該当するカードは、あなたがコントロールするプレインズウォーカーを対象に取ることができるようになります。わずかに機能は変わりますが、さらに言葉を増やすほどではないと考えています。オラクルが変更されるものの例:《小走り破滅エンジン》(以下の通りです)、《焼熱の太陽の化身》、《ジェスカイの魔除け》。オラクルが変更されないものの例(すべて):《Jovial Evil》。これ1枚だけです。
《激情の薬瓶砕き》を除いて、対象を取らずにダメージを与えるものはエラッタを受けません。つまり《地震》や《発展の代価》、《熱烈の神ハゾレト》の能力は、今後プレインズウォーカーにダメージを与えられなくなります。
加えて、ダメージを軽減するカードにも同様のエラッタを適用し、それらのカードとプレインズウォーカーとの間に生まれる相互作用を明確にします。
変更されるものがあれば、変更されそうなのにされないものもあるでしょう。詳細が気になる方は、イーライ・シフリンによるルール更新記事が『ドミナリア』発売前に発表されますので、そちらをご覧ください。今回の件についての詳細と、オラクルが変更されるカードの一覧も掲載されます。
以上です!
さらなる革新を経て、マジックは次の25年に向けて踏み出します。伝説のカードはよりクールに、テンプレートはよりシンプルに、プレインズウォーカーはあるべき挙動に――『ドミナリア』は間もなくやって来ます。素晴らしきかな、マジック!
今回の変更が反映されたカードをひと足早く手に入れたい方は、ぜひお近くの店舗で『デュエルデッキ:エルフ vs 発明者』をお買い求めください。
最後になりますが、今回の変更のアイデアをもたらしたイーサン・フライシャー/Ethan Fleischerとデイヴ・ハンフリー/Dave Humpherysに大いなる感謝を。それらのアイデアにたゆまぬ努力で取り組み、完璧に仕上げた、開発部デルタ・チームの才能ある編集者たち、グラフィック・デザイナーたち、ルール・マネージャーに大いなる感謝を。この革新をあらゆるプラットフォームで実現させる「MTG Arena」と「Magic Online」のデジタル・パートナーたちに大いなる感謝を。
マジック25周年おめでとう!
――アーロン (@mtgaaron)
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