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偽善者、メアシル

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偽善者、メアシル

Chas Andres / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2017年8月10日


 多元宇宙は印象深い悪役で満ちています。ヨーグモスの汚染からニコル・ボーラスの策略まで、次元を支配するための巧妙な陰謀を見つけるためにはるか遠くを見る必要はありません。これは私をマジックに最初に引き込んだもののひとつであり、私は素敵な悪者に目がないのです。

 今日の私のプレビューは歴代で最高の悪者の1人です。彼はこれまでカード化されていませんでしたが、もしあなたが『ザ・ダーク』をたくさんプレイしたことがある(もしくはドミナリア史の講義で成績優秀だった)なら、ほぼ確実に彼の活躍を聞いたことがあるでしょう。

 それでは、今こそ大修復以前の世界で最も強力だったウィザード、《偽善者、メアシル》の登場の時です。

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 我々がメアシルの素晴らしいアートとメカニズムに触れる前に、何段落か使って彼の物語について我々が知っていることをまとめたいと思います。始まりは暗黒時代、兄弟戦争の集結から氷河期の始まりまでの数百年に渡るドミナリア史の遠く昔の時代です。この時代では壊滅的な気候の変化、文明の崩壊、そして危険の増大が起こりました。

 またこの暗黒時代は魔法が禁忌であると考えられていた時代でもありました。この時代にドミナリア北部の大陸テリシアの大部分を支配していたタルの教会とその信徒は、「魔法使いの生存を許すなかれ」という言葉に従って生きていました。魔法を志す人たちは教会の詮索の目から逃れて技術を学ぶため、魔道士議事会のような隔離された共同体に集うことを余儀なくされました。

 力を欲したメアシルに力を奪われ魔道士議事会の城塞の地下に幽閉されるまで、イス卿(彼の迷路である《イス卿の迷路》でその名前を聞いたことがあるかもしれませんね)はこの議事会の支配者でした。彼の牢獄は底なしの穴の上に直接かけられ、彼のマナを吸い上げ、彼の狂気を駆り立てる水銀製の檻(古い『ザ・ダーク』や『第5版』のカードを積んだ人向けに言っておくと、これは《バールの檻》に描かれています。)でした。メアシルはかつての主を何年も生かしたままにしておき、彼の力を奪い取り彼のマナをその城塞のために使っていました。

 もしイス卿が一瞬の正気の間に何とかして《人さらい》を召喚できなかったら、メアシルの罠が彼に終わりをもたらしていたでしょう。しかしその《人さらい》は最終的に強力な魔法使いジョダーをイス卿のもとに導き、彼を脱出させました。しかし彼はこの時点でほぼ完全に狂っており、ジョダーがイス卿の精神を癒すことができる前にイス卿はメアシルとその城塞の両方を破壊してしまいました。

 しかしメアシルはこれで終わりではありませんでした。彼の本質は小さなルビーの指輪に閉じ込められて以降2000年間生き延びたのです。このアーティファクトは最終的にキィエルド―の兵士リム=ドゥールに発見され、そして彼はその指輪の力によって強大な屍術の能力を得ました。これは氷河期のほとんど終わりごろでしたが、ジョダーは若いころに隠れていた魔法の井戸の水のおかげでまだ生きていました。メアシルは自分を失脚させた男を倒そうとしていたので、リム=ドゥールを操ってその力をジョダーに向けて使おうと企みました。

 しかしリム=ドゥールと陰謀を企むのはメアシルだけではありませんでした。このネクロマンサーはシャンダラーの次元を征服する手助けを必要としていたレシュラックという強力な闇のプレインズウォーカーとも取り引きをしていました。メアシルはついに何とかリム=ドゥールを支配しましたが、レシュラックはジョダーとの戦いのクライマックスの時にこのネクロマンサーの手――指輪の付いた手です――を切り落としました。偽善者は再び闇の中へと落ちていったのです。

 この指輪の最後の装備者はジョダーの信頼する仲間である、ヤヤ・バラードという名の特務魔道士でした。メアシルは続く10年を彼女の精神を毒し、主を裏切ってその喉を掻っ切らせようとすることに費やしました。しかしジョダーは反撃し、強力なアーティファクトでヤヤのプレインズウォーカーの灯に火をつけました。その覚醒とともに、ヤヤは彼女の精神の中のメアシルの意識を消し飛ばし、ついにこの偽善者の歪んだ支配は終わりを迎えたのです。

 この『統率者(2017年版)』のカードは《偽善者、メアシル》の肉体的な能力の高さを思い出させてくれます。彼の能力は彼がイス卿を城塞の地下に投獄することを決意した瞬間を思い起こさせます。メアシルが戦場に出たとき、メアシルが手札のクリーチャーの起動型能力を使えるようにするために「檻に入れる」ことができます。必然的にメアシルはとても強力になりますが、代償が必要になります。檻に入れると決められたパーマネントは、おそらくそのゲームの残りの間追放領域に囚われたままになるでしょう。

 また、メアシルを使うために手札のカードを1枚取り除かなくてはならないというのは、彼の悪事を表す素晴らしい方法です。メアシルは誰でもいいから裏切ったのではありません――イス卿は彼の主でした。《偽善者、メアシル》の能力を最大限に発揮したいのなら、あなたは自分のデッキの他のみんなに対していくらか厳しい選択をしなければならないでしょう。《高位の秘儀術師、イス》を追放するのはオススメかもしれませんね? 彼の起動型能力は魅力的で強力です。


アート:Izzy

 最後に、少し時間を割いてイジー/Izzyがメアシルのアートを手がけてくれたことに感謝したいと思います。私はカードの固有色がその嗜好と一致したときが好きで、そしてこの1枚でメアシルの個性が青、黒、赤に染まっているのが一目瞭然です。

 またこの動きの角度も完璧です――我々はメアシルに投獄された人の視点にいて、実際彼がいかに我々の上に力強くのしかかっているかが恐ろしいぐらいはっきりとしています。この絶壁と暗く円形の背景は城塞の底を思い起こさせ、この偽善者の顔つきと身振りには自惚れと力強さがにじみ出ています。また私はルビーの指輪の目立ち具合も好きです――この部分はそんなに注目されませんが、メアシルの物語がどのように演じられているかに詳しいなら簡単に見つけられます。

 私は『統率者(2017年版)』のメアシルのデッキを手に入れることにとても興奮していますが、このデッキの他のウィザードたちがそれをすごく楽しみにしているかどうかはよく分かりません。まあ、魔法の檻に閉じ込められるのもそんなに悪くはないですよね? すぐに発見されると思いますよ。

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