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蓄積の強さ
蓄積の強さ
Marshall Sutcliffe / Tr. Tetsuya Yabuki / TSV Yusuke Yoshikawa
2016年6月28日
このカードを覚えているだろうか?
面白いコンセプトのカードだと思わないかい? 《焚きつけ》は1枚使うたびに次に使うものが強くなっていくため、このカードを可能な限り多くデッキに入れることで絶大な力を発揮する。ドラフトでのピックが、プレイに直接繋がるわけだ。
このカードはまた、経験の浅いプレイヤーにドラフトでの明確な目的を与える、というわかりやすいデザインでもある。「《焚きつけ》をひたすら連打していた」なんていう超クレイジーな話も聞かれるくらいだ。
こういうコンセプトを持ったカードは、その後もいくつか登場した――例えば、これもそうだ。
ドローが嫌いな人なんているかい? リミテッドにおいて、このカードは集めれば集めるほどその力を増し、運よく多くの人が流してくれると本当に楽しいことになった。「すべての墓地」を参照するから構築ではやや扱いが難しかったかもしれないけれど、それはともかく、こういった特徴的でクールなデザインのカードは人気を集めてきた、という話だ。
そして今回の『異界月』でも、この種のカードが再び登場する。とりわけ本日ご紹介する2枚は、つい先ほど挙げたものに近い効果を持っているぞ。早速見てみよう!
オーライ、詳しく話していこう。
《棚卸し》は2マナでカードを1枚引けるソーサリーだ。その後参照する墓地はこちらだけになったが、レアリティはコモンだ。
これ単体では特に見どころもなく、採用に至らないかもしれない。そう、文字通り「単体」、つまり1枚だけ採用するなんてことはまずないだろうからね。このカードの魅力は、ドラフトで大量にピックしてデッキに詰め込んだときにこそ存分に味わえるんだ。
さらに話を進めよう。
1枚目の《棚卸し》は決して良いものとは言えない。ただ「サイクリング」をしたようなものだ(手札を1枚入れ替えただけって意味だ)。現在の環境には「昂揚」があるため苦労なくソーサリーを墓地に置けるのは悪くないけれど、それでも良くはないだろう。先ほど言ったように、これ1枚で運用することはまずない。
2枚目の《棚卸し》から興味を引かれるようになる。2マナで2枚のドローというのは強力に感じることだろう。しかし「墓地にもう1枚置かれている」という厳しい条件が必要なのに対して効果は《予言》相当であるため、普通は《予言》の方を使うだろう。それでも、2枚引きつつ少しでも多くマナを残せるというのは素晴らしいことだね。
3枚目の《棚卸し》はスゴいことになる。わずか2マナで3枚のドローだ! また別の見方をすれば、ここまでの3枚によるドロー効率はこのカードにも匹敵する。
比較対象としては間違っているかもしれないけれど、《好機》は6マナで手札が3枚増える(4枚ドローから墓地へ行く《好機》の分を差し引いて3枚だ)。そして3枚目の《棚卸し》も、これまでの2枚と合わせて6マナで手札が3枚増えるのだ(3枚合計で6枚ドローから墓地へ行く《棚卸し》の分を差し引いて3枚)。
本当に素晴らしいのひと言だね。ではいよいよ、4枚目以降の《棚卸し》について話そう。ただし、さすがに夢ばかり追うのではなく、現実的な話をした方が良いだろう。
まず、1ゲームの間にこのカードが4枚以上手札に来なければならない。そもそも1回のドラフトで4枚以上ピックし(1回のドラフトで開封できる『異界月』は2パック)、ゲーム中にそれらをすべて引き込まなければならないのだ! そんなこと、そうそう起きないだろう。だがもしその実績の解除に成功すれば、天から降り注がんばかりに手札が増え、気持ち良くなれるだろう。うらやましい限りだ。
《棚卸し》を使用する際に気をつけたいことは、この手のカードはただ好きなだけデッキに投入すれば良い、というわけではない点だ。この手のカードは好きなだけ入れても損をしないと考えるプレイヤーは多いが、こういったカードが機能し出すまでに注ぎ込むマナの量は馬鹿にできない。ゲームの結果に大きな影響を与えかねないのだ。とりわけ、対戦相手が素早くスタートを切ったり、あるいはゲーム中盤が接戦だったりすると、こういったカードにマナを費やしても活かせず、相手に差をつけられてしまうだろう。
しっかりと長期戦を見据えたデッキを組むことができ、その上で《棚卸し》を複数枚手に入れることができれば、それらをデッキに詰め込んでも問題ない。ゲーム後半を支配できるはずだ。
さて、今日はもう1枚ご紹介しよう。
たとえこれが、ただクリーチャーに2点のダメージを与える赤1マナのインスタントだとしても、活躍の機会は多いだろう(対象に取れるのはクリーチャーのみで、プレイヤーには撃てないことに注意してくれ)。小粒ながらも、クリーチャー除去としては堅実で優れていると言える。
基本的には序盤の脅威を1マナで除去し、後半は「ユーティリティー・クリーチャー」(《無謀な識者》や《厳格な巡邏官》のような、通常は戦闘に参加せず起動型能力を駆使する小型クリーチャー)を除去するのに使うことになるだろう。
これだけでも十分に有用な1枚だが、《流電砲撃》は墓地にある枚数に応じてその威力を上げていく。2点と3点の差は大きいから、このボーナスは嬉しいね。さらに1マナのインスタントで4点ものダメージを与えられるようになれば、勝利にぐっと近づくだろう。
これはデッキに何枚採用すればいいだろう? たぶん手に入っただけ採用していいと思う。ただし、2点のダメージではいつまでも除去として通用するものではないので、常に大量に採用することが正解ではない、という点には注意すべきだろう。それでも、可能な限り多くの枚数を詰め込む利点は大きく、追求する価値はある。
その他のヒント
今回紹介したカードは、その力を最大限に引き出す手段が非常にはっきりしている。それでも、これらを活かす環境を作るために考慮すべきことは他にもいくつかある。
はじめの方で少し触れた「昂揚」も意識すると良いけれど、より大きな可能性を感じるのは自分のライブラリーを削っていく戦略だ。自身のライブラリーのカードを墓地へ置く効果を持ったカードは大抵、追加の効果を持っているものだ。そして《棚卸し》や《流電砲撃》を墓地へ落とせば、さらなる恩恵が望めるだろう。
まあ自分のライブラリーを削って《棚卸し》のようなカードを墓地へ送る戦略が完璧に成り立つとまでは言わないけれど、成功すればそれらの威力を上げられるということは覚えておいてくれ。
それから、ドラフトの際に開封するパックは『異界月』2個と『イニストラードを覆う影』1個であることも、もう一度言っておこう。《棚卸し》も《流電砲撃》もコモンであり、また『異界月』は小型セットであるため、それらを複数枚投入したデッキが組めるチャンスは十分にあるが、それでも2パック分しか得られるチャンスがないことを考えると、手がつけられないほどの戦略になることはまずないだろう。
私の予想としては、比較的機能し出すのが遅い《棚卸し》よりも序盤から軽いインスタント除去として使える《流電砲撃》の方がピックされやすいと思う。
とはいえ、私もいつか《棚卸し》を8枚くらい採用したデッキを作り上げて、大量にカードを引いてやろうと思う。どうだろう、できるかな。何はともあれ、みんな『異界月』を楽しんでくれ!
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