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『異界月』のメカニズム

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『異界月』のメカニズム

Matt Tabak

2016年6月27日


 イニストラードは今、無防備な状態で最悪のときを迎えました。世界は混沌に陥り、不可解な存在に悩まされます。エルドラージ自体は皆さんお馴染みの敵でしょう。しかしホラーをテーマにしたこの世界では、それらはまた独特な怖さを醸し出しています。『異界月』では、恐ろしい戦いにおいて対峙する両陣営に、新たなゲーム上の要素が登場します。それでは、皆さんを待ち受ける新メカニズムを見ていきましょう。

合体

 合体カードは、皆さんが愛し、恐れる両面カードが歪んだ姿です。2枚のカードが合体し、1体の巨大な怪物へと変貌するのです。(その変貌ぶりは様々です。)早速、《ハンウィアーの要塞》と《ハンウィアー守備隊》をご覧ください。

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 あなたが《ハンウィアーの要塞》と《ハンウィアー守備隊》をコントロールしているとともにそれらのオーナーでもあるなら、それらは追放され、こうなります。

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 わあ、なんとも不穏な。合体カードは、この《ハンウィアーの要塞》と《ハンウィアー守備隊》を含め全部で3組あります。あとの2組は、本日公開された他の記事でご覧いただけますよ。

 《のたうつ居住区、ハンウィアー》は、2枚のカードからなるひとつのパーマネントです。これは通常のクリーチャーと同様に働きます。攻撃やブロックができ、能力も持ちます。エンチャントや装備品をつけることもできますし、各種カウンターを置くこともできます。その他も同様です。つまり、戦場にある間は1枚の大判カードと考えて差し支えありません。1体のクリーチャーであるため、「クリーチャー1体を対象とし、それを破壊する」と書かれた呪文1つによって合体したパーマネント全体が除去されます。パーマネント1つを生け贄に捧げる場合も、《のたうつ居住区、ハンウィアー》を生け贄に捧げることができます。

 通常のクリーチャーと異なるのは、戦場を離れた後です。合体したパーマネントが戦場を離れる場合、2枚とも同時に離れ、それぞれが再び第1面に戻ります。《のたうつ居住区、ハンウィアー》が手札に戻った場合には、《ハンウィアーの要塞》と《ハンウィアー守備隊》が手札に加わるわけです。《のたうつ居住区、ハンウィアー》がライブラリーの一番上、一番下、あるいはその他特定の場所に置かれる場合は、《ハンウィアーの要塞》と《ハンウィアー守備隊》が置かれる順番をオーナーが選択します。また、合体したパーマネントが戦場を離れた後の処理があれば、合体した2枚とも影響を受けます。実際に、私が合体カードの挙動について最初に考えたのは、「《未達への旅》を受けた場合にどうなるか」でした。一体どのような挙動になるのでしょう? 私がファイルからこのカードを見つけたときの驚きがわかるでしょうか。

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 この場合、《のたうつ居住区、ハンウィアー》は追放され、《ハンウィアーの要塞》と《ハンウィアー守備隊》の両方が第1面の状態で追放領域に置かれます。その後戦場に戻るとき、両方のカードが、それぞれ+1/+1カウンターが置かれた状態で戻るのです。もちろん、その後すぐに再び合体することになり、+1/+1カウンターはなくなります。もう家に帰れなくなりそうですね。

 両面カードと同様に、合体カードも戦場以外では第1面の特性を持ちます。また、裏向きにもできません。そして合体カードは両面カードではないため、変身もできません。

 誤解や混乱を避けるため、もう少し詳しくお話ししましょう。合体に成功するには、あなたが該当する2枚の両方のオーナーであり、それら両方をコントロールしていなければなりません。あなたが《ハンウィアーの要塞》のオーナーでありそれをコントロールしている場面で、その後対戦相手がオーナーである《ハンウィアー守備隊》のコントロールをあなたが得て、《ハンウィアーの要塞》の能力を起動したとしても、それらは合体せず居心地悪そうに互いを見つめ合うだけなのです。

 加えて、合体する2枚のカードは実際のカードでなくてはなりません。それらのコピーでは機能せず、それらをコピーしたトークンなどもってのほかです。そしてお気をつけください。《ハンウィアー守備隊》がコピーであっても《ハンウィアーの要塞》の能力を起動することは可能であり、それらは追放されます。それらは合体に失敗し、どちらも戦場に戻ってこないのです。

 今回のセットでは、合体カードを表す新しいチェックリスト・カードも登場します。チェックリスト・カードを用いることで、合体カードもデッキの他のカードと区別がつかない状態にできます。(これは不透明のスリーブを使用することでも可能ですし、不透明のスリーブとチェックリスト・カードの併用も可能です!)チェックリスト・カードは、ゲームを始める前にどの合体カードとして使うか印をつけ、デッキに入れて使います。もちろん実際の合体カードも持っていなくてはいけません。(サイドボードと混ざらないようにしてください!)

 どの合体カードもそれ単体で十分に優れたものですが、見事合体に成功すれば......アヴァシン様のご加護を受けられることでしょう。おっと、これはいけない。どうか今のはお気になさらず。失言でした。

 合体カードは大事なパズルのピースです。ぜひ合体を成功させ、その力を存分にお楽しみください。

現出

 そういえば、エルドラージはどこにでも現れる、ということはお伝えしましたかね?ですから、あなたの親友の顔から急に触手が生えてきてもどうかショックを受けないでくださいね。現出は、ゲーム後半に力を振るう強力なエルドラージを予定より早く戦場に出せる新しい能力です......エルドラージが予定というものを知っているとは思えませんが。

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 現出を持つ呪文は、通常通りそのマナ・コストを支払って唱えることもできます。あなたが7マナを出せるなら、新登場のエルドラージ・ヒポグリフを繰り出すことができるのです。ですがクリーチャーを1体、例えばこの《夜明けのグリフ》を生け贄に捧げてやれば(おお、フレイバーの勝利)、現出能力を使用することができます。

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 では現出で呪文を唱えることについて解説しましょう。《不憫なグリフ》を唱えるための追加コストとして、《夜明けのグリフ》を生け贄に捧げます。するとあなたは、《不憫なグリフ》のマナ・コストである{7}の代わりに{5}{U}の現出コストを支払うことになります。現出コストはここからさらに減ります。生け贄に捧げたクリーチャーの点数で見たマナ・コストに等しい数の不特定マナが減るのです。つまり、《夜明けのグリフ》の点数で見たマナ・コストは3なので、《不憫なグリフ》をわずか{2}{U}で唱えることができます。いい取引ですね。ただしこれによって、現出コストの色マナ部分が減少することはありません。したがって、たとえ点数で見たマナ・コストが8のクリーチャーを生け贄に捧げても、《不憫なグリフ》を唱えるために{U}を支払う必要があります。

 また、現出はあなたが呪文を唱えられるタイミングを変える能力ではありません。通常通りメイン・フェイズ中に、スタックが空の状態でのみ利用することができます(どうにかして瞬速を持たせればその限りではありませんが)。また、現出で唱えても唱えたことには変わりありません。元のマナ・コストで唱えても現出コストで唱えても、《不憫なグリフ》の「カードを1枚引く」能力は機能するのです。

増呪

 イニストラードでの戦いは激しさを増しています。人々はあらゆる武器をかき集め、それらを友人や敵、そして触手に侵食されたかつての友人へ向けています。この状況を表す能力が増呪です。この能力は、モードを持つ呪文の力を最大限に引き出します。モードを持つ呪文とは何でしょう? 箇条書きになっているさまざまな効果を選択できるインスタントやソーサリーのことです。例えばこういうものがあります。

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 通常はこれらのモードのうちどれかひとつしか選べませんが、増呪を持つカードはその常識を覆します。増呪コストを支払うだけで、選ぶモードの数を増やせるのです。このカードのマナ・コストと増呪コストを支払えば、あなたはモードを追加で1つ選ぶことができ、両方の効果が発揮されます。もちろん、増呪を持つカードには3つ以上のモードを持つものもあります。3つのモードを持つものは、そのマナ・コストに加えて増呪コストを2回支払うことですべての効果が発揮されます。200円追加で支払うことで、セットメニューが付いてくるようなものです。

 モードの選択は呪文を唱えることの一部であり、一度選択を終えれば、それに対応されてもモードを変更することはできません。複数のモードを選択して増呪を持つ呪文を唱えた場合、それらの効果は印刷されている順番に上から発生します。加えて、(そのモードが対象を取る場合)モードごとに独立に対象を選択します。《邪悪借用》の2つのモードは、同じクリーチャーを対象に取ることも、異なるクリーチャーを対象に取ることもできるのです。

両面カード

『異界月』には、皆さんが愛し、恐れる両面カードも登場します。『イニストラードを覆う影』や元祖『イニストラード』ブロックを経験していない方は、両面カードが跋扈するこの世界を異様に感じることでしょう。それでいいのです! 簡潔にご説明しますと、両面カードは第1面(マナ・コストが記されている側)を表にした状態が基本となり、それぞれが第2面に変身する能力を持っています。両面カードの多くはクリーチャーであり、変身することでより強力なものになります。しかし中には、《謎の石の断片》のような珍しいものもあります。

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 これはマナ加速をしながら全員のライフをゆっくり失わせていく便利なツールです。そしてあなたのアップキープの開始時に、全員のライフが10点以下であれば、こうなるのです。

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 エムラクールは極めて危険な存在であり、その反射だけで人は簡単に死んでしまいます。パーマネントは変身してもアンタップしない、ということを覚えておいてください。《謎の石の断片》の変身に対応してこれをタップしマナを生み出せば、タップ状態のまま《エムラクールのオーロラ》になるのです。また、パーマネントが変身しても召喚酔いにはなりません。したがって変身するターンの開始時から続けて《謎の石の断片》をコントロールしていたのであれば、《エムラクールのオーロラ》はそのターンに攻撃できるのです。

マッドネス

 マッドネスは無くなってしまうのではないかと一瞬でも考えた方は、真の狂気に冒されていますね! マッドネスは、それを捨てたときに唱えることができる効果を持る再録能力です。

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 まずはマッドネスを持つカードを捨てる手段を確保しましょう。理想を言えば、コストとして手札を捨てることを要求する能力が起動できれば最高ですね。それなら起動した能力の恩恵を受けながら捨てたカードを唱えることができます。冷酷なまでの力を発揮する激烈な狂気を止められるものはありません!

 マッドネスを持つカードを捨てると、それは墓地に置かれる代わりに追放されます。そしてあなたはマッドネス・コストを支払うことで、それを唱えることができるのです。唱えなければ、そのカードは墓地に置かれます。

昂揚

 『イニストラードを覆う影』からもうひとつ、昂揚も再録されます。昂揚は能力語であるため、それ自体はルール上の意味を持ちません。しかし、あなたの墓地にあるカードにカード・タイプが合計4種類以上含まれる場合に有効となる能力、強化されることを強調する役目を持っています。では《節くれ木のドライアド》をご覧ください。

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 墓地には、「アーティファクト」、「クリーチャー」、「エンチャント」、「インスタント」、「土地」、「プレインズウォーカー」、「ソーサリー」、そして「部族(古いカードに見られるカード・タイプ)」のカード・タイプを持つカードが存在することがあります。このことを覚えておくといいでしょう。「基本」、「伝説の」のような特殊タイプや、「エルドラージ」、「オーラ」のようなサブタイプは数に含めません。それから、4種類以上のカード・タイプがあるならば、カードの枚数は問いません。あなたの墓地にアーティファクト・クリーチャーとソーサリー、そして土地が1枚ずつあれば、《節くれ木のドライアド》は+2/+2の修整を受けるのです。

 昂揚を持つインスタントやソーサリーの中には、墓地に4種類以上のカード・タイプがある場合に追加の効果を持つものや、代わりに別の効果が発生するものがあります。昂揚がついた起動型能力もあります。さまざまなものがありますので、カードを慎重に呼んで......いや、読んでくださいね。

異界はさらなる異界へ

 さあ、これで『異界月』プレリリースの恐怖に立ち向かう準備ができましたね。「恐怖」と言いましたが、もちろん怖いのはその大盛況ぶりに、です。今回のセットも、素晴らしい新カードや探求しがいのある秘密、そして突然飛び出し襲いかかってくる触手で満載で、今にも破裂しそうです。ああ、顔に、顔に! 皆さんどうぞ、プレビュー期間をお楽しみください。

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