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倍賭け勝負
倍賭け勝負
Adam Styborski / Tr. Tetsuya Yabuki / TSV Yusuke Yoshikawa
2016年1月7日
マナを生み出すことは、マジックの根本的な要素だ。レアの枠に《島》が入っていた最初の時代(それくらい土地は大事なものだったのだ!)から、私たちは長きにわたりマナとともにあったが、その道のりは決して平坦なものではなく、紆余曲折に満ちたものだった。
《ミラーリの目覚め》 アート:David Martin |
マジックの黎明期、レアの枠には《ほとばしる魔力》というカードもあった。あらゆる土地が生み出すマナをひとつ増やす、というシンプルな能力を持った1枚だ。だがこのカードには欠点もある。こちらのターンに《ほとばしる魔力》が戦場に出ても、その恩恵を受けてマナを加速するのは対戦相手の方が先になることが多く、後手に回らざるを得なくなるのだ。
やがて《春の鼓動》の登場によりこの能力は緑のカラー・パイへと移ることになるのだが、こちらにだけ恩恵をもたらすものは《ミラーリの目覚め》が最初だった。
「こちらだけが」恩恵を得られるというのは、注目すべきことだ。強力な効果をこちらが独占するか、あるいは大きな損失を対戦相手にだけ与えることができる能力は、活躍が期待できる。《ほとばしる魔力》の欠点は、相手にも同じ力を使えるようにしてしまうことだ。《ミラーリの目覚め》はその点で画期的な1枚であり、生み出せるマナを増やす能力を独占して使えるだけでなく、さらに別の能力まで備えているのだ。
《ケイラメトラの指図》は、《ほとばしる魔力》の抱える問題をまた違った視点から解決してみせた。こちらのターンが始まる前に設置できるようになったことで、生み出せるマナを増やす力を先に得られるようになり――対戦相手にターンを渡す前に戦場から取り去る、という選択肢を取ることもできるようになった。しかし、例外として《マナの反射》(戦場にあるあらゆるマナ源から生み出せるマナを文字通り「倍にする」カード)があるものの、この手のカードで《ミラーリの目覚め》という高みへ到達するのは困難を極めていた。
だが本日紹介する《ゼンディカーの復興者》は、きっとその高みへと登り詰めることだろう。
もうひと賭け
《ミラーリの目覚め》は優れた能力をふたつ持っており、その点は《ゼンディカーの復興者》も同じだ。どちらの能力もこちらだけが恩恵を受けられるものであり、それぞれの効果も強烈だ。
- 土地が生み出すマナをひとつ増やす能力は、長きにわたって様々な活躍をしている。特にこちらだけがその力を使えるなら、間違いなく活躍が期待できるだろう。
- クリーチャー呪文を唱えるたびにカードを1枚引ける能力は、使いやすさという点で《ミラーリの目覚め》に迫るものだ。扱えるマナが増えればより多くのクリーチャーを唱えることができ、それらがドローに繋がる――各能力がよく噛み合っているのだ。
こちらが《ゼンディカーの復興者》をプレイすれば、対戦相手はその対応に追われることだろう。手札はもちろんライブラリーにも手をつけて対処法を探すはずだ。《ミラーリの目覚め》と同様に、誰かがエンチャントに対処する手段を持っていればすぐにそれを差し向けてくるだろう。到底無視できるものではない。
では対戦相手が誰も対処法を見出だせなかった場合はどうなるか。《ゼンディカーの復興者》を戦場に残した状態でアンタップを迎えることができれば、驚くべきことが起こるだろう。
扱えるマナが倍になりクリーチャーを唱えるたびにカードが引けるようになることで、《巨大鯨》や《パリンクロン》といったクリーチャーを唱えることによって膨大なアドバンテージを一気に得られる。(《パリンクロン》はそれ自体も強力なコンボに多く使われる1枚だが、この度またひとつ、《ゼンディカーの復興者》という相棒を得ることになった――他のコンボにも負けないくらい多くのアドバンテージを生み出すこの組み合わせは、対戦相手にとってたまったものじゃないだろう!) だが《ゼンディカーの復興者》の持つ力はこれに留まらない。このカードと組み合わせることで面白い力を発揮する(しかも何度も使える)クリーチャーは他にも多くいるのだ。
- 《大クラゲ》や《霊気の達人》が、3マナでカードを1枚引ける呪文になる。
- 《洞窟のハーピー》なら2マナでそれを実現できる(ライフを1点支払う場合もある)。
- 《返済代理人》や《クイックリング》、そして《北極マーフォーク》といったクリーチャーでも、同様の動きができる。
クリーチャーに戦場と手札を何度も往復させてドローを重ね、手札を貯め込んでいくのは、対戦相手にとって容易に受け入れられることではない。《ゼンディカーの復興者》の持つ力を余すところなく活かすつもりなら、慎重に事を運ぼう。
《ゼンディカーの復興者》を採用する際は、《ミラーリの目覚め》を採用するのと同じように扱うのが良いと私は思う。つまり、戦場に残れば戦いを優位に進める助けとなることには期待しつつも、これを用いたコンボを中心にした構成にしないことだ。対面に座る対戦相手たちにとってまったく脅威にならないのでは意味がないが、《ゼンディカーの復興者》がなくともゲーム・プランが機能するような形に仕上げよう。
様々な統率者の中でも《贖われし者、ライズ》は私のお気に入りの1枚であり、私は新しいセットが登場するたびにこのデッキを更新している。《ゼンディカーの復興者》もまた、このデッキにぴったり収まるだろう。
こうして最新のカードがデッキにぴったりと収まるのはうれしいことだ。『戦乱のゼンディカー』では《荒廃した草原》が加わり、対戦相手たちの強烈な攻撃をしのぐためのライフをもたらしてくれた。『統率者(2015年版)』では《統率の灯台》と《新緑の合流点》が加わり、《贖われし者、ライズ》を序盤から何度も繰り出す妨げとなっていたマナの問題を和らげてくれた。そして今、『ゲートウォッチの誓い』からは《ゼンディカーの復興者》が加わり、大量のマナを必要とするプレイへの燃料と同時に、カードを引ける可能性が手に入ったのだ。
《ゼンディカーの復興者》によって、対戦相手のターン終了時に《荒野の確保》を放つという勝ち手段はより強固なものになるだろう。X呪文をより素早く、より強力に唱えられることで、必ずや有利な状況を生み出してくれるはずだ。
精算
当然のことだが、《ゼンディカーの復興者》のような能力を持ったカードが真に輝くのは大量のマナを注ぎ込む先がある場合だ。《ゼンディカーの復興者》がスタンダードを席巻し、プロツアー『ゲートウォッチの誓い』にてモダンでも大活躍を見せるかどうかは分からないが、私はこれを使って統率者戦を楽しみ、ゲームをひっくり返してやろうと思っている。
そうせずにはいられないよね。
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