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ゲームの流れに淀みを
ゲームの流れに淀みを
Adam Styborski / Tr. Tetsuya Yabuki / TSV Yusuke Yoshikawa
2015年9月17日
統率者戦は、マジックのほとんどすべてのカードを扱えるフォーマットだ。その多様性は極めて高いのだが、その中で多くのデッキが共通したパーツを何枚も採用するに至っているというのは、驚くべきことだろう。まるでどちらも捨てがたい悩ましい選択に私たち全員が直面し、最終的に同じ「好み」で選んだかのように。
《真面目な身代わり》 アート:Dan Scott |
普段から統率者戦を楽しんでいる方なら、こんな「既視感」がよくわかるはずだ。「《真面目な身代わり》から《沼》をタップ・イン。そこへ《頭蓋骨絞め》を装備して、さらに《漸減》で生け贄に捧げてそちらの統率者を破壊。こちらは3枚ドローします。」
こういった動きを以前目にしたことのある人は、私に申し出るように。
アドバンテージ源――追加のカードを引いたり、使えるマナを増やしたり、複数のパーマネントを一度に対処したり、といった、アドバンテージを生み出す手段――となるカードは強く、人気を集めやすい。ゲーム中に取れる選択肢を増やしたり、扱えるマナを増やしたり、盤面をコントロールしたりする手段は本当に素晴らしいものだ。そのため、「コントロール」というアーキタイプはあらゆるフォーマットにおいて、「カードを引き解答を見つける」という形に組まれているのだ。
長年にわたり、私は様々なフォーマットでひと際活躍したカードを採用することで恩恵を受けてきた。《天使への願い》はレガシーの「白青奇跡」のフィニッシャーを務め、またプロツアー『アヴァシンの帰還』にてアレクサンダー・ヘイン/Alexander Hayneを優勝に導いた。《死者の神、エレボス》は「黒単信心」に欠かせないカードだ。それはグランプリ・ルイビル2013(リンク先は英語カバレージ)にてブライアン・ブラウン=デュイン/Brian Braun-Duinが頂点に登り詰める立役者となり、またチームメイトのブラッド・ネルソン/Brad Nelsonとトッド・アンダーソン/Todd Andersonも同じデッキを使用した。
こうして活躍したカードを統率者戦で採用する、ということを続けた中で、私のデッキに一番大きな影響を与えたのは《聖別されたスフィンクス》だった。こいつはスタンダードを席巻した頼りになる飛行クリーチャーだが、対戦相手がカードを1枚引くたびに2枚引けるという能力は1対1の戦いでも「明確に強く」、多人数戦では「ふざけているとしか思えない強さ」なのだ。対戦相手のやりたいことに先んじて、プレイした後は追加のコストがかからないようなアドバンテージ源こそが強力だ、ということだ。
これから紹介する《淀みの種父》は、君たちもすぐに統率者戦のデッキに採用したくなるだろう。
ここで君たちが手に入れた力、それは「淀み」だ。
あいつ以外みんな行き詰まり
《淀みの種父》はふたつの能力を有している。ひとつは「欠色」、色を持たない存在であることだ。《龍王シルムガル》や《老いざる苦行者、アローロ》などの青黒の統率者とともに使う必要があるものの、それでもこいつは、我々の心に恐怖を刻んだ無色のエルドラージという脅威なのだ。《幽霊火の刃》をはじめとして、相性の良い組み合わせが多くあるだろう。だが、《淀みの種父》の真の脅威はもうひとつの能力にある。
土地が1つ対戦相手のコントロール下で戦場に出るたび、そのプレイヤーは自分のライブラリーの一番上から2枚のカードを追放する。あなたはカードを2枚引く。
その能力は3つの部分からなり、どれを取っても強力だ。
- その能力は、統率者戦において避けて通れないあることを、対戦相手のいずれかが行うことで誘発する――それは土地を戦場に出すことだ。こちらがコストを支払うことはない。
- 次に、土地を置いたプレイヤーのライブラリーの一番上から2枚のカードを追放する。この効果は対戦相手の追放されたカードを扱う「エルドラージ・昇華者」の燃料となり、エルドラージによる災厄を卓中に撒き散らす助けとなる。
- そして、カードを2枚引く。
はっきり言おう。この《淀みの種父》は《聖別されたスフィンクス》とよく似たコストを持ち、同様に対戦相手の避けて通れない行動に対して誘発する能力を持つ。そして、戦場にある限り莫大な数のカードを引き込める。(飛行を持たないことや、土地を出すのはドロー・ステップほど避けがたいものではないことなど)多少の違いはあるものの、問題にするほどのことではないと私はわかった。《淀みの種父》は、客観的に見て強力なのだ。
《聖別されたスフィンクス》と同様に、《淀みの種父》が戦場に残ればゲームは大きくゆがむことになる。対戦相手の土地の展開は遅れ、生み出すマナがカードを2枚も与えるほどの価値があるのか、慎重にならざるを得なくなるはずだ。《木霊の手の内》などのマナ加速をするカードを使うなど、もってのほか。とんでもない代償を支払うことになる。また、こちらが単体除去や全体除去を使ってやれば有利な立場を独占し、勝利を決定的にできるだろう。
これに対する対戦相手たちの反応は、基本的に「土地を置かない」ことになる。そうされては、黒と青の組み合わせではなかなか手を出せない(《パララクスの潮流》や《Mana Vortex》といった手段もあるにはあるが)。そこで統率者として《擬態の原形質》や《血の暴君、シディシ》を用いて青黒緑でデッキを組めば、いくつかの手段が得られるだろう。
- 《老練の探険者》を生け贄に捧げる効果と組み合わせて、対戦相手たちに土地を探してもいいよ、と申し出る。
- より魅力的な提案を行うなら、《発見の誘惑》よりも《集団的航海》の方が対戦相手たちの足並みを乱すことができるだろう。さらに《未踏の開拓地》なら、彼らは支払いに気を揉む必要すらない。
- 《開墾》は、まるで《淀みの種父》とエルドラージの仲間たちのために作られたような、理想の1枚だ。
- 《自然の均衡》は、すでに土地が並んでしまった盤面をリセットし、再び土地を置くよう促してくれる。
- 《硫酸の波》は、対戦相手たちが「土地を見つけられなかった」ことを選べば一方的な全体除去と化す。
赤も検討すれば、普段は使い勝手が悪く統率者戦ではまず採用されない《雇われ巨人》が見つかるだろう。また白にはゲームが長引くとうまくいかないものの、《しもべの誓い》がある。こうして挙げて見るとわかるが、対戦相手に土地のプレイを強制させる名案は本当にないのだ。それでも《淀みの種父》が戦場に出れば、可能な限り対戦相手が土地を置くチャンスを増やしてやることで、ベストに近い状況を作り出せるはずだ。
ゲームの停止
《淀みの種父》を使う際に抱えることになる最も大きなリスクは、ゲームが完全に止まってしまうことだ。誰も土地を置かず盤面の展開を止めてしまえばゲーム序盤にして目も当てられない事態になるし、続く土地破壊があまりに強力なものになってしまう。純粋にこちらに恩恵をもたらす《聖別されたスフィンクス》と異なり、《淀みの種父》は対戦相手の方を罰するものだ。デッキに入ったクールなカードを追放され、ただ土地を置いただけでドローを「献上する」というのは、相手にとって不快感のダブルパンチとなり、この上ない不和の原因となるだろう。
《淀みの種父》を使う際は、目立つような動きをせず無害なものだと思わせる努力をしよう。このエルドラージの力を開放するタイミングには十分気をつけてくれ――長々と友人たちを縛り付けてしまっては、彼らはもう君の友人ではいられなくなってしまうかもしれないからね。
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