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翻訳記事その他
毅然としたやつ
毅然としたやつ
Bruce Richard / Tr. Tetsuya Yabuki / TSV Yusuke Yoshikawa
2015年3月10日
プレビュー・カードの中には、すぐにでもデッキに入れてそのスゴさをみんなに褒めてもらいたがっているやつがいる。その一方で、じっくりと考えてもらいたいやつもいる。そういうカードはしばしば驚くほど強かったりするものだけど、「実はこんなにクールなものだったのか」と気づくにはよく観察しなくちゃいけない。
どうぞ、ゆっくり見てくれ!
《ガラクの仲間》という頼もしいカードがある。2マナで3/2というサイズだけでも、とても頼りになるよね。こいつは、ゲームの早い段階からビート・ダウンを始めるチャンスを作ってくれる。それから、対戦相手が(「変異」や「予示」とか何かで)2/2のクリーチャーを繰り出してきても、そいつと相討ちしつつダメージも与えてくれる。そもそもトランプルがあるおかげで強化をためらわずにできるから、相手に1点だけ与えてそのまま退場なんてことはなさそうだ。
《毅然さの化身》はそんな《ガラクの仲間》と同じコストで同じサイズを持ち、さらに到達まで加わった優秀なやつだ。この到達のおかげで、こいつは《ガラクの仲間》とは違ったプランを取ることもできる。《ガラクの仲間》は可能な限り毎ターン攻撃に向かうのに対し、《毅然さの化身》は飛行ビートダウンの序盤を抑える役目も果たせるんだ。飛行ビートを使う対戦相手は、序盤に1/1のスピリットや鳥を展開して小さなダメージを重ねてくるけれど、これでもう問題ないね。《ガラクの仲間》と異なり、《毅然さの化身》は序盤の攻撃と防御をどちらもこなしてくれるんだ。
ただ、複数のプレイヤーとカジュアルで戦うと、どうしてもゲームが長引きがちになる。1時間も2時間も続くゲームの「序盤」は、せいぜい最初の10分程度だ。軽い3/2のクリーチャーは悪くないけれど、デッキを組んでいくうちに抜けていくことが多くなるだろう。長いゲームでは期待に沿った活躍はできないんだ。《毅然さの化身》もゲーム後半、ドラゴンをチャンプ・ブロックすることはできるかもしれない。でもそれだけじゃもの足りないかな。
でも《毅然さの化身》は、それだけじゃないんだ。
この「毅然としたやつ」は、ゲームが進むにつれてサイズを上げることのできる、特別な1枚だ。2ターン目か3ターン目にこいつをプレイすれば、到達とトランプルを持った3/2が対戦相手たちを苦しめるだろう。ブロックや除去の準備ができていないうちに、9点か10点のダメージを稼ぎ出すはずさ。ゲーム中盤では、こちらも+1/+1カウンターの置かれたクリーチャーをいくつか持っているだろうから、《毅然さの化身》にも5/4くらいのサイズが期待できる。《毅然さの化身》はゲーム終盤に向かって盤面に「横の強さ」をもたらし、また同時に「縦の強さ」も用意できるんだ脚注1。8/7トランプル、到達にでもなれば、攻撃でも防御でもお任せあれって感じだね。
弱いところ
大きな問題は、《毅然さの化身》がどれだけサイズを上げられるのか、という点だ。こいつを《ガラクの仲間》より優れたものにするには、他にクリーチャーが必要で、そいつに+1/+1カウンターが置かれている必要がある。その力を引き出すために、ふたつの制限があるわけだね。さらにそれだけでなく、順番も大切だ。クリーチャーを引き込むより先に+1/+1カウンターを与えるカードを手に入れても、役に立たない。クリーチャーを展開して、そこに+1/+1カウンターを置き、それから《毅然さの化身》を唱える、という動きが必要になるんだ。さらにその後も、対戦相手が全体除去を使わないことが前提になるし、あるいは自軍を守る手段が必要になるだろう。こうして挙げれば挙げるほど、こいつが期待通りの活躍を見せてくれる見込みは少なくなっていくように感じちゃうね。
さてそれなら、どうやって《毅然さの化身》を売り込もうか? +1/+1カウンターが置かれたクリーチャーが5体いるなら、その有利をもっと引き出し続けてさらに有利になってやろうじゃないか。
強いところ
《毅然さの化身》はどんなデッキにも入るカードじゃないけれど、みんなが考えるより多くのデッキで活躍するものなんだ。様々なセットが登場するたびに、クリーチャーに+1/+1カウンターを置くカードは増えている。直接的に「対象のクリーチャーに+1/+1カウンターを1個置く」って書いてあるカードを除いても、クリーチャーに+1/+1カウンターを置く効果を持つ能力はいくつもあるんだ。「鼓舞」、「進化」、「補強」、「増幅」、「狂喜」、「移植」、「貪食」、「不死」、「活用」、「解鎖」。+1/+1カウンターを扱う方法は、どんどん多くなっているね。みんなも+1/+1カウンターを扱う機会が多くなっているんじゃないかな。
「縦の強さ」も「横の強さ」も両方持てるというのは、はっきり言って貴重だ。大抵のプレイヤーはそのどちらかには対処できるようにしているけど、両方とも手をつけられるのは稀なんだ。対戦相手がふたつの脅威への対応に追われるって展開は、きっと楽しいだろう。
毅然としたやつとその仲間たち
それじゃあ、どうすれば《毅然さの化身》の力を最大限発揮させられるだろう? 僕としては、今なお「報復」の機会を狙っているゼンディカーのあいつと組ませるのが良いんじゃないかなと思っている。《ゼンディカーの報復者》は大量の植物を連れてきて、それから土地を1枚出すだけでそのすべてが《毅然さの化身》が求める+1/+1カウンターを得る。《ゼンディカーの報復者》はそれ単体でも有力だけれど、こいつは《毅然さの化身》を決して無視できない戦力にしてくれるんだ。
他に《毅然さの化身》と一緒に使いたいのは、『統率者(2014年版)』から《森の捧げ物》だ。《森の捧げ物》は、すぐにでも強化できるエルフの大群を生み出してくれる。《白の太陽の頂点》でも同じ働きが期待できるけれど、白マナ・シンボルが3つもあるものよりは《毅然さの化身》と同じ色のものを使った方がいいかな。インスタント・タイミングで使えるのは素晴らしいけどね。
プレインズウォーカーのアジャニは《毅然さの化身》ときっと良い友達になれるだろう。《不動のアジャニ》と《黄金のたてがみのアジャニ》はどちらも、すべてのクリーチャーに+1/+1カウンターを置くことができる。それから《英雄の導師、アジャニ》も、一度に3体のクリーチャーに置けるね。
他の「戦場に出たとき」に能力が誘発するカードと同様に、《毅然さの化身》も《狙い澄ましの航海士》との相性が良い。ゲーム序盤に《毅然さの化身》をプレイしていたら、その後でさらに大きくなれるタイミングで《狙い澄ましの航海士》と「結魂」して「明滅」させることができるんだ。
もう少し新しいカードを使いたいなら、「鼓舞」メカニズムに注目してくれ。1/1のトークンが何体か戦場にあれば、「鼓舞」するたびに+1/+1カウンターが置かれたクリーチャーが増えていく。{G}{G}で7/6トランプルのクリーチャーを手にするのも、そう多くターンはかからないはずさ。
さていくつかのアイデアを出したところで、《毅然さの化身》のために組んだデッキリストを見てみてくれ。
6 《森》 4 《花咲く砂地》 4 《平地》 4 《寺院の庭》 4 《豊潤の神殿》 2 《ガヴォニーの居住区》 -土地(24)- 4 《円環の賢者》 2 《月皇ミケウス》 1 《茨森の模範》 1 《漁る軟泥》 2 《ラムホルトの勇者》 1 《英雄の記録者》 1 《反逆の混成体》 1 《野生の獣使い》 2 《忘れられた古霊》 1 《不屈のダガタール》 1 《印章の隊長》 2 《永遠のドロモカ》 1 《キイェルドーの王、ダリアン》 2 《ゼンディカーの報復者》 4 《毅然さの化身》 -クリーチャー(26)- |
3 《森の捧げ物》 4 《荒野の地図作成》 2 《軍部政変》 1 《獣使いの昇天》 -呪文(10)- |
このデッキには、先ほど言った《ゼンディカーの報復者》と《森の捧げ物》が採用されている。それから《キイェルドーの王、ダリアン》も入れることにした。《キイェルドーの王、ダリアン》は兵士徴用の達人で、盤面を素早く築いてくれる。手に負えない状況に陥ったら、Xの値を大きくして《軍部政変》を放ち、盤面を一掃した後に兵士を残そう。
クリーチャーに+1/+1カウンターを置く手段もいくつか追加した。《月皇ミケウス》はタップで他のクリーチャーに+1/+1カウンターを置き、極めて速く《毅然さの化身》のサイズが大きくなる状況を作ってくれる。《不屈のダガタール》は、+1/+1カウンターを必要なところに移すことができる。さらに、こいつは対戦相手のクリーチャーから+1/+1カウンターを奪い、こちらのクリーチャーに与えることもできるんだ。《永遠のドロモカ》は強烈な「鼓舞」を持っている。そして中でも僕のお気に入りは、《忘れられた古霊》だ。多人数戦で有力な《忘れられた古霊》は、もの凄い速さで+1/+1カウンターを積み上げ、アップキープにそれを撒くことができる。《倍増の季節》も加われば、《忘れられた古霊》はあっという間にゲームを決めてくれるだろう。
《軍部政変》と《森の捧げ物》を使うためにも、素早く大量のマナを扱えるようにしたい。「進化」を持った《円環の賢者》と「鼓舞」を持った《荒野の地図作成》で、クリーチャーを強化しながらマナ基盤も強化できるだろう。
とはいえ、《毅然さの化身》は必ずしもこれを中心にデッキを組まなきゃいけないわけじゃない。こいつを手に入れたら、僕はすぐにでも《育殻組のヴォレル》デッキに入れてみるよ。このデッキはトークンと+1/+1カウンターを倍にしていくのを目指しているから、《毅然さの化身》はすんなり入ると思う。たまに序盤の守りを任せながら、ゲームを素早く決める脅威として期待しているよ。
《毅然さの化身》は、必ずやみんなの+1/+1カウンター・デッキを一気に新しいレベルへと押し上げるだろう。約束するよ!
ブルース・リチャード/Bruce Richard / @manaburned / mtgseriousfun@gmail.com
脚注1
「横の強さ」とは、大量のクリーチャー(通常は小型のもの)を並べている状態のことだ。「横の強さ」があれば、大型のクリーチャー1体か2体しかない相手に対して有効な攻撃ができる。こちらは何体かクリーチャーを失うものの、大きなダメージを与えられるんだ。「縦の強さ」は、それ単体で大きなダメージを与えられるクリーチャーを1体(か2体)持っている状態のことだ。つまり、15体のクリーチャー・トークンが並んでいたら「横の強さ」があり、《引き裂かれし永劫、エムラクール》は「縦の強さ」をもたらすわけだね。(戻る)
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