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『マジック基本セット2014』に伴うルール変更

Matt Tabak / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru

2013年5月23日


 最近のインターネット事情に詳しい皆さんは、『マジック2014 デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ』の情報が出始めていることをご存じのことと思います。もちろん、『デュエルズ2014』の大半は『マジック基本セット2014』からですので、それらのカードの情報も出始めているということになります。『マジック2014』が地平線に見えてきたところで、『マジック基本セット2014』に伴うルールの変更と新しいテンプレートをご紹介するべきときがやってきました。ここで紹介するのがそのすべてではありません。セットごとに、ほとんどのプレイヤーが気付かない形でルールは調整を加えられており、『マジック基本セット2014』もその例外ではありません。ただし、今回この記事で紹介するのは、その中でも皆さんに影響を与えうる大きなものです。

 まず1つ明確にしておきたいことがあります。これらの変化は、『マジック基本セット2014』のプレリリースの日、2013年7月13日から有効になるということです。Magic Onlineでは、この変更は『マジック基本セット2014』が使えるようになる2013年7月29日からになります。現在のところは、現行のルールがそのまま有効です。

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「レジェンド・ルール」

 それでは細かな説明に入りましょう。「レジェンド・ルール」と呼ばれる、ルールの項目番号で言うと704.5kに変更が加えられます。現在のルールでは、複数の同名の伝説のパーマネントが戦場にある場合、状況起因処理でそれら全てがオーナーの墓地に置かれます。新ルールでは、単一のプレイヤーがコントロールする複数の同名の伝説のパーマネントが戦場にある場合、状況起因処理として、そのプレイヤーはその中から1体を選び、それ以外をオーナーの墓地に置くのです。

 見方によっては、「レジェンド・ルール」が各プレイヤーそれぞれだけを見るようになった、とも言えます。他のプレイヤーが何をコントロールしていようと関係ないのです。明らかに、これはプレイにいくらかの影響を与えます。伝説のパーマネントをコントロールしている状況で、もう1個の同名の伝説のパーマネントを(唱える、コピーするなどで)戦場に出した場合、1個を戦場に残すことになります。古い方でも、新しい方でも、好きな方を選んで残せるのです。

 また、他のプレイヤーのコントロールする伝説のパーマネントのコピーを作った場合、そのコピーが単純にあなたのものになります。元になった伝説のパーマネントが破裂することもなければ戦場を離れることもなく、そもそも何も影響を与えないのです。《クローン》が伝説のクリーチャーを除去する、ということはなくなり、本来の働きをするようになります。それでは実際に新ルールの働きを例で見てみましょう。

 凄腕のデベロッパー、サム・ストッダード/Sam Stoddardに、この変更並びに「プレインズウォーカーの同一性ルール」の変更に関する開発部の動機をまとめてもらいました。その内容については、こちらから読むことができます。あ、まだプレインズウォーカーの話をしていませんでしたね。それではお話ししましょう。

「プレインズウォーカーの同一性ルール」

 みんなのヒーローを置き去りにするとは思っていないでしょう? 伝説のパーマネントだけ待遇を改めるはずがありません。プレインズウォーカーも、この変更に加わりました。

 「プレインズウォーカーの同一性ルール」は「レジェンド・ルール」とほとんど同じ変更を受けました。ルールの項目番号で言うと704.5jは、単一のプレイヤーが同じプレインズウォーカー・タイプを共有する複数のプレインズウォーカーをコントロールしている場合に、状況起因処理として、そのプレイヤーは1体を選んでそれ以外をオーナーの墓地に置く、となります。これも、他のプレイヤーが何をコントロールしているかは気にしなくてよくなるのです。それではまた例を見てみましょう。

 サムの記事はこれについてより詳しい情報を記載しています。こちらからご参照ください。重ねて強調しておきますが、この変更が有効になるのは、紙のマジックを使ったイベントで7月13日、Magic Onlineでは7月29日からです。

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構築イベントのサイドボード

 構築イベントにおけるサイドボードの構成についても変更されます。これまでは、メインデッキは60枚以上で、サイドボードは15枚、あるいは使わないことを示して0枚でした。新ルールでは、メインデッキはやはり60枚以上ですが、サイドボードは15枚までとなります。さらに、カードの入れ替えは同数でなくてもよくなります。第2ゲーム、第3ゲーム(以降のゲーム)においては、メインデッキが60枚以上あってサイドボードが15枚以下であれば問題ありません。この変更によって、構築とリミテッドのサイドボーディングがより近づくことになります。

 この変更による実際の利点は、競技イベントでよくあるこんな状況で現れます。第1ゲーム終了時に、サイドボードからカードを選んで加え、シャッフルして、対戦相手に提示して、ここでデッキが61枚になっていたことに気付きます。サイドボードには14枚しかありません。これだけで【ゲームの敗北】を受けていたのです。

 新ルールでは、この状況は違反ではなく、そのままマジックをプレイできます。新ルールの下で何が適正で何が違反か表にまとめてみました。数字はメインデッキの枚数とサイドボードの枚数を示します。

第1ゲーム 次のゲーム 適正?
60/15 60/15 適正
60/15 61/14 適正
60/15 75/0 適正
75/0 60/15 適正
60/10 63/7 適正
250/15 60/205 違反
60/15 50/25 違反

 おそらくほとんどのプレイヤーはメインデッキ60枚とサイドボード15枚を使い続けるでしょうが、興味深い変化はあり得ます。

「破壊されない」から「破壊不能」に(キーワード化)

 なぜ「破壊されない」がキーワードでないのか、という質問はよく受けていました。その答えは、その必要がないから、というものでした。マジックのために少しだけ捻って定義されている普通の言葉です。例えば「接死」のように複雑なルールを含んでいるわけではなく、「破壊されない」は「破壊されない」という意味だけでした。

 この理由は今もそのままで妥当で真理なのですが、プレイヤーがそう受け取っていないという現実がありました。それどころか、開発部でさえ受け取っていない人がほとんどだったのです。多くの人々は、キーワードであるかのように扱っていました。しばしばマーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterが言う通り、「バナナなんてクソだ」じゃない、「人間の本能には勝てない」のです。そこで、『マジック2014』から、「破壊不能」というキーワードになりました。パーマネントにただ「破壊不能」とだけ書かれたり、「クリーチャー1体を対象とする。ターン終了時までそれは破壊不能を得る」という能力が作られたりするのです。

 これで何が変わるのでしょうか? ほとんど何も変わりませんが、2つだけ変化があります。

その1

 パーマネントが(《死への抵抗》などの)他の呪文や能力によって破壊されないようになった後、全ての能力を失ったとします。これまでは、それでもやはり破壊されないままでした。なぜなら、「破壊されない」はそのパーマネントの持つ能力ではなく、そのパーマネントに関して正しい何かだったからです。この変更によって、そのパーマネントは「破壊不能」を失うようになります。

その2

 (《ボロスの魔除け》などの)呪文や能力によって、あなたのコントロールするクリーチャー(なりパーマネントなり)がターン終了時まで破壊されないようになりました。これまでは、その呪文や能力の解決以降にあなたのコントロール下に加わったクリーチャーも「破壊されな」くなっていました。これは、その呪文や能力がクリーチャーの特性を変えるものではなかったからです。この変更によって、その新しいクリーチャーは「破壊不能」を得ることのできるタイミングであなたのコントロール下になかったので、「破壊不能」を持たないことになります。

 これ以外にも、テンプレートや機能となったものがあります。

「ブロックされない」はキーワード化せず

 破壊不能についての話をしたので、「ブロックされない」も触れておきましょう。これも同じようにキーワードになると思った方もおられるでしょうが、残念、そうはなりませんでした。その理由は、ブロックされないには様々なバリエーションがあるからです。《バレントンの岩山踏み》や《恐火魔道士》、《ゴブリン・ウォー・ドラム》などのカードが存在します。もし「ブロックされない」をキーワードにして、そのバリエーションをキーワードにしなければ奇妙なことが起こるでしょうし、直観的でもありません。そこで、「ブロックされない」がキーワードでないことの混乱を防ぐため、英語のテンプレートを「can't be blocked」に変更しました。これまでも使われていたこの表記を使うのは非常に自然に思えます。これはテンプレートだけの変更で、カードの機能は一切変化しません。

追加の土地のプレイ

 現時点では(この記事を読んでいるのがこれらのルール変更の発効日の7月13日より前だと仮定しています)、土地をプレイする時、複数のルールや効果によって土地をプレイできる場合にはどのルールや効果を使っているのか宣言しなければならない、ということを知っていましたか? 知らない人がほとんどでしょう。実際、例えば《ムル・ダヤの巫女》のようなものをコントロールしていて土地をプレイする場合、正しいプレイは「これは追加の土地だ」と宣言することでした。さらに、《ムル・ダヤの巫女》を手札に戻してもう一度唱えることができ、そうしたらさらに土地をプレイできたのです。そして最後にターンに1枚の土地をプレイする、と。奇妙な話です。

 『マジック2014』では、「土地プレイの数」に注目した土地のプレイのシステムを導入します。何であれ土地をプレイしたい場合、既にそのターンの土地プレイを使い切っていた場合には、その土地をプレイすることはできません。通常、自分の各ターンに1回の土地プレイを持っています。呪文や能力によってこの数が増えることがあります。パーマネントによって追加の土地をプレイできることはありますが、そのパーマネントが戦場を離れたら、その追加の土地プレイは失われます。

 これまで通り、どちらのメイン・フェイズにでも、土地をプレイするという特別な処理をターンに1回行うことが可能です。(例えば《願いのジン》の起動型能力などの)呪文や能力によって、その解決の一部として土地をプレイできることもあります。どうやって土地をプレイしたかにかかわらず、それは土地プレイを1回消費するのです。そして、そのターンの土地プレイを使い切ったなら、土地をプレイすることはできません。もちろんこれまで通り、自分のターンでなければ土地をプレイできることはあり得ません。

 例を示しましょう。

  • あなたは自分のメイン・フェイズを、1回の土地プレイを持った状態で始めました。あなたは土地を1枚プレイします。その後、《願いのジン》を起動して、土地を公開しました。しかし土地プレイは余っていないので、あなたはその公開した土地をプレイすることはできません。
  • あなたは自分のメイン・フェイズを、1回の土地プレイを持った状態で始めました。あなたは《願いのジン》を起動し、土地を公開し、その土地をプレイしました。その後で(ターンに1度の特別な処理で)他の土地をプレイしようとしましたが、土地プレイが余っていないので、このターンに他の土地をプレイすることはできません。
  • あなたは《ムル・ダヤの巫女》をコントロールした状態で戦闘前メイン・フェイズを始めました。土地プレイは2回あります。あなたは土地を1枚プレイしました。その後で《ムル・ダヤの巫女》が戦闘で死亡したので、土地プレイは1回になり、既にそれは使われています。戦闘後メイン・フェイズには、もう1枚の土地をプレイすることはできません。
  • あなたは《ムル・ダヤの巫女》をコントロールした状態で戦闘前メイン・フェイズを始めました。土地プレイは2回あります。あなたは土地を1枚プレイしました。その後で《ムル・ダヤの巫女》を手札に戻したので、土地プレイは1回になり、既にそれは使われています。再び《ムル・ダヤの巫女》を唱えた場合、土地プレイは2回に戻り、使われていたのは1回だけなので、2枚目の土地をプレイすることができます。

 ほとんどの場合、ターンに何枚土地をプレイしたか、そして何枚プレイできるのかというのは簡単に把握できます。問題になることはそうありませんが、問題になったとしても新しいルールの方が理解できると思います。

不変なのは変化だけ

 以上で概観を終わります。更新速報では、これらの変更についてより詳しい情報をお伝えすることになるでしょう。ほとんどのゲームには影響を与えない細かな変更や、それらの変更で影響を受けるカード、通常の再確認を通して明確化されたものなどについてもそちらでお伝えします。これらの変更について、皆さんからの反応を受けるのが楽しみですが、楽しみという点においてはカード以上のものはないでしょう。そう、『Modern Masters』や『基本セット2014』にはたくさんの素晴らしいものがつまっています。お楽しみください!

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