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迷路の終わり――プロツアー「ドラゴンの迷路」プレビュー

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迷路の終わり――プロツアー「ドラゴンの迷路」プレビュー

Rich Hagon / Tr. Tetsuya Yabuki / TSV Yusuke Yoshikawa

2013年5月13日


 マジックのトップ・レベルの世界において、シーズン最後のイベントほど注目を集めるものはありません。そこには多くの波乱が待ち受けており、展開される筋書きも登場するキャラクターも、『ゲーム・オブ・スローンズ』(訳注:アメリカのファンタジー小説原作のドラマシリーズ)を凌ぐほどです。いよいよ、迷路は終わりへ近づいています。ラヴニカの各ギルドが用意した迷路走者はひとりずつですが、今週末サンディエゴに集う走者は400人を超え、過酷な19ラウンドを戦い抜いて世界最高の輝かしい栄光を手にするチャンスを待ちわびているのです。

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 プロツアー「ドラゴンの迷路」は今シーズンを締めくくる一大イベントで、それを見逃すわけにはいきません。そこで、私たちは約30時間にわたるライブ・カバレージを通して、皆さんに大会の一部始終を最後の表彰式まで余すところなくお伝えします。それでは、今回のプロツアーで一体何が起こるのか見てみましょう。

国旗をその身に

 プロツアーの優勝はマジック最高峰の栄誉ですが、それだけではなく、アメリカのブライアン・キブラー/Brian Kiblerや日本の大礒正嗣、ブラジルのパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosaのような勲章を掲げた英雄たちは、国を代表するということの素晴らしさを伝えてくれるでしょう。71ヵ国もの国それぞれで、今シーズンを最高プロポイントで終えたプレイヤーは、夏のアムステルダムで行われるワールド・マジック・カップにおいて自国を率いることになります。ラウンドが進むにつれて、各国の視聴者たちは結果と順位に釘付けになり、誰がその国旗を掲げるのかを確かめるでしょう。マジック人口の少ない国では、サンディエゴに来たプレイヤーはなんとかしてトップ32以内に入れば英雄となって凱旋できるかもしれない、と意識しています。一方大国では大混戦が予想されます。なかでも最も激しいポイント・レースが待ち受けているアメリカでは、とてつもないプレイヤーがアムステルダムでチームを率いることになるのはほぼ間違いありません。リーダーを競い合っているプレイヤーのリストをお見せすることはできますが、そこには概ね「誰もが聞いたことのある名前」が並んでいる、とお伝えした方が早いでしょう。真面目な話、アメリカのマジックは現在最高の布陣を誇り、それは今シーズン好成績を収めているプレイヤーの一覧にも表れています。


プロツアー・オースティン2009優勝者のキブラー、プロツアー・サンファン2010優勝者のダモ・ダ・ロサ

貴金属の数々

 世界中を回るマジックのメリーゴーランドは、決して止まることがありません。『ドラゴンの迷路』が世に出るやいなや、私たちは2013~14年のプロ・シーズンの内容に目を向けることになります。最高レベルの戦いの期間は15カ月に延び、私たちは世界中で行われる何十回ものグランプリで様々な構築フォーマットを目にして、また『テーロス』、『神々の軍勢』、『ニクスへの旅』、『基本セット2014』を含む新たなセットからやってくるリミテッドに新鮮な驚きを感じることでしょう!

 今週末、サンディエゴで競い合う何百ものプレイヤーたちは、次のシーズンのプロ・プレイヤーズ・クラブ・レベルを固めることになるでしょう。まず20点でシルバー・レベルになります。そして35点集めるとゴールド・レベルになり、その最大の魅力として4回あるすべてのプロツアーの参加資格を自動的に得られるようになります。さらに、45点以上を集めた強者のなかの強者にはプラチナ・レベルが用意されています。頂点に達するということが何を意味するのか、その正確なところを述べますと、以下のようになります。

  • すべてのグランプリで不戦勝3つを得ます。
  • 自国のワールド・マジック・カップ予選に招待されます。
  • すべてのプロツアーに招待されます。
  • プロツアーに参加するたび、3000ドルの参加褒賞を得ます。
  • そのシーズン内すべてのプロツアーで、航空券とホテル宿泊券を得ます。
  • ワールド・マジック・カップに参加するたび、1000ドルの参加褒賞を得ます。
  • グランプリに参加するたび、250ドルの参加褒賞を得ます。
  • すべてのグランプリで無料のスリープ・イン・スペシャル・サービスを得ます(可能な場合)。
  • 各マジック・オンライン・チャンピオンシップ・シリーズで20点のQPを得ます。

 プラチナ・レベルのプレイヤーたちが本当に大切にしているのはスリープ・イン・スペシャル・サービスに違いない、とお考えの皆さん、私は「その通りさ」と答えるプレイヤーを少なくともひとり知っていますよ! とはいえ、グランプリやプロツアーにたくさん参加すれば、賞金として1ペニー、1スー、1ルーブルの小銭を稼ぐ他に15000ドルを受け取ることが視野に入れられます。マジックのすべてを肌で感じたい? それならプラチナ・レベルを賭けた第14回戦に挑んでみてください......

歴史を作る

 カレンダーには非常に多くのイベントがあり、例えばグランプリ・ヴェローナ2013で3位になったプレイヤーは誰か、ということを思い出すのはなかなか難しいものです。(調べたところ、フランスのジェレミー・デザーニ/Jeremy Dezaniでした)。私たちの多くが思い出せるのは巨大なキャンバスで、そこにはこのゲームの歴史を横断する名前が大きく書かれています。そう、書かれた名前はプレイヤー・オブ・ザ・イヤー獲得者のものです。日曜日にはその獲得者一覧にまた誰かの名前が加えられることでしょう。ジョン・フィンケル/Jon Finkel、カイ・ブッディ/Kai Budde、ボブ・マーハー/Bob Maher、そしてガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassifのような真の巨星たちと名を連ね、さらに津村健志、八十岡翔太、齋藤友晴、中村修平......そして渡辺雄也という日本の旗手たちとも同じリストに載るのです。渡辺はサンディエゴにて3度目のプレイヤー・オブ・ザ・イヤー獲得のチャンスがあり、そのポジションを巡っては偉大なプレイヤーたちが競い合っているものの、渡辺を予想から外すという人はまずいないでしょう。昨年9月のマジック・プレイヤー選手権優勝を見た後では無理もないことです。


2012マジック・プレイヤー選手権優勝者の渡辺

 世界をリードするようになる以前にも、渡辺はルーキー・オブ・ザ・イヤー・レースを勝ち抜いています。今年はチリのフェリペ・タピア・ベッセラ/Felipe Tapia Becceraをイタリアのマッテオ・ヴェルサーリ/Matteo Versariが僅差で追う形になっています。イタリアのマジックは堅実に再浮上を続けており、ヨーロッパのグランプリにはマジックに長けた優秀なジャッジたちがたくさんいます。彼らは口々にこう言うでしょう。「ヴェルサーリは最高だよ」と。例のごとく、突如サンディエゴでトップ8に残るパフォーマンスを見せつけるプレイヤーが現れ、そのままルーキー・オブ・ザ・イヤーをさらっていくこともあり得ます。もしダークホースに注目したいなら、アメリカのジョー・デメストリオ/Joe Demestrioはいかがでしょうか? 弱冠17歳にして彼はその若い肩に優秀な頭脳を備え、今年のはじめにモントリオールで行われたプロツアーに初参加でトップ32入りを果たしました。とはいえ、すでに述べたように、今回のルーキー・オブ・ザ・イヤーは最後まで予想の難しいレースとなっていますよ。

取るべき道を選択せよ

 予想が難しくないものといえば、金曜の朝に始まるカバレージの最前線と中心を担うのは『ドラゴンの迷路』に他ならないでしょう。それは朝一番のドラフトで最初に開けるブースターなのです――それから『ギルド門侵犯』、『ラヴニカへの回帰』と続きます。皆さんの多くがすでにドラフトの海につま先をつけていると、私は確信しています。フライデー・ナイト・マジックであれマジック・オンラインであれ、皆さんを有利に導く知識、その断片をここで集めておきましょう。見どころとなる点は以下の通りです。

 門は門番と共に使いたい。門番は門と共に使いたい。1回のピックで取れるのは片方だけ。プロ・プレイヤーたちはこれらをどのタイミングで取るでしょうか?

『ドラゴンの迷路』には多色のカードがたくさんあります。どのデッキも3色(またはそれ以上)になるのでしょうか? それとも整然と組み立てられた2色のデッキが輝くのでしょうか?

 土台を作る呪文(導き石や《新緑の安息所》など)を多用して少数の大型の脅威を繰り出すデッキに対しては、打ち消し呪文が良く効きます。《静寂宣告》や《精神静電》が、ランプ・デッキを完全に駆逐することになるでしょうか?

 融合カードは、マジックでは珍しく評価の極めて難しいカードです。片方を使ってもう片方は無いものとして扱いますか? 初手でピックして、《唯々 // 諾々》のようなカードのために8マナへ届くようにデッキを組みますか? どこまで貪欲になれるでしょうか?

 ディミーアはドラフト中かなり安く取れるものでした。《精神を飲む者、ミルコ・ヴォスク》は、ライブラリー破壊プランに狙いを定めるなら実に魅力的なカードです。また、防衛持ちのクリーチャーが複数必要な《門衛》と一緒に《雇われ拷問者》や《ニヴィックスのサイクロプス》を使えば、面白いことになるでしょう......

 焼いて、焼いて、焼いて、焼いて、焼きまくり。《戦導者のらせん》を取るのです。それと《敵への処罰》を2、3枚ピックしましょう。『ラヴニカへの回帰』には《爆発の衝撃》があることもお忘れなく。火力を20点分叩きこむデッキがいい? 遅いデッキはそういうデッキを苦手にしていますよね。特に深い意味はありませんよ。

 そして、これは私が夢の中で見たことなのですが(内容は聞かないでください)、サンディエゴのどこかで(第2回戦の73番テーブルだと私は予想しています)オルゾフ同士が当たり、両プレイヤーともそれぞれの戦場にいる《荒廃の司教》を見つめることになるでしょう。ひとつの呪文に誘発する強請の数はどうなってしまうのでしょう? 6回くらいですかね......

ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロック

 私にとって、ブロック構築のプロツアーはその年で最高にエキサイティングなものです。なぜか? 見事に正解を導き出した人も筆舌に尽くし難い失敗をした人も、その両方とも現れる可能性が最も高いからです。スタンダードやモダンでは、誰もが以前作られたデッキを組みます。厳密に言えばマジック・オンラインにはブロック構築のメタゲームはありますが、『ドラゴンの迷路』がそれを根本から変えてしまうでしょう。すでに可能性に満ちたカードがいくつかあります。もしプレインズウォーカーが強力なパーマネントであることを耳にしたことがないなら、《ラル・ザレック》がおすすめです。インスタント・タイミングで唱えられるコストの小さな大型クリーチャーが良いものであることをご存じなかったなら、《ワームの到来》をどうぞ。通常より多くカードを引くというアイデアがうまくいかないなら、《血の公証人》をご覧ください。そして対戦相手が引くはずだったドローを代わりに引くというアイデアに惹かれたなら、《概念泥棒》に目を向けるといいでしょう。

 そうは言ったものの、本当に楽しくなるのは型にはまらないカードたちです。それは夢のあるカードの数々。倒せるものなら倒してみろというカードの数々。私からのコメント(あるいはプロのデッキ構築をたくさん覗き見てきた経験)は無しに、『ドラゴンの迷路』から以下の5枚を見て、ちょっとした夢や、えーと、可能性なんかを感じてみてください。


迷路の終わり》、《特質改竄》、《吹き荒れる潜在能力》、《イゼットの模範、メーレク》、《育殻組のヴォレル

 わかります? たぶんどれからも何も感じられないでしょう。ところがそれに反して、これらのどれかが、あるいは同じくらい意外なものが結果を出すかもしれません。それこそがブロック構築の醍醐味なのです。正解を掴めば、対戦相手を切り刻むことができます。間違いを犯せば、次々と勝ち目のないマッチアップを迎えて、迷路は本当に終わってしまうでしょう。

ショータイム

 私たちは2012~13年シーズン最後のレース、その幕を上げるのが待ちきれません。これまで通り、私は報道デスクで同僚たちと一緒にいます。ザック・ヒル/Zac Hill、マーシャル・サトクリフ/Marshall Sutcliffe、ラシャド・ミラー/Rashad Miller、シェルドン・メネリー/Sheldon Menery、そしてプロツアー歴史家ブライアン・デヴィッド=マーシャル/Brian David-Marshall。そこに居合わせる全員が、最高の試合を、最高の分析を、最高のデッキを、最高のプレイヤーを、そして何よりも――最高のストーリーを皆さんにお届けします。

 レースは今まさにスタートを切ります。迷路が終わりを迎えるその瞬間を、お見逃しなく。

 それではまたお会いしましょう。

ウェブキャスト・スケジュール

都市 金曜日 土曜日 日曜日
サンディエゴ 午前9時 午前9時 午前11時
シカゴ 午前11時 午前11時 午後1時
ニューヨーク 正午 正午 午後2時
リオ・デ・ジャネイロ 午後1時 午後1時 午後3時
ロンドン 午後5時 午後5時 午後7時
パリ 午後6時 午後6時 午後8時
ベルリン 午後6時 午後6時 午後8時
モスクワ 午後8時 午後8時 午後10時
東京 土曜午前1時 日曜午前1時 月曜午前3時
シドニー 土曜午前2時 日曜午前2時 月曜午前4時
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