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〔誘発忘れ〕の更新について
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〔誘発忘れ〕の更新について
Matt Tabak / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru
2013年2月4日
どうも、皆さん! 新セットの発売のたびに、マジックのルール・マネージャー(私!)は「Update Bulletin(リンク先は英語)」という記事を書いてきました。その記事では、新しいセットの導入とともに更新されるオラクルや総合ルールの変更点を紹介しています。これまでは、イベントに関するルールはその記事では触れていませんでしたが、それはそれらの変更の頻度が低く、また内容も興味を引くようなものではなかったからです。また、イベントに行くのであれば、そこには説明してくれるジャッジがいるものだからです。
《閉廷宣言》 アート:Matt Stewart |
今回の更新は少し状況が違います。マジック違反処置指針の〔誘発忘れ〕の項目はここ数回の更新でバタバタ変更されました。更新のたびによりよくなってはいますが、完成品だとはとても言えませんでした。場合によっては、良い、戦略的なマジックとは違うところに目を向けたほうが有利な状況が発生していました。ルールというものは、自然だと感じられるようなプレイができるようにしなければなりません。間抜けに思えるような行動は、正しいプレイであってはならないのです。
これが私たちの理念です。どうすべきかはわかっています。ただそれを最適な方法でポリシーに記せていないだけです。そこで、私たちはプレイヤーと語り、ジャッジと語り、コミュニティの書いた記事を読み、掲示板を読み、メールを読みました。皆さんがソーシャルメディアで公表している発言も助けになりました。結果として、より健全で、包括的で、そしてマジックの本質であるほぼ無限の状況に対応できる柔軟性を持ったポリシーとなったと思います。変更というものは安易に行われたものでもなければ、安易に却下されるものでもありません。ああ、却下と言えば私が即座に却下しているものが1つあります。プレリリースの第2回戦にカラオケに行こうという提案です。
私たちはいつも、皆さんにより楽しい経験をもたらす方法を模索しています。皆さんがマジックを選んでくれたのですから、それには楽しみという形で報いたいと思っています。もう迷う必要はありません!
なぜ誘発型能力だけ特別なのか?
なぜなら、誘発型能力はゲーム中によく忘れられるからです。誘発型能力がスタックに行くときに誘発型能力の方から宣言してくれるわけではありませんし、見落とすことも非常によくあります。イベントにおいては、プレイヤーは自分のカードが正しくプレイされるようにする責任があり、そうしないことは不利益になるべきです。そして、忘れた場合の措置も妥当なものであるべきだと思っています。
対戦相手から見ると、対戦相手が時々間違ったプレイをしていることを指摘するぐらいなら問題ないでしょうが、誘発型能力はその中でもダントツに多く、何度も何度も指摘するのは理不尽な負担になります。プレイヤーには、対戦相手が誘発型能力を忘れないか気にするのではなく、ゲームの局面を正しく保つことに集中してもらいたいと考えました。
このルールが適用されるイベントは?
ルールの話にどっぷり沈み込む前に、この変更に影響を受けるイベントは何なのか強調しておきます。マジック違反処置指針を使うのは、ルール適用度(REL)が競技またはプロのイベントだけです。つまり、グランプリ・トライアル、グランプリ、プロツアー予選、プロツアー、ワールド・マジック・カップ予選、ワールド・マジック・カップ、世界選手権です。それ以外のイベント、つまりプレリリースや発売記念イベント、フライデー・ナイト・マジックやその他店舗で開催されるドラフトなどは、ルール適用度は一般で行われます。
ルール適用度が一般のイベントでは、「ルール」は2つだけです。自分の誘発型能力を見逃してはならない、また、相手のみ逃した誘発型能力を指摘する義務はない。この2つめの変更は、より高いルール適用度には数ヶ月前に導入されたものです。これは誘発型能力の処理に関するルールで、ルール違反を見逃していいという話ではありません。これによって、対戦相手の側の責任はイベントの種類を問わず同じになりました。誘発型能力が忘れられ(あるいは他のゲーム上の誤りが犯され)、その誤りが後で見つかった場合、プレイヤーはジャッジを呼ぶべきです。ジャッジは、可能ならその誤りを正しますが、できなければゲームはそのまま続けられます。ルール適用度が一般の場合は、楽しくプレイすることと、プレイヤーが技量や経験を問わず肩の力を抜いて楽しめる環境を提供することが重要ですので、誘発型能力を忘れたことはそれほど厳しく罰せられません。
ルール適用度が競技やプロの場合、楽しくプレイしてもらいたいのは同じなのですが、競技的な振る舞いが標準になります。プレイヤーは競技に参加し、技量やデッキを競い合わせてトップを狙うために来ているのです。すでに言った通り、マジックの真髄は戦術的勝負――舌先のゴマカシでなく戦略や技量で決まる精神的戦いにあるのです。様々な状況において、プレイヤーに望まれることが何なのか明確に示したいと考えました。
変更されなかったところは?
いろいろあります! 自分の誘発型能力を必要に応じて「忘れる」ことはできないままです。誘発型能力の文章がどうであるかはあまり関係ありません。《闇の腹心》をコントロールしていて、7ターン続けてその能力を正しく処理した後、残りライフが3点になった時点で突然忘れたりしたら、ジャッジは調査を始めることでしょう。
はっきり書いておきますと、自分がコントロールしていない誘発型能力に気付かないことが違反になることはあり得ません。これは、前々回の更新時に、対戦相手の能力を覚えておくことを煩わしく感じるというプレイヤーからのフィードバックによって変更されたことです。言える範囲で言うと、この変更は好評でした。誘発忘れの状況の対戦相手として、黙っていることの利益を享受できるようになったのです。もちろん、指摘したいと思ったら誘発忘れを指摘することは認められています。
対戦相手の誘発型能力を指摘する必要はありませんが、ルール違反を無視することは認められていません。例えば、対戦相手が、自分のクリーチャーが戦闘で死亡したと思って墓地に置いたとき、戦場に《清浄の名誉》があるせいで死亡していないはずだとあなたは気がついていたなら、あなたはそれを指摘しなければなりません。そうしないのは、〔故意の違反〕です。
以下でふれるややこしい話を除くと、あなたが自分の誘発型能力を忘れたときにジャッジがすることは今まで通りです。その誘発型能力を処理するかどうかは、対戦相手が決定することができます。変更されたのは、いつ〔誘発忘れ〕だと判断されるか、そしてプレイヤーが何を意思表示しなければならないかです。一見して複雑に見えるルールであっても、それはプレイヤーが自然にプレイできるようにするために定められたものなのです。
いつ意思表示しなければならないの?
新ルールでは、誘発型能力のコントローラーはその誘発型能力の種類によって定められる時点までに誘発に「気付いていると意思表示」しなければなりません。プレイヤーがそうできなかった場合、その誘発型能力は忘れられたものとします。気付いているという意思表示として認められるのは何でしょうか? 4つの場合について見ていきましょう。
(「対戦相手1人を対象とする」以外で)対象を取ったり、モードを選んだり、その他その能力がスタックに置かれる時点でコントローラーが選択すべきことがある誘発型能力
これは非常に単純です。その能力がスタックに置かれる時に選択が必要であって、その選択を行う前に他の行動をしたのであれば、その誘発型能力を忘れています。
視覚上のゲームの局面(ライフの総量を含む)の変化を起こす、あるいは解決時に選択が必要になる誘発型能力
コントローラーは、その能力の解決までには不可能な行動をする前に、その変化あるいは選択について告知する必要があります。誘発型能力が実際に忘れられていることがはっきりするよう、インスタントや起動型能力のプレイは認めることにしました。例えば、《聖トラフトの霊》で攻撃した時、天使・トークンを戦場に出す前にインスタントを唱えたとしたら、ルール上、《聖トラフトの霊》の誘発型能力がまだスタック上にあるものとして扱います。能力を宣言せずに、能力の解決後にしかできない何か、例えば戦闘ダメージの割り振りの宣言などをすると、誘発型能力は忘れられたことになります。
ゲームのルールを変更する誘発型能力
これに分類されるのは、《紅蓮心の狼》の持つ誘発型能力などです。攻撃やブロックなど、ゲームのある局面を処理するルールを変更します。これが最初に効果をもたらす時点で能力を宣言するべきで、コントローラーには対戦相手が結果として不正な処理をすることを防ぐ責任があります。例えば、《紅蓮心の狼》で攻撃し、対戦相手がそれをクリーチャー1体でブロックしようとした場合、攻撃したプレイヤーは対戦相手にそれが不正なブロックであると告げ、ブロック・クリーチャーの指定を再びさせなければなりません。
視覚上はわからないゲームの局面に影響を及ぼす誘発型能力
コントローラーは、その変化が視覚上のゲームの局面に最初に影響をもたらす時に、物理的処理や処理の明確化をしなければなりません。賛美や《思考を築く者、ジェイス》の1つめの能力など、多くの誘発型能力がこの分類に入ります。賛美を持つクリーチャー1体だけで攻撃した場合、その能力が誘発したときやスタックに置かれる時には選択が必要ないので、この時点では宣言する必要はありません。能力の解決時にも処理は必要ないので、この時点でも宣言する必要がありません(一方、クリーチャーに+1/+1カウンターを置くような能力はこうではありません。ルール上、そういう能力であればこの時点でその処理を実際にしなければなりません)。しかし、その後のどこかの時点で、ダメージが割り振られ、ライフの総量という視覚上のゲームの局面にこの誘発型能力が影響を及ぼすことになります。ここで宣言が必要になります。このラインは非常に厳しいものではありません。修整を受ける前のクリーチャーが2/1で、「3点」と宣言すれば全く問題ありません。あるいは「賛美であと1点」とか、いろいろな言い方はあるでしょう。
しかし、攻撃して「2点」と言ったらどうでしょう? 誘発型能力を忘れていると受け取られるような情報を示したなら、〔誘発忘れ〕として扱われることになります。「2点。え、ブロックない? ふふふ、実は3点だったのさ!」は認められません。
他の変更点は?
〔誘発忘れ〕の変更を除いては、文法上の修正など、小さな変更が数カ所あるだけです。〔イベント上の誤り―意思疎通規定抵触行為〕の英語名がTournament Error - Player Communication ViolationからTournament Error - Communication Policy Violationになり、マジック・イベント規定に定められた規定を指しているということが明確になりました。
細分化されていた〔故意の違反〕が単一の〔非紳士的行為 ― 故意の違反〕に統合され、より明確に定義されました。基本的に、何らかの利益を得るために意図的にルールを破った場合、〔故意の違反〕となります。絶対にそんなことをしないように! プレイヤーが意図的に何らかの行為を行い、ただしそれがルールを破っているということに気付いていないというおかしな状況があります。それについては、別の問題であると認識したいと考えました。
おわりに、あるいは「どうでもいい小見出し」
もしこのポリシーについてより深く知りたければ、各分類に入る誘発型能力の例を考え、それが忘れられたときにどうするか考えてください。そして、稀な例外や奇妙な状況を何とかするための特別なルールを見付けることでしょう。マジックは巨大なゲームです。私たちは自然なプレイヤーの振る舞いを賞賛する、実用的なポリシーを作るために尽力してきました。マジックの根幹である人間同士の意思疎通というのは、予想不可能なこともあります。私たちは、皆さんがいつでもプレイすることを楽しめるように、身内のドラフトからプロツアーまであらゆるレベルのイベントに目を向けています。......いや、皆さんが遊んでいる部屋を覗いているというわけじゃないですけどね。
ご質問があれば、お近くのイベントでジャッジに聞いてみて下さい。それより何より、楽しみましょう!
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