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プレインズウォーカーのためのアヴァシンの帰還案内 その1
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プレインズウォーカーのためのアヴァシンの帰還案内 その1
The Magic Creative Team / Translated by Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori
2012年4月11日
アヴァシン不在の間、天使たちは辛酸を舐めていた。彼女らの指導者なしには飛行隊の組織は乱れ、無力となった。多くが姿を消し、彼女らを作り出した力を失って当惑した。アヴァシンの失踪はスレイベン大聖堂上層、アヴァシンが彼女の天使の群れとともに住まっていた聖所である天使舎へと弔鐘を鳴らした。外からは、天使舎は大聖堂の軒下に隠れた細長い屋根裏部屋に見える。だが一旦中に入ったなら、外から見るよりもずっと広い空間がある。天使以外の何者も天使舎に入ることは許されていない。このためアヴァシンの不在の間、その空間の劇的な荒廃を外から目撃した者はいない。以前、それは清純さを保たれた優雅な広間であった。だがその広間は大天使なくして文字通り崩壊した。敷石を瓦礫が覆い、屋根に空いた穴から雨漏りが落ちるほどに。
アート:David Palumbo |
黄金夜飛行隊の指揮官であるギセラは、アヴァシン失踪直後、途方に暮れた。ギセラはアヴァシンとグリセルブランドとの戦いを目撃した数少ない一人だった。彼女はその大天使の親友であり、最も近しい味方であり、最強の剣だった。そしてグリセルブランドがアヴァシンへと致命的な攻撃を加えて獄庫へ彼女を落とすのを見た時、ギセラはかつて経験したことのない感情に襲われた。恐れ、無力さ、そして絶望。
《鎮魂歌の天使》 アート:Eric Deschamps |
獄庫が砕かれた時、アヴァシンは力に満ち溢れて姿を現した。彼女の存在はアヴァシン教の防護魔法へともう一度聖なる魔力を吹き込んだ。天使の群れはその完全な力を取り戻し、邪悪との戦いにおいて優勢を得る機会を人間達へと与えた。天使の三つの飛行隊はかつてよりも数を増して再編成された。今一度、彼女らは戦いの最前線でアヴァシンの兵となった。この時は、その世界の怪物たちをかろうじて食い止めるどころか、天使達と彼女らの人間の味方は奴らを押し戻し、人類の文明の要塞から追い払った。初めて、彼らは勝利した。
アート:Karl Kopinski |
天使の飛行隊
雪花石飛行隊
天使の飛行隊はスレイベンに集中しており、アヴァシン教の護法を維持する助けとなっている。天使達は主に天使舎に居住し、彼女らの姿は都市の住人にとっては見慣れたものである。彼女らは通常小集団で動き、都市の治癒の中心を訪れる。雪花石の天使達はまた都市の城壁とイニストラード全土の聖所の防護魔法を維持することによって司祭と聖戦士達を手助けする。他の飛行隊によれば、雪花石の天使達は情にもろすぎる傾向があると言っている。だが彼女らは自分たちは現実的であり同情的なのだと考えている。彼女らは多くの場合武器を持って旅はせず、魔法を使用することを好み、そして争いが他の手段によっては解決できない時にのみ戦う。大天使の不在の間、雪花石の天使達はアヴァシン教の護法が失敗したことを最初に認識した。多くは他の飛行隊以上に活動し続けた――防護を強めるべく倍もの努力をした。彼女らの努力はおそらく、多くの街や開拓地のような陥落の運命からスレイベンを守った。
アート:Igor Kieryluk |
黄金夜飛行隊
この飛行隊は教会の肉体的強さに焦点をおいた、天使兵の軍隊である。飛行隊の本拠地はネファリア州のエルゴード訓練場であるが、スレイベンにも多くの黄金夜の天使がいる。エルゴード訓練場は聖戦士が訓練を受ける場所であり、年若い兵士達の生活の中、天使達は日常的な存在である。エルゴード訓練場の端には海を見下ろす岩山の上に位置する、堂々とした要塞がある。教会でもあり要塞でもあるそれは天使の塔と呼ばれている。天使兵達は天使の塔上部にある一連の細い尖塔や相互に連結した小部屋に居住している。これらの部屋は黄金夜飛行隊の者以外は立ち入り禁止である。
ネファリア州の中心に位置することから、黄金夜飛行隊は他の飛行隊よりも頻繁に屍錬金術師達や彼らの創造物スカーブとやり合う。天使達はアンデッドと彼らのよじれた創造主のあらゆる痕跡をも破壊するために猛烈な意志の強さを発揮してきた。アヴァシン不在の間、スカーブを狩る黄金夜の天使の一団はスカーブ師と人間の犯罪者達から「手斧部隊」として知られるようになった。そのような一団それぞれが聖戦士や信心深い兵士の分隊を伴い、再び復活することがないように、ゾンビの屍を切り刻んでは焼却していた。
四州においては、異端や犯罪に対するすべての裁判を主催するのは高位の司祭だが、常にその議事の証人となるのは黄金夜の天使である。しかしながら天使達は刑の執行には同席しない。それらは名もなき処刑人によってもたらされる。雪花石飛行隊の天使達とは異なり、黄金夜の天使兵達は常に武装して旅をする。聖戦士連隊がケッシグやステンシアの人里離れた地域へと新たに送られる時、彼らの旅路に一人の天使が付き添う。しかしながらその地域の護法の少なさから、天使達はあまりに長い間ステンシアに残ることはできない。その州で数日もすれば、一体の天使の意思は劇的に弱まってしまう。
アート:Cynthia Sheppard |
黄金夜飛行隊の天使達の特色は、現実主義と教会の法の遵守とにある。彼女らは戦略家であり、実際の戦いでは熟練の先導者である。黄金夜飛行隊の天使達は雪花石の姉妹達を涙もろく、世界の感情的な気まぐれに影響されやすいとみなしている。黄金夜飛行隊の天使達はより勇ましい心の在り方を鍛え、それ以上に、必要時には進んで武器をとる。黄金夜飛行隊のほとんどの天使達は不動の信念を持つが、同時に盲目的でもある。事実、彼女らはアヴァシンの失踪を認めなかった。アヴァシンは任務についている、確かに何かを行っており、そしてまもなく戻るであろうと主張していた。
この信念は獄庫が砕かれた時に報われた。ギセラの力は戻っただけでなく、激的に増した。彼女は屍術士と彼らのアンデッドの軍勢との聖戦を続けるよう課せられ、彼女はそれを熱意と献身をもって受け入れた。
鷺飛行隊
彼女らは生誕、再誕、清純を司る天使達であり、新月の季節に関連づけられている。彼女らの魔法は生命に害をなすものから人間を護るとされている。天使の飛行隊の中では最小の規模であり、その主要な役目は狼男や他の略奪的な怪物達を追跡するというものである。アヴァシンが失踪した時、彼女らは本拠地をスレイベンからヴィデンズ、ガヴォニー州遠方の聖所へと移した。この飛行隊の天使達はスレイベンの安全から遥か離れたその地域で、衰えた護法を支援すべく遠隔地への旅を続けた。
《黄金夜の刃、ギセラ》 アート:Jason Chan (※元記事ではIgor KierylukとなっていますがカードのJason Chanが正しいと思われます) |
彼女らは他の飛行隊よりもケッシグ州に近いため、鷺の天使達は狼男への審問の助力となっていた。彼女らはケッシグ州に滞在する聖戦士達と密接に働いた。アヴァシンの帰還以前の最後の日々、獰猛な吠え群れがケッシグ州を蹂躙し、極めて少数の天使と聖戦士達によってしか守られていない、塀を巡らせた開拓地の建物へと、数えきれない人間を追いやることとなった。鷺飛行隊はこの脅威を対処するべく向かい、その存在は数え切れぬほどの生命を救った。全飛行隊の中で鷺隊はアヴァシンを最も絶望視しており、新たな力と安心の源を求めて自然の力に目を向けるべきだと信じていた。
アート:Todd Lockwood |
アヴァシン教の大魔道士達
アヴァシン教の各大魔道士達は、教会の侍祭のうち、生まれながらにして持つ大天使の神聖なる力と交信する能力をある時点で示した者であるが、それ以前にイニストラード中どこにでもいる人々である。一度長老達によって確認され、見出されたなら、その後この数少ない有能な者達は、それぞれの天使の飛行隊内にあるの秘密の魔道士団へと連れられ、加わることになる。歴史的に、これらの技能や力は天使の師匠からやがて人間達へと伝えられたものである。大魔道士の系統は全てアヴァシン自身へとたどることができる。
アート:Michael C. Hayes |
アヴァシンが獄庫に繋がれていた時、大魔道士達は彼らの力のほとんどを、全てではないにしても失った。三つの階級の長老達は、これはアヴァシン以前の時代の古いやり方を復活させる時だと考えた。彼らはそれぞれ、いかにしてアヴァシンの聖なる力の発散なしに生き延び、彼らの能力を役立たせるかを復習し始めた。戦闘の技能や彼ら自身で魔法の呪文やまじないを引き出す訓練をする者もいた。
他の者は土地の自然の要素に集中し、自然の一風変わった錬金術的特質を復習し、目的のためにそれらを利用した。少数の者は聖職者を続ける必要があったために、古の秘本を紐解いて癒しの植物や神聖なる泉、魔法の印を求めた。
アート:Lucas Graciano |
今やアヴァシンは帰還し、大魔道士達は再び力に満たされ、そしてその力に伴った生まれつきの能力も取り戻した。彼らはその次元で最も強大な魔術師達を含む軍勢とみなされている。それぞれの系統にはそれ自身の特徴的な服装と装具があり、イニストラードのほとんどの住人は彼らを一瞥だけで識別することができる。
- 黄金夜の大魔道士達は「槍の賢者」と呼ばれている。この階級にある大魔道士達は太陽の力に関連づけられている。彼らの呪文は強力かつ攻撃的で、聖なる光を眩しい光線として放ち、アンデッドの軍勢を灰と帰し、仲間達に勇気と速さの後押しを与える。ある日アヴァシンはイニストラードから消え去ると予言は告げており、黄金夜の大魔道士達はそれを非常に深刻に受け止めていた。彼らは秘術と戦闘術の両方で自身を鍛えることを主張した。もしその時が来てしまったなら、彼らは武器を取ることにやぶさかではない。彼らはしばしばローブの下に鎧を着込み、また彼らの武器と鎧は太陽の前にかざしたアヴァシンの両刃の槍のシンボルで飾られている。
- 雪花石の大魔道士達は「月の賢者」として知られている。この大魔道士達は人間の信者達がゾンビとなって蘇らないよう守ることに関心を持つ。彼らの魔法は予防的もしくは防護的で、アンデッドを虚空へと消し去り墓地が封じられていることを確かにする。この階級は錬金術の領域を少々探っており、死者を活気づけることのできる勢力をよりよく理解するため、有名なスカーブ師やグール呼びの所業について研究している。獄庫についてのほとんどの文書と伝承は月の賢者達によるものである。彼らはあらゆる場所から発見してきた月銀を錬金術を使用して精錬し、強力な魔除けや護法印、アヴァシン教の聖戦士や聖職者達のための武器を創造する。彼らの兵器類はより独特で奇妙なデザインが融合したもので、恐らくは彼らのアーティファクトとアンデッドへの特化によるものである。彼らのシンボルは月の上に掲げられたアヴァシンの首飾りである。
- 鷺の大魔道士達は「春の賢者」である。この階級は治癒に関心を持つ。その魔法と自然世界の利用は、一人から時には集団全体を回復させることができる。この階級の侍祭のほとんどはイニストラードの僻地をずっと放浪していたアヴァシン教の司祭で、人々の役に立ち、病気を治癒し、ついには放浪と孤独の人生に夢中になるようになった。従って春の賢者達はしばしば修道院のような隠遁生活に身を置き、庭園を手入れし自然の美に感謝を捧げる。力を取り戻し、鷺の大魔道士達は悔悟する狼男達を速やかに探し求めた。彼らの武器は通常は木製の杖やこん棒であり、彼らの鎧は(あるならば)蜜蝋で硬化させた簡素な革製である。彼らのシンボルは円の中の白鷺であり、たいてい刻印されている。
グリフとグリフ乗り
昔からイニストラードでは、グリフと呼ばれる、鷺の頭部を持つ優雅なグリフィン種を目にすることができた。グリフは伝統的なイニストラードのグリフィンよりも長く華奢な身体を持ち、しなやかな首と艶のある臀部、槍のようなくちばし、そして馬のような蹄を持つ。グリフは素早く賢い飛行クリーチャーであり、暗黒のクリーチャーの生まれついての敵であり、アヴァシンと彼女の天使達に寄り添う頼もしい力である。
アート:Jason Chan |
グリフは敏感なクリーチャーである。彼らは暗黒が存在する時は目に見えて興奮すると知られてきた。聖職者達の中にはグリフを悪意のある霊を探知し、吸血鬼達の魅惑を見破り、悪魔を崇拝するスカースダグ教団の邪悪な影響を暴くために使用してきた。グリフの鷺のような頭部と翼はアヴァシンの象徴たる白鷺と、銀の月表面の模様の形を示唆している。グリフはアヴァシン教の強力な魔法と同様の力を示すことができ、彼らのかん高い鳴き声は天使達や他の天上のクリーチャー達を呼び寄せる。
グリフの騎士はアヴァシンの天駆ける騎兵である。ほとんどのグリフィンは乗りこなすにはあまりに荒々しいか気まぐれだが、グリフは機敏さと落ちつきを持ち、それによってよどみなく機動性のある騎乗ができることから、彼らは生来から騎乗戦闘に適しているようである。グリフの盟約騎士団の聖戦士、もしくは単純にグリフ騎士は空中での騎乗戦闘に特化した類の聖戦士である。グリフ騎士達は友であるグリフと一対一のペアとなり、片方が死ぬまでその団結は続く。騎士達は彼らのグリフの友と厳粛な誓約を交わし、そしてグリフは心から報いると考えられている。グリフ騎士達は他の次元のグリフィン乗りとは似ていない。なぜならば彼らは均衡の中、その鞍の下にいる獣をより偉大な存在であると認めているからである。彼らはただグリフを助け、守るためにそこにいるのだと。グリフ騎士達はグリフの友の気持ちを読むことを学び、ついにはその声を理解し、グリフが近くの邪悪を感知したことを伝える。
アート:Jason Chan |
アヴァシンが帰還したこの時でさえ、邪悪は潜んでいる。グリフの盟約騎士団は特に強大なデーモンや他の並外れた敵へ有効な戦闘技術を発案している。グリフ騎士がその槍を下げてアヴァシン教の聖句を詠唱しながら、グリフとその乗り手が敵へと一直線に飛ぶ。そして彼ら二人は魔法的な変身を受け、ひとつの神聖なる武器として融合する。共に、グリフの盟約騎士とグリフの友は敵クリーチャーへと体当たりをし、彼らの生命を捧げるが同時に敵を滅ぼす。
新たな邪悪の台頭
小悪魔の裂け目。かつては彼方を旅する罠師や森の民が焚火を囲んで語る噂話でしかなかったその場所、小悪魔の裂け目は今やより広く深く開き、地獄の領域へと至る地下トンネルと細道を顕わにしてよじれている。地上に出ようと騒ぎ立てるインプ、デビル、そしてデーモン達が今や、彼らの殺人的な取引をありとあらゆる人々に浴びせるべくイニストラードへと飛び出している。この変化は全て獄庫からのグリセルブランド解放が原因となったことは疑いない。今や、小悪魔の裂け目は硫黄と炎を噴き出す地上の巨大な裂け目となっている。周囲の森にはかつて緑が深く生い茂っていたが、インプとデビル達が朝から晩まで淵から明滅する炎を吐き出しながらはね回るために焼け焦げて黒くなってしまった。
アート:Lucas Graciano |
- プレインズウォーカーのためのアヴァシンの帰還案内 その1
- プレインズウォーカーのためのアヴァシンの帰還案内 その2
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