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基本セット2012の内部情報 その1
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基本セット2012の内部情報 その1
Doug Beyer / Translated by Mayuko Wakatsuki
2011年7月13日
基本セット2012(M12)デザインチームには空のサドルがあって、それは見たところ私の尻のような形をしていた。以前書いたように(リンク先は英語)、私の本業はルールテキストを紡ぎ出すことではない。私はアートの説明、カード名、フレーバーテキスト、世界を構成する材料、その他マジックのためのクリエイティブな記事を作り出す、そういったフレーバー売りの一人だ。だけどおやまあ。サドルに呼ばれてそれにまたがった。そのうえ、基本セットの全カードが甘ーいファンタジーの響きを求めて弱々しく泣く声を無視できなかった。私の心はそれら小さなヴォーソスのカード兵士達のもとへと出かけてしまい、私はカード達の任務を手伝うためにそこに向かうことを望んだ。だから私はM12開発メンバーに加わることができてとても嬉しかった。
先週、Brady Dommermuthは親切にもこの記事を肩代わりしてくれて、アートという見方からいくつかのM12のカードにスポットライトを当ててくれた。今日私はこのセットのヴォーソス的な宝石へともう一度接近飛行しようと思う。今回はフレーバーを心したM12デザイナーという見方からだ。
完全新規のバニラ(能力を持たない)クリーチャーをマジックへと取り入れるのはそう頻繁にあることではない。それらパワーとタフネスとコストの組み合わさった四角形はほとんどの場合すでに埋まっているが、《鎧の軍馬》は呼び声に応えてくれた。私は実際、奇妙なほどにバニラクリーチャーに興奮する。ルール面から見ると、バニラクリーチャーはパワーとタフネス、色だけになるまでそぎ落とされたものだ。彼らはメカニズム的な面では完全に沈黙しているので、フレーバーがそれらの物語を語る必要がある。《鎧の軍馬》は「騎士達の真の乗騎」というものを示す絶好の機会だった、そしてまた、野生の獣を白という色の視点で表現すると、共同体の秩序と善のために飼い馴らされた動物たちとなる、そんなアイデアを強固なものにした。そして乗騎といえば......
マジックのデザインの中で、「乗騎」を作り出そうという試みはいくつかあった。群れをなす動物や馬に他のクリーチャーが騎乗する。そのフレーバーはとても明らかだ。馬に乗れば速度を増し、より機動力のある、より実戦的な戦士となる。だけどそれをカードのテキストボックス内で実行するのは手際を要する。どのようにすればフレーバーを感じ取ることができるだろう? 昔からの均整の美だ。この場合は「真の乗騎」、単純で理解しやすいテキストラインとは? 《グリフィンの乗り手》は率直な解決策があるということを力強く主張している。我々はこのセットにいつもより数体多いグリフィンを仕込んだ。乗り手達が空飛ぶ相棒と出会えるように。
なんて可愛いやつなんだ。私は基本セット2011のデザインにこのテキストラインを提出し、戦った。私はこの、高官の訪問はその日の争いを全て止めなければいけない程に重要だというフレーバーが大好きだ。M11では作られなかったが、今ここM12にはある。実のところ、多くのデザイナーのお気に入りデザインに比べたら、印刷まではとても短い道のりだった。私はまたロウクスのような、あまり使われない人型生物種族を基本セットに得たことを嬉しく思っている。
やあ、彼こそが《大石弓》と同じ武器を使いこなす射撃の名手だ。装備品同様に「タップしたまま」という効果は、これほどの頑丈な一射の再装填には時間がかかるということを意味している。もし君がプレリリースでこの男に会ったならわかるはずだ。彼の狙いは正確であり、次の矢を装填するまでの1ターンを費やす価値があるということを。
何だこいつは? 「アンフィン」? クリーチャータイプは「サラマンダー・ならず者」? (まばたき) 何一体どういうこと?
我々は時々、新たなクリーチャーの種族を作り出そうとする。アンフィンはひょろ長く、抜け目のない、半水棲の人型生物だ。深海と草茂る浅瀬のどちらにも棲むことができる。彼らの文明についてはほとんど知られていない。将来、より多くの彼らに出会えるかどうかは時が教えてくれるだろう。
新たな種族のデビューは常に冒険的なものだ。彼らはマジックのセットとプレイヤーの心の中にある空席をめぐって他の何十ものクリーチャータイプと争わなくてはならない。加えて、2/4バニラは全くもって派手なデビューではない。つまりアンフィンはここマジックへと最もドラマティックな歩みを記したわけではない(うん、《貪欲なるベイロス》、《火口の乱暴者》、《マスティコア》といった者達のドラマティックなデビューと比較してみよう。それらの種族はまさに爆発とともに始まった)。だが私は長期の心構えをしている。これらサラマンダー人がマジックの中でいかにしてやっていくのかを見ることになるだろう。
《霜のタイタン》は君にブレスを吐く、そして向こうの君にも。我々は「冷気はタップしたままにする」というフレーバーをそこかしこに、少し多めに配置してきた(《霜のタイタン》《霜の壁》)。レガシーにまで多少幅を広げて《火 // 氷》や《氷の干渉器》なんてのもある。
なんともわかりやすいコンセプトの、なんとも純粋な体現! このカードが存在していなかったことは私にとっても驚きだった。このカードはM12のデザインの中で私が最も気にいっていたカードの一つで、デベロップ期間を通じて本質的に変化することはなかった。このカードがミラディンとファイレクシアのアーティファクトに満ちるスタンダード環境に衝撃を与えるかどうかはわからないが、私は皆が盗品を手に入れられるかどうか興味深く見ていようと思う。
このカードはアートに合うようにデザインされた。興味深いことに、このアートは元々アラーラの断片ブロックにおいて、エスパーの呪文のために依頼された。君は倒れた鎧にエーテリウムの線条細工の形状を小さなヒントとして見ることができるだろうか。そのカードは没となり、アートはそのブロックでは使われることはなかったが我々はそれをしまっておいた。そのアートはより中立の舞台、基本セットのカードとして居場所を見つけるだろうと知っていたから。そしてこの《蛙変化》となった。アートを与えられ、その呪文が何をするのかをデザインするというのはまあ簡単な仕事だったよ。
私はM12の青にあるイリュージョンというサブテーマが大好きだ。青という色に率先してクリーチャーで攻撃させること、私はそれが楽しく健全であるとわかった。君はデッキをこれら恐ろしい、だけど本当は儚いイリュージョン達で満たし、一人前の肉体を持つクリーチャーのように彼らで攻撃する。だが対戦相手はそれに「触れる」ことはできず、トリックであると知る。とても風味豊かだ。《非実在の王》は熟達の幻影使いで、君の幻影の下僕達に少し強い腕力と、驚くべき頑健さをくれる。
この孤独な幽霊は君の対戦相手の防御を素通りして漂っていく。だが君自身の防御にも役に立ってはくれない。マジックにおけるほとんどのスピリットは明らかに実体を持つにもかかわらず(《苔の神》や《真夜中のバンシー》に叩かれたことのある人は証言できるだろう)、それらのフレーバーを伝えてくれるシンプルでいいカードだ。つまり《苛まれし魂》は素早く、つかまえどころのない脅威だということを示している。この危うい幽霊で君の狂喜クリーチャーに「スイッチを入れる」所まで盛り込み済みだ。
狂喜を語るにあたって、我々は今やラヴニカのグルール・ギルドから分離してM12へと至った、狂気という能力のフレーバーへの興奮を隠せない。我々はそのキーワードを実際に「血に狂った喜びを感じる」クリーチャーだけに与えようと望んだ。川に隠れ潜む鰐や戦いに怒り狂う狂戦士、そしてもちろん、血を渇望する彼ら吸血鬼! 我々が風味豊かに「血に狂った喜びを感じる」であろうファンタジー・クリーチャー達をリストアップすると、彼らは基本的に黒、赤、緑に入ることは明らかだった。それは狂喜というメカニズムが着地する場所だった。これが私のセットデザインだ!
ミイラのフレーバーとは? ああ、彼らは包帯で保存された、乾燥したアンデッドだ。だがミイラは視覚的な描写より多くのものを持っている。外見からは、彼らが何をしているのかはわからない。このデザインにおける鍵は死者がもたらす脅威、もし彼の墓を暴いてしまったなら君に襲いかかるミイラの呪いというフレーバーだ。《復讐に燃えたファラオ》は冗談ではなく、彼の領域で何か悪ふざけを試みるなら、彼は不法侵入者(多分、墓泥棒の類や好奇心を持ちすぎた考古学者)を打ちすえ、復讐を行うために蘇る。
そうだ、私は《Demonic Tutor》を唱えさせてくれる博識のデーモンをなんとか召還することに取りつかれていた。そう言っておくのが安全だろう。この悪魔の姿をした彩飾写本は、彼の存在そのもので君の精神を暗黒の思考で満たす。あれはM12シールドのプレイテストの時だったと思うが、私が初めて《ルーン傷の悪魔》が別の《ルーン傷の悪魔》を教示してきたのを見た。そしてこのカードがクリーチャーになったことがいかに強力となりうるかを実感した。
以上が今週分だ。今後のコラムで、私はM12の残りの新カードについての話をするつもりだ。君達が何パックかのM12を開封し、風味豊かないい奴らが店に並ぶのを楽しんでくれますように。君たちは見つけるだろう、基本セットは古典的なファンタジーの聖域であるという我々のビジョンがよく生きていることを。
今週のお便り
今日紹介するお便りはFabioから、
タイトル「支配の位置」
親愛なるダグ・ベイアーへ
とても率直な質問があります、答えていただけますでしょうか。
《精神の制御》や《隷属》、《反逆の行動》といったカードのフレーバー的な違いは何なのでしょうか? 私が言いたいのは、これらの3色は人々の自由意思を奪うことができるように見え、ですがこれらが持つ違いとは何なのでしょう、そして何故なのでしょう?
答えて下さることを願っています。前もってお礼を申し上げます。
--Fabio F.
3つの色には、君の対戦相手のクリーチャーを支配する3つの方法がある! 効果はほとんど同じだろうが、そのフレーバーはかなり違うものだ。マジックの色が召喚された者の意思にどのように作用するのかを見てみよう。
青。精神、欺瞞、ごまかしの色は「意思曲げの色の役割チャート」の中において最も大きな一片を占めている。青は精神というものを身体の操縦者とみなしており、直接精神へと攻撃してクリーチャーの振舞いへと影響を及ぼす。予想できるだろう、青の魔術師はそのコントロールを奪う際、実際にクリーチャーの思考を変化させている。彼女は召喚者についての記憶を移し替える、もしくは主人が誰かという認識を変更させる、もしくは誰に仕えるべきかという理性的な判断を変える。
黒はゲーム上、クリーチャーを奪い取る効果を多く持っているわけではない。黒は目の前に立ちふさがる何かをすっかり壊してしまうことを好む。自身の役に立てるために犠牲者を再活性させるという死霊術師の任意の選択肢というのもあるが。黒がクリーチャーを奪う(墓地を通過せず、200ドルを集めることもなく)(訳注:「モノポリー」ネタ)時は、その魔法は精神制御ではなく完全に暴力の脅しによるものだ。私に仕えるか、死ぬか。黒は確かに、その魔法で精神へと「影響を及ぼして」いる。精神を壊す手札破壊呪文が豊富にあり、だが自身の目的のために注意深く精神を作り変えてしまうことに卓越しているわけではない。脅しによって振舞いに影響を及ぼすことこそがよりいっそう楽しいのだ。犠牲者に、死よりも離反を選ばせる。黒がどれほどそれを楽しんでいるのかを私は以前述べたことがある(リンク先は英語)。
赤には《反逆の行動》的な効果を持つ呪文が豊富に存在する。クリーチャーの所属勢力を変更させ、一時的に敵と戦わせる。このフレーバーは、強すぎる感情を鼓舞し、知性と良心を圧倒するというものだ。青は思考を操り、赤は感情を動かす。青はクリーチャーの決意を変え、赤は決意を見当違いなものにさせる。ただ「権威の確立した系列」を中断させ、一直線に行動させる! クリーチャーはおそらく、どのようにしても戦いたいと願っている。赤はただ、誰のために戦うべきであったかというような味気ない理解を圧倒する。そしてもちろん、赤の奪取効果は短時間しか続かない。そのほんの短い間の適応は、明日クリーチャーに起こることには関係ない。今日、我々は戦う。
クリーチャーのコントロールを得ることについての白と緑の立ち位置は? 《福音》のようなカードはいかにして白が忠誠に影響する呪文へと手を伸ばしているかを示しているかもしれない。白という色は集団の一致団結を語る色だ。それはクリーチャーにその社会へと加わり、より大きな全体の一部となることを要求する。だがほとんどの時において、その従順で保護的で応報をよしとする姿勢は、クリーチャーを奪う領域へと冒険することを許しはしない。
緑はまさに、クリーチャー奪取と最も対立する色だ。クリーチャーと自然のあるがままの姿を最もよしとする色として、緑は意思を操作するのをぞっとするほどに嫌う。純潔たる緑は本能に自由に従う。君の顔を踏みつけられたかったら、緑の魔術師の周囲でクリーチャーの振舞いを変更する魔法を唱えればいい。冗談はさておき、《光り葉の大ドルイド》は? 何か他に緑(単色)で、クリーチャー以外の何かでさえコントロールを得るカードはあるだろうか? 緑は意思操作を好まないということだ、あーわかってくれたかな。
Fabio、とてもいい質問をありがとう!
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