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ワイルドサイドの散歩者
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ワイルドサイドの散歩者
Tom LaPille / translated by YONEMURA, Kaoru.
2011年7月1日
さあ皆さん、いよいよお待ちかねの基本セット2012プレビューですよぉおおっ私のセットがついについについにお目見えですぅぅぅぅ!
......さて。
基本セット2012は、私がデベロップのリーダーを務める栄誉に預かった最初のマジックのセットです。私は非常に光栄に思っていますし、この私の幼子を世界に羽ばたかせることに興奮しています。
私の幼子とは言っても、私一人で産みだしたわけではありません。ここで私のチームをご紹介しましょう。
トム・ラピル/Tom LaPille
私です。基本セット2012は私が初めてリーダーを務めたセットですが、私の最初の商品というわけではありません。アラーラ再誕から基本セット2011までのイントロパックは全て私が手がけましたし、マスターズ・エディション3、マスターズ・エディション4、アーチエネミーではリーダーを務めました。また、イベント会場や店頭で配布されているサンプルデッキの最新の2つを作ったのも私です。実際のセットを作るのは、単純にサイズだけでなく重要性という意味でもより大きなプロジェクトです。ですから、ここにあげた各位の協力なくしては成し遂げることはできなかったでしょう。
ケリー・ディグス/Kelly Digges
ケリーは英語版公式ウェブサイトの編集者で、毎週私の記事を整形してくれています。ワールドウェイク、アーチエネミーなどで今までに何度もデザイン・チームに入ったことがありますが、デベロップ・チームに入ったのはこれが初めてです。それを踏まえて、ケリーはすばらしい仕事をしてくれました。このセットにおける彼の仕事のほとんどはカード1枚1枚に関するもので、このセットの中で私の気に入っているもののうちいくらかは彼の手によるものです。《スランのゴーレム》でこのセットの軽いサブテーマであるオーラを盛り上げたのも彼の功績で、彼の「統率者戦のデッキに入れるのに数が足りないカード・リスト」から採用されたカードも複数枚あります。
ケリーは熱心なドラフト・プレイヤーであるとともに、開発部の考えと一致しないマジックについての強い信念を持っています。私としては、ケリーにはデベロッパーとして成長してほしい、いつかまた私のチームの一員として働いてほしいと思っています。
ピーター・シェーファー/Peter Schaefer
ほとんどの皆さんはピーターのことを知らないと思いますが、それは残念なことです。彼はダンジョンズ・アンド・ドラゴンズに何年も携わってきている、ベテランのゲーム・デベロッパーです。かつて私は彼がリーダーを務めるダンジョンズ・アンド・ドラゴンズの商品開発に参加したことがあり、そこで短い時間ながらも多くのことを学びました。私たちはいつでも、マジック開発部以外からの人材を求めていて、今回この基本セット2012のチームを編成するに当たってはマジックとダンジョンズ・アンド・ドラゴンズの間での人材交流を模索していました。私は彼ともう一度仕事をしたかったし、彼がファンタジーに関する優れた基礎を持っていることを知っていました。願いが叶うと興奮したものです。
ピーターは結局、このデベロップの途中で彼自身のプロジェクトを遂行すべくウィザーズを離れることになりました。彼が離職する時までに、彼はこのセットに十分な足跡を残しています。フレイバー的にそぐうかそぐわないかという彼の意見に基づいて、多くのカードは変更され、あるいは削除され、またあるいは追加されました。彼の将来に幸あれと祈っていますが、実際、彼の能力は必要以上のものがあると思います。
スティーブ・ワーナー/Steve Warner
スティーブは白髪交じりの、とても長い間マジックのプレイテストを続けてきた人物です。彼はデュエル・マスターズのデベロップを本業としていますが、私たちのフューチャー・フューチャー・リーグのプレイテストにおける不可欠な存在で、休むことなくマジックのカードの可能性を突き詰めていくのです。彼はヤバいものが世間に出る前に全て試して止めてくれましたし、今後もそうだろうと思います。デュエル・マスターズにおいては、彼はセットを他の人たちと違う視点から見て、他の誰も気づかなかったようなことを見つけてくれています。
スティーブの技能はしばしばマジックのセットに含まれるカード1枚1枚を改善してくれましたが、今回は彼の観点をこのセットの全てに適用したことの利点を得ることができました。環境の速度がどうあれ、狂喜というメカニズム全体、またカード1枚1枚について、スティーブはいつでも私の想定外の角度からの意見をくれました。それによって、全体を通して新鮮な視点からこのセットを見ることができたのです。
マイク・チュリアン/Mike Turian
プロツアー殿堂者のマイク・チュリアンは、このチームで最も経験豊富なデベロッパーであり、未来予知、モーニングタイド、コンフラックス、ワールドウェイク、ミラディンの傷跡ではデベロップのリーダーを務めていました。彼と私はデベロップのカードに対する考え方が異なりますが、手順に関しては彼の技能は非常に有益でした。第1週に意識すべきことは何か? シールド戦でなくドラフト戦を始めるべきはいつか? どれぐらいの量をデザイナーに差し戻すべきなのか? これらの問いに答えられるのは、私のチームにおいては彼だけでした。彼の助けを得られてよかったと思っています。
マイクはデベロップの途中で組織化プレイに異動し、基本セット2012のために充分な時間を割くことが出来なくなりました。彼は工程の最後にもう一度現れ、高レベルのドラフトを楽しめるようにセットを調整することを助けてくれましたが、それまでの間も、私はチームに経験豊富なデベロッパーが必要だと感じていました。幸いにして、この条件を満たすある人物が現れてくれたのです。
デイブ・ハンフリー/Dave Humpherys
デイブ・ハンフリーはマイクが転出した直後にデベロップ・マネージャーとしてマジック開発部の一員となりました。プロツアー殿堂者であり、また非常に経験豊かなトレーディング・カードのデベロッパーでもある彼は、理想的な交代要員でした。
デイブは基本セット2012の間はまだマジックにおける立ち位置を探しているところでしたから、将来のセットでは今回以上の大きな実績を残してくれるでしょう。それでも、私は経験豊かなデベロッパーの導きを受けられたことをうれしく思います。将来、皆さんはデイブについて耳にすることが増えるでしょうし、それを楽しみにしていて下さい。
森の中の遊歩
うまく仕上げられたマジックのセットは、まるで宝石のような美しい結晶体になります。全てのカードは他のカードと組み合わさって文脈をなし、全体が一体となって雰囲気をまとい、そしてそのセットが他の形をとり得ないと誰でも理解できるようなものです。
デザインが渡してくるものはそんな完成度が高いものではなく、しばしば完成品とは似ても似つかないものです。デザインを非難するつもりはありません。マジックのセットを作ることは困難なことで、わずか5人で半年で作り上げることができるような人はそう多くありません。基本セット2012もその例外ではありません。たとえば、基本セット2012のデザイン段階では、5枚の完全新作プレインズウォーカー・カードが入っていました。完成品では3枚だけです。何が起こったのでしょう?
デザインの考えでは、基本セット2012の目玉は5人の新プレインズウォーカーでした。これは確かにすごい目玉ですが、私は、3つの理由から良くないプランだと判断しました。
まず1つめが、興奮疲れです。新しいプレインズウォーカーはエキサイティングです。しかし、そのセットで7枚目となると1枚目よりも興奮は劣ります。5人の新プレインズウォーカーは目玉になるでしょうが、私は、目玉になるのは各個のカードでなくてもいいと考えました。
次に、プレインズウォーカーはマジックの顔ですが、同時にスタンダードでは非常に強力なカードです。場合によっては何度も使えるカード・アドバンテージ製造器になりますし、対処する方法が難しいこともあります。そしてプレインズウォーカー1人に逃げ切られるようなゲームは楽しいものではありません。しばらく前に、同時にスタンダードにいていいプレインズウォーカーの数についての議論がありました。新プレインズウォーカーを5人投入することは、これから3ヶ月の間その許容できる上限を超えた期間が続くということになります。それだけの価値があるとは思いませんでした。
3つめの理由は、次の基本セットを作る人が非常に困った状況になるということでした。基本セットの継続性という意味で、年々つながる計画を必要としています。そして、5人の新プレインズウォーカーはそういった計画を踏みにじるものでした。これについては今後の記事でまた取り上げたいと思います。
基本セット2012のデザイン・チームは5人の新プレインズウォーカーを提示してきましたが、その全てが完璧なデザインとは言えませんでした。2人は全体としてすばらしいもので、そのままに残したいと思いました。1人はまあ問題のないものでしたが、2人は荒削りなものでした。その背後にある努力は分かりましたが、カードにしようと思うほどのものではなかったのです。今回のデザイン・チームを非難しているわけではありません。それでも総体としてはデザイン・チームが提示したプレインズウォーカーの組の中では最高のものでした。デザイン・リーダーのマーク・グローバス/Mark Globusは、プレインズウォーカーが彼にとって重要だということを知っており、そのためにチームの時間を大量に費やしたのです。すばらしくデザインされたプレインズウォーカーを2人と、充分よくデザインされたプレインズウォーカーを1人手渡されるというのは、滅多にないすばらしいことなのです。
新しいプレインズウォーカー5人というのが望ましくないにせよ、基本セットに新しく加えられるカードを5種選ぶことは出来ました。私はスタンダードにすでに存在する再録カードを調査しました。そして、黒と白に新しい再録カードを与えるべきだと決めると、全てがぴたりとはまりました。黒の選択肢はただ一つ、《ソリン・マルコフ》だけでした。これは彼の利点から言ってもぴったりだったので、リストに入りました。そして、このセットと並行して作られていたビデオの主役を務めた《ギデオン・ジュラ》が白の代表として選ばれたのは当然のことでした。
黒と白を再録カードにすると決めた理由は、他の3人が気に入ったからです。
この3人の中で最も作りがいのあるカードでした。デザインから受け取った時点では、上で「充分いい」と書いたレベルのデザインでした。何度も何度も再検討が重ねられ、時によっては《精神を刻む者、ジェイス》の再録も検討されました(再録しなくて良かったと思っています)。最後には、能力の一覧を作るための穴埋めシステムを使い、その中の気に入ったモノをいれることにしました。この2つめの能力は完全にデベロップ段階で作られたものです。精神の魔術師がライブラリー操作をできないなんてあり得ないと思ったのです。そして完成したのはこれです。
マーク・グローバスとそのチームが仕上げた2枚のうち1枚目が、《炬火のチャンドラ》です。2つめの能力は一番最初から存在したもので、そしてとてもおもしろいものです。1つめの能力はデベロップ中に決定しました。あまりにも《チャンドラ・ナラー》の能力に近かったのでデザイナーは躊躇したのですが、私たちは、パワーアップさせることで「らしさ」を満たしながらプレイヤーを満足させられると判断しました。そしてこのカードのコストに{R}を1つしか含まないこともうれしいところです。これによって、彼女がコピーできる呪文の幅が大きく広がったわけですから。
最後に残されたのは緑の、ものすごい奴です。デザイン段階でのガラクも私のお気に入りでしたし、内部でのレア投票でも不動のチャンピオンとなりました。何がそれほど魅力的だったのでしょうか?
ガラクは、ビーストを作るのがうまくなりました。もちろん、デベロップ中に新しい技を身につけました。それは、大量のカードを引かせるという技です。
そしてもう一つ、ビーストよりもずっと大きいモノを作る方法を会得しました。
基本セット2012のプレインズウォーカーを作る道のりは、平坦なものではありませんでした。ですが、それだけの価値はあったと思っています。これから、彼らとの出会いを楽しんでいただければ幸いです。
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