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《墨蛾の生息地》
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《墨蛾の生息地》
Mike Flores / Translated by Mayuko Wakatsuki
2011年1月20日
Top Decksのコラムで紹介するミラディン包囲戦のプレビューカードは一枚だけ。けれどこいつはどえらい奴だ。君達に贈るのはこれだ。《墨蛾の生息地》!
カードをちらりと見ただけでは、これが何を引き起こすのか全ては理解できないかもしれない―だから言わせてほしい―まるで魔法だ。その名、受け継がれた美学、そして基本的機能の大部分において《墨蛾の生息地》は《ちらつき蛾の生息地》を色濃く偲ばせる。我々が前回ミラディン次元へと訪れた際の二番目のセット、ダークスティールにて登場したトーナメントの定番カードだ。そのルーツは《ミシュラの工廠》、トーナメントで愛された最初の大いなる土地クリーチャーだ;初期のプロツアーからずっと、白青コントロールから黒単ネクロポーテンスにわたっていつでも効果的に使用されていた。
では《墨蛾の生息地》のどんな点がクールで、新しくて、一味違っているのだろう?
《墨蛾の生息地》は多くの点で《ちらつき蛾の生息地》と同じに見えるが、ただ一つだけちょっとした変更点がある:ちらつき蛾クリーチャーに+1/+1を与える能力が......感染になった(それでも《墨蛾の生息地》は「ちらつき蛾クリーチャー」だ)。
どうだい?
いまいちかい?
それとも迷ってるのかい?
感染能力への変更は、このカードの場合「複雑だが、とても良い」と私は思っている。壊れている? いいや―でもとても有用で潜在的能力を持っている。そしてそれは複数の理由による。
感染を持っているということはつまり、《墨蛾の生息地》には追加のパワーが事実上与えられている......対戦相手を殴るという目的ならば、このカードのちらつき蛾クリーチャー形態は+1/+1を与える能力を必要としないということだ。さらに付け加えると、もしも《墨蛾の生息地》がクリーチャーに戦闘ダメージを与えたならそこには-1/-1の印が残される。この小さな、通常は一見攻撃的で、ブロックしたなら大抵チャンプ・ブロックになるであろう、そんなクリーチャーが残す-1/-1カウンターは、来たる次ターンに違いをもたらしてくれる......《ちらつき蛾の生息地》からのほんの僅かな、防御的なアップグレードだ。
我々は全員《疫病のとげ刺し》がリミテッドで証明した危険を知っている。《墨蛾の生息地》はデッキスロットを圧迫しない《疫病のとげ刺し》と言えるだろう(何故ならこれは土地スロットに入れられる)。打ち消されない《疫病のとげ刺し》であり、《審判の日》のようなソーサリータイミングでは対応できない《疫病のとげ刺し》だ。構築デッキ向けと思われるカードだが、もちろんリミテッドの感染デッキに普通に投入していいし、どんな場所にでも価値を見いだすだろう。どんなデッキでも《感染の三角護符》から行き当たりばったりの勝利を得ることができるのと同じように。
特徴的な使用法として、まずは《墨蛾の生息地》を入れるべき最も明白な場所をよく考えよう―感染特化デッキの。
このデッキはたぶん黒単かもしくは黒緑で、《荒廃のドラゴン、スキジリクス》がトッピングされていて、《胆液の鼠》やおそらく《嚢胞抱え》が動き回っている。このデッキはたぶん一切の内部矛盾を持たない―「ダメージ」はない―ダメージ、君はその定義を理解できているだろうか。それは全て毒カウンターとして与えられる。常に。
黒単デッキにも黒緑デッキにも、目下のところ土地クリーチャーは入っていない。現代の毒使い達には他の青黒デッキの《精神を刻む者、ジェイス》に静かに退出してもらうための《忍び寄るタール坑》も、拡大し続けて毎ターン絶えずプレッシャーを与える情け容赦のない《怒り狂う山峡》もない。
だが《墨蛾の生息地》によって、その隙間需要は埋められる......一つの(もしくは二つの)デッキの助けとなるかもしれないこのカードの実力は、まだトーナメントで証明されてはいない。
だけどわかるだろう?
感染―感染専用デッキ、もしくは直線的攻撃戦略としての感染は―《墨蛾の生息地》が最も興味深く入り込む場所でさえない。
先輩の《ちらつき蛾の生息地》はありとあらゆる異なった種類のデッキでプレイされた。電結親和ではフィニッシャーのアーティファクト・クリーチャーとして、倒された《電結の荒廃者》から致死量の+1/+1カウンターを運んだ。赤いデッキでは、《爆片破》の燃料にされるまで(もしくはチャンプブロッカーとして使われるまで)規則正しい攻撃の波を相手に浴びせていた;最終的には、あまりに重い色拘束のないデッキならば装備品を持ち運びつつどこにでも入った。
では《墨蛾の生息地》についてはどうだろう?
私が一番面白いんじゃないかと思うのは、もし不意にこれが白青コントロールのようなデッキに入る場所を見つけたらどうだろうということだ。とあるプロツアーに時を戻してみよう。
4 《アダーカー荒原》 1 《真鍮の都》 4 《島》 3 《ミシュラの工廠》 6 《平地》 1 《トロウケアの廃墟》 4 《シヴィエルナイトの寺院》 -土地(23)- -クリーチャー(0)- |
1 《天秤》 4 《対抗呪文》 4 《解呪》 3 《氷の干渉器》 1 《象牙の塔》 3 《土地税》 3 《石臼》 4 《魔力消沈》 1 《回想》 4 《呪文破》 4 《剣を鍬に》 4 《神の怒り》 1 《Zuran Orb》 -呪文(37)- |
1 《修道院のガーゴイル》 1 《アレンスンのオーラ》 2 《黒の防御円》 2 《赤の防御円》 1 《神への捧げ物》 1 《フェルドンの杖》 1 《若返りの泉》 2 《記憶の欠落》 1 《シー・スプライト》 2 《秘宝奪取》 1 《休戦》 -サイドボード(15)- |
Hammerのベースラインとなる戦略は《石臼》によって対戦相手のデッキを片づけてしまうことだ。とはいえ、彼は《ミシュラの工廠》を唯一のダメージソースとして頼りにしていた(そして正確には思い出せないのだが、古いThe Duelist誌の何号だったかに実際、Hammerがプロツアーで《石臼》を《道化の帽子》の餌食にされた対戦に勝ったという記事が載っていたのを私は覚えている)。
なぜこのデッキリストをここで持ち出すのか?
《墨蛾の生息地》は、Hammerのデッキにおいての《ミシュラの工廠》と同様の場所で同じような役割を果たすだけでなく、基本的によりよい仕事をやってくれるだろう。実質パワー2アタッカーの新たな土地(ここまでは《ミシュラの工廠》と同様)、だけどこちらは飛んでいる!
現代マジックへのこの翻訳は、ぱっと見たようには取るに足らないものじゃない。
そう遠くない昔、我々が白青コントロールの新しい形について話していたことを君は思い出すかもしれない。それは《伝染病の留め金》の驚くような使用法と増殖メカニズムから作られた。
1 《乾燥台地》 4 《天界の列柱》 4 《氷河の城砦》 5 《島》 3 《平地》 1 《沸騰する小湖》 4 《金属海の沿岸》 3 《地盤の際》 -土地(25)- 2 《霜のタイタン》 -クリーチャー(2)- |
4 《糾弾》 2 《伝染病の留め金》 2 《審判の日》 3 《永遠溢れの杯》 2 《ギデオン・ジュラ》 1 《乱動への突入》 2 《ジェイス・ベレレン》 4 《精神を刻む者、ジェイス》 3 《光輝王の昇天》 4 《マナ漏出》 2 《否認》 4 《定業》 -呪文(33)- |
3 《悪斬の天使》 2 《審判の日》 3 《瞬間凍結》 1 《乱動への突入》 1 《光輝王の昇天》 1 《否認》 1 《存在の破棄》 2 《呪文貫き》 1 《決断の手綱》 -サイドボード(15)- |
そのデッキでは《伝染病の留め金》が、《永遠溢れの杯》から溢れ出してメインボードの《光輝王の昇天》や《ジェイス・ベレレン》や多くの他プレインズウォーカー達に与えられたカウンターを更に増量していた。だがメインボードに多くの異なるダメージソース(特に、ミラーマッチにおける《光輝王の昇天》)が入っている今、《墨蛾の生息地》をただ1枚でもどこに入れればいいのかと聞かれるかもしれない。答えは簡単だ。
1) 毒カウンターを取り除くことはできない
2) 増殖を防ぐことはできない
もし君が対戦相手に一つでも毒カウンターを与え、《伝染病の留め金》が活動しているなら(そして忘れないように《伝染病の留め金》は他のことも同様にやってくれる。より多くのマナを生み出したり、ジェイスを雪だるま式に大きくしたり)突然その対戦相手は(せいぜい)9ターンのクロックに入る。これは一見大したことのないように思えるかもしれないが、白青のミラーマッチがいかに長期戦となるか、そして戦闘においてどれほど多くのクリーチャー除去が飛び交うかを考えよう。《天界の列柱》対策として2枚の《地盤の際》と《広がりゆく海》、ジェイスは4枚、もしくは6枚、8枚という場合さえある―プレインズウォーカーを対消滅させるという強行な取引のためだ。《光輝王の昇天》さえ打ち消されたり、《乱動への突入》や《漸増爆弾》によってリセットされたり破壊されたりする。
だけど《墨蛾の生息地》による揺さぶりはどうだろう? 何よりも、打ち消そうと試みようとしても迷惑な存在だ。もちろん《糾弾》や《地盤の際》、《広がりゆく海》などを使うことはできるが、大きな《天界の列柱》とは違って《墨蛾の生息地》を起動して攻撃するためのマナは少しでいい。僅か1マナで、多くのことをやってくれる。ゲームのごく序盤にそれができたなら、ただ一つの毒カウンターは顧みられることもなく、多くのターンと《伝染病の留め金》によって致命的な感染であると証明されるまでそこに佇み続ける。
これは、かつて無害だったものが時を経て災害をもたらず門となるという例の最初の一つだ。もちろん君はもっと攻撃することによって下調べをすることができるし(特に君の場に多くの土地があって他にやる事があまりない場合)、《伝染病の留め金》に夢中になってもいい。これら攻撃方法のいずれも容赦ないものではないが、全て揃えば対戦相手の防御リソースへと莫大な損害を与える。そういった脅威を阻止するためには多くの方法がある。しかし《伝染病の留め金》を狙って打ち消しを使う(そんなことが想像できるかい?)のは精神を刻む者にとって適切な仕事ではない。ゲーム中盤の《広がりゆく海》は《墨蛾の生息地》を押しとどめるかもしれないが、それも最初の毒カウンターが与えられた後だったとしたら、増殖は長期的な懸念となって残るだろう。
以前言及した通り、感染がマジックに与えた衝撃のほとんどはリミテッドに限られている。プレイヤー達は「感染単」デッキと対戦することになるのを怖れる―奴等は通常のデッキの二倍の速さで殺しにくるからだ。しかも《疫病のとげ刺し》のような脅威をもって、ブロックすることも困難なやり方で。《墨蛾の生息地》は多くの異なる構築環境でプレイされるよう目論まれたカードだ。
問題は、感染クリーチャーはそうでないクリーチャーより対戦相手を殴るのに二倍優れている(パワーに相対して)のだが、プレインズウォーカー達を殴るのには半分しか優れていないということだ(マナコストに相対して)。《嚢胞抱え》を見てみよう。パワー2は対戦相手を殴るならパワー4に相当するが(実に良いね)、3マナでパワー2のクリーチャー? ああ、《粗石の魔道士》ね! ......だけどパワー2というのは対戦相手を殴り倒すことを目指す緑の戦闘向けクリーチャーとしては手頃な数字ではない。少なくとも構築向けではない。
それが私の《墨蛾の生息地》についての主な懸念だ。《墨蛾の生息地》は《ジェイス・ベレレン》、ましてや《精神を刻む者、ジェイス》がいっぱいの環境にいて、更には《墨蛾の生息地》は《天界の列柱》と同様の回避能力を持つが、《槌のコス》を倒す用途には......。その強さは明らかに他の領域にある。《墨蛾の生息地》は忠誠度+2能力を持つプレインズウォーカー相手にはほとんど価値がないし、他の多くの面でも役立たずだ。けれどこれは決定的なものではない。《墨蛾の生息地》がその能力と潜在的発展性を持っているように。とはいえプレインズウォーカーの明らかな影響は、これら強力なレア・神話レアがはびこる中で君に感染デッキを組む意思を維持させる何かがある。もしくは感染に特化した脅威を多様な攻撃戦略の中で統合させてくれる。
要約
その美学
《墨蛾の生息地》は我々に《ちらつき蛾の生息地》を思い出させるデザインだ。オリジナルのフレーバーと機能を実に良い状態に維持しながら、非常に適切なキーワードを追加されつつもパワーレベルを維持している。同時に、毒カウンターをもたらす勢力側の金属というのは、このセットの背景設定を伝えてくれている。
このカードはどこに入る?
《墨蛾の生息地》は土地であり、一見したところデッキリストに(4枚でなくても)他の呪文よりもたやすく投入できる。《墨蛾の生息地》は黒単感染デッキには自動的に4枚入るだろうし、黒緑感染デッキにもほぼ自動的に。そして未だ見ぬ他色の感染デッキを補完してくれたり、真の戦略を示してくれるだろう。加えて、他の勝利手段を想定したデッキに追加の勝利手段として投入されるのが私には見える(ジェイスデッキの類とか)。もしくは増殖を含むより複雑で多様な攻撃手段の一部分として。後者の場合、一体の《墨蛾の生息地》さえ最終的な勝利へと至る道へと「スイッチをオンにする」触媒となりうる。
このカードはどこに入らない?
先輩の《ちらつき蛾の生息地》とは違って、《墨蛾の生息地》は様々な攻撃的デッキに補足的アタッカーとして採用されるであろうとは考えにくい。《ちらつき蛾の生息地》は除去ソーサリーから生き残って、しばしばそのデッキの最後の数点のダメージ係となってきたが、《墨蛾の生息地》の毒カウンターは同じような働きをしてはくれない。
簡易採点
デッキフォーマットの基本構成要素、しかし大抵はアーキタイプ次第。
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