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MAGIC STORY
モダンマスターズ2015
エルドラージの逆襲
エルドラージの逆襲
Gavin Verhey / Tr. Tetsuya Yabuki / TSV testing
2015年5月5日
モダンは私の大好きなフォーマットのひとつだ。このフォーマットは戦えるデッキの種類が多く、そのため実に幅広い構築環境ができている。『ミラディン』以降のセットから生み出される主な戦略のほとんどが競技レベルで戦えるものであり、セットの垣根を超えて起きる独特な(そして予想もつかないような)相互作用の数々が、本当にユニークなデッキを作り上げているのだ。
驚くことではないかもしれないけれど、私は『モダンマスターズ 2015年版』は必ず来ると予想していたよ。
みんなのお気に入りのカードが再びやって来るのはもちろん、このセットは最初の『モダンマスターズ』と同様に、強烈なアーキタイプの数々が結集する本当にユニークでエキサイティングなリミテッド環境を持ちあわせている。『モダンマスターズ 2015年版』は、かつてのリミテッド・アーキタイプたちが覇権を争う闘技場なのだ。
本日は、いつもの構築デッキを見ていくのはちょっとお休みして、『モダンマスターズ 2015年版』のリミテッドで組める珠玉の40枚デッキのひとつを語っていこう。
マジックの歴史上最も評価の高いリミテッド環境のひとつが、『エルドラージ覚醒』だ。環境を理解するのにちょっと難しいところがあるものの、ひとたび把握してしまえばどんなことでも可能になる。
この環境には、手が届く夢がいっぱいに詰まっている。その中でも最高なのは、やはりゲームを長引かせてエルドラージの一族を唱え、ゆっくりと対戦相手の盤面を削いでいく戦略だろう。
よし、今一度夢を見ることにしようか。
これまで一度もこの怪物をリミテッドで使ったことがないなら、その機会がやって来ることがたまらなく待ち遠しいよね。
10/9というサイズに加えて攻撃するたびに対戦相手のパーマネントをふたつも貪るだけでなく、こいつは仲間も連れてくる。ランプ系のデッキがたまに抱える問題として、マナを加速して巨大クリーチャーを繰り出しても、小型のクリーチャーの大群に押し切られるというものがある。《コジレックの職工》は君の墓地にある活きのいい死体を戦場に引き戻し、問題を和らげる助けとなるのだ。
ランプ系のデッキにはもうひとつ問題がある。タイミングよく打ち消し呪文を合わせられると、こちらの繰り出す大型の脅威が完全に止められてしまうのだ。だが《コジレックの職工》の能力は唱えたときに誘発するため、たとえ打ち消し呪文の雨嵐の中でも少なくとも1体はクリーチャーを戦場に出せるのだ。
さて、私は口をすっぱくして言い続けているが――リミテッドで何より大事なのは「取り巻く状況」だ。今回はどんな状況にあるだろうか? エルドラージが立ち向かうべき敵は? エルドラージを唱えるために必要な新たなツールは?
それを見ていこう。
エルドラージ、入場
リミテッドでエルドラージを駆使する上で鍵となるのは、まあ当たり前のことかもしれないけれど、それらを唱えられるようにすることだ。そりゃあ9マナの《コジレックの職工》は強力だが......手札に留まり唱えられないのでは意味が無い。
『エルドラージ覚醒』ではリミテッド環境のスピードが遅く、また、ゲームを長引かせるための防御手段が強力であったため、エルドラージが使いやすかった。しかし『モダンマスターズ 2015年版』では状況がまったく異なる。環境内に極めて強力で前のめりなデッキがある。例えば超アグレッシブな赤黒を相手にして、エルドラージを使う側は死ぬまでに9マナを確保する必要があるのだ。
そこで、『モダンマスターズ 2015年版』のデベロップ・チームはいくつかの手段を用意した。
初めて『モダンマスターズ 2015年版』のプレイテストを行ったときを思い出すよ。私はドラフトに参加し、エルドラージ戦略をとった。すると、パックから出てきたあるレア・カードが完璧にそのアーキタイプと噛み合い、私はその戦略を推し進めた。それから2順後、私はもう1枚同じレアを見つけた。さらに、次のパックに入ると、早い順目でもう1枚流れてきたのだ。
おかしい。こんなに同じレアが出てくるなんて! これじゃあテストとして不十分じゃないか? 歪んだ結果が出てしまうじゃないか。
そこで私は、そのプレイテスト・カードをもう一度よく見てみた。それは、アンコモンだった。
アンコモン?!?
そう、その通りなんだよ。かつて構築で活躍したこのカードが、エルドラージを繰り出す手段としてリミテッドの舞台に大挙して押し寄せたのだ。
まだ大人しい方に見えるかもしれないけれど、私たちは大きな欠点もなしに2マナを生み出す土地を滅多に印刷しない。《エルドラージの寺院》はタップ状態で戦場に出るわけでもなく、使うとダメージを受けるわけでもない。他に犠牲を必要とせずに、実に強力な力を持っているのだ! さらに、これが最も重要な点かもしれないが、こいつはデッキの呪文の枠を一切圧迫しない。《エルドラージの寺院》は、エルドラージのために「タダで」使える《不屈の自然》のようなものなのだ。
《エルドラージの寺院》が2枚あれば、土地を7枚並べるだけで《コジレックの職工》を唱えられる! それでも7枚必要というのはどう見たって軽いとは言えない。が、今回のセットにおいて、《エルドラージの寺院》は多数あるマナ加速手段のひとつに過ぎないことを覚えておいてくれ。エルドラージ戦略をドラフトする君の力になるのは《エルドラージの寺院》だけでなく、他にも役立つツールがたくさんあるのだ。
幸運に恵まれれば、たぶんパックからこいつが出てくるんじゃないかな。
そこまで多く目にする機会はないだろうけれど、もし姿を現したら――そしてそのときエルドラージ戦略をとっていたら――ぜひピックするべきだろう。
《ウギンの目》は、《エルドラージの寺院》と同様にエルドラージを早く唱える助けになるだけでなく、途切れることなく軍勢を確保してくれる。たとえ手札が空になっても、《ウギンの目》がエルドラージ(や無色のアーティファクト・クリーチャー)を探し出してくれるのだ! こいつはゲームの決め手としてそう破られるものではない。《ウギンの目》は構築でも使われ続けていたが、今再び、今度はリミテッドでの戦いに臨んでいるぞ!
「小さなお友達にこんにちは」
さて、エルドラージは手に入ったし、それらを唱えるのに役立つ土地も手に入った。しかし滑り出しは上々と言えるけれど、まだデッキを機能させるのに必要なものはある。
ここでマナ加速の出番だ。
『モダンマスターズ 2015年版』には、マナを加速するアーティファクトやソーサリーも豊富にある。今はまだその具体的な内容は公開できないけれど、ひとつだけ再録するメカニズムをご紹介しよう。それは当時も大型のエルドラージと手を組んでいたものだが、おそらく『エルドラージ覚醒』の頃より今回のリミテッドでこそ重要なものになるだろう。
いでよ、エルドラージの落とし子たちよ!
その通り――かわいい0/1のエルドラージたちが、『モダンマスターズ 2015年版』で帰ってくるぞ!
エルドラージの落とし子は一時的なマナ加速として使うことができ、エルドラージを繰り出す助けになってくれる。落とし子からマナを生み出せばそれらは生け贄に捧げられてしまうものの、盤面を支配するために、延いてはゲームを勝ち取るために、エルドラージを1体唱えることができれば十分だろう! リミテッドのエルドラージ・デッキにおいては、とにかくエルドラージを唱えるのに役立つものが欲しいところだ。
だが実は、落とし子たちにはもうひとつ重大な役目がある。今回の環境では、この落とし子たちが『エルドラージ覚醒』当時よりも大切になる可能性があるのだ。その原因は、この環境の速さだ。
環境に関わらず、エルドラージを唱えるために落とし子を使うことはもちろんある。だがしかし、『モダンマスターズ 2015年版』の環境は『エルドラージ覚醒』の環境よりずっと速く、そのためエルドラージの落とし子で防衛線を張ることもあり得るのだ。次のターンに大型のエルドラージを繰り出すためにダメージを受け入れ、落とし子をマナ源として使うこともできるし、あるいは序盤のチャンプ・ブロッカーとして運用することもできる、というわけだ。
《コジレックの捕食者》は今回のセットに収録される落とし子・トークンを生み出すカードのひとつであり、早い順目でピックしたいし枚数も多く取りたい。こいつを最も強く使えるのはエルドラージ戦略だが、ドラフトでは他の多くのデッキも喜んで使うだろう。そのため、このカードの優先度はきちんと見極めたい。それからシールドにおいても、落とし子・トークンを生み出すカードがまとまって手に入れば、エルドラージ戦略が一気に現実的になるぞ。
それは十界を超えて
実際のところ、どれだけのマナが必要だろうか?
そうだね、その答えは「たくさん」だ。
いや、まだ足りないな。「たーっくさん」だ。
とにかく、11マナも用意するならあらゆる手段を駆使する必要があるだろう。
『モダンマスターズ 2015年版』のプレビュー記事でエルドラージを取り挙げているのに、伝説のエルドラージを公開しないなんてあり得ないだろう?
伝説のエルドラージを唱えるには、途方もないコストがかかる。《無限に廻るもの、ウラモグ》の場合は11マナだ。それでも《無限に廻るもの、ウラモグ》は、エルドラージ戦略に進む大きなきっかけになる。パックから出てきたら、ぜひピックしてエルドラージ戦略に向かおう。
ドラフトの1パック目に《無限に廻るもの、ウラモグ》のような決め手が出てこなかったら、エルドラージ戦略をとる前に何回かピックを費やして流れてくるものを確認するといいだろう。この戦略をとる際は、《エルドラージの寺院》や落とし子・トークン、マナ加速をするソーサリー等の枚数をしっかりと確保したい。これらのカードを上家側のプレイヤーに取られると、苦戦は必至なのだ。
それでも、安全が確認できて何回かピックを終えてもまだ必要なカードが残っていれば、ぜひエルドラージ戦略に進もう! きちんとパーツを集めることができれば、この戦略は強力無比のものだ。基本的には、早い段階でマナ加速をするカードや落とし子・トークンを生み出すカードをピックし、その後にエルドラージを確保していきたい。とにかくマナ加速さえできれば、きっとそれを注ぎ込む先は見つかるだろう。しかしエルドラージの軍勢を確保できても8マナ以上を生み出す手段がなければ......まあ、8ターン目までじっと待つことになる、とだけ言っておこう。それでは『モダンマスターズ 2015年版』のリミテッドで勝つことは到底できないのだ。
マナ加速と落とし子、土地、そしてエルドラージも忘れずに――対戦相手の思惑をぶっ潰してやろう。『モダンマスターズ 2015年版』では再び、まったく新しい環境であらゆるカードが飛び交う新鮮なリミテッドを楽しめるだろう。そして今回ご紹介したエルドラージ・デッキは、私が大好きなドラフト・デッキのひとつだ。ぜひ君たちも楽しんでくれ!
モダンをマスターせよ
今回の記事では、『モダンマスターズ 2015年版』リミテッドにおける楽しいアーキタイプの数々からひとつを取り挙げた。そしてもちろん、このセットにはモダン構築における主力カードも盛りだくさんだ。よし、それらをうまく使いこなしてやろうじゃないか?
今週のデッキ構築チャレンジの時間だ!
フォーマット:モダン
デッキの制限:なし!
締め切り:5月12日(火) 午前10時(日本時間)
投稿方法・投稿先:reconstructeddecks@gmail.com 宛にメールにて。
デッキリストは、最初の行に「あなたのローマ字氏名+'s+デッキ名(英語)」、それに続いて各行に1種類のカードを、「枚数(半角数字)」+「半角スペース」+「カード名(英語)」の形式で、以下のように入力していただきたい。
12 Mountain
4 Satyr Firedrinker
3 Ash Zealot
4 Lighting Bolt
カードの枚数と名前の区切りには半角スペース以外のものを使わないでほしい――「4x Lightning Bolt」などのように。整った書式のデッキリストは、読みやすく、このコラムに取り上げやすくなる。書式が崩れたリストはおそらく受け付けられないだろう。(デッキリストを読めないことには、それについて語ることもできない!)
君たちは今、どんなエキサイティングなモダン・デッキに取り組んでいるだろう?『モダンマスターズ 2015年版』は、君たちの構築欲を高めたかな? ぜひそれらを送ってくれ!
他に感想やフィードバックを送りたい? ぜひ気軽に私へツイートや、Tumblrで質問を送ってほしい。必ず拝見することをお約束しよう!
君たちも私と同じくらい『モダンマスターズ 2015年版』を楽しみにしてくれていたら嬉しいな! このセットにはモダンの主力カードが満載で、おまけに素晴らしいリミテッド環境まである。環境の理解を進めるためにも、今週の情報から目を離さないでくれ。君たちがこのセットを楽しむのを見るのが待ちきれないよ!
また次回お会いしよう!
Gavin / @GavinVerhey / GavInsight
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