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MAGIC STORY
カラデシュ
アーティファクトと色の独自性
アーティファクトと色の独自性
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2016年9月30日
こんにちは、そして新たな「Latest Developments -デベロップ最先端-」にようこそ! 『カラデシュ』が私の体験と同じぐらい良いものであって、そしてあなたの地元のお店でこのセットをドラフトしたり、構築フォーマットでこのセットに基づいた新しいデッキを作ってくれたなら幸いです。ひょっとしたら、あなたが楽しみにしているのはもうスタンダードで《集合した中隊》を相手にしなくていいことかもしれません――いま感謝するべきものはたくさんあります。
今日の「Latest Developments -デベロップ最先端-」では、リミテッドについてと、我々が独特で楽しくなおかつバランスの取れたアーティファクト・ブロックを作ることができることを確実にするためにしたことに焦点を当てたいと思います。
『カラデシュ』はこれまでに3つしかない「アーティファクト・ブロック」の1つであり、ミラディン次元を舞台としていない最初のセットです。『アラーラの断片』のエスパーは独自のデベロップ・チームが存在しましたが、ブロックではないので数えていません。我々は協力して可能な限り(それがエスパーの「もの」なので)色付きのアーティファクトを作らないように努力し、機械巨人を除いてはうまくいきました。あなたがリミテッドをプレイするとほぼ必ず無色のアーティファクトに出くわします。我々は色付きアーティファクトを使いたくなくて、それでもアーティファクト関連のものが欲しかったので、このセットの中に多くのアーティファクトが必要なことは分かっていました。『ミラディン』ほどではないせよ、多くです。
製造は素晴らしい方法でこの目的を達成しました。『マジック・オリジン』は赤青をアーティファクト・デッキとして機能させようとして、トークン生成をアーティファクトがテーマではないセットでその目的を達成する手段として使いました。これらの答えは、そのセットがアーティファクトがテーマではないときには素晴らしいのですが、それでもそれらを目立たせるために1つの色のペアを求めます――しかしながら、全体がアーティファクトをテーマにしているブロックにとっては正しい選択ではありません。我々は、『テーロス』で人々がそのセットがエンチャントのブロックであることを知らずに遠ざかっていったときと同じ過ちをしたくはありませんでした。
我々は人々が期待するようなアーティファクト・セット――多くのクールなアーティファクトとアーティファクト・クリーチャーとアーティファクトのシナジーがあるセット――を作ろうとしました。このセットの目的は、本当に強力なアーティファクトを印刷するだけでなく、あなたに発明家の気分を味わってもらうことです――それにはアーティファクトが中心的な役割を演じます。
もちろん、それは単純なことではありません。多くのテーマと同じように、このテーマに全力で向かうことは多くの理論構築とそれらのもたらす問題に対する回答を考え出す能力を要求されます。我々は2つの『ミラディン』ブロックでホワイトボードに投げられた好きなことや好きではないことを正確に取り上げて、すべてを解決することはできませんでしたが、この環境にとって最大のアドバンテージと落とし穴になるものを考え出し、それらの周りに知的にデザインすることはできました。
デベロップの心の一番上にあったものは、色の独自性とアーティファクト・ブロックについての問題でした。アーティファクトが多すぎると、それぞれの色の独自のものが少なくなり始め、ドラフト・フォーマットがデッキに何の明確さもなくなってプレイヤーがただ一番強いカードをプレイするだけの「濁った」ものになる危険があります。我々は、アーティファクトがドラフトで色を押さえ込むのでなく、異なる独自性を際だたせるようにする方法を作り出す必要がありました。
色とアーティファクトに対処する
色のバランスはアーティファクト・セットのリミテッドでの問題のひとつです。マジックを楽しく何度も遊べるものにしている要素のひとつは、異なる色のペアがもたらすデッキの多様性です。アーティファクト・セットの深刻なリスクは、人々が1色しか取らないでデッキの残りをアーティファクトで埋めることが可能になることです。時々起こるならいいのですが、もしこれが頻繁に起こると、リミテッドのゲームの多様性は大きく損なわれてしまうことになるでしょう。
マジックの各色は長所と短所を持っています。多色デッキをプレイする理由のひとつはそれらの色の弱点を補うためです。青は除去が苦手? 青と黒と組み合わせることによってコントロール・デッキは大量の1対1交換を取るカードとカードドローを得ます。赤はエンチャントに対処できない? 白や緑を散らすことはそれを解決する助けとなるでしょう。これこそ23年間マジックが生き延びるために必要不可欠だったものです。
アーティファクトの知られたくない秘密:これらは我々がカラー・パイのために設定したルールを壊す傾向にあります。これは紛れもない真実です。私は『統率者(2015年版)』のカードについての会議で、《砂岩の予言者》が最初白いカードだったのですが、カラー・パイが理由で殺されたことを覚えています。代わりにアーティファクトになって許容されるものになりました。
さて、たしかにアーティファクトは少しコストパフォーマンスが悪い傾向にありますが、セットの中にアーティファクトが多いと全部そうすることができなくなります。タップして生け贄に捧げるとクリーチャー1体を破壊する6マナのアーティファクトを作ることはできて、そしてそれ単体ではバランスが取れていないかもしれませんが、このようなカードが多すぎると突然緑青デッキが除去面での先天的な弱さを解決できるようになってしまいます。このコストならかまわないのですが、アーティファクトやエンチャントを壊せるアーティファクトを作ると、黒が我々長年そこから遠ざけてきたものに触れるというリスクが発生します。
我々はリミテッドにおける色の独自性を傷つけることなく、多くのアーティファクトを作る方法を探し出す必要がありました。
《つむじ風製造機》 アート:Victor Adame Minguez |
同じように、アーティファクト・クリーチャーを作るとき、それらは《青銅の黒貂》のように基本的にどの色よりも弱くなります。2マナ2/2のアーティファクト・クリーチャーを作ると、それはかなりひどいことになります。我々は直前のセットでそれを赤に出しはじめたばかりであり、青でそれを作ったことはありません。しかしながら、{1}{U}や{1}{R}で能力の付いた2/1を作ることはありますし、あなたは基本的に《青銅の黒貂》よりもそちらを取るでしょう。
セットにクリーチャーが少ししかいなければこの全てがうまく機能しますが、そのセットに20以上必要なとき、我々がそれら全てを色の付いたものよりも弱くすると、事態はかなりまずいことになります。我々はこれらのアーティファクト・クリーチャーを、それ自体がデッキに入れてプレイされるぐらい十分に強く、しかし人々が自分の色のより興味深いカードよりもこれらのアーティファクト・クリーチャーをそのサイズだけのためにピックすることがない、そのような強さにする方法を見つけ出す必要がありました。
第一の、そして最も簡単な戦略は、いくつかのアーティファクト・クリーチャーに色マナのついた能力を与えることでした。《ダッカラの孔雀》と《ナーナムのコブラ》はそれぞれ青や緑をプレイしていない場合はかなり平凡なカードです。もしあなたがどちらの色でもない「アーティファクトに関すること」を本当に重視したデッキをプレイしているなら、あなたはこれらのカードをピックして、少し弱めでもあなたのデッキを機能させる十分な強さのシナジーを得ることができます。しかしながらシールドやドラフトで青か緑をプレイしているなら、ほぼ全てのデッキで素晴らしいとまでは行かなくても、まあまあ使えるカードです。
第二の、そしてより困難な戦略は、ひとつの戦略においてのみとても強力な、高い指向性を持ったアーティファクトやアーティファクト・クリーチャーを作ることでした。我々が起きてほしいと思ったことは、いくつかのアーティファクトが金色のカード、もしくは少なくともその色と異なる色の起動型能力を持つカードのような役割をすることでした。
例えば《製造機構》は、緑青の金色カードではありませんが、緑青デッキが最もエネルギーを繰り返し使える可能性が高く、青の回避能力は+1/+1カウンターと最も良く機能するので、緑青デッキで最もうまくプレイされます。しかしながらこれは赤白デッキでも十分にエネルギーがあったり、白黒デッキでエネルギー発生を繰り返しできるクリーチャーがいるなら気軽に使うことができます。
クリーチャーに目を向けてみると、《作業場の助手》はアーティファクトを手札に戻すので理論上はどんなデッキでも機能しますが、最もうまく機能するデッキは、これを生け贄に捧げるデッキか、もしくはこれを繰り返し使えるデッキのどちらかです。
これらのカードはこのセットの中で最も強い方向性を持ったカードではないかもしれませんが、戦略を新しく楽しい方法で助け、そして『カラデシュ』を(理想的にいけば)『ミラディン』や他の普通のセットとも異なる雰囲気にする、素晴らしいごく普通のカードです。
このセットが推しているのはあなたに発明家気分を味わってもらうことであり、それをするための適正な手段――その手段はあなたのデッキ特有のものです――を見つけ出すことはその発明性にとって重要なことです。《作業場の助手》が素晴らしい緑青デッキができるかもしれませんが、毎回そううまくは行かないでしょう。これらの方向性を持ったアーティファクトは異なるデッキで異なる戦略を推す助けになるべきですが、緑青のアーティファクトを循環させるデッキを組んだ場合にそれを何か特別なものだと感じさせることに十分な関与も求められます。
もちろん、よりコストパフォーマンスが高く、どこへ行っても強力なアーティファクト(《金線の使い魔》や《捕獲飛行機械》を見てください)を作り出すこともありますが、これらはこのルールの例外です。我々が各色を分け続けようと望んだ場合、全てのアーティファクトを強力で汎用性の高いものにすることができないだけなのです。
これはつまり、全体としてコモンのそれらのアーティファクトは、補助的な役割で初手よりも中盤でピックされるということです。一方、アンコモンはドラフトで見かける頻度が低いので、より強力で早くピックされます。アーティファクトのセットで経験豊富なドラフトのプレイヤーが経験することの一部に、2色を早く決めるよりも序盤にアーティファクトを取るということがあります。我々はこのような経験があることを望んでいますが、それだけしかすることがないことは望んでいません。賢明なプレイヤーは、いつ選択肢を保留して、いつ色に参入するかを知ることによる恩恵を受けることになります。
この『カラデシュ』リミテッドの研究はお楽しみいただけたでしょうか。ぜひ出かけてこのセットのゲームをプレイしてみてください。来週は、対策カードと『カラデシュ』デベロップ期間でのアーティファクト破壊についての考えの一部をお話しします。
それではまた来週お会いしましょう。
サムより (@samstod)
Kaladesh カラデシュ
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