MAGIC STORY

カラデシュ

EPISODE 13

アーティファクト破壊

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アーティファクト破壊

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2016年10月7日


 こんにちは、そして今週も「Latest Developments -デベロップ最先端-」にようこそ。スタンダードが変わって日数が経ち、『カラデシュ』はすでに大きな影響を与えています。機体は搭乗され、エネルギーは費やされ、《ボーマットの急使》はかなりの数の荷物を届けました。全体的に、このセットがこのような派手なことを起こしているのは嬉しいことです――たとえ《密輸人の回転翼機》がそこかしこにあったとしても。我々はこれからの何週かこのカードに対するスタンダードの反応を見なければならないでしょう。

 しかし、私は今回スタンダードの話をするためにここにいるのではなく、アーティファクト破壊と、過去20年間でセット中の対策カードに関する我々の考え方がどのように進化してきたかについてお話しするためにここにいるのです。

 『ミラディン』当時、我々は限定版(『アルファ版』)からそのセットと『ミラディン』との違いを実際に際だたせるために2枚のカードを収録しました――《恐怖》と《粉砕》です。面白いのは『アルファ版』では《恐怖》が《粉砕》より大きく優れていて、『ミラディン』では《粉砕》のほうが《恐怖》よりも優れていたことでした。これはまさにそのセットのアーティファクトが強さ、そして装備品などの強力な存在に対処ができない場合それがどのように強力であるかが理由でした。《ロクソドンの戦槌》を除去せずにゲームに勝とうとしたことはありますか? これはかなり困難です。

 『ミラディン』で最も強いクリーチャーの多くはアーティファクトであり、加えてアーティファクト・土地があり、それらはアーティアファクト破壊をリミテッドでの対戦相手のカードに対処する主な手段として突如として魅力的なものにしました。我々はブロック構築やスタンダードでそれらがメイン・デッキに入っているところさえ見かけました。

対策カードの問題点

 『カラデシュ』の目標は人々に《石の宣告》を《解呪》のために捨てさせることではありません。現在のデザイン感覚でアーティファクトのセットを作る上で望むことは、人々がアーティファクト除去を使うか死ぬかという環境を作ることではありません。

 私は初代『ミラディン』の時のデッキのサイドボードで、親和に対処するためだけに12枚のアーティファクト対策カードを使っていたのを(楽しくはありませんが)覚えています。そして時にはそれは親和デッキでも起こりました。脅威へのサイドボードの解答でゲームが全て決まってしまうことは楽しいゲーム・プレイを作り出しません。これは物語を伝えその新しいセットを示す簡単な方法ですが、我々がしようと思うものではありません。

 目標はアーティファクト関連でありながら、しかしただ『アーティファクト1つを対象とし、それを破壊する』と書いてあるカードではなく幅広い方法で対処する方法があるセットを作ることでした。つまり、全体的にそのカード・タイプを排除するというよりは、それらのもたらす戦略に対処するということです。これは確かに『ミラディン』とは違う手段ですが、私はこれがもっと楽しめるものだと考えています。

 『カラデシュ』に行ったとき、我々は『ミラディン』の装備品(すごく楽しくは感じなかったもの)の密度の大部分を機体(はるかに楽しいと感じられたもの)に置きかえました。機体は搭乗したときインスタント速度のクリーチャー除去で対処することができます。アーティファクト・クリーチャーはどちらのセットにも存在しますが、いつもの方法で破壊することができます。

 その後我々は《霊気貯蔵器》のような基本的にコンボっぽい動きをする対処が難しいカードを作りました。人々がデッキにアーティファクト破壊を満載するような世界でそれらを機能させるのは困難でした。初代『ミラディン』ブロックと比較を提供するために、戦場に残り続ける必要があるコンボっぽいアーティファクトを使うデッキが存在することで、人々がデッキにたまたまアーティファクトであるクリーチャーと装備品に対処する方法を満載したときに難しくしました。確かに、時折《クラーク族の鉄工所》デッキのようなものができますが、それは一撃で殺してしまうようなものでした。

 あなたは他にアーティファクトの入っていないデッキで《水晶の破片》で《永遠の証人》をバウンスすることから遠ざかっているかもしれませんが、軽いアーティファクトを小さな方法で組み合わせるデッキは多くありませんでした。事実、5~6種類のアーティファクトを運用しているデッキは多くありませんでした。オール・インするか、ちょっと使うかのどちらかでした。

選択肢を与える

 これは全て我々が『カラデシュ』が出たときにスタンダードにアーティファクト対策を一切求めていなかったということを言っているのではありません――しかしそれが大量にあることは求めていません。『カラデシュ』の前の環境に《帰化》や《溶解》のような軽い」ものを入れていないので奇妙な決定に見えるかもしれませんが、これは『カラデシュ』に、みんなが強いのでアーティファクト除去をプレイするデッキに戻ることなく、スタンダードへの影響を持たせようとする試みです。

 我々は頻繁に○○関連――それがアーティファクトでもエンチャントでも土地でもなんでも――のブロックはやらないのかと聞かれます。これは素晴らしいことで、我々は期待に応えることを好みます。その理由は時には人々がただ単にそのカード・タイプが好きだから、そして時には人々がそのカード・タイプとすでに持っているそのタイプの古いカードとの相互作用が好きだからです。

 しかし私は一部の人々が「○○関連」を好むのは、それに対して機能する除去の方法が好きだからなのではないかと真剣に疑っています。人々はどのようにデッキを相手するかではなく、どのように彼らがデッキを積極的にプレイしたいかをより多く考える傾向にあります。私は親和やドレッジのプレイヤーが「剣に生きれば剣に死ぬ」の精神を持てるのは構わないと思いますが、みんなにその軸でのやり取りを強制するのは良くないと思います。強力なサイドボードの解答が全てであるスタンダード環境は、歴史的に見て全く楽しいものではありませんでした。

 『カラデシュ』スタンダードの目標は、人々にそのデッキに適応した、プレイして楽しく、それらとシナジーを形成するアーティファクトを与えることです。我々は何にでもそれひとつで事足りる回答となるものの存在を望んではいません。《密輸人の回転翼機》は『カラデシュ』スタンダードで大流行のカードであることをその第1週に示し、そして人々が赤白アーティファクト・アグロ・デッキのためにアーティファクト除去を使うなら、もっと遅く、コンボっぽいデッキには最悪なことになるでしょう。我々はむしろ《密輸人の回転翼機》対策でクリーチャー除去をプレイして、他のデッキの存在を許容する人々が多くいてほしいと思っています。


密輸人の回転翼機》 アート:Florian de Gesincourt

 これは我々がこのフォーマットに安全弁を残していないということではありません。『カラデシュ』にはいくつかアーティファクト破壊がありますが少し弱めで、物事がみんながプレイしなければならないものよりも強すぎた場合に回答を提供するために存在しています。

 3マナでアーティファクトかエンチャントを破壊して2点のライフを得る《人工物への興味》はあらゆる意味で印象的なコストではありませんが、機構デッキや《霊気貯蔵器》、《霊気池の驚異》デッキがあればスタンダードで適切にプレイされるカードになるかもしれません。しかしあなたは機体を少しだけ使っているデッキに対してはこれを使わないかもしれません。異なるデッキに対しては異なる解答――これはあらゆるマッチがサイドボードで決まってしまうことからメタゲームを遠ざけるはずです。これらはサイドボードの諸悪の根源というよりも風景の一部です。

 我々が『ミラディン包囲戦』に《忍び寄る腐食》のようなカードを必要とした理由の一部は、《鍛えられた鋼》のようなアーティファクト・クリーチャーだけを全力でプレイすることに見返りを与えるカードのせいです。このようなやり取りを排除することで、うまく行けば「アーティファクト対対策カード」ではない、より多様なメタゲームが開かれます。次の年に移ると、我々は万が一間違っていた場合のために、『テーロス』のエンチャントに対して行ったようにそれらのデッキに圧力をかける対策カードをいくつか提供するでしょう。

リミテッドの回答

 物事をある程度元に戻すために、これはリミテッドにも適用されます。『ミラディンの傷跡』ブロックは初代ほどではありませんが、アーティファクトが強く全てのデッキに多く入っているので、アーティファクト除去は頻繁に初手でピックされます。『ミラディン』や『ミラディンの傷跡』でアーティファクト除去なしでリミテッドのデッキをプレイするのはかなり困難です。

 その最大の問題のひとつは、全ての色がアーティファクトに対処できるわけではないことです。黒はこれで除け者にされ、結果としてアーティファクト偏重のデッキの対処に深刻な問題を抱えることになります。確かにアーティファクト除去に優れた色と組み合わせることはできますが、これでは依然としてはっちゃけた青のカードを作らない限り青黒がとても弱くなってしまいます。我々は緑にクリーチャーを対処する方法がない年月を過ごし、そしてその空間に何か与えたほうがゲームがもっと楽しくなることを発見しました。それでも、我々はたとえ1ブロックだけであっても、黒やアーティファクトに似たものに頼ることは求めていません。

 我々がアーティファクトを全て入れるのではなく、基本的により戦略を意識したものにしたとき、それは黒は依然としてその戦略の一部であるクリーチャー全てに対処できるということでした。した。それらはそのデッキに入っているあらゆるものを破壊する全面的な方法に頼るというよりも、そのデッキのしていることを攻撃しようとすることができます。

 『ミラディンの傷跡』ブロックでの感染の隠れた恩恵のひとつは、我々がかなり弱い装備品を作るように強いられたことでした――これは黒が初代『ミラディン』よりも『ミラディンの傷跡』でとても強かったことの理由の一つです。機体は似たような恩恵を持っており、黒はインスタント速度の除去呪文を相手のデッキのプレイするクリーチャーを一々殺すのではなく強力な機体に対処するために構えることができます。これは黒をクリーチャーを殺すことに関して最強の色であることをより強固にし、このフォーマットで弱い除去色にしない助けとなります。『ミラディン』のセット群を見てみると緑と赤が基本的に最強の除去色であり、そのことは(ある意味)かなり奇妙で不快なことでした。

 もちろん、機体はどのクリーチャー除去呪文でも死ぬわけではありません。リミテッドにおける機体の強さの1つは、ソーサリー速度のクリーチャー除去を避けられることです。これは機体を他のカード・タイプと異なったものにし、これらをどのようにプレイするか、もしくは相手取ってどのようにプレイするかの興味深い決断を作り出す助けになっていると私は信じています。もしこれらに対する最適解が全て同じなら、リミテッドで斬新なものには感じないでしょう。その上、これらはとても弱くなり、我々はリミテッドで初代『ミラディン』の装備品と同じレベルで推さなければならなくなります――私が楽しいとは思えず、あなたは全ての装備品かクリーチャーに対処する必要があるレベルです。

 『カラデシュ』リミテッドで直接的なアーティファクト破壊の強さを制限することによって、我々はアーティファクトがただ狙われる的としてのラベルを貼られるのではなく、やりたいことを行って輝く環境を整えました。これはどの除去が最強なのかというパズルではありませんが、そうではなく以前にプレイしたもののように、実際にリミテッド環境があなたが意識する新しい要素を持つようになります。

 今週はここまでです。来週はMファイル『カラデシュ』編をお送りします。

 それではまた来週お会いしましょう。

サムより (@samstod)

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