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MAGIC STORY
戦乱のゼンディカー
再訪世界の新しいメカニズムのデベロップ
再訪世界の新しいメカニズムのデベロップ
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" kaoru
2015年9月18日
先週の「Latest Development」では、既存の世界に戻るということがどんなことかについてたくさんお話しして、そして上陸のような再録メカニズムについても言及しましたが、今週は『戦乱のゼンディカー』の新メカニズムについて焦点を当てていきたいと思います。
これらのメカニズムの中にはデザインからのものもありますが、多くはエルドラージとゼンディカー人の戦いの物語を伝えるために必要なことをデザインとデベロップの両チームが肉付けしようと連携したものです。
欠色
欠色をメカニズムと呼ぶのは少しおかしいかもしれませんが、確かなことが1つあります――エルドラージの無色という性質は、彼らの存在とその物語の流れの役割の中核となるものです。無色性はエルドラージを定義し、我々が無色のパーマネントとの相互作用を持つカードを推すことを可能にします。これは実際に「エルドラージ」という言葉を使わずに「エルドラージ・部族」の形を可能にする方法でした。『マジック・オリジン』には『戦乱のゼンディカー』の種となる素晴らしい多くのアーティファクト・クリーチャーがあり、我々はデザインから引き渡されたこの「無色テーマ」をそのまま維持しました。
幸運にも、我々はこの無色性がエルドラージの性質の大部分を占めていることが分かっていたので、エルドラージ・デッキを支援する全てのカードを『戦乱のゼンディカー』に入れるのではなく、《幽霊火の刃》のようなカードを『タルキール覇王譚』に収録して期間が被るようにしました。まだ『戦乱のゼンディカー』のデザインが始まったばかりのころに『タルキール覇王譚』のアートを発注しなければならなかったので、それほどこのセットに関する事前知識がなかったのに種を蒔くことができたのは良いことでした。
加えて、欠色をカード上できちんと読めるようにする方法を考えるべく、驚くべき量のデベロップ、編集、そしてアートの各チームの取り組みがありました――構築フォーマットで機能するだけでなく、リミテッドでも速やかにプレイされるようにするためです。私自身についていえば、欠色の最初期のプレイテストはは控えめに言ってもイライラするものでした。問題の原因は、開発部でプレイテストに使うカードの作り方でした。我々は古いカードにプレイテスト用のステッカーを貼っていました。しかし欠色カードは全て無色であり、つまりドラフトの時に多くの時間がかかり、それぞれのカードに焦点を当てるのが私が望むよりも遅くなってしまいました。ドラフトの素晴らしいところの1つは、いったん色を決めてしまえば自分の色ではない他の色に大量に精神的労力を割かなくてもよいところです――が、『戦乱のゼンディカー』のデベロップ初期の場合は全くそうではありませんでした。アーティファクトの枠だと思って流したカードが本当は黒いカードだったりしたので、ミスが簡単に起きてしまったのです。
最終バージョンの作業のため、このセットのアート・チームと新入社員リズ・レオ/Liz Leoは欠色カードを手札にあるときには確実にマナ・コストが分かるようにし、戦場にあるときには無色にするというデベロップの一見不可能な課題に多くの時間を費やしました。この方法で、我々は全ての欠色カードで無色カードであることを参照する相互作用を見逃さなくなりました。私は完成版の製品の見え方について、どれぐらい私の大きな期待を上回ってくるか言い始めることさえできません。私はこれらのカードが目的の達成に大きく貢献し、同じようにエルドラージのフレーバーの雰囲気を提供することにも素晴らしい仕事をすると思っています。
消化/昇華
無色であること以外でエルドラージを定義するのは困難でした。『戦乱のゼンディカー』は先行デザインに1年、そしてデザインに同じく1年を費やし、8/8にして滅殺を用いる以外の方法でエルドラージに統一性を持たせて侵略者の雰囲気を出すのに長い時間をかけました。エルドラージが追放領域を使うアイデアは先行デザインの中で考え出されましたが、ほとんどは自分の追放したカードをリソースとして活用していました。このメカニズムが機能するようになった転換点だと私が信じているのは、プレイヤーに自分の追放したカードをリソースとして使わせてはならないと気がついたときです――探査や《血清の粉末》のようなカードでさえも極めて簡単に追放領域にカードを置けるからです。相手のカードを追放させることで、エルドラージは突如として独自性を得ることになりました。奴らは対戦相手のカードをリソースとして食らい、カードを追放することで強くなるのです。
初期バージョンの消化/digestはカードを厳密には「昇華」しておらず、追放されたカードの枚数を参照して効果を生み出していました。例えば最初のバージョンのウラモグは唱えたときに追放するのは1枚だけでしたが、攻撃したときに現在追放されているカードと同じ数のカードを追放していました。これはウラモグ単体なら興味深い比率ですが、消化することに集中したデッキだと対戦相手の盤面を一掃してしまうことは明らかでした。同時にリミテッドを考えても、我々にとって規模を変化できてそれでも楽しい効果を見つけるのはとても難しいことでした。-X/-Xの修正は-5/-5でも-20/-20でも同じというわけではないにせよ大きい差はなく、かなり退屈でした。一方、ライフ獲得やカード・ドロー、+X/+Xの修正や直接ダメージなどのポジティブな効果は全くそうではありません。要するに、このメカニズムを実現するデザイン空間は狭く、そのメカニズムを持つカードは読んでみるととても弱そうで、そしておそらく我々が望むよりも強力でした。
その代わりに、我々は皆さんが現在ご存知の嚥下を持ったクリーチャーが対戦相手のライブラリーを削って追放し、その後昇華者がそれを栄養として使うという形にしました。デベロップの見地からすればこれは素晴らしいものです――これにより我々は《ウラモグの失却させるもの》のようなバランスの取れた本当にエキサイティングなカードを作ることができました。とても強力ながらリソースを食べるような戦場に出たときの誘発型能力をクリーチャーに持たせることができることは、そうしようとするデッキで成功する楽しいメカニズムを作るためにデベロップが専有できる良い場所の1つですが、毎回全てのカードでは運用できないという自然な立ち位置でもあります。
結集
さて、これは一見新メカニズムに見えるというだけのものです。初代『ゼンディカー』ではこのメカニズムを取り上げていたので、我々は今回このメカニズムに名前をつけることにしました――このブロックにはこのメカニズムを持っていない同盟者がたくさんいることと、結集を持つクリーチャーの動きを結集を持つ他のクリーチャーと同じになるようにしてプレイヤーの負担を取り除くことが理由です。結果的にはこの能力語を持たないよりも文字数が多くなってしまいましたが、全体的に分かりやすくなりました。
我々が『戦乱のゼンディカー』において同盟者が異なる動きをするように挑んだことは、結集の誘発型能力を初代『ゼンディカー』であったような+1/+1カウンターを置くこと以外にも与えることでした。可能な限り我々はプレイヤーへ《タジュールの戦呼び》のような本当に強力なエンド・カードを提供したいのですが、同盟者をプレイしているゲームが1ターン目から5ターン目まで通して同盟者を毎ターン永久的に強化をするだけになった場合、基本的に対戦相手が全体除去を持っているかどうかだけで勝負が決まってしまい、そのゲーム・プレイがデッキに入っている同盟者の組み合わせに関係なく反復的なものになってしまうことがわかったのです。
収斂
収斂、もっと正確に言うならば版図は先行デザイン初期に「ゼンディカー人の秘密兵器」と言われていて『戦乱のゼンディカー』ブロックの第3セットで展開され同盟者を機能させるための繋ぎを隠していました。しかし我々は『戦乱のゼンディカー』ブロックが3セット制から2セット制に変更されたときにそのアイデアを破棄しました。このアイデアは完全になくなってしまったわけではなく、デベロップのときに再浮上してきました。
ゼンディカー人がエルドラージをどのように倒すかを見てみたときに、その多色のテーマがエルドラージの「無色」と戦うために現れました。またこれは同盟者が5色全てに存在してエルドラージに対してともに立ち向かうことにも当てはまりました。しかし我々はちょうど多色ブロックから外れるところであり、楔の世界を5色にしたいという願望は持っておらず、その代わりにもう少し使われ方が部品的なメカニズムを作ることにしました。収斂です。この収斂のアイデアは全開のボーナスを得るために必要な色数に自然と制限をかけるというものでした。全開の威力を発揮するのに3色しか必要としないものもあれば、5色全てを使うことができるものもあります。
収斂は、同盟者がただのクリーチャーだけではなく、同盟者の行いを強調する呪文を作るたくさんの方法を可能にしました。エルドラージは欠色を使うことによってそれらがエルドラージの猛攻の一部であるという雰囲気でプレイされる呪文を作りました。同盟者のために似たようなカードを作って、ゼンディカー人が彼らの闘争のための団結を表現することができたのは素晴らしいことでした。
覚醒
デザインからこのセットのファイルが引き継がれたとき、覚醒は異なる数字を持たず一律で3/3になりカウンターを乗せていませんでした。いろいろな意味でこの形はこのメカニズムをシンプルにしていましたが、デベロップに大きな課題を課していました。デベロップにとってカードのバランスを調整できる部分が多いほうがよく、トークンを1つのサイズに強制された場合、カードの可能性は本当に制限されてしまいます。これは我々が土地がクリーチャー化していることを覚えておくという複雑さと、それに対してその土地が大きくなっていることを示すためにカウンターを使うという複雑さ、どちらかを取らなければならないという例です。もちろん、その土地にカウンターを乗せることにしたなら、それらがただ3/3であるよりもサイズを思い浮かべるのが簡単になります。
これらの調整可能な部分を加えることで、デベロップはコモンの覚醒呪文を軽い覚醒コストで小さなクリーチャーにすることができ、覚醒全てがソーサリーまたは強力なコンバット・トリックになることを防げて、一方で高いレアリティでより重い覚醒コストで大きいクリーチャーを提供するカードを作れるようになりました。またカウンターを使うことで、軽い覚醒コストを持つインスタントを既に覚醒している土地に唱えるとコンバット・トリックとして使えるという利点も生じました。我々は最初に唱える覚醒付きインスタントでただ2/2を倒せるようになることは望んでいませんが、私は2番目に唱えた覚醒呪文が最終的に3/3を倒すという事実が、このメカニズムをたくさんプレイすることに役立つと信じています。
今週はここまでです。来週は『戦乱のゼンディカー』の歴史を振り返りMファイルを開く予定です。
ではまた来週お会いしましょう。
サムより (@samstod)
BattleforZendikar 戦乱のゼンディカー
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