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コラム

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あなたの街のティーチングマイスター 第20回:MTG専門店シングルスター(宮城県) 文屋泰斗さん

原田 武

 

 「ティーチングマイスター」とは、初心者にマジックを教える認定資格を持つ人のこと。「あなたの街のティーチングマイスター」では、『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』がリリースされたこのタイミングに、全国各地にいる彼らの紹介インタビューをシリーズで掲載していきます。

 今回は宮城・仙台にて長らくマジックを楽しみ続け、今は地元でショップを切り盛りするこの方です。

 

あの日掴んだ輝き

──本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、マジックとの出会いについて聞かせてください。

文屋:コロコロコミックで記事を読んだのがきっかけでしたね。ちょうど『ウルザズ・サーガ』の特集が組まれていたり、漫画「デュエル・マスターズ」の連載が始まったころだったかと。

 当時は小学生だったのでルールはよくわからなくて、学校ごとのローカルルールがあったりしていましたね。私の地域も例に漏れずめちゃくちゃで、土地を最初から10枚並べたり《対抗呪文》で場のクリーチャーを打ち消したりしていました(笑)。

──子供同士で遊ぶカードゲームはそんな感じになりがちかもしれません。周囲でもマジックは流行っていたんでしょうか?

文屋:小学生の頃からクラスの中で人気があって、その流れで中学校でも遊んでいる人が多かった感じです。あの年頃ってちょっと背伸びした感じに憧れるじゃないですか。「ちょっと違うゲームやってるんだぞ」みたいな。

 マジックはちょっとおどろおどろしい雰囲気のイラストがあったりして、そこから子供だましじゃない雰囲気を感じて惹かれたんだと思います。親から「怖い」って言われましたもの。

 それから、ハリウッドのファンタジー映画が公開された時期が近かったのも背中を押したかもしれません。今でも大好きで10回以上見返しているんですが、オーソドックスながらもピュアな世界観にドハマリしたと言いますか。マジックにも似た空気感を感じて、「まさにこれじゃないか!」と思いながら楽しんでいましたね。

──それから今に至るまで、ずっとマジックをプレイされてきたのですか?

 

文屋:大学の時に軽くお休みしたくらいでほぼほぼずっと続けてきました。というのも、ターニングポイントになる出来事があったんです。

 中学1年のころ「ゲームぎゃざ」を見ていて、近所のホールでジュニア大会が開催されることを知ったんです。大人たちの大会はまだ難しいけれどジュニア大会なら行けるかもしれない、そう思って仲の良い友人と行ってみることにしました。

 学校の中では多分一番強いぞって自負はあったので意気揚々と出場したんです。でもいざ戦ってみると、友達は2勝2敗1分だったのに対して自分は0勝4敗。最後の1試合は不戦勝でした。

──それはキツいですね……。

文屋:それ以上に負けている人がいないという状況なわけですからなおのこと辛くなってしまって。ジュニア大会ということで、当時中1の私よりも周囲の年齢層は高め。彼らのデッキにはレアカードもたくさん入っている。これは無理だな、なんてしょげていたんです。

 けれどその時、主催を務めていた方が「暇だったら1戦しないか」って声をかけてくれたんですよ。しかも「お互いのデッキを交換して対戦しよう」という事で、大人のデッキを使えば勝つだろうと高を括って臨んだらなんと負けてしまったんです。さっきまで0-4してた自分のデッキにですよ。

 これはカードの問題でも何でもない。腕だな、ということに気づかされたんです。

──勝負の何たるかを教えてくださったわけですね。

文屋:そんなことがあってからプレイングや知識をその主催の方や周りの大人に教わるようになって、奥の深さにますますのめり込んでいくことになりました。高校受験までちょっと頑張ってみよう、と大会優勝を目標に据えて、しばらく打ち込むようになります。

 

 そして中学3年のころ、ついに優勝を果たして手に入れたのがこの《双頭のドラゴン》です。ようやく形にしたデッキと自分の腕で勝てた、それが凄く嬉しくて忘れられません。

──有言実行、おめでとうございます。ちなみに、その時はどんなデッキを?

文屋:《石の雨》で土地、《神の怒り》や《忘却石》でクリーチャーを除去してから《猛烈に食うもの》でフィニッシュするオリジナルデッキで、「赤白リセットボタン」と呼んでいました。序盤は《物語の円》や《ルフ鳥の卵》とかで耐える感じです。

 当時はショップや通販にもなじみがなくて、頑張ってトレードでカードを集めて回りました。最後は周りの友達からもカードを借りて完成させたので、学校の力を集結して戦っていた節もあるかもしれません(笑)。そこまでしてでも勝ちたかったんですね。

 優勝賞品のボックスは友達と分けて開封して、レア以外のカードをお礼にプレゼントしたりとかして喜びを分かち合いました。

──大切な思い出なのですね。この当時のご友人達は今もマジックを続けられているのでしょうか?

文屋:残念なことに学校の友人たちは止めてしまったのですが、ジュニア大会の主催をされていた方とはここで勤めるようになって再会しました。他にも当時マジックを教えてくださった皆さんがお店に来てくださることは結構ありますね。

──ジュニア大会でできた縁が、今に至るまで続いているのですね。

「バーのママ力」を目指して

──では続いて、マイスターとしての活動について聞かせてください。最初に取得を決意したきっかけは何でしたか?

文屋:大学時代に子供向けの工作教室をやっていたり、趣味のボードゲームのインスト(導入)やカードゲームのルール説明もよくしていたりと、なにかと人にものを教える機会が多かったんです。そんなこともあって、「どうせいつもしてるじゃん」と友人から薦められたのがきっかけでしたね。

 私自身はとても面倒くさがりで雑なんですよ(笑)。なのでいかに面倒くさくないように要素をつまんで本質を伝えるか、というところには人一倍の熱意があると思っています。

──面倒くさがりが活きているとは、ちょっと驚きました。実際にティーチングする際はどんなことに気を付けていらっしゃいますか?

文屋:とにかく楽しさを知ってもらう事ですね。オフサイドを知らなくても、ボールを蹴ってゴールネットを揺らす気持ちよさを感じてもらえればサッカーって楽しめるじゃないですか。なによりもまず楽しいゲームだと分かってもらうことが大切かなと。

 説明の方法は本当にお客様次第です。他のカードゲームの経験がある方にはそれとの共通点・違いを挙げていくことから始めてみたりですとか。出せるクリーチャーの数に上限がなくて数で押す戦い方が出来たりといったところで、自由度の高いゲームだと驚かれる方もいらっしゃいます。

 ファンタジーの雰囲気が気になって来てくださった方には「デッキが魔導書でプレイヤーが魔法使いなんだよ」と説明すると分かって頂きやすいみたいです。私自身もファンタジー好きなので、話が弾むことも多いですね。

 ストーリーが気になっていそうな方にはカードで紙芝居をしたりすることもありますね。重ねたカードを1枚1枚見せていってストーリーを追っていくんです。「このジェイスは元々ヴリンって場所のいじめられっ子だったんだけど、事件を起こしてスフィンクスの弟子になって……」みたいな。

──ゲーム性でも、世界観でも、お客様のニーズに合わせて進めていくわけですね。

文屋:とはいえやっぱり対戦相手がいないと成り立たないゲームですから、一緒に遊ぶ人とのコミュニケーションづくり、環境を提案してあげるということもサポートできるようにやっていますね。私とだけ交流するのではなくて、感性や人となりのマッチしそうな常連さんと接点を作ってあげたりですとか。

 

 勝手に「バーのママ力」なんて言っているんですが、お客様同士が作ってくださっているいい空気感を丁寧に広げていきたいという思いがあります。

──交友関係を作る手助けをするのも大切な役目のひとつなのですね。

文屋:ただ単にマジックを扱うことを仕事にしてはいけないなというのは強く思うところですね。どんなにカードが強くても、どんなに効果が面白くても、やっぱり楽しく遊べないと続かないものなので。いかにそれができる環境を作ってあげるかが大切だと考えています。

 ですのでティーチングから始めてくださったお客様がマジック仲間と飲みに行くようになったりですとか、また別の方が2年近く大会参加を続けてくださってついに優勝したりですとか、そういった出来事を目の当たりにしたときは凄く嬉しかったです。人生の楽しみ方を広げる提案ができたなと思えました。

──いずれも心温まるエピソードです。どこか中学生の文屋さんの姿に重なるようにも思います。

文屋:そうかもしれないですね。あの頃の自分はまだ子供でしたから、多分まだうるさくて生意気だったと思うんですよ。でも周囲の皆さんは引き入れて可愛がってくださった。その記憶に向けての恩返しと言いますか、できるだけ若い人たちや初心者の人たちをアシストしたいという気持ちに繋がっているのかもしれないですね。

人生に新たな彩りを

──各地で大盛況の『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』。既に多種多様なイベントも始まっていますが、改めてこのコラボへの意気込みをお聞かせください。

文屋:新しく入ってこられる方はやっぱり多いですね。元々興味はあったけどきっかけが見つからずに二の足を踏んでいた方や、FFが好きだから教えて欲しいと言う方に既にお越しいただいています。年齢層や性別も様々です。

 イベントも非常に盛り上がっていて、先日は深夜プレリリースなんて催しも行いました。金曜日の夜10時くらいから始めて土曜日の夜まで、ノンストップで6大会。最後の方は盛り上がりと疲労でわけがわからなくなってくるんですが、大盛況の1日になりました。

──それって運営側も24時間連続で稼働するってことじゃないですか。大変だったのでは……?

 

文屋:もちろん楽ではなかったですが、合宿みたいで楽しかったです(笑)。しかも6回のイベントのうち、2、3回優勝されたのは私の中学生時代から遊んでくださっているおじさまだったんですよ。とても疲れたなんて言ってられませんでしたね(笑)。

──当日の熱狂ぶりが伝わってくるようです。ちなみに、文屋さんはFFを遊ばれた経験はおありでしょうか?

文屋:「ファイナルファンタジータクティクス」と「ファイナルファンタジータクティクス アドバンス」だけ遊んでいたので、今回のコラボでは収録されていませんね。ただその分、お客様から色々と教わっています。ティーチングとは逆ですね(笑)。ティナはこんな子なんだとか、ビビにはこんな背景があってといったお話を聞いて、凄く面白そうだなと。

 ただ今悩ましいのは、どのタイトルから始めるか皆さんに質問したら全員から違う答えが返ってくることです。いや困るだろと(笑)。

──そこは皆様、譲れないものがある。

文屋:10からだ、9からやろう、いややっぱり1からやってほしいといった具合で。ストーリーならどれがいい、システムならこっちが充実してるといった話題も尽きませんし……マジックについて我々が語ってる時の相手の気分ってこんな感じなのかもしれないって、また一つ学ばせて頂きました。

──ちなみに、今注目しているカードはありますか?

 

文屋:《ティナ・ブランフォード》ですね。きっかけは元になった《最高工匠卿、ウルザ》が大好きだったことなんですが、機械を使うキャラクターなのかなとか、この台詞はどんな場面で言うんだろうとか、イメージがどんどん膨らんで楽しくなってきます。

──本編を知らないからこそできる楽しみ方かもしれませんね。では最後に、お店に行ってみようかな?と考えている読者の方に一言お願いします。

文屋:ルールは実は簡単なので、是非一緒に遊んでみましょう!……というのはもちろんあるんですが、本質として伝えたいのは「一生の趣味が見つかるかもしれない」「一生の友達が出来るかもしれない」ということです。

 人生変わるかも、とまで言うと大げさかもしれませんが、私が小中学校にマジックを通じて出会った人々とはかれこれ20数年のお付き合いになります。それだけのコミュニケーションを生み出すきっかけ、人生を通じての楽しみになるような場所にマジックはなる、という事をお伝えしたいです。

 ……とは思うんですが、これから始める方にいきなりそんなことを言ってもびっくりしちゃいますよね(笑)。まずは気軽に遊んでいきましょう!

──最後までありがとうございました。


 

MTG専門店シングルスター
住所:〒980-0021 宮城県仙台市青葉区中央2-1-30 須田ビル3F A
電話番号: 022-395-6413
公式サイト:こちらから

 「MTG専門店シングルスター」は仙台駅にほど近いカードショップ。JR・地下鉄双方から簡単にアクセスできます。対戦スペースの席幅にはゆとりがあり、貸出ダイス等も備えられていていつでも快適にマジックが楽しめます。勝ち負け関係なく楽しめる、カジュアルなイベントに力を入れているとのことです。


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