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企画記事
あなたの街のティーチングマイスター 第2回:ホビーステーション名古屋大須本店(愛知県) 田中健太さん
「ティーチングマイスター」とは、初心者にマジックを教える認定資格を持つ人のこと。ティーチングマイスターが教えるマジック体験会「多元宇宙への招待状」の開催を記念し、全国各地にいるティーチングマイスターの紹介インタビューをシリーズで掲載していきます。
第2回は、名古屋の総合カードゲームショップでカード愛を体現するこの方です。
お店のために始めたマジック
――田中さんはいつマジックを始めましたか?
田中:実は、マジックに出会うのと実際に始めるまでには間隔が開いてまして……。もともと別のカードゲームをやっていて、当時通ってたお店の店員さんや常連の方にマジックを教わったんですが、そのときはデッキを借りて遊んだりブースタードラフトをやったり、ギリギリルールがわかる程度だったんです。
――それはいつごろですか?
田中:大学生時代、旧『ゼンディカー』のころですね。
その後、ホビーステーションでアルバイトをしていてそのまま社員に登用され、名古屋店の店長になったタイミングで、マジックの担当者がいなくなってしまったんです。じゃあ僕がやるしかない、ということでマジックを本格的にやり始めました。それが『ゼンディカーの夜明け』の発売タイミングです。
――知ってはいたけど、ちゃんと始めたのはビジネスがきっかけと。店長になったというのは、このお店で?
田中:2008年にオープンした、ここの前身の店舗です。2020年の12月にこの場所に移転して、引き続き店長をやっていたんですが、今は店長をほかの者に任せて、エリアリーダーをしています。大須にある、ここともう一店舗を任せていただいています。
――エリアリーダーという店長より上の立場だと、仕事はマジック関連だけでなく、もっと幅広くなりますよね。
田中:そうですね。お店の運営ですとか、トラブル解決、マネージメント系の仕事になります。それに加えて、僕はマジックを担当しているという形です。それぞれのタイトルに担当者がついているので。
――店長になったときからずっとマジック担当なんですね。マジックを受け持つことになったとき、勉強などをしたんですか?
田中:以前は、有名なカードはなんとなくわかっていたんですが、具体的にどういうことができるカードなのかはわからない、という状態でした。
たとえば、《精神を刻む者、ジェイス》と言われて、「なんかすごいプレインズウォーカーで、禁止になった」くらいの知識はありましたが、なぜそこまで強くて、どういうふうに使われているのかは全然わからなかったので、そういう部分を知っていこうと。
なので、ネットで対戦動画やカードの紹介動画などを見て、「こういう使われ方をするカードなのか」と学んだりした期間がけっこうありますね。
――単に仕事をするだけだったらカード能力の知識はそこまでいらないかもしれませんが、ちゃんとわかっている店員さんがいるとうれしいですよね。いちプレイヤーとして遊ぶ機会はありますか?
田中:今はめちゃくちゃ遊んでます。スタンダードとパイオニアが主戦場で、最近はスタンダードの「エスパー・レジェンズ」デッキがめちゃくちゃ好きです。《シェオルドレッド》の見た目も好みですし、《策謀の予見者、ラフィーン》が超強いし、《絶望招来》がいなくなってだいぶラクになりました。
――大会に出たりもしますか?
田中:仕事柄なかなかタイミングを合わせることが難しく、紙の大会はそんなに出られてないんですが、MTGアリーナは移動時間中とかにもバンバンやってます。MTGアリーナでもエスパー・レジェンズを使ってます。
ティーチングマイスターをやってよかったこと
――ティーチングマイスターになったのはいつですか?
田中:コロナど真ん中くらいの2020年です。
――どういった理由で?
田中:当店では昔からマジックを扱っていたとはいえ、専門店と比べたら軽く置いてあるだけという状態が続いてまして、このままではいけないと。それでほかのお店と比べて、どういう点でうちの有利性が出せるか考えたところ、いろんなカードゲームを幅広く扱っている点だと思ったんです。
既存の、マジック一筋でがっつり遊んでいるお客さんは、もう行きつけのお店があるので、そこから引っ張ってくるのは難しいんじゃないかなと。
――確かにそうですね。
田中:そこで、ほかのカードゲームをやっていて、「マジックはやったことがないけどなんとなく知っている」という、以前の僕みたいな人を誘えば、ほかのカードゲームと合わせてマジックもうちで遊んでくれるんじゃないかと。それなら、僕が教えられる立場になろう、ということでティーチングマイスターを志しました。
――公式な資格を持ってると、お客さんにお声がけしやすいですね。でもちょうど2020年とかだと、そもそもお店もほとんど動いていなかったのでは……。
田中:そもそもデュエルスペースが立ち入り禁止だった時期や、休店していた時期もありました。
――そういう時期はティーチングをやるどころではなかったですよね。ようやくそろそろやり始めた感じですか?
田中:今は常連のお客さんでマジックに興味がある方や、お声がけいただいた方に、ティーチング用のデッキで教えたりしている感じですね。しっかりティーチングをやる機会というのはこれからで、9月から公式でそういう機会を設けていただけるということなので、それを楽しみにしています。
――意気込みをお願いします。
田中:やります! やったります!(笑)
――ティーチングマイスターになってよかったことというと、何でしょうか。
田中:良くも悪くもカードゲームって、新弾が出たばかりのときとそうでない時期では勢いが違うじゃないですか。環境によっても、活発な時期と人がいない時期があったりするし。1つのカードゲームしか遊んでないお客さんって、そういう谷の時期に離れちゃって、そのままカードゲーム自体に戻ってこないこともあるんですよ。
でも複数のカードゲームで遊んでいると、1つの谷の時期にはほかのカードゲームを遊べばいい。カードショップにさえ来続けてくれれば、「一度やめちゃったけど、今ってこんな感じなんだ。またやってみようかな」となったりする。そういう、カードゲーム複数並行スタイルのために、マジックという遊び方を1つ提案できるようになったのがすごくよかったと思ってます。
――なるほど。いろいろ並行して遊んでいると、継続的にお店に来ることになりますね。
田中:来てくれれば、情報は勝手に入ってくるじゃないですか。本当に離れちゃうと情報が入らなくて、戻るきっかけもなくなっちゃうので。
もちろんマジックをやってほしいというのはありますけど、マジック以外のゲームをやったりもしつつ、興味が出たら戻ってきてほしいし、その逆も同じです。
――そういう提案ができるのは、確かにこういった総合店の強みですね。
ティーチングに際して、基本は決まったやり方がありますけども、何か工夫などはありますか?
田中:ただ終わらせずに、仲間うちで一緒に遊べるところまで提案したいと思っていて、どういう温度感なのかをよく聞くようにしています。友達どうしでスタンダードをわいわいやりたいのか、周りの人が統率者戦をやってるから自分もやってみたいのか、とか。だいたいは、周りの人がやってるから一緒にやりたい、という人が多いですね。1人で来て「マジックを極めたいです!」みたいな方は、今のところ出会ったことがないです(笑)。
お客さんがどういう遊び方をしたいのかを知ったうえで、「次はこういう商品を買うと、こういう遊び方ができるよ」とご提案できるようにしています。
――ティーチングを受けたいときはどうしたらいいですか?
田中:僕がいるときに、教えてほしいと言っていただければ大丈夫です。大須の2つの店舗のうちどちらかにはだいたいおりますので、見かけたら声をかけていただければと思います。
令和のマジックの始め方
田中:ちょっと話はずれますが……僕はこの業界で働いて12、3年なんですが、昔と今とで大きく変わったと感じるのは、デッキの作り方ですね。
昔って、パックから出てきたカードでああでもないこうでもないとデッキを組んでいたと記憶してるんですが、今はネットで流行のデッキレシピを探してきて、その通りにデッキを組んでから遊び始める、というやり方に変わってきてるんです。
――試行錯誤する段階はないんですね。
田中:そうです。統率者戦でも、昔は持ってるカードをもとに組んで、新しく手に入れたカードを足していくようなやり方だったと思うんですが、今はデッキレシピを参考に、まず一通りそろえてから遊ぶ人が多いですね。
――へえー。山の八合目から登るみたいな感じなんですね。
田中:最近だと、パイオニアの青単スピリットデッキのカードを一通りそろえて、「足りないカードがあと少しだけになったので、そろそろルールを覚えたい」という人がティーチングにいらっしゃいました。
――そこからなんですか! なぜ青単スピリットデッキに決めたのかが気になります。
田中:藤ちょこ先生の描かれた《幽体の船乗り》の絵がたいへん気に入ったらしくて、それを4枚使うデッキということで検索したところ、青単スピリットにたどりついたようです。
――なるほど。使いたいカードがあるからデッキを用意して、「いよいよ使うから、さあ教えてくれ!」と。イラストが、導入のためにすごく効果を発揮してますね。
田中:そうですね。まあそういう感じなので、ティーチングでもらったデッキを徐々に強化して使っていこうという人はほぼいなくて、7~8割の人は使うデッキを決めてから始めている感じですね。
――へえー、そうなんですね。
では、ティーチングに興味があるという方へのメッセージをお願いします。
田中:最近は人気アニメやIPのカードゲームがとっつきやすくて、マジックは「名前はよく聞くんだけど、なんか難しそう」って思ってる人もいると思います。僕も実際そうでしたし。でも僕ができてるくらいなんで、実際やってみるとそんなことはないです。なので、遊び方のひとつにマジックを加えていただけたら、カードゲームをさらに楽しめると思います。
楽しみ方がいろいろあるのも、マジックのいいところですよね。競技的でもカジュアルでも、背景ストーリーでも、入り口はたくさんあるので。
――それこそ日本人イラストレーターさんの絵からでも、ぜひ!
カード愛
――そういえば、このあたりにはカードショップが30くらい集まっているそうですが、そんな中でこのお店の特色というと?
田中:最近は1つ2つのタイトルに特化した専門的なお店が多い中、大小さまざまなタイトルを幅広く扱っているので、「あ、こんなカードゲームあるんだ」とか、見ていて楽しいと思います。
お店としてやっていくなら、今は人気タイトルだけに絞ったほうが運営効率がいいのかもしれませんが、僕は昔からカードゲームが好きで、たくさんあるコモンの中からイケてるカードを探すのが好きだったり、今も「地味だけどこのカードが僕は強いと思うから、ショーケースに並べてお客さんに勧めたい」とかやっていて、ある意味今の流行に逆行したお店になっていると思います。
――カードを単に商材として見るなら割に合わないかもしれないけど、カードが好きな人たちが売ってるから、お客さんから見たら「おお、ちょうどこういうのが欲しかったんだよ」とか、そんな感じになるでしょうね。
田中:はい、まさにそういう、プレイヤー目線の売り場をどのタイトルも目指してます。
――カード愛が伝わってきました。今日はどうもありがとうございました。
ホビーステーション名古屋大須本店
住所:愛知県名古屋市中区大須3-32-23 Zeque大須6階
電話番号:052-242-5252
店舗サイト:https://www.hbst.net/shop/16/
「ホビーステーション名古屋大須本店」は、にぎやかな大須商店街の一角にあります。小規模な店舗が多い大須の中では、トップクラスに大きくてデュエルスぺースも広めです。
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