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企画記事
あなたの街のティーチングマイスター 第1回:トレカの洞窟Card World TOWER AKIBA(東京都) 海老原弘尭さん
「ティーチングマイスター」とは、初心者にマジックを教える認定資格を持つ人のこと。ティーチングマイスターが教えるマジック体験会「多元宇宙への招待状」の開催を記念し、全国各地にいるティーチングマイスターの紹介インタビューをシリーズで掲載していきます。
第1回は、秋葉原の総合カードゲームショップでマジックファンのために奮闘するこの方です。
マジックのいいところ
――今日はよろしくお願いします。マジックはいつから?
海老原:小学生のころ、漫画雑誌にマジックが載ってた時代ですね。近くのおもちゃ屋さんで、確か『ネメシス』を買ったのが最初です。
中学校くらいでいったん離れたんですけど、大学で上京したとき、家の近くにたまたま紙屋(カードショップ)があって、「まだあるんだ! 懐かしいな」と。
――その間は、ほかのカードゲームをやったりはしてなかった?
海老原:いや、何もないです。『ミラディンの傷跡』のタイミングでマジックに復帰してからは、ショップのコミュニティでずっとやり続けて……もう10何年だろう? 当時は千葉の草の根大会に出ては三田村(和弥)さんや、三原(槙仁)さん(※注)にボコボコにされては、友人に教えを乞うムーブを繰り返してました(笑)。
――そのまま大学を出て、カードの仕事に就いたんですか?
海老原:いや、普通の会社員をやっていたんですが、やっぱりマジックに絡む仕事がしたくて。好きが高じてこうなった、というところですね。
――それはすごい。では、マジックではどのフォーマットが好きですか?
海老原:始めたてのときは競技マジックに入り浸ってたので、わりと何でもやっていて、最近はレガシーとモダンをやる頻度が多いかなと。レガシーの「出産の殻」デッキが好きで、6月末の日本レガシー選手権・夏でもそれを握って、5勝3敗でした。
――おお、それは惜しかったですね。マジックは特にどういうところが好きですか?
海老原:コミュニティツールとしての側面が強いところですね。それこそ僕は1人で上京してきて、マジックつながりで友達ができていったので。
個人的にはマジックって、ほかのカードゲームに比べて、やり込むことで友達が作りやすいんじゃないかと思っているんです。年齢層も高めなので、大会後にサクッと飲みに行くムーブもできたりしますし(笑)。
――特に競技的にやっている人は、横のつながりが強固になりやすいですよね。
海老原:そうですね。カジュアルに遊んで「楽しかったね」で終わるよりも、大会に出て、同じ方向に向かって一緒にがんばることで、部活っぽい結束力が生まれるんですよね。
※注
三田村和弥さん:2009年プロツアー・ホノルル優勝ほか/三原槙仁さん:2006年世界選手権優勝ほか
ティーチングマイスターとしての仕事
――海老原さんは、ここに勤めて何年くらいですか?
海老原:4年半くらいです。ティーチングマイスターの資格をとったのが2019年5月なので、ほぼ同じくらいですね。
――どうしてティーチングマイスターに?
海老原:マジック担当だからというのはもちろんですけど、私みたいに古いプレイヤーばっかりで固まっていたら下の層がいなくなっちゃう。やっぱり新しい人を入れないと業界が先細っていっちゃうので、入口を入る手助けをしたい、というのが一番ですね。一度入ってさえくれれば、沼に沈めるプロはいっぱいいらっしゃるので(笑)。
それでティーチングマイスターのテストを受けて、ほぼ同時にレベル1の公認ジャッジ試験にも受かりました。
――お店のマジック担当者の責任を担うべく、ルールを勉強して、同時に教えるための資格も得たと。ただ2019年5月からだと、1年くらいたったらコロナ禍の時期に入りますよね。
海老原:その間は、新しい人にティーチングをする機会は正直少なかったものの、それでも月2回とかは続けてました。
お客さんは途切れなかったというか……うちはそもそもイベントの参加者が多い店なんですよ。一時はイベントが開けないタイミングもあったんですけど、コロナが明けてからも参加者の数自体はあまり減らなくて。コロナの間も、お客さんが「いつかまたイベントに出るぞ!」というのを楽しみにカードを買い続けてくれたおかげで、どうにかマジック部門が乗り切れた感じなんです。
――すばらしいですね。コロナ前の1年はティーチングをたくさんやっていて、最中は新しい人はなかなか来ていなかったけれども、ずっと続けてくれていた人がいたと。
海老原:そうです。この仕事をやってて一番よかったことは、ティーチングに参加して入って来られた方をはじめ、以前からこのへんで遊んでた方とか、いろんな方がイベントに参加してくれて、ずっと続けてくれることですね。ありがたいです。
ティーチングの内容
――ティーチングにはどういうお客さんがいらっしゃるんですか?
海老原:最近は、MTGアリーナをやっているけど紙はやったことない、という方が多いです。特にうちは総合店舗なので、ほかのカードゲームをやっていて、MTGアリーナもちょっとやっているような方がほかのカードゲームを買いに来たとき、「ついでにマジックのティーチングもちょっと受けてみるか」ということがあります。
――MTGアリーナでハードルが下がっているから、ついでに受けやすいと。
海老原:カードゲームを何もやってなくて、ゼロから始めますという方はあまりいないですね。
MTGアリーナから入ってくる方たちはルールはもうわかっているので、ルール説明部分はある程度はしょって、テクニック面とか、紙のお作法というか、そういう部分を多めに話します。それで紙に興味を持ってもらうようにして、そのまま店のイベントにつなげられるように、というのを意識しています。もちろんゼロから教える場合は、ちゃんと丁寧にルールをお教えしますよ。
――紙のお作法というのは、どういう?
海老原:よくするのは、シャッフルの話ですね。ほかのカードゲームって、そんなに念入りにシャッフルしないことも多いんですけど、マジックだと横入れとかも普通だし、「数種類のシャッフルを組み合わせてしっかりシャッフルしよう」ってよく言われますよね。それが、「すごくレベルの高い大会だけじゃなくて、一般的なときもそうなんですよ」って言うと「へえー!」って驚かれたりします。
――なるほど。
海老原:それ以外だと、テクニック的な部分で、基本のティーチングの内容には入ってないんですけど、いわゆるスタックの説明……インスタントタイミングでの攻防はどうやるかとか、基本的には後出しが有利になるといったことを説明します。
――基本的だけど、覚えると差が出ますもんね。
海老原:「先に攻撃してから、戦闘後メイン・フェイズでクリーチャーを出しましょう」っていうのも、特にMTGアリーナから入った方にはよく話しますね。そうすると教わった側が、ちょっとうまくなった気になれて、モチベーションが上がるじゃないですか。そういう、誰にでもできるテクニックを覚えて帰ってもらえれば、アリーナで実践してもらうだけでも違うと思うんですよ。
――確かに1人でMTGアリーナをやっているだけだと、そういう話を誰からも聞く機会がないですから、「ティーチング受けてよかったな」って思うでしょうね。
それでは、コロナ以降のティーチングへの意気込みをお願いします。
海老原:ティーチングを受けた方には初心者用デッキやプロモカード、来た方用のパックなどのお土産がありますが、それ以外にも何かしらの知識をお持ち帰りいただけるようにしています。
アリーナやっててもやってなくても気にしないで、軽い気持ちで来てください。紙でしか得られない喜び、栄養をたっぷりお伝えしますので。
僕が売り場の担当でもあるので、いろんな面でサポートします。「アリーナでこのデッキに勝てないんだけど、どうしたらいいの?」みたいな相談にもよく乗ってますよ。スタンダードからレガシーまで常に追っかけてますので、時間のあるかぎりですが、いくらでも相談に乗ります。その道の専門家みたいなお客さんもいらっしゃるので、「このデッキについて知りたいなら、あの人に聞くといいよ」って僕がつなげる役割もよくやってます。
――頼れるベテランのお兄さんが何でも対応してくれる、みたいな感じですね。
ティーチングはいつやっていますか?
海老原:今はいつでも……飛び込みでも、僕の体が空いてれば対応できます。先に言ってもらえれば場所も準備しますし、あと週4回やってる大会のときでも。その場合は僕がラウンド進行のかたわら、隣に席を作ってお教えします。
お店のイベントいろいろ
――ティーチングを受けて「紙も興味が出てきた」という人がいたら、お店のイベントに出てもらうという流れなんですね。
海老原:特にお勧めするのはドラフトですね。カード持ってなくてもできますし、うちのリミテッドジャンキーな先輩方は優しい方ばかりなので、その卓に入ってもらうだけで全部手取り足取り教えてもらえるんですよ。
――「ティーチングから来ました! 初心者です!」みたいな人が参加したとしても……
海老原:「うおー初心者だ! 囲え囲え!」って感じです(笑)。うちは月曜日にドラフトやってるんですが、月曜の夜でちゃんと8人参加者がそろうんですよ。秋葉原でもあんまりないと思います。平日夜のイベントでも、スタンダードで8人以上、モダンも10~20人ちゃんと人が集まるんです。
――こちらは総合店なので、そんなにマジックの人が集まってるイメージは正直ありませんでした。
海老原:基本的にマジックのイベントは僕1人で担当してるんですが、週に4回大会をやり続けて定着した、というのはあると思います。
あとイベント1回の参加費が安くて、時間も短い手ごろな内容にしてるんです。たとえば水曜なんか、200円で2回戦、6時45分に始まって8時半より前には終わるんで、仕事帰りにちょっと寄れるようにしています。なので、ぜひ気楽に来てほしいですね。ただ、強い人が多いので、けっこうボコボコにされるかもしれませんが(笑)。
――気軽に出られるけど、相手は強い(笑)。
海老原:このところ強いお客さんも増えてきて、よその大会のトップ8に残ってプロフィール紹介のときにうちの店名を出してもらうこともあったりするんで、ありがたい話です。
――ちなみに、秋葉原のお店なので、外国人のお客さんが多かったりしますか?
海老原:今はめちゃめちゃ多いです。ティーチングを受けたり、大会に出たりということはそんなにないですが、観光旅行に来て、お土産として日本語のカードを買って帰る方が多いですね。
おもしろかったこととして、つい先日来たアメリカ人のお客さんが、4年前にここに来たっていう話がありました。そのとき、僕がティーチングマイスターの資格をとってすぐくらいのタイミングだったんですよね。「こういう資格をとって、マイスターの盾があるんだ」というような話をしたら、「かっこいいから一緒に写真撮ってくれ」と言われて。その写真を見せられて、「この写真覚えてるか?」「あー、あのときの!」と。
4年後もまた一緒に写真を撮って、1ボックス買って行かれました。長く続いてるからこそそういうことも起こりうるわけで、マジックっていいゲームだなと思いますね。
――4年後、また買いにいらっしゃるかもしれないですし、それまで、ずっとここに勤めていないとですね(笑)。
トレカの洞窟CARD WORLD TOWER AKIBA
住所:東京都千代田区外神田1-15-15
電話番号: 03-3526-2340
店舗サイト:https://doukutsu.jp/archives/209
「トレカの洞窟CARD WORLD TOWER AKIBA」は秋葉原駅からすぐ。ファンタジー風のインテリアと、使用料なしで使える広いフリースペースが売りです。大会時の席もゆったりしており、空席に荷物を置く余裕があります。
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