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マジック・プロツアー殿堂 渡辺雄也の軌跡 後編

マジック・プロツアー殿堂 渡辺雄也の軌跡 後編

by Masami Kaneko(WotC コミュニティ担当)

 こちらの記事は後編となります。前編はこちら!

渡辺雄也というプレイヤー

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――さて、前編では渡辺さんのマジック・プレイヤーとしての歴史を追ってきたわけなんですが、ここからは渡辺さんがどういったタイプのプレイヤーなのかをについて伺いたいと思います。渡辺さんはご自身がどんなプレイヤーだと思ってらっしゃいますか?

渡辺すごく不器用なプレイヤー、ですね。例えば構築戦に関して言えば、新しいデッキも作れないし、コピーしたデッキをすぐに回すこともできない。基本的に、既存のデッキをある程度回して、その上で少し自分の好きな形にアップデートして、やっと戦える。元から存在する50点のデッキの点数をあげていくことだけはできる。この『デッキをアップデートする』ことにだけ特化したプレイヤー、という評価です。」

――残している結果に対して、ご自身の評価が低く聞こえますが......。

渡辺「実際、自己評価はすごく低いです。凡人タイプで、何の経験もなしに突発で頑張る、みたいなことは全然できないんですよ。自分の中で咀嚼して、ブラッシュアップして、例えばサイドボードのイン・アウトも自分の中で理解している状態で、初めて勝つことができるようになる。そんなプレイヤーですね。」

――デッキを調整していくのがうまい、ということなんですか?

渡辺「正直なところ『それしかできない』が正しいですが、例えば『黒単信心』や『サムライ・デルバー』なんかもTier1、環境で一番強いと言われるデッキを使い続けて勝っています。相性の悪い相手が出てきても、それに勝てるようなサイドボードで対処したり。基本的にはTier1のデッキを強くしているときが、一番勝っている時ですね。」

――なるほど、そのプレイヤーとしてのタイプは例えばイベントのデッキ選択にも影響しますか?

渡辺「明確に影響しますね。例えば、イベントの直前にデッキを決めるのもあんまりしない、できないんです。だから、実はセット発売直後に行われるプロツアーは苦手なんですよ。既存のデッキを研ぎ澄ます時間もないですし、新しいデッキを作るのもできない。僕のスタイルとしては、正直厳しい戦いです。」

――これだけ結果を出している渡辺さんでもプロツアーが「苦手」というのは驚きです。構築のお話を伺いましたが、リミテッドはどうなんでしょうか?

渡辺「リミテッドは......なんというか、ずっと楽しくて、いくらでもやれてしまって、『隙あらばドラフト』だったので、その下積みが大きいですね。

――隙あらばドラフト、ですか(笑)。

渡辺「はい。実はプロ・シーンに出るまでは構築戦のほうが好きだったんですけど、やり始めたら、リミテッドにはマジックというゲームの面白さが詰まっているな、って。サイドボーディングとかも色々な可能性がありますし、いろいろな発想も必要ですしね。シールドでいえばサイド後の色替えとか。」

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――渡辺さんのプレイヤーとしてのタイプを伺いましたが、今のプロ・シーンに、他に渡辺さんと似たタイプのプレイヤーって居ますか?

渡辺「正直、思いつかないですね。みんなすごく器用だな、と思っています。僕のスタイルだと構築戦のデッキに関してはハマった時だけ勝てるタイプですし、正直コンスタントには勝てないんですよね。」

――それでは逆に、渡辺さんとは全然違うタイプだな、と思うプレイヤーは居ますか?

渡辺「ぱっと浮かぶプレイヤーですと、八十岡(翔太)さんですね。正直僕の目からは天才に見えます。とはいえ、それを得るための下積みがあるのは、結構長く一緒にマジックやっててわかってはいるんですけどね。ほんとにずっとマジックやってましたよ。練習以外でもなんか一晩中タワー・マジックをやってたりとか(笑)。」

――日本だと八十岡さんですか。海外勢だと誰かいますか?

渡辺「プロツアーだと海外勢はチーム練習がメインになってきてて、スタイルの比較は難しいですね。ただ、セス・マンフィールドやオーウェン・ターテンワルドはグランプリでも勝ちまくってるので、本当に凄いなと思いますよ。近代のマジックでこれだけ勝てるっていうのは本当に凄い。

――ありがとうございます。マジックのタイプおよびスタイルのお話をしましたが、渡辺さんご自身は今の自分のスタイルを変えようと思ったりはするんですか?

渡辺「変えようとは思っていないですね。これだけの期間プロ・プレイヤーを続けていて、自分が不器用なプレイヤーであることは理解していますし、このタイプに特化した状態で続けてきていますので、今さら変えることはできないな、と。正直なところ、時間効率は良くないなとは思うんですが、この状況で他の方法に時間を割くのも難しいので。」

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――変わらず今のスタイルを貫いていくということですね。

渡辺雄也の「これから」

――さて今年渡辺さんがプロツアーに初めて参加してから10年経ち、晴れてマジック・プロツアー殿堂に選出されたわけですが、これによって何か変わったことはありますか?

渡辺「直近でいうと、正直ちょっと練習に身が入ってないですね(笑)。殿堂は大きな目標だったので、ちょっと燃え尽き症候群的なところはあります(笑)。」

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――これからの目標としてはいかがですか?

渡辺「そうですね、大きな展望でいうと、続けられる間はプロ・プレイヤーを続けていきたいと思っています。2017年の世界選手権も出場したいですね。このシステムになってから、5年連続全ての世界選手権に参加しているのは僕だけなので、来年もそれを継続できたらな、と。」

――確かに、すでに記録を打ち立てているので、その継続されるのは楽しみです!

渡辺「あとは、プロツアーの優勝と、まだ誰も成し遂げていないグランプリの8勝目ですね。本当は殿堂に入る前にグランプリ8勝目ができたらかっこいいのにな、と思っていたんですが(笑)。」

――まあ、これから打ち立てる記録ということで(笑) 他に例えばデッキ選択とかで、「殿堂だから面白いデッキで」みたいなものはありますか?

渡辺「それはないですね。僕はマジックは努力した結果として勝つ瞬間が一番楽しいと思っているので、デッキ選択の基準は変わらないです。もちろん面白いデッキで勝つのはひとつの楽しみだとは思うんですけど、僕はそういった基準ではデッキは選ばないです。これからも常に全力投球、初志でもある『できるマジックは全力』のスタイルを継続したいと思っています。」

――今のマジックのプロ・シーンを見渡して、これからこうなっていってほしい、というような思いはありますか?

渡辺「TEAM MINTさんからスポンサードされ、今はTeam Cygamesとしてスポンサードされ......国内でマジックのプロ・プレイヤーにスポンサードがつくようになった流れの最初のプレイヤーだと思うんですよ。トークン・カードとか、世界で一番作られたプレイヤーなんじゃないですかね?(笑)」

――確かに、たくさんの渡辺さんトークンがありますよね。何種類くらいあるんですか?

渡辺「実は今日、自分が知ってる限りの種類を持ってきました(笑)。ここにあるので合計25種類ですね。ぜひプレゼントとして使用してください。」

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――凄い数ですね! それだけ長くトッププレイヤーであり、そしてそれが認められスポンサードされている、ということですね。

渡辺「そうですね。だから、今の多くのプロがスポンサード・プロになっていく流れは純粋に嬉しいですね。もっとマジックのプロが憧れられる存在になってほしいし、僕自信も憧れであり続け、模範となるようなプレイヤーになりたいですね。」

――憧れ、ですか。ありがとうございます。それでは、渡辺さんに憧れるプレイヤーの方々に向けてメッセージをお願いいたします。

渡辺「アニメを見よう!ってのはダメですかね?(笑)」

――......本当にそれで良いんですか?

渡辺「それじゃあ、ちょっと真面目に。マジックは、やればやっただけ返ってくるゲームです。僕は結果として殿堂になることができましたが、このゲームは努力すれば必ず報われるゲームですので、皆さんもぜひ努力してみてください。」

――ありがとうございます。これからも渡辺さんのご活躍を楽しみにしています。

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渡辺雄也が選ぶ、思い出のイベントトップ3

1位 マジック・プレイヤー選手権2012
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渡辺「世界の頂点を取ったイベントであり、一番の思い出です。」

2位 グランプリ・京都2007
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渡辺「優勝し自分のプロとしてのキャリアのスタートとなったイベントです。これがなければ、今の僕はありません。」

3位 日本選手権2008

渡辺「準決勝で大礒さんに負けはしましたが、結果としてモチベーションが上がりました。後から思い返せば、自分の中ではターニングポイントでした。」

渡辺雄也 戦績

プロツアー
  • プロツアー『タルキール覇王譚』 トップ8
  • プロツアー『ラヴニカへの回帰』 準優勝
  • プロツアー・オースティン2009 トップ8
  • 世界選手権2008 団体戦トップ4
グランプリ
  • グランプリ・ミネアポリス2016 トップ8
  • グランプリ・北京2015 チーム戦準優勝
  • グランプリ・クリーブランド2015 トップ8
  • グランプリ・ワシントンDC2014 準優勝
  • グランプリ・北京2014 優勝
  • グランプリ・バンコク2013 トップ4
  • グランプリ・台北2012 トップ8
  • グランプリ・フィラデルフィア2012 トップ8
  • グランプリ・マニラ2012 優勝
  • グランプリ・クアラルンプール2012 優勝
  • グランプリ・神戸2012 トップ8
  • グランプリ・ピッツバーグ2011 優勝
  • グランプリ・上海2011 優勝
  • グランプリ・カンザスシティ2011 準優勝
  • グランプリ・シドニー2010 トップ8
  • グランプリ・マニラ2010 トップ4
  • グランプリ・仙台2010 トップ8
  • グランプリ・北九州2009 トップ8
  • グランプリ・メルボルン2009 優勝
  • グランプリ・プラハ2009 準優勝
  • グランプリ・新潟2009 トップ8
  • グランプリ・バンコク2009 トップ8
  • グランプリ・神戸2009 準優勝
  • グランプリ・京都2007 優勝
その他
  • ワールド・マジック・カップ2015 団体戦トップ8
  • 世界選手権2014 トップ4
  • マジック・プレイヤー選手権2012 優勝
  • 日本選手権2009 準優勝
  • 日本選手権2008 トップ4
  • The Finals2007 トップ8
  • The Finals2006 準優勝
  • 2012年 プレイヤー・オブ・ザ・イヤー
  • 2009年 プレイヤー・オブ・ザ・イヤー
  • 2007年 ルーキー・オブ・ザ・イヤー

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