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企画記事
仲田涼の「はじめてのプロツアー」(後編)
仲田涼の「はじめてのプロツアー」(後編)
by 仲田 涼(グランプリ・静岡2014チャンピオン)
こんにちはー。
仲田涼と申します。グランプリ・静岡2014で優勝し、先週末のプロツアー『ニクスへの旅』に初参戦してきました。と、いうことで「はじめてのプロツアー」(後編)、早速始めていきたいと思います。前編を読んでいない方はこちらも是非読んでみてください。
会場は日本から飛行機で12時間の地、アトランタ。アトランタはなんでもコカ・コーラの博物館があるそうでちょっと興味がそそられます(コーラ好き)。
宿は杉山(雄哉)さん(GP名古屋ベスト8)、松原さん、瀧村さんカップル、ニコニコ動画の生放送で有名な瀬畑太郎こと市川(ユウキ)さんとで同じで部屋を3つ取りました。ちなみに部屋は僕と市川さん、杉山さんと松原さん、カップル。
デッキ選択
まず『テーロス』ブロックでは、このカードが強いというキーのカードが練習会から存在していました。《予知するスフィンクス》、《森の女人像》、《クルフィックスの狩猟者》、《太陽の勇者、エルズペス》、《悪夢の織り手、アショク》、《嵐の息吹のドラゴン》です。プロツアー『ニクスへの旅』トップ5カードにも入っていましたね。
また、この環境は手札が増やせるカードが少なく色事故を起こしやすいです。例えば海外の強豪チーム、チャネル・ファイヤーボールが持ち込んだデッキは青黒緑。確かにカードパワーは高いですが{B}{B}、{U}{U}、{G}{G}を要求したりと、かなり色事故しやすい。その中で特に白赤緑のナヤは感触がかなり良かったです。
そんな中、私が選択したデッキは...そう、英雄的です。
えぇえぇ言いたいことはわかります。使いたいカード全然かぶってねーじゃん、と。...そうです。カードが足りなかったのです。あとナヤは強かったのですが環境に多そうで、同型対決はマナクリ(《森の女人像》《旅するサテュロス》など)を2ターン目にしっかり置けるかどうかや、先手ゲーな気がして嫌だったのです。蓋を開けてみたらメタは違っていましたが...。
そもそも出発のゴタゴタでカードを揃えられず来てしまったため、組めるデッキが黒単か英雄的で、黒単は宿の皆に「絶対やめとけ」と言われて、では英雄的か、となり朝4:00まで現地にあるパーツでデッキを作りました。
8 《平地》 4 《島》 4 《啓蒙の神殿》 3 《マナの合流点》 2 《神秘の神殿》 1 《豊潤の神殿》 -土地(22)- 1 《恩寵の重装歩兵》 4 《戦識の重装歩兵》 4 《イロアスの英雄》 4 《万戦の幻霊》 4 《威名の英雄》 2 《海の神、タッサ》 -クリーチャー(19)- |
1 《アジャ二の存在》 4 《液態化》 4 《神々の思し召し》 3 《白鳥の歌》 4 《タッサの試練》 2 《層雲歩み》 1 《英雄の導師、アジャニ》 -呪文(19)- |
2 《希望の幻霊》 3 《航海の終わり》 2 《復仇》 1 《異端の輝き》 1 《阻まれた希望》 3 《オレスコスの王、ブリマーズ》 1 《英雄の導師、アジャニ》 2 忘れた -サイドボード(15)- |
かなり異質な構成でしょう。わかっています。弱そうでしょう。わかっています。コンセプトは《威名の英雄》を守ってアンブロッカブルをつけて勝ち。です。《海の神、タッサ》は顕現を限りなくしませんが、占術は手札破壊・クリーチャー破壊されたあとの息切れ防止、アンブロッカブル能力は追加の《液態化》としてダメージを通す働きとかなりデッキに合っています。《英雄の導師、アジャニ》も息切れ防止とサイズアップです。
もともとこのデッキの《ヘリオッドの試練》と2枚目以降の《恩寵の重装歩兵》が弱く感じていたのでそこを変え、1マナのカードが減ったので占術土地を増やしてドローの質を高めてみました。《ヘリオッドの試練》がゼロの関係で赤単に弱い構成になっていますが、赤単は選択してくる人が少ない、または勝てば上位にはいないだろうと予想し、半分切っていました。
本選
とはいえまずはドラフトです。ドラフトでは『ニクスへの旅』1―『神々の軍勢』1―『テーロス』1になり、『テーロス』が1パックになったことにより強い授与が減り環境が遅くなったように思えます。初手の《難局》か《黄金の呪いのマカール王》か悩んだ場所以外は素直なピックができ、作ったデッキは赤白。初手関係ありませんでしたね。ちょっと3マナ域以降の生物とコンバットトリックが不足していますが...。
17 土地 -土地(17)- 2 《ニクス生まれのお調子者》 1 《ニクス生まれの盾の仲間》 2 《アクロスの重装歩兵》 2 《オレスコスの速爪》 2 《旅する哲人》 1 《死呻きの略奪者》 1 《盲いた喧嘩屋》 1 《ミノタウルスの頭蓋断ち》 1 《目ざといアルセイド》 1 《刃牙の猪》 1 《アクロスの徴兵人》 1 《空槍の騎兵》 -クリーチャー(16)- |
2 《群衆の決起》 1 《アジャニの存在》 2 《槌の一撃》 1 《ヘリオッドの選抜》 1 《恐るべき気質》 -呪文(7)- |
1戦目は赤青相手に2-1で勝ち。プロツアー初勝利!!わーいわーい。と浮かれていたのも束の間。2戦目は青緑相手にあと1点が削れず1-2で負け。3戦目は白黒相手に0-2で負け。であっさり1-2となってしましました。
さてドラフトのあとは構築です。3-2以上しないと2日目には残れません。しかしなんと初戦は、マジック界スーパープロプレイヤーのカイ・ブッディと対戦することに!! こういうこともプロツアーならではです。テンションが上がります。デッキは青緑黒でした。除去だらけで辛いです。序盤もたもたしてもらえると取れそうですが。
初戦1本目は《恩寵の重装歩兵》から《タッサの試練》を付け《神々の思し召し》、《白鳥の歌》と使って守りきり取りました。2本目、相手に《胆汁病》、《夢の饗宴》、《悲哀まみれ》、《英雄の破滅》、《信徒の沈黙》と何枚除去入ってんの?ってくらい打たれ、《海の神、タッサ》で占術しても土地ばかりで負け。3本目も相手の除去連打になすすべなく負けてしましました。カイ・ブッディとの対戦はいい思い出にはなりましたが、やはり勝ちたかったですね。
2戦目は黒緑星座で事故とサイド後に相手の1枚の《思考囲い》が刺さって負け(後で相手が教えてくれました)。勝てない。やはりプロツアー。周りが皆強い。というかミスをしない。
3戦目は青単で、ダメージレースを制して勝ちました。しかし1-2で迎えた4戦目では切っていた赤単...。
4戦目1本目は《予言の炎語り》に《モーギスの軍用犬》授与で負け。あぁもう負けは許されません。2本目も1本目同様相手は1、2ターン目に連続で《サテュロスの重装歩兵》を出されてから《モーギスの軍用犬》授与とかなり厳しい展開に。僕の生物は《灼熱の血》、《マグマの噴流》、《稲妻の一撃》で戦場に残せません。《希望の幻霊》を素で出す始末。しかしこの《希望の幻霊》を《神々の思し召し》2枚で相手の除去を2枚かわしたところから流れがこちらに。ライフはもう2ですが《威名の英雄》にペタペタエンチャント。相手に生物がいて殴れませんが相手も殴れず、ほぼ除去されないサイズにして手札のエンチャントできなかったカードをどんどんペタペタ。相手のトップの《稲妻の一撃》を《白鳥の歌》で打ち消し最後は《威名の英雄》に《液態化》を付けて10/10二段攻撃で2本目をもぎ取りました。...が3本目は相手のブンブンになすすべなく負け。
5戦目も赤単でしたがこちらは勝つことができて最終成績は3-5になりました。
プロツアーでは2日目に残るためには4-4以上でなければなりません。これで私のプロツアー本選は終わってしまいました。
戦いのあとは
さぁご飯です!!なにも本選だけがプロツアーではないっ。ご飯もプロツアーを楽しむためのひとつ。
会場の下にピザ屋がありそこで夕食を。同席していた人たちは市川さんが5-3。それ以外初日落ち(なんと津村さんも!!)で、かなり市川さんに皆あたりが強かったことを覚えています。まぁしょうがないですよね。
食べたあとはお酒です。津村さんに連れられホテルのバーへ。
そこには海外のマジックプレイヤー達が。皆気さくに話しかけてくれます。そういえば会場でも海外のマジックプレイヤー達は非常にフレンドリーでした。皆で酒を飲みマジックの話をする。これもプロツアーの楽しみ方のひとつ。
2日目
さぁ本選は終わってしまいましたが初日落ちした僕らにはドラフトが待っています!! 実は(上限がありますが)プロツアーではフリードラフトをさせてくれます。ということで、皆でドラフトをしようということに。
途中少しメンツを変えながらチームドラフトを。これもプロツアーの楽しみ方の1つなのかもしれません。3回ほどしたところで会場が閉まる時間に。マジックしていると時が経つのが早い。本当に面白いからですね。藤村さん(GP静岡TOP8)とも話しましたがこんな楽しいゲームをなぜ皆やらないのか。
そしてなんと市川さんがTOP8という情報が!! 「昨日5-3だったじゃん」って思っていたらそのあと2日目全勝したとのこと。TOP25には入るって意気込んでいたらまさかのTOP8で、本人もかなり困惑していたようです。何はともあれめでたい!!多分僕の運気は同室だった市川さんに全て、全てを吸われていたのでしょう。
戦いのあとは
やはり飯です。市川さん、杉山さん、松原さん、中島さん、岡本さん、僕でピザをほおばりながら明日のサイドボーディングの話し。そのあとは市川さんだけ寝かせて違う部屋で明日のために皆でサイドボーディング検討。徹夜で続きました。
3日目
さぁ市川さんの観戦です。ほとんど寝てない中、朝10:00に会場へ。プロツアーのTOP8の試合はとても大きなスクリーンで見ることができるので見やすいし迫力がありますね。
市川さんの最初の相手はリード・デュークでした。デッキは市川さんがナヤ。リード・デュークが青黒緑です。このマッチアップは相手に早い段階で《予知するスフィンクス》が出なければナヤのプレインズウォーカー達が相手を押しつぶす、充分勝てるマッチアップということを徹夜で回していてわかっていました。
実際1本目は市川さんの《英雄の導師、アジャニ》、《太陽の勇者、エルズペス》が相手を圧倒。その勢いのまま2本目も勝ちTOP4へ!!
ところでプロツアーTOP8の対戦では、とっても広い空間をたった2人のためだけに使っています。独特の緊張感、その空間でプレイできることはさぞ、気持ちいいことなのでしょうね。見ていて1度は経験してみたい。そう思いました。
結局市川さんは準決勝では、緑黒白星座を操るナム・サンオクに僕らが想定していなかったサイドボーディングをされて負けてしまいました。しかしプロツアーTOP4です。おめでとうございます!!
戦いのあとは
さぁご飯です!!なのですが、ちょっとご飯には早かったのでチームドラフト。
3日間会場にいましたが、プロツアーでは周りがマジック好きしかいないので、すぐドラフトになります。市川さんにいたってはTOP8の戦いのあとのドラフトです。みんなマジック好きだなー。また海外のマジックプレイヤーもドラフトが好きな人が多いらしいですよ。そして夕ご飯はホテルの前の肉焼く店が美味しいよ、とナベさん、津村さんに美味しいメニューまで教わりGo!!
美味しい!!市川さんがおごってくれました。ゴチです!! 市川さん、プロツアーTOP4本当におめでとうございます!!
最後に
初めてのプロツアーでは3-5で初日落ちとかなり不甲斐ない結果となってしまいました。ドラフト1-2 、構築2-3と、どちらか勝ち越さないと2日目に行けないプロツアーで、この成績はやはり私の実力がまだまだということを表しているように思えます。
「悔いはないよ。俺の今の力がここまでだったから。」
これは3日目の夜、宿で市川さんから出た言葉です。準決勝、思い返してみると1本目取れていたかもしれなかったらしいのです。でも今の自分の実力では取れなかった。しかしその今の自分の実力をしっかり見つめ、やりきったからこそ出る言葉。僕も自分を見つめ直してさらなるステップアップをしていきたいと思いました。
また初めてのプロツアーは成績こそ奮いませんでしたが実に楽しく過ごすことができました。本選で2日目に残れませんでしたが、世界のマジックプレイヤーと戦えたことは本当に楽しかったです。
今後
ご飯前のチームドラフトでなべさんに言われました。「仲田君プロツアーどうだった?」「楽しいでしょ」と。「また来なよ」と。そんなん行くに決まってるじゃないですか!!今回はひょんなことからプロツアーに参加できて、最初はあまり興味がありませんでしたが、必ずまた権利を取って行きたい!!強く思いました。
最後の最後
今回は初めてプロツアーに行く者からの視点で書かせていただきました。みなさんにプロツアーとはどのようなものなのかを少しは伝えることができたでしょうか。
「プロツアーはお祭りだよ」
井川さんに言われた言葉です。本当にお祭りのようでした。正直PTQ(プロツアー予選)遠征する方々が何故そんなにもプロツアーに行きたがるのか理解できませんでした。でも今ではわかります。
レベルの高いマジック。海外プレイヤーとの対戦、交流。そしてなによりそれらを通じてマジックの素晴らしさを実感できます。プロツアーの権利を得ることは確かに簡単ではありません。PTQ優勝。または、グランプリ・TOP8またはTOP4に残らねばなりません。
しかし日々仲間とマジックを研鑽しあい、自分を見つめ直し、ステップアップしていけば必ず上へ、世界への扉は開けます。プロツアーに1度は参加しておいて絶対に損はないですよっ。
お互い頑張っていきましょう!!
ではでは。
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