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佐藤レイの「一歩踏み込む!」リミテッドの極意
第12回:もっと勝てる!『団結のドミナリア』ドラフト
皆さんお久しぶりです、佐藤レイです。外もすっかり寒くなって、夏の終わりを感じますね。
毎年マジックはこの10月から12月にかけて一番の盛り上がりを見せます。新しいセットや製品の情報が次々と発表されて、今年もこの季節がやってきたのだなと感じさせられます。
サンクスギビングデー、クリスマスなどのアメリカのホリデーシーズンに向け、気温と裏腹にマジックのアツさはどんどん高まっていきます。皆さん楽しんでいきましょう。
それでは今回も、発売から約1ヶ月が経過した『団結のドミナリア』のドラフトについて考察していきたいと思います!
『団結のドミナリア』ドラフトの特徴
『団結のドミナリア』ドラフトがどういった環境なのかを一言で示すと、「味付け自在なアーキタイプ環境」です。
違う色を要求するキッカー付きのカード、強力なマルチカラーの伝説のクリーチャーたち、それを支える多色土地、それらが複雑に絡み合って、一見するとドミナリアは本当に自由で、それでいて難解な環境に思えます。
しかしまず始めに伝えたいのが、核となる戦略……すなわち「アーキタイプ」は実は意外に少ない、ということです。
『団結のドミナリア』にはデッキによって強さが異なるカードがたくさん収録されています。
例えば「版図」というシステムが一番わかりやすいでしょう。《ヤヴィマヤの滞留者》は2色デッキでは使い物になりません。それ以外にもソーサリーやインスタントの入っていないデッキでの《トレイリアの恐怖》も使用に耐えないですし、《英雄的突撃》もクリーチャーを横並べすることができなければ強力ではありません。
つまり『ドミナリアの団結』ドラフトは特定のカードをタッチしたり、味付けの仕方は自在なのですが、それと同時にアーキタイプ環境でもあるのです。
そのような状況下では上家のプレイヤーと色が重なってしまうことよりも、アーキタイプが被ってしまうことをなんとしても避けてください。『団結のドミナリア』ドラフトで勝つためには、空いているアーキタイプをいいポジションでピックすることが必須になります。
序盤の数手を広く、色を固定させずにピックしていき、卓状況を読んで上家のプレイヤーがやっていないアーキタイプを見定め、そこに入り込むことが重要です。
そのためにはどのようなアーキタイプがあり、どのような状況下でそれを選択するのか、そして選択した上でどのように完成させていくのかを知る必要があります。
今回は「青赤」、「白アグロ」、「版図」という3つの主要アーキタイプを紹介します。『団結のドミナリア』のドラフトで、核となる戦略は基本的にはこの3つです。
《翼套の司祭》が取れたときのみできる「壁(防衛)」や、「赤黒アグロ」や「青黒コントロール」なども構築することもできますが、レアケース寄りと言っていいでしょう。
これらのメインとなる戦略をいつ始め、どのようにピックしていくのかを理解することで、より強力なデッキを構築できるようになりましょう!
主要アーキタイプその1:青赤
7 《山》 6 《島》 1 《溶鉄の支流》 2 《理想的な浜方》 -土地(16)- 2 《戦闘魔道士の隊長、バルモア》 1 《戦羽の神秘家》 1 《ギトゥの増幅士》 1 《ゴブリンのがらくた拾い》 1 《消えない想像体》 3 《流動石のカヴー》 1 《ケルドの炎賢者》 1 《連合の戦暴者》 3 《トレイリアの恐怖》 -クリーチャー(14)- |
1 《流動石の注入》 2 《本質の散乱》 1 《猛然たる怒声》 1 《勢いを挫く》 1 《衝動》 1 《連携探索》 1 《胸躍る可能性》 2 《トレイリアの噴出》 -呪文(10)- |
「青赤」は、インスタントやソーサリーを多く使用することで恩恵を受けるカードをプレイしていくアーキタイプです。《トレイリアの恐怖》、《静電式歩兵》、《戦闘魔道士の隊長、バルモア》などが代表的なカードです。
他のアーキタイプがさまざまな色のバリエーションがあるなか、あえてこのアーキタイプだけは「青赤」の2色に限定しました。「青系スペル」などとしても良かったのですが、青白、青黒と比べてドラフトする頻度・完成度が高く、青系の中でも青赤を積極的に狙ってほしいからです。
ドラフトのデッキの強さは相対的なものなので、基本的には8人の中で空いているアーキタイプを上手くピックできたプレイヤーが最も強力なデッキを組むことができますが、そのうえで青赤は最強アーキタイプの筆頭になります。
コモン・カードだけでもある程度強力なデッキを構築でき再現性が高いことと、2色で構築できるので多色土地の出の良し悪しなどのブレが少ないのが強みになります。
いつ始めるか?
基本的には恩恵を受けるクリーチャーから取っていくか、それらが流れてきたときに始めるべきアーキタイプです。
《戦闘魔道士の隊長、バルモア》《静電式歩兵》《傲慢なジン》などのキーとなる強力なクリーチャーは初手でもいとわずにピックしていきましょう。
それらのクリーチャーや《トレイリアの恐怖》さえしっかりと確保できれば、あとのスペル枠は割りとどうにでもなるのが青赤の強みです。
あとは青自体の流れがいいかどうかに注視していきましょう。上家と赤が被ってしまうことは大した問題ではないのですが、青が被ってしまうのは問題です。4~7手目に《トレイリアの噴出》《本質の散乱》《タラスの見張り》などが流れてきたならかなりやれそうですね。
どう組むか?
基本的に2色で構築し、デッキの構成上スペル(インスタントとソーサリー)の枠を多く取りたいのと、いわゆるキャントリップ……ドロー付きのカードがデッキにほぼ入ることから土地は少なめ16枚を推奨します。
スペルは少なくとも9枚、できれば10枚入れたいところです。《稲妻の一撃》や《トレイリアの噴出》などの強力なカードだけでは規定枚数にたどり着くのは難しいので、《機を見た干渉》《衝動》《胸躍る可能性》などのキャントリップ付きのスペルで枚数を担保しましょう。
強力な除去があまり取れなかったときは、《勢いを挫く》や《ヤヤの火災旋風》などで代用するのが良いでしょう。
どう味付けするか?
デッキの安定性、強みを活かすために「青赤」はデッキを2色でまとめ、3色以上が必須な構成にしたくありません。
ただこれがこの環境の難しいところなのですが、3色目が必須な構成でなくとも、必要な構成にすることで恩恵を受けることができます。
わかりやすいのが《トレイリアの噴出》や《ハールーンの戦賛歌》のための白マナでしょう。白マナが出ない状態でも十分強力なカードとしてプレイできますが、白マナが出るならなおいいです。
なので、青や赤絡みの多色土地や《水晶の岩屋》を取ることは決して無駄になりません。むしろさまざまなカードから最大のバリューを得るためにいいタイミングで取っておきたいところです。
青赤の3色目の必要な優先順位で言うと、白>緑≧黒になります。
白は先ほど挙げた《トレイリアの噴出》《ハールーンの戦賛歌》以外にも《ケルドの急襲隊》もいい働きをします。
構成上ダメージレースになることが多い「青赤」にとって速攻付与、地上ブロッカーにもダメージリソースにもなるトークン、どちらも嚙み合っています。特に《戦闘魔道士の隊長、バルモア》が取れた場合強く意識するといいでしょう。
白マナの枚数によっては《空騎士、トゥーラ・ケネルッド》や《ウェザーライトの重鎮、ラフ》を足す選択も取れますが、基本入れなくて強いデッキなら入れないほうがいいでしょう。上手く組めなかったときの逃げ道の1つとなるので白はより優先度が高くなるといったところでしょうか。
緑は《芽吹くゴブリン》が一番足したいカードで、あとは《連携探索》《ピクシーの幻術師》などあまり重要ではないカードになります。
黒は《ローナの渦》と《ファイレクシア流諜報術》がより強く使えることがメリットですが、《ローナの渦》はもともと強力、《ファイレクシア流諜報術》はそこまで入れたいカードではないということで若干緑のほうの優先度を高めています。
どのケースにおいても、《平地》《森》《沼》などの基本土地カードは一切入れず、青赤がしっかり出せるうえで無理なく足すことがおすすめです。
主要アーキタイプその2:白アグロ
7 《山》 7 《平地》 1 《聖なる峰》 1 《日向の湿地》 1 《水晶の岩屋》 -土地(17)- 1 《アルガイヴの徴募人、ベイルド》 1 《ベナリアの潜伏工作員》 1 《新ベナリアの守護者》 1 《曙光の騎士》 2 《ケルドの急襲隊》 1 《アルガイヴの騎兵》 1 《カリスマ溢れる先兵》 1 《肉裂きの空乗り》 1 《流動石のカヴー》 1 《怪しげな統治者、スクイー》 1 《連合の戦暴者》 1 《チビ・ドラゴン》 1 《憤怒の乗り手、アヴナントのトーリ》 1 《アルガイヴの密集軍》 -クリーチャー(15)- |
2 《盾、構え》 1 《稲妻の一撃》 1 《ハールーンの戦賛歌》 1 《夜と昼の恋歌》 1 《戦元の熱狂》 1 《隊長の号令》 1 《英雄的突撃》 -呪文(8)- |
8 《平地》 6 《沼》 1 《光輝の木立ち》 1 《地熱の沼》 1 《水晶の岩屋》 -土地(17)- 1 《残忍な巡礼者、コー追われのエラス》 1 《暮影の騎士》 1 《ファイレクシアの宣教師》 1 《毅然たる援軍》 2 《アルガイヴの騎兵》 1 《選定された平和の番人》 1 《ベナリアの堕落者、アロン》 1 《カリスマ溢れる先兵》 1 《ファイレクシアの憤怒鬼》 2 《ファイレクシアの軍馬》 1 《怒りの大天使》 1 《庇護のグリフィン》 1 《センギアの鑑定者》 1 《アルガイヴの密集軍》 -クリーチャー(16)- |
1 《骨の粉砕》 1 《アーボーグの奪還》 1 《盾、構え》 1 《アーボーグへの貢納》 1 《市民の拘束》 1 《隊長の号令》 1 《束縛の祈り手》 -呪文(7)- |
「白アグロ」は、白の優秀なクリーチャーを中心としたアグロデッキ。基本的に白黒か白赤になることが多く、どちらもクリーチャーやトークンを横並べする戦略を取ることが多いです。
序盤からクリーチャーを展開しつつ、《隊長の号令》と《英雄的突撃》のコンボで相手のライフが10点以上あるところからでも削り切るようなデッキをイメージしてもらえればと思います。
いつ始めるか?
素直に流れてきた白・黒・赤の優秀なカードからスタートするのが一般的です。
特に赤は「青赤」、黒は「版図」などの別ルートがありますが、白は基本的にピックしたら「白アグロ」以外になることはほとんどありません。(《翼套の司祭》が取れた場合のみ「壁(防衛)」も検討)
《怒りの大天使》《新ベナリアの守護者》などの超一級のカードからスタートできれば最高ですが、それ以外でも《曙光の騎士》《束縛の祈り手》《ファイレクシアの宣教師》などの強力な白いカードが流れてきたら強く意識していいでしょう。
どう組むか?
まずは白をメインカラーにした時点で最終的に概ね白黒か白赤になることを意識することが大切になります。そのうえでアグロデッキらしくあまりもっさりとさせない、具体的にはピック段階で4マナ域が多くなりすぎないように気を付けましょう。
《隊長の号令》《英雄的突撃》《庇護のグリフィン》《連合の戦暴者》など、自然に組んでも膨らみがちになってしまう部分なので、3マナ以下のカードの評価を高めて、4マナ以上は意識的に少し点数を下げるのがおすすめです。
どう味付けするか?
白黒と白赤だと、若干白黒のほうがミッドレンジ戦略も取れる分受けが広いです。
白黒と白赤の両方足した白黒赤になることも、もちろんあるのですが、白黒だと緑を足すというのも有力になります。
《ガリ骨のボータック》《国王ダリアン四十八世》《太古の番人、ネマタ》《エフラヴァの末裔、ザー・オジャネン》などの強力な伝説のクリーチャーを使用しやすいのがいいですね。
強力な《アーボーグの奪還》を使いこなせるのも良いです。
場合によっては《森》を入れたり、そこまで2色アグロだということにこだわる必要もないでしょう。
白赤メインで構築した場合は黒を足すことが多いです。
《ベナリアの潜伏工作員》《ファイレクシアの宣教師》《戦元の熱狂》などのキッカーせずとも十分なカードからのバリュー最大化が目的で、こちらはあくまで「青赤」のようにメインカラーを邪魔しない程度で足すようなアプローチが好みです。
同じ「白アグロ」でも、アグロ志向が白黒と白赤で若干異なる点も意識しましょう。
主要アーキタイプその3:版図
5 《森》 5 《沼》 1 《山》 1 《樹木茂る尾根》 1 《汚染された帯水層》 1 《憑依されたぬかるみ》 1 《溶鉄の支流》 1 《聖なる峰》 1 《スランの門》 -土地(17)- 2 《戦闘バエの群れ》 1 《暮影の騎士》 1 《ニショーバの喧嘩屋》 1 《跳ね散らすゴブリン》 1 《芽吹くゴブリン》 1 《鴉の男》 1 《沼アナグマ》 1 《死花の庭師》 1 《エイヴィーゾアの空士、ナエル》 1 《連合の大将軍、ラーダ》 1 《戦線破りのベイロス》 1 《属地のマロー》 1 《ガリ骨のボータック》 -クリーチャー(14)- |
1 《切り崩し》 2 《稲妻の一撃》 1 《羅利骨灰》 1 《アーボーグへの貢納》 1 《荒野の偵察》 1 《影の予言》 1 《底への引き込み》 1 《群れの渡り》 -呪文(9)- |
「版図」はコントロールしている基本土地タイプの数によって強さが異なるカードを上手く使用していくアーキタイプです。
多くの多色土地、多色カードをピックしていくアーキタイプの構成上、カードの出方、過去にピックしたカードによってカードの優先順位を臨機応変に変えながらデッキをまとめていく上級者向きの戦略となります。
一番難解なアーキタイプなので、苦手な人は若干避けてもいいかもしれません……とはいえ、《底への引き込み》や《群れの渡り》などの超強力な「版図」のカードを引いてしまった場合や、明らかに緑の流れがいいときに「版図」ができないのは非常にもったいない。
なので、ここでしっかりと理解を深めていきましょう。
いつ始めるか?
一番意識するべきなのは「緑の流れが良いかどうか」、です。
「版図」という能力語はどの色にもありますが、基本的に緑がメインカラーにならないことはありません。流れてきた《ラノワールの壌土語り》《ラノワールの緑後家蜘蛛》《ウェザーシード盟約》《属地のマロー》などはシグナルになりますし、もっと遅い4~7手目あたりの《日光浴するルートワラ》《噛み締め》《マグニゴスの歩哨》もシグナルです。
それから、色を問わず強力なレアをピックしたときも選択肢のひとつになるということを覚えておくのがいいでしょう。
《晴天のスフィンクス》《巨竜戦争》《時の火炎嵐》《穢れたもの、ソルカナー》など、緑と全く関わりのないダブルシンボルのカードでも「版図」なら使い切ることが可能です。
その色のアーキタイプをやることを意識するとともに、「版図」をやる可能性についても考慮しておきましょう。
どう組むか?
基本的に「版図」とはいえ、全5色の強いカードを取りつつ、かつ多色土地も十分な枚数揃えるというのは要求値が高く、なかなかに難しいです。
5色出せるようにしつつも、メインとなる3色くらい(2色タッチ1色程度)をイメージしつつピックしていきましょう。基本は黒緑ベースになることが多いはず。
また「版図」で使いたいカードのなかでも、カードによってどの程度の基本土地タイプがあれば強く使えるのかも異なります。
- 3種で強いカード:《日光浴するルートワラ》《属地のマロー》《エフラヴァの末裔、ザー・オジャネン》など
- 4種で強いカード:《ヤヴィマヤの滞留者》《ガイアの力》など
- 5種で強いカード:《群れの渡り》《底への引き込み》《エイヴィーゾアの空士、ナエル》など
……といった感じで、グラデーションがあることを理解しておきましょう。
この「版図」デッキではそこまで5種で強いカードはないから4種で抑えても大丈夫そうだな、など理解しておくと土地を取るかスペルを取るかが選びやすくなります。
どう味付けするか?
正直、色選択から味付けの仕方は膨大にあり解説していくのが難しいのですが、何はともあれ自分のデッキ速度や強度を意識して一貫性を持たせることが大切です。
例えば同じ「版図」でも《ガイアの力》と《影の予言》のどちらが強いのかは他のデッキの内容によります。
《ニショーバの喧嘩屋》や《メリアの先導》などでライフを詰めていく構成なら《ガイアの力》のほうがいいですし、《底への引き込み》や《群れの渡り》など強力なレアがありコントロール要素のあるようなデッキなら《影の予言》のほうが強く使えるでしょう。
簡単ではありませんが、ただ土地を集めて、それで強くなるカードを入れるだけでなく、きちんと方向性を持ったデッキを組むことが大切です。
また時には「版図」を諦める、という選択肢を持つことも必要かもしれません。
強力なアーキタイプとは言い難いですが、緑=「版図」ではなく、2色タッチ1色くらいの単純なアグロも別に構築することができます。それまでの流れやピックがあまり芳しくないのなら、もう土地を取ったりピックを広げたりせずに、いっそ緑白アグロ、緑赤アグロのようなデッキを組んだほうがマシのケースだってあるはずです。
とにかく臨機応変に対応していきましょう。経験がモノをいうのでたくさんいろいろなトライをしていきましょう!
終わりに
今回は『団結のドミナリア』を代表する3つのアーキタイプについて解説させていただきました! 皆さんの参考になるところがあれば嬉しいです!
もしよければ、Twitter(@r_0310)などでご意見やご感想をお聞かせください!
それでは、また次回の記事でお会いしましょう!
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