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佐藤レイの「一歩踏み込む!」リミテッドの極意
第11回(特別編):もっと楽しむ!『ダブルマスターズ2022』ドラフト
皆さん、リミテッド楽しんでますか?
今回は特別編ということで、7月8日に発売されたマスターズ・シリーズの最新作『ダブルマスターズ2022』のドラフト・ブースターを使ったブースター・ドラフトについてお話しさせていただきたいと思います。
特殊セットでのドラフトは通常セットとは異なる魅力にあふれていますので、興味のある方はぜひこの記事を読んでいただけると嬉しいです!
1.『ダブルマスターズ2022』ドラフトの魅力
『ダブルマスターズ2022』は2020年の夏に発売された『ダブルマスターズ』の第2弾にあたるセットで、今までのマスターズ・シリーズと同様に過去に数々の活躍をしてきた人気カードを中心に(基本的には)再録カードのみが収録されています。
以下、本セットの魅力について特徴的なものを解説していきます。
初手がダブル
マジックのドラフト・ブースターパックは通常コモン枠11枚、アンコモン枠3枚、レア・神話レア枠1枚からなる15枚で構成されていますが、なんと『ダブルマスターズ2022』では前回の『ダブルマスターズ』と同様にレア・神話レア枠が2枚の16枚から構成されています。
それだけではなく、ドラフトの際には特殊ルールとして「各パックの最初のピックは2枚取り」が設定されています。レアがダブルなら、ピックもダブルということですね、どちらのレアも欲しいといったときも安心です。今回の記事でもそのルールに則って解説していきます。
色を合わせて強力なカードを取ることもできるので、よりデッキを戦略的に構築することができます。そのため色ごとのコンセプトをしっかりと理解しておきましょう。
絶対に入っている多色土地《謎めいた尖塔群》
もうひとつパックの構成で特徴的なことがあります。それは絶対にどのドラフト・ブースターパックにも16枚目に同じ土地カードが入っているということです。
それが、本セット唯一の新規カード《謎めいた尖塔群》。
2色土地なのですが、なんとデッキ構築時に自分で好きな2色を選択することができます。まさに圧倒的万能2色土地です。このカードの存在によって、この環境では3色以上のデッキを構築することが容易となっています。
どのパックにも、ということは「ドラフト時に合計24枚出現する」ということ。これをどのタイミングで何枚取るのかを考えるのは、今回のドラフトにおいてとても重要になります。
また、絶対あるということは消えたこともわかるので、強力な多色カードが流れて来たのに《謎めいた尖塔群》が消えている場合、上のプレイヤーはその色をやっていない可能性が高い、といった色読みに使うこともできます。残っているかどうかのチェックも忘れずに!
過去の強力なカードをお手頃に
マスターズ・セットの醍醐味といえば、やはり過去の人気カードを存分にプレイできることです。それは強力なレアカードだけにはとどまりません。
例えば今回コモンに収録されている《道の探求者》や《吸血鬼の君主》は、過去の通常セットではトップアンコモンと言われてきたカードです。
強すぎて中には《稲妻》や《熟考漂い》などアンコモンに格上げとなった名誉コモンも存在しますが、基本的にはパワーの高いカードが集まっているオールスターゲームとなっています。パックにレアが2枚入っていることもその傾向をさらに助長していますね。強力なカード同士のぶつかり合いを楽しみましょう!
2.コンセプト紹介
主席デザイナーのマーク・ローズウォーター氏によれば、このセットは全ての3色の組み合わせにコンセプトを持たせているとのことです(参考記事)。まずはそれらを確認していきましょう。
色 | キーとなる能力やテーマ | 代表的なカード |
---|---|---|
白青黒 | ブリンク | 《一瞬の瞬き》 |
青黒赤 | 墓地ミッドレンジ | 《セドラクシスの死霊》 |
黒赤緑 | ジャンド・サクリファイス | 《芽吹くトリナクス》 |
赤緑白 | 英雄的アグロ | 《第10管区の軍団兵》 |
緑白青 | 大型ランプ | 《とぐろ巻きの巫女》 |
白黒緑 | +1/+1カウンター | 《アブザンの鷹匠》 |
青赤白 | 果敢 | 《血水の化身》 |
黒緑青 | ドレッジ | 《蜘蛛の発生》 |
赤白黒 | トークン・サクリファイス | 《饗宴への召集》 |
緑青赤 | ミッドレンジ | 《熊の仲間》 |
この中でも特に代表的な戦略について解説していきます。
サンプルデッキ:ブリンク
5 《平地》 5 《沼》 3 《島》 1 《オルゾフの聖堂》 3 《謎めいた尖塔群》 -土地(17)- 1 《アイノクの盟族》 1 《ミストメドウの魔女》 1 《道の探求者》 1 《前兆の壁》 1 《ちらつき鬼火》 1 《リーヴの空騎士》 1 《弱者の師》 1 《民兵のラッパ手》 1 《修復の天使》 1 《皮裂き》 2 《吸血鬼の君主》 1 《熟考漂い》 1 《探知の接合者》 1 《霊気撃ち》 1 《聖別されたスフィンクス》 1 《心理共生体》 -クリーチャー(17)- |
1 《冷鉄の心臓》 2 《一瞬の瞬き》 1 《今わの際》 1 《眼腐りの終焉》 1 《超現実的決着》 -呪文(6)- |
《一瞬の瞬き》《超現実的決着》《ちらつき鬼火》などの戦場からクリーチャーを追放して再び戦場に出すカードと、《リーヴの空騎士》《霊気撃ち》《探知の接合者》などの戦場に出たときに能力を発揮するカードを組み合わせたデッキです。
基本白青がベースになりますが、黒を足すことで《吸血鬼の君主》や《オルゾフの司教》、《皮裂き》などの強力なクリーチャーを足すこともできます。
サンプルデッキ:ランプ
5 《森》 5 《島》 2 《平地》 1 《沼》 1 《セレズニアの聖域》 3 《謎めいた尖塔群》 -土地(17)- 2 《とぐろ巻きの巫女》 1 《命取りの出家蜘蛛》 1 《献身のドルイド》 1 《川ヤツガシラ》 2 《永遠の証人》 1 《エルフの再生者》 1 《翼のコアトル》 1 《アウグスティン四世大判事》 1 《ムル・ダヤの巫女》 1 《隠された領域のローン》 1 《龍王ドロモカ》 1 《龍王シルムガル》 2 《苛立つアルティサウルス》 -クリーチャー(16)- |
1 《旅行者の護符》 1 《一瞬の瞬き》 1 《不屈の自然》 1 《待ち伏せ》 1 《バントの魔除け》 2 《超現実的決着》 -呪文(7)- |
キーカード:《とぐろ巻きの巫女》《エルフの再生者》《苛立つアルティサウルス》
《不屈の自然》《エルフの再生者》などでマナを伸ばしつつ、重くて強力なカードに繋げていくアーキタイプです。《苛立つアルティサウルス》はコモンながらフィニッシャーになりうる高スペックなクリーチャーです。
まず多色のレアや、《永遠の証人》などの強力な緑のカードからスタートしたいアーキタイプですね。他のアーキタイプに比べて色を足しやすいのもメリットです。このデッキでは白緑青の3色に加え、ボムである《龍王シルムガル》を使うために黒が足されています。
サンプルデッキ:ドレッジ
5 《森》 4 《沼》 3 《島》 1 《ゴルガリの腐敗農場》 3 《謎めいた尖塔群》 -土地(16)- 2 《光胞子のシャーマン》 1 《命取りの出家蜘蛛》 1 《探求者の従者》 1 《エルフの再生者》 1 《裂け木の恐怖》 1 《翼のコアトル》 1 《人質取り》 1 《血の暴君、シディシ》 1 《骸骨射手》 2 《巣網編みの変わり身》 1 《吸血鬼の君主》 1 《心理共生体》 -クリーチャー(14)- |
1 《見栄え損ない》 1 《発掘》 2 《過去との取り組み》 1 《切断された糸》 2 《禁忌の錬金術》 1 《眼腐りの終焉》 2 《蜘蛛の発生》 -呪文(10)- |
かつて『イニストラード』環境では最強のアーキタイプがあり、そのキーカードこそ《蜘蛛の発生》でした。《蜘蛛の発生》は驚くほどにドレッジ(高速で墓地を肥やす戦略)にマッチしていて、ゲームを長引かせることさえできればこのカードだけで勝利することが可能です。
ほかにも墓地を利用するシナジーのあるカードは緑青黒に存在しますが、ドレッジはデッキ全体をコンセプトに合わせてシフトさせることなるため、《蜘蛛の発生》《血の暴君、シディシ》レベルのカードが取れて初めて参入したいアーキタイプです。
サンプルデッキ:果敢
6 《島》 6 《山》 1 《沼》 4 《謎めいた尖塔群》 -土地(17)- 2 《ジェスカイの長老》 1 《団体のギルド魔道士》 1 《若き紅蓮術士》 2 《血水の化身》 1 《巧妙なスカーブ》 1 《セドラクシスの死霊》 1 《ダクの複製》 1 《霧炎の達人》 1 《空召喚士ターランド》 1 《精神壊しのしもべ》 -クリーチャー(12)- |
1 《発掘》 2 《苦悶のねじれ》 2 《溶岩コイル》 1 《イゼットの魔除け》 1 《マナ漏出》 1 《眼腐りの終焉》 1 《裂け目の稲妻》 1 《よろめきショック》 1 《予言の稲妻》 -呪文(11)- |
キーカード:《血水の化身》《ジェスカイの長老》(ただし、これらを安く取れる際にこのアーキタイプに向かいたい。基本は《予言の稲妻》や《溶岩コイル》から取る)
果敢は赤青メインの構成になることがほとんどだと思います。相方は白か黒になるのが基本で、今回のサンプルデッキでは《苦悶のねじれ》などの除去や《セドラクシスの死霊》を足すために黒が採用されています。
果敢持ちのクリーチャーは割と後からでも取れるので(取れないのならばほかのアーキタイプにいくべき)、除去から優先的に取っていきましょう。
サンプルデッキ:サクリファイス
6 《沼》 5 《山》 2 《平地》 4 《謎めいた尖塔群》 -土地(17)- 1 《血の芸術家》 1 《闇住まいの神託者》 1 《火刃の芸術家》 1 《探求者の従者》 2 《流血の鑑定人》 1 《風切るイグアナール》 1 《オルゾフの司教》 1 《不死の援護者、ヤヘンニ》 1 《猛火のヘルハウンド》 1 《生ける稲妻》 1 《骸骨射手》 1 《探知の接合者》 1 《吸血鬼の君主》 1 《大いなるガルガドン》 -クリーチャー(15)- |
1 《超常的耐久力》 1 《終止》 1 《穴開け三昧》 1 《眼腐りの終焉》 1 《裂け目の稲妻》 2 《饗宴への召集》 1 《超現実的決着》 -呪文(8)- |
サクリファイスは赤黒をメインとしたコンセプトで、白と緑のどちらかを加えることで様々なシナジーを持ったデッキとして構築することができます。このデッキは白を加えることで《饗宴への召集》を採用することができ、サクリファイスできるクリーチャーを水増ししています。
3.おすすめ戦略
さて、ここまでコンセプトの紹介をしてきましたが、僕の『ダブルマスターズ2022』環境でのおすすめの戦略はというと、「2色のアグロデッキの構築を目指す」です。
……先ほどまでの話は一体なんだったということになってしまいますが、実際に僕がMagic Onlineでトロフィーを取った(3-0した)デッキはいずれも2色のアグロデッキでした。特に赤白、緑白は2色で構築するメリットが大きいカラーコンビネーションです。
『ダブルマスターズ2022』でのドラフトは、実は『ニューカペナの街角』に似ている側面があります。それは3色環境ながら2色でデッキを構築することもできる、そしてキーとなる2~3マナの多色クリーチャーがコモンに存在している、という点です。
《第10管区の軍団兵》《クァーサルの群れ魔道士》《火刃の芸術家》などの2マナのクリーチャーは、『ニューカペナの街角』における《市民の奉仕者》や《殺人魔》を思わせます。
それら2マナ域のクリーチャーをキーとしているアグロデッキでは、3色にするよりも2色にして安定性を高めたほうがよいでしょう。
この環境のアグロデッキが強力な理由は、マナ・カーブの軽さにあります。
《謎めいた尖塔群》を全員が使用できるこのフォーマットにおいて、3色以上のデッキでは1~2ターン目での実質的なパスが多々発生します。
そこに対してアグロデッキの1マナ域、特に赤の《僧院の速槍》《ゴブリンの旗持ち》、緑の《実験体》が非常に効果的だと感じました。
これらのカードを有効に使うためには、3色だとどうしてもデッキとしての完成度が低くなってしまいます。
サンプルデッキ:白赤英雄的
8 《山》 7 《平地》 1 《謎めいた尖塔群》 -土地(16)- 2 《僧院の速槍》 1 《ゴブリンの旗持ち》 3 《第10管区の軍団兵》 1 《アイノクの盟族》 1 《道の探求者》 1 《アブザンの鷹匠》 1 《死に微笑むもの、アリーシャ》 1 《天馬の乗り手》 1 《救援隊長》 -クリーチャー(12)- |
2 《ハイエナの陰影》 1 《稲妻》 1 《流刑への道》 2 《溶岩コイル》 1 《稲妻のらせん》 1 《軍部の栄光》 1 《裂け目の稲妻》 1 《英雄的援軍》 2 《騎士の勇気》 -呪文(12)- |
鍵を握るのは「クリーチャーの質」です。
《僧院の速槍》《道の探求者》《第10管区の軍団兵》を中心として、それらを《ハイエナの陰影》や《神々の思し召し》でサポートしていきましょう。
数枚程度クリーチャーが少ないと感じても、マナ・カーブを低く保っていれば問題ありません。むしろスペル(クリーチャー以外)の枠を減らして中途半端なクリーチャーを入れるとデッキのパワーが下がってしまうので気を付けましょう。
《溶岩コイル》などの除去を先に取りながら、《僧院の速槍》や遅めに流れてきた《第10管区の軍団兵》をピックして寄せていくイメージです。
サンプルデッキ:緑白アグロ
8 《森》 7 《平地》 2 《謎めいた尖塔群》 -土地(17)- 2 《実験体》 2 《クァーサルの群れ魔道士》 1 《アイノクの盟族》 1 《議事会の導師》 1 《月皇ミケウス》 1 《道の探求者》 1 《アブザンの鷹匠》 1 《英雄の記録者》 1 《ピーマの改革派、リシュカー》 1 《牙守りの隊長》 2 《節くれ背のサイ》 1 《救援隊長》 -クリーチャー(15)- |
1 《神々の思し召し》 1 《硬化した鱗》 1 《怨恨》 1 《旅の準備》 2 《待ち伏せ》 1 《鱗の祝福》 1 《超現実的決着》 -呪文(8)- |
キーカード:《実験体》《クァーサルの群れ魔道士》
1ターン目《実験体》、2ターン目《クァーサルの群れ魔道士》で3/3アタックは環境的にもかなり強力な動きです。さらに+1/+1カウンターのシナジーでサポートしていきましょう。
こちらはクリーチャーの数が必要になってきますが、マナ・カーブはやはり低く保っておきたいです。例えばランプデッキでは強力な《巣網編みの変わり身》や《苛立つアルティサウルス》は、このデッキにおいては全く不要です。
1マナ域のクリーチャーを上手く使うということで白赤と緑白が特におすすめですが、この2つのアーキタイプ以外でも「赤黒サクリファイス」、「赤青果敢」は2色でも十分機能するデッキとなります。赤や白を使う場合は、2色で構築する可能性も十分にあるということを念頭においてピックしていくとよいでしょう。
4.最後に
今回は主に2色のアグロデッキをおすすめ戦略として取り上げました。
タップインランドが横行する3色環境へのカウンターストラテジーで強力な戦術であるとともに、比較的狙ってデッキを構築しやすい、ピック、構築が容易であるというというところがおすすめの要因です。
なんとなく3色環境ということでコンセプト通りに3色でデッキを組みがちだった方は試してみてください。除去から取っていくと、もし狙うことができなさそうになっても方向転換がしやすいのでおすすめです。
ただマスターズ・シリーズのドラフトは特定のカードのスペックが圧倒的に高く、あらかじめアーキタイプを狙うというより、出たカードによって自身の引き出しを開けていくという、ある種キューブ・ドラフトのような技術が必要になってきます。
例えば初手に《龍王シルムガル》や《人質取り》があったら、それらをピックしてドラフト進めていくでしょう。無理にアグロデッキを目指す必要はありません。
コンセプトや戦略は「あくまで使えそうなときに使う」くらいがおすすめです。臨機応変にいろいろなパターンを試してみてください!
それでは、また次の記事でお会いしましょう!
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