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佐藤レイの「一歩踏み込む!」リミテッドの極意
第8回:もっと勝てる!『イニストラード:真紅の契り』ドラフト
皆さんこんにちは! 血を流してディスカードしてドローしていますか? マジック・プロリーグ所属の佐藤レイです。
先日はMTGアリーナにおいてアリーナ・オープンが初めてドラフト・フォーマットで行われました。リミテッド好きにとっては最高の大会でしたね。それだけではなく、今週末はミシックランク上位者だけが参加できる、セットチャンピオンシップに向けた予選ウィークエンドもドラフトにて行われます。
まさに今ドラフトが一番アツいといっても過言ではありません、ということで今回も皆さんが『イニストラード:真紅の契り』でより「もっと勝てる」ようになるために情報を共有できればと思います。
今回の『イニストラード:真紅の契り』ドラフトにおいてなのですが、特に「レアが強い」という意見を耳にしたり、実感を持っている方が多いのではないでしょうか。
実際にその通りで、過去のセットと比べても対処できなければそれだけでゲームが決まってしまうような強力なレアカードがこのセットには多いです。
「この環境はレアが強い」
ただそれは分散の大きさを指すことはあれ、技術介入度が低いことを指すわけではありません。もちろん適切なタイミングで強力なレアを自分で引くことが勝利につながることはあるでしょう。しかし皆条件は一緒です。
レアが強い環境、今回の記事ではそれはどういうことなのか、我々はそうした中でどのようなアプローチをとるべきなのかを解説していきます。皆さんよろしくお願いします!
第1章 使える可能性を増やす
レアが強いのであれば、それらをデッキに採用できる可能性を増やすことが最も勝利に向かう最善手でしょう。初めに伝えたいこととしては、ドラフトにおいて「レアの強い環境こそ立ち位置が重要」ということです。
例えば自分がMTGアリーナでのドラフトで、順調に赤黒の吸血鬼デッキをピックしていたとしましょう。そこで《船砕きの怪物》を引きました。当然ですが使えないので、基本的にはピックしないで流すしかありません。
他のカードに比べて抜けて強力なカードがある環境こそ、それを使える可能性を増やす一番の手段は、他のプレイヤーがやっていない色をプレイすることです。
特に2パック目では色を変更するプレイヤーもいますが、3パック目では相当難しいです。ドラフトの基礎にして奥義である「上家と被らないこと」が、この環境でも、この環境こそ重要になります。
特にMTGアリーナのドラフトはテーブルトップの8人ドラフトと異なり、ピック時に同卓したプレイヤーと絶対に対戦するわけではありません。そのためカット(自分は使えないが他人のプレイヤーに使われるのを防ぐため強力なカードをピックすること)されるリスクがかなり少ないです。
そうした中では逆説的ですが、自分の引いたレアに固執しないことも大切です。『イニストラード:真紅の契り』においては、《招待制》《船砕きの怪物》《戦慄宴の悪魔》《オリヴィアの付き人》など神話レアでない通常レアでさえ、ゲームを決めるパワーを持ったカードが多数収録されています。
当然それらを初手で引いた際はどうしても使いたくなりますが、それでも時には捨てる決断を迫られることもあります。流れてくるカードの色の強弱を見て、上のプレイヤーが何色をやっていそうで、あるいは何色をやっていなさそうかをどんな状況でもしっかり推測していきましょう。
強力なレアを使える可能性を増やすもうひとつの手段があります。
それはそもそもデッキの色を増やすことです。
5 《沼》 4 《山》 5 《森》 1 《島》 2 《進化する未開地》 -土地(17)- 2 《胞子背の狼》 1 《隠遁した剥製師》 1 《通電の幻想家》 1 《花の織り手》 2 《古きもつれ樹》 1 《血瓶の調達者》 1 《ヘンリカ・ダムナティ》 1 《貯蔵スカーブ》 1 《困憊の在監者》 1 《ファルケンラスの祝賀者》 1 《不浄なる密集軍》 -クリーチャー(13)- |
1 《名誉ある家宝》 1 《炎恵みの稲妻》 1 《牙の天稟》 2 《削剥》 1 《頭狙い》 1 《英雄の破滅》 1 《肉体の裂傷》 1 《忌まわしき儀式》 1 《中略》 -呪文(10)- |
こちらはMTGアリーナ、Magic Onlineなどで活躍している強豪リミテッドプレイヤー・Neko選手が先日のアリーナ・オープンで7勝したデッキです。
2色でデッキを組むことにこだわらず、黒の流れが特に良いわけではなかったものの(この環境では黒は最も強力な色のため流れがいいことはかなり稀です)《ヘンリカ・ダムナティ》《血瓶の調達者》といった強力なレアカードをしっかりと使い切っています。
5 《森》 1 《平地》 3 《島》 2 《沼》 3 《山》 1 《砕かれた聖域》 2 《進化する未開地》 -土地(17)- 1 《継ぎ接ぎの槍馬》 1 《税血の収穫者》 1 《悪運尽きた造反者》 1 《髑髏スカーブ》 1 《堕落産みの蜘蛛》 1 《拘束の霊》 1 《不貞腐れる農家》 1 《這いまわる胞子》 1 《さまよう心》 1 《血に狂った社交家》 1 《魅せられた花婿、エドガー》 1 《貯蔵スカーブ》 1 《激情の悪魔》 1 《アヴァブルックの世話人》 -クリーチャー(14)- |
1 《掘り起こし》 2 《削剥》 1 《月の拒絶》 1 《根囲い》 1 《名誉ある家宝》 1 《地図作りの調査》 1 《散らかった思考》 1 《肉体の裂傷》 -呪文(9)- |
さらにすごいのがチェコのプロプレイヤー、ペトル・ソフーレクさんがピックしてツイートしたこのデッキ。さまざまな多色のアンコモンに加え、《魅せられた花婿、エドガー》と《アヴァブルックの世話人》が一緒に入った5色デッキです。
共通しているのは強力なレアカードに加えて、《削剥》や《肉体の裂傷》などの除去カードがしっかりと入っている点です。
基本的に『イニストラード:真紅の契り』環境でも2色でデッキを構築することが多いですが、こういったアプローチもあるというわけです。
強力なレアを引いた時や、流れてきた時、それを使い切るのも技術です。自分のデッキが特に2色の綺麗なアグロデッキになりそうにない場合、色を足せるよう《進化する未開地》や《名誉ある家宝》などをしっかりとピックしておくといいでしょう。
第2章 対処する
強力なレアカードが多いこの環境においては、もちろん対戦相手がそれらをプレイしてくる可能性も上がります。そのためデッキに対処できるカードがどれだけあるのかが大切になります。
コモンでいえば、最も多くのカードを対処することのできる《骨の髄まで》は断然のトップコモンです。
それ以外では《シガルダの拘禁》《激情の報復》《削剥》《肉体の裂傷》など、とくにかくにも強力なレア、いわゆるボムの次にピックすべきは除去カードになります。
逆にそれらを有していない青と緑は色としてピックする優先順位が下がります。環境の色の強さとしては黒・赤の2つが抜けていて、その次に白、最後に青・緑となるでしょう。
またBO3ドラフトにおいては、サイドボーディングも大切になります。
《戦慄宴の悪魔》や《オリヴィアの付き人》など強力なレアカードはマナ・コストが重いことが多いので、それらに対しては《中略》や《頭狙い》をサイドインするといいでしょう。
緑をプレイしているのなら《押し潰す梢》、白をプレイしているのなら《聖別》は1枚はピックしておきたいところです。環境に強力なエンチャント、アーティファクトの数は多くないものの、《婚礼の発表》《壮麗な日の出》《恐怖のドールハウス》など、場に残ってしまえばそれ1枚でゲームが決まってしまうカードもあります。どちらも点数の高いカードではないのでピックしやすいでしょう。
とにかく2戦目以降は相手のプレイしてきた強力なカードをしっかりと覚えて、デッキもプレイも対応していきましょう。デッキ内の除去が限られているのであれば、目の前のカードにすぐ使うのが正しくないケースもあるはずです。
第3章 対処「しない」
除去カードが多くピックできればいいものの、毎回そう上手くいくとは限りません。この環境では特にボムの次は除去が取られていくので、十分な枚数取れるほうがむしろ珍しいかもしれません。
では、そういった時はどうすればいいでしょうか。
対処できないのであれば、「対処しない」。それしかありません。対処せずとも勝てる状況を押し付けることによって、実質的に対処するのです。
シールド・フォーマットでも同様ですが、自身のデッキに強力なレアや相手のレアを対処できるカードがないのであれば、取るべき戦略はアグロ戦略になります。プレイされる前に、引かれる前に勝つことを目指しましょう。
アグロ戦略のキーとなるのは低マナ域、特に2マナ以下のカードです。
白であれば《旅する聖職者》、赤なら《飢えた峰狼》、緑なら《ドーンハルトの信奉者》などが大切なカードになります。
8 《山》 8 《平地》 -土地(16)- 1 《旅する聖職者》 5 《飢えた峰狼》 1 《双刃の霊》 2 《グリフ乗り》 2 《民兵の結集者》 1 《魅惑する求婚者》 1 《エストワルドの盾殴り》 1 《グリフ翼の騎兵隊》 1 《激情の悪魔》 1 《ネベルガストの詐欺師》 -クリーチャー(16)- |
1 《炎恵みの稲妻》 1 《削剥》 1 《確実な一撃》 1 《勇敢な姿勢》 2 《シガルダの拘禁》 1 《引き裂く炎》 1 《肉体の裂傷》 -呪文(8)- |
3 《貫く光》 1 《牙の天稟》 1 《ほつれ服の世捨て人》 1 《這い回る寄生》 1 《夜明けの戦闘員》 1 《威圧する吸血鬼》 1 《英雄の破滅》 1 《慈愛の祖霊》 1 《民兵の結集者》 1 《這いまわる胞子》 1 《骨の髄まで》 1 《眠りにつく時》 1 《超常的救出》 2 《黴墓のヤスデ》 1 《送り火の落とし子》 -サイドボード(18)- |
こちらは僕がアリーナ・オープン初日にプレイしたデッキです。BO1ドラフトになりますが、レアは1枚も入ってなくても7-0することができました。
《飢えた峰狼》は赤緑ではもちろん、そうでない色の組み合わせでも、多く取れれば取れるほど強力なカードになるので、卓に出ている枚数をしっかり把握しておきましょう。一周したり、遅い順目まで流れてきて誰も集めていないようであれば独占を狙いにいく価値があります。
ピックしたデッキがアグロデッキであろうと、コントロールデッキであろうと、大切なのは理想のゲームレンジを知っておくことです。
自分のデッキは基本的にゲームを延ばしたいのか短くしたいのか、相手のデッキと比べてどうなのか、BO3の場合は2ゲーム目以降は何ターン目がキーなのか(《船砕きの怪物》や《戦慄宴の悪魔》がいるなら7ターン目など)を意識するとより勝てるようになるでしょう。
第4章 まとめ
今回はレアが強い環境においてどうすべきかを解説していきました。
まず大切なのは「しっかりといいポジションを取ること」。レアの強い環境こそ立ち位置が重要。そのために自身の引いたレアに固執しないことも大切です。
色を増やして引いたレアや流れてきたレアを使いきるという戦略もあります。色が足せそうなデッキなら選択肢を増やすために《進化する未開地》や《名誉ある家宝》をピックしておきましょう。
そしてレアに対処するために除去の点数をあげましょう。BO3ドラフトにおいてはサイドボードから対応することも忘れずに。
対処するカードが取れなかったら、デッキを軽くしてアグロ戦略をとることで対処せずに勝つアプローチをとりましょう。1~2マナ域をしっかりピックすることが上手くいくコツです。
参考になるところがあれば嬉しいです! もしよければ、Twitter(@r_0310)などでご意見やご感想をお聞かせください!
今回の記事は以上となります。それでは、次回の記事でお会いしましょう!
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