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佐藤レイの「一歩踏み込む!」リミテッドの極意
第5回(特別編):もっと分かる!『モダンホライゾン2』ドラフト
皆さんこんにちは。リミテッド、楽しんでいますか?
今回は特別編ということで、6月11日発売の最新セット『モダンホライゾン2』のブースタードラフトについてお話させていただきたいと思います。
この『モダンホライゾン2』は2年前に発売された『モダンホライゾン』の続編に当たるセットですが、その特徴は何とも言っても「強力なカードがたくさん収録されている」ということです。前回の『モダンホライゾン』同様、スタンダードを経由せずに直接モダン以下のフォーマットで使用されることを目的として収録されたカードたちのパフォーマンスは、通常セットの比ではありません。
構築フォーマットのみならず、リミテッドフォーマットにおいても強力なカードをたくさん使えるということが、本セット最大の楽しみであることは間違いないでしょう。
さて今回の『モダンホライゾン2』では過去に活躍したカードのオマージュとも言えるカードが数多く作られています。10年前や20年前のセットに影響を受けたカードも多数存在しており、収録されているキーワード能力(マッドネス、接合など)の数も非常に多いです。
そのため、特にMTGアリーナなどを通して最近マジックを始められたという方にとっては理解しなくてはならない情報が多く、それが本セットを使ったリミテッドで遊ぶことをためらう理由になってしまうかもしれません。
しかし、それはとてももったいないことです! 長年のマジックの魅力が随所に詰まったこのセットを遊ぶことは、マジックの歴史を楽しむことでもあり、それはむしろ僕としては新しく始めたプレイヤーにこそしてもらいたいことです。
そういうわけで、今回は『モダンホライゾン2』のリミテッドを遊びたいけれど少し難しそうだなと思っている人に向けて、分かりやすくこの環境について解説させていただきます。よろしくお願いします!
まずは2色の組み合わせごとに考える
『モダンホライゾン2』のリミテッドをわかりやすく分解して理解するうえでもっとも大切なことは、「2色の組み合わせごとに考える」ことです。
今回のセットは先ほど述べたとおり、キーワード能力がとても多く、それらの能力を軸にしたコンセプトのデッキもまた多いです。そのため例えば同じ赤いデッキだとしても、赤白と赤黒では必要なカード、強力なカードが全く異なることが多くなります。
ドラフトフォーマットにおいてはデッキが2色を軸として組まれることがほとんどです。なので、まずは5色で色のコンセプトを把握するのではなく、2色の組み合わせ合計10パターンで、それぞれが何を目指しているのかを理解する必要があります。
そのためにはやはり、各色の組み合わせの特徴を色濃く反映したマルチカラー(多色)のカードを見ていくのがいいでしょう。
色 | キーとなる能力やテーマ | 代表的なカード |
---|---|---|
{W}{U} | 親和 | 《エーテル宣誓会のスフィンクス》 |
{W}{B} | リアニメイト | 《優雅な修復術》 |
{W}{R} | 接合 | 《電結のシカール》 |
{W}{G} | +1/+1カウンター | 《ラガークによる拘禁》 |
{U}{B} | 手札を捨てる | 《ディハーダの策謀》 |
{U}{R} | 昂揚 | 《予言のタイタン》 |
{U}{G} | トークン | 《連合の蛹》 |
{B}{R} | マッドネス | 《終末の苦悶》 |
{B}{G} | リス | 《リスの巣の守り手》 |
{R}{G} | ストーム | 《ゴブリンの壊乱術士》 |
キーとなるコンセプトはキーワード能力だけではなく、カウンターやトークン、ときにはリスといったクリーチャー・タイプだったりもします。今回はまずこれら2色の組み合わせの中でも、特に強力で、またピックするのもあまり難しくないおすすめのデッキタイプ3つをご紹介します。
赤黒マッドネス
マッドネス、いい響きですね。初登場したのは『トーメント』、もう20年前のことです。その能力は、なんと「捨てるかわりにプレイできる」という強力な能力。かつ例えクリーチャーでもソーサリーでもインスタントタイミングでプレイでき、なおかつコストが軽減されていることがほとんどです。
そのキーワード能力の強さから「赤黒マッドネス」は間違いなくこの環境最強のアーキタイプのひとつとなります。特に欲しいのが、共鳴者(手札を捨てられるカードのことを昔はこう言っていました、懐かしいですね)でありつつマッドネス持ちのカードでもある《地獄の雑種犬》、強力なマルチカラーの除去である《終末の苦悶》で、これらが1パック目の4手目以降に流れてきたときは積極的に狙いにいきましょう。
8 《山》 8 《沼》 1 《鉱滓造の橋》 -土地(17)- 2 《陰謀団の新入り》 2 《ヴィーアシーノの鞭爪》 1 《ラクドスの首狩り》 2 《スコフォスの肉裂き》 1 《骨砕き》 1 《光り刃のうろつく者》 3 《地獄の雑種犬》 3 《台所のインプ》 1 《悲嘆》 1 《毒々しい学芸員》 -クリーチャー(17)- |
1 《骨の破片》 1 《邪悪な熱気》 1 《悲劇的な落下》 2 《終末の苦悶》 1 《鉱山の崩壊》 -呪文(6)- |
○「赤黒マッドネス」を組むときのコツ
共鳴者をしっかりとる
マッドネスは強力な能力ですが、その真価を発揮するためにはいつでも自分の手札を自由に捨てられるようにする必要があります。なので、特に低マナ域である《ヴィーアシーノの鞭爪》や《陰謀団の新入り》をしっかりピックしましょう。
色もコンセプトも混ぜない
「赤黒マッドネス」は捨てるためのカードと、マッドネスを持つ捨てられるカードの両方が必要なので、除去カードを除けばそれ以外の不純物のようなカードはほぼ入る余地がありません。基本的にマッドネスデッキを組むと決めたのなら、2色で他のコンセプトも混ぜないよう構築しましょう。
アグロかミッドレンジかボヤけさせない
「赤黒マッドネス」はアグロとして前のめりに組むことも、腰を据えてミッドレンジとして構築することもできます(サンプルデッキはアグロデッキとして組まれています)。その2つを分けるのは、主に《革命主義者》の枚数、およびそれらが上手く使えているかどうかです。
《残響する復活》などアグロでは弱く、ミッドレンジだといい働きをするカードもあります。ピック段階で自分がどちら側のデッキなのか認識できるようになるとといいでしょう。
緑白カウンターアグロ
《ラガークによる拘禁》。リミテッド好きならこのカードを見たときにあまりの強さに驚いたことでしょう。白アグロ好きにとっては《平和な心》と《旅の準備》が合わさった夢のようなカードです。
「緑白カウンターアグロ」は、このカードを上手く使いクリーチャーでビートダウンしていくデッキになります。《マイアの騎士》や《獣群のベイロス》はこのデッキでは特にうまく使うことができますね。
8 《森》 7 《平地》 1 《荊棘光の橋》 1 《ミシュラの工廠》 -土地(17)- 2 《電結の試作機》 2 《モノスケリオン》 1 《弓持つ侍祭》 1 《薄暮殻の這うもの》 1 《ディープウッドの住人》 1 《マイアの騎士》 1 《大理石のガーゴイル》 1 《不屈の補給兵》 2 《戦旗皮のクルショク》 1 《守護麒麟》 1 《太陽の信奉者》 1 《獣群のベイロス》 -クリーチャー(15)- |
2 《畏怖の香り》 1 《開放された潜在力》 5 《ラガークによる拘禁》 -呪文(8)- |
○「緑白カウンターアグロ」を組む時のコツ
《ラガークによる拘禁》から始める
「緑白カウンターアグロ」の強さは単純に《ラガークによる拘禁》の枚数に依存します。なので、始める時は流れてきた《ラガークによる拘禁》からにしましょう。それ以外のカードだと《弓持つ侍祭》も始めるのにはいいですね。ほぼ緑白に行くのはこの2枚が理由になります。
マナ・カーブを低めにしてクリーチャーの数をしっかり取る
《ラガークによる拘禁》を上手く使うためには、クリーチャーがそのとき2体並んでいる必要があります。そのためにデッキ自体のマナ・カーブを低めにして、またクリーチャーをしっかり取りましょう。
緑多色と並行して狙わない
他の緑のアーキタイプだと強力な《裂け目を蒔く者》はこのアーキタイプではあまり強くありません。また多色化してしまうと、テンポのいいビートダウンデッキとして機能しなくなるので、2色でまとめるようにしましょう。
白黒リアニメイト
次に紹介するのは白黒リアニメイトです。まるで構築フォーマットのようなアーキタイプですが、《晩餐への遅刻》がコモンに収録されているため再現性高く組むことが可能になっています。とはいえ、黒赤マッドネスや緑白カウンターアグロに比べると専用アンコモンのようなカードがしっかり取れるかがキーとなるので、やれるかどうかをしっかり見極めて参入していきましょう。
8 《沼》 7 《平地》 1 《黄金沼の橋》 1 《湿地の干潟》 -土地(17)- 1 《極楽の羽ばたき飛行機械》 1 《悪意あるヒトデ》 2 《息せぬ騎士》 1 《ティゼルスの軍馬》 2 《不快な納墓役》 1 《若き屍術士》 1 《造景屋コロス》 1 《悲しみの魔神》 1 《栄光の執行官》 1 《渡る魂》 1 《残虐の執政官》 -クリーチャー(13)- |
1 《滅ぼし》 1 《突然の布告》 1 《悲劇的な落下》 1 《無名の墓》 2 《具眼の味覚》 1 《本質剥がし》 2 《晩餐への遅刻》 1 《優雅な修復術》 -呪文(10)- |
○「白黒リアニメイト」を組むときのコツ
専用パーツをしっかりと確保する
《具眼の味覚》や《栄光の執行官》、《不快な納墓役》など、「白黒リアニメイト」が必要としているカードの中には他のアーキタイプでは必要としないカードが多いです。そういったカードを早めではなく、遅く取れるような状況でこそ参入していきたいアーキタイプです。
低マナ域をおろそかにしない
そもそも基本構造が、デッキに重いカードを入れた上での《造景屋コロス》や《具眼の味覚》からの《晩餐への遅刻》なので、特に2マナ域以下のカードが少なくなってしまいます。だからこそデッキに合う低マナ域のカードは優先的にピックしていきたいです。おすすめは《悪意あるヒトデ》です。
多色化も視野に入れる
白黒リアニメイトは《晩餐への遅刻》をプレイしやすくするために《造景屋コロス》や《滞留者の相棒》などの土地サイクリングカードをデッキに投入するので、色をタッチしやすいです。《邪悪な熱気》や《終末の苦悶》は特に足しやすい候補になるでしょう。
さて、強力なアーキタイプとして「赤黒マッドネス」「緑白カウンターアグロ」「白黒リアニメイト」の3デッキを紹介させていただきました。
これらは、
- 多色のコモンが強く、それを集めるだけで強いデッキになりやすい
- 2色で組めて十分に強い
- コンセプトがコモンだけで完結していて再現性が高い
という特徴を持っているので、『モダンホライゾン2』のドラフトを始めたての人に特におすすめです。
次に多色デッキについて考える
ここまでは2色のデッキの組みやすいデッキをご紹介してきましたが、逆に青と(白緑以外の)緑を使ったデッキはリミテッド上級者や『モダンホライゾン2』環境をやりこんだプレイヤーでなければ難しいかもしれません。
緑の《裂け目を蒔く者》を使ったデッキやアーティファクト・土地が必要になるアーキタイプが多い青いデッキは多色化することが容易で、それゆえにピックやデッキ構築がとても幅広くなり、強いデッキを組むための難易度が高くなるためです。
なおかつ多色化されたそれらのデッキよりも、完成された赤黒や緑白のデッキのほうが強力なことが多いので、あくまで慣れてきたら引き出しのひとつとして使えるようにしておく、くらいのイメージで良いと思います。今回は2つ違うアプローチで多色化されたアーキタイプを紹介するので、参考にしてみてください。
青白親和
親和持ちカードをより強力に使うため必然的にアーティファクト・土地をピックすることになり、なおかつ《極楽の羽ばたき飛行機械》、《滞留者の相棒》が使える青白親和では強力なカードをタッチすることが容易です。
ピック段階の始めのほう、例えば《エーテル宣誓会のスフィンクス》などから始めた時点で青や白が片方合う、またはシングルシンボルの除去や強力なカードなどは足しやすいということを覚えておきましょう。
6 《平地》 4 《島》 1 《沼》 1 《山》 1 《剃刀潮の橋》 1 《霧霊堂の橋》 1 《黄金沼の橋》 2 《銀色険の橋》 -土地(17)- 2 《電結の試作機》 1 《極楽の羽ばたき飛行機械》 2 《金属の急使》 1 《エーテリウムの紡ぎ手》 1 《大理石のガーゴイル》 1 《守護麒麟》 1 《光輝の美食家》 1 《予言のタイタン》 2 《滞留者の相棒》 1 《思考の監視者》 2 《エーテル宣誓会のスフィンクス》 -クリーチャー(15)- |
1 《邪悪な熱気》 1 《万華焼》 1 《いざ動け》 1 《空一面》 1 《名誉回復》 1 《晩餐への遅刻》 1 《鉱山の崩壊》 1 《精神の旅》 -呪文(8)- |
○よくタッチするカード
《予言のタイタン》
赤青という色が不人気なのでカード性能のわりに流れてくることもあるカードです。このアーキタイプなら逃さずにピックしましょう。
強力な収斂カード
片方の色が合っている超強力なレア
《名誉回復》《ミラーリの目覚め》《影の処刑者、ダッコン》など。
緑多色
《裂け目を蒔く者》や基本土地サイクリングを使い、収斂持ちのカードを強力に使うことを目的としたアーキタイプです。先ほどの青白親和と比べると、緑がメインカラーになるということと、5色出すことができるのでより多様なカードを使うことが可能になっています。
7 《森》 5 《山》 1 《島》 1 《沼》 1 《暗闇苔の橋》 1 《鉱滓造の橋》 1 《熔融林の橋》 -土地(17)- 1 《暗号動物学者、ローニス》 1 《極楽の羽ばたき飛行機械》 1 《聖域の織り手》 2 《裂け目を蒔く者》 1 《宝石眼のコブラ》 1 《ヤヴィマヤの古老》 1 《戦旗皮のクルショク》 1 《永久の証人》 2 《きらめき這い》 1 《激情》 1 《光輝の美食家》 1 《波ふるい》 1 《果樹園の徘徊者》 1 《予言のタイタン》 1 《ガルガドン》 -クリーチャー(17)- |
1 《邪悪な熱気》 1 《万華焼》 1 《悲劇的な落下》 1 《路傍 // 瓦解》 1 《飢餓の潮流、グリスト》 1 《ジアドロン・ディハーダ》 -呪文(6)- |
○よく使われるカード
《きらめき這い》
親和系のアーキタイプと比べて緑がメインカラーになっており、より収斂しやすい緑多色ではより使いやすいです。より強力な《万華焼》、《光輝の美食家》に比べ流れてくることが多いので、しっかりピックして使っていきましょう。
《路傍 // 瓦解》
余波に赤のダブルシンボルが含まれている《路傍 // 瓦解》はこのアーキタイプ専用のカードといってもいいでしょう。
マナ拘束のきつい強力なレア
タッチカラーの捻出をアーティファクト・土地に頼っている親和系に比べ、緑多色はよりマナ拘束の強いレアカードを使用しやすいです。見つけた強いカードは全てかっさらっていきましょう(笑)。
今回のまとめ
今回は『モダンホライゾン2』の主要アーキタイプである「赤黒マッドネス」、「白緑カウンターアグロ」、「白黒リアニメイト」の3つと、3色以上になることの多い「青白親和」と「緑多色」について解説させていただきました。
『モダンホライゾン2』のドラフトをこれから始める方や初心者の方はまずは2色でも強いアーキタイプになりやすい赤・黒・白のアーキタイプを選択して、3色以上になることの多い緑、青を避けることをおすすめします。とりあえず強力な多色のレアをピックしたわけでもなければ、今回紹介した赤黒・緑白・白黒のどれかを狙っていくくらいの感覚でもいいと思います。
ピックの方針としては、序盤は色を気にせずとにかくアーキタイプの核となるような強力なカードから広くピックしていくのがいいでしょう。初手《エーテル宣誓会のスフィンクス》、2手目《終末の苦悶》、3手目《ラガークによる拘禁》などよくあることです(笑)。
初手、2手目を捨てることをいとわず、卓で空いているアーキタイプを探してみてください。そのためには1パック目の4~6手目に流れてきた強力なカードを参考にしましょう。
この環境は今日僕が紹介した戦略以外にもさまざまなアーキタイプがあるので、いろいろチャレンジしてみてください。『モダンホライゾン2』のドラフトを楽しむ上で、この記事が少しでも皆さんの参考になれば幸いです。
僕のTwitterアカウント(@r_0310)でもリミテッドの強かったデッキなどアップしていくので、良かったらフォローしてみてください。本記事やデッキについての感想などもいただけるととても嬉しいです!
ではまた次回お会いしましょう! ありがとうございました!
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