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ロン・フォスターの統率者日記
第8回:統率者戦の私的「秘宝」20選
読者の皆さん、こんにちは! もう5月、新年度が始まり少し経ちましたね。一方、統率者戦の新たな1年は1月からスタートしていますが、去年の暮れの発表にあったように、今年は統率者戦にとってかつてないほどビッグな1年になります。これを踏まえて、今回のテーマは統率者戦のカードプールが秘めた知る人ぞ知るカードたち、すなわち統率者戦の、私が思う「秘宝」20選にしようと思います。
《陽光弾の軍団兵》
パっと見あまり使い道がなさそうなクリーチャーで、収録セット『レギオン』が発売されたときは特にそうでした。しかし、マジックでよくあることですが、そのあと発売されているセットのカードとの相性が抜群です。《ゴンドの存在》をエンチャントするだけで無限にクリーチャー・トークンを生み出すことができます。《太陽に祝福されしダクソス》や《オーリオックのチャンピオン》のようなクリーチャーがいれば、これでライフも無限になります。
無限コンボを決めるのが好きじゃないあなたにも、使い道はあります。《光らせの子》のように『シャドウムーア』と『イーブンタイド』で登場した「アンタップ能力」のあるクリーチャーと組み合わせすれば、すぐにその能力が使えます。普通にこの能力を発動するには攻撃させるのが一番手っ取り早いですが、《陽光弾の軍団兵》があれば危険にさらすことなく働かせることができます。
※一部に機能しない組み合わせを含む表記がございました。お詫びして該当箇所を訂正いたします。
《巨大カキ》
はい。牡蠣です。あの『ホームランド』の。でも、ちょっと待って! これは、青にはまれなクリーチャー除去です。青は呪文なら何でも打ち消せる能力が携わっている色ですが、解決してしまうと対応に困ります。そこで、時間はかかりますがクリーチャーを確実にやっつけるカードはカキです。しかも、そのクリーチャーをタップして動きを封じるので、統率者ダメージからも守ってくれます。
呪禁などは相変わらず面倒くさいけれど、プロテクション(青)を備えたクリーチャーは16体しかなく、その中で普段統率者において使われているのはせいぜい2〜3体なので、カキの壮大なるパワーに抵抗できるクリーチャーはほとんどありません。呪禁対策として、《影槍》か《秘儀の灯台》をどうぞ。
《サーボの命令》
黒はクリーチャー除去に長けた色として知られています。が、多くのクリーチャー除去呪文は対象を取るか、同色に当てることができません。ですがこの呪文は違います。どんなクリーチャーでも全体的に対処できます。
まぁ、全体と言っても解決時に選ぶクリーチャー・タイプのみですが、部族デッキが人気の統率者戦なら充分全体に成り得ます。しかもプレイヤーが対象になるので厄介な呪禁能力持ちでも除去ができ、一方で自分がコントロールしているクリーチャーは生き残る、という素晴らしい働きをしてくれます。手札も見られるというのはおまけといった感じですが、数ターン分有効な情報を手に入れることもあるので軽視できません。ただ、古いカードについてはGathererでクリーチャー・タイプを確認した上で唱えた方がいいでしょう。
《アシュリングの特権》
電光石火で勝負をつけたい赤単やグルールデッキは、クリーチャーへの速攻付与が必要不可欠です。もともと備わっているクリーチャーはそれなりにありますが、やはりエンチャントや装備品で付けるのがベストな策略でしょう。そこで、この2マナのエンチャントがお勧め。《隠れしウラブラスク》のように、相手のクリーチャーをタップインさせることもできます。
ただし偶数・奇数という条件があるので、デッキを少し工夫しないといけません。幸い、ゴブリンなどのこういったデッキが入れたいクリーチャーの点数で見たマナ・コストはその多くが奇数ですので、比較的使いやすいです。《強欲なるスロモック》デッキなどにどうぞ。
《断片の収斂》
森以外の各基本土地タイプを持つ土地カードを1枚ずつライブラリーから探し出してくれるこのカードは、緑を含む3色デッキ、または5色デッキの強い味方です。なお、持ってくることができる土地は基本土地と指定されているわけではありませんから、ラヴニカのショックランドやデュアルランドはOKです。《ニヴ=ミゼット再誕》デッキにお勧め。
※一部に誤った表記がございました。お詫びして該当箇所を訂正いたします。
《サーボの網》
以前紹介したヤロクのデッキに入っているこのカードはなかなかの逸品です。2マナでおまけドロー付きとコストパフォーマンスはかなりのもので、かつ常在型能力も非常に便利です。当時のスタンダードを膠着させていた《リシャーダの港》への「銀の弾丸」として作られたこのアーティファクトは、マナ能力以外の能力のある土地を停滞させます。
統率者戦においてこの条件に当てはまる使用率の最も高いカードの1つが、戦闘ダメージで勝ちたいデッキの天敵である《イス卿の迷路》です。この1枚で止まる厄介な能力持ちの土地がたくさんあります。《コーの安息所》、《ヤヴィマヤのうろ穴》、《アカデミーの廃墟》、《一番砦、アダント》をはじめとする『イクサラン』の変身土地シリーズ、《錬金術師の隠れ家》、《Bazaar of Baghdad》、《爆発域》、《ミシュラの工廠》などクリーチャー化する土地などなど……ここで《サーボの網》で使えなくなる土地をすべて挙げようとしたらそれだけで記事の文字制限を超えてしまいそう。とにかく、使える1枚です。(上記の《サーボの命令》といい、これといい、悪党なのに本当にサーボ様にはお世話になりますね。)
《塵は塵に》
『時のらせん』にこのカードとよく似た《塵への帰結》がありますが、こちらが元ネタ。ソーサリーですが、1マナ軽くて必ずアーティファクト2つを追放してくれます。まわりのプレイヤーがアーティファクト好きなら、両方入れても損はないでしょう。《墓場波、ムルドローサ》や《アカデミーの廃墟》など、墓地からアーティファクトを戦場に戻す能力が結構あるので、破壊より追放の方が確実にプロテクション(白)を与える《光と影の剣》や《戦争と平和の剣》などの邪魔なアーティファクト対策になります。
また、地味な使い方ですが、《真面目な身代わり》のような墓地に置かれると能力が誘発するアーティファクトに使うと、その能力はもちろん誘発しません。なお対象は2つあるので一方が何らかの理由で対象に取れなくなっても、もう一方の追放を忘れずに。
《大海の心臓、致清》
これは出た当時、謎のデザインでした。大抵の場合、カウンターが置かれているカードはそれを使って自分を強くします。このカードが元々入っていたブロックでもそうですし、今でもそうです。でも、カウンターが負担となるカードは存在します。そう、つまり累加アップキープを持つカードです。例えば《大海の心臓、致清》を出していると、すべてのダメージから守ってくれる《Glacial Chasm》のライフの支払いはずっと2点のままですし、《Sustaining Spirit》や《墓石の階段》ならもっと長く戦場に出すことができます。《暗黒の深部》の氷カウンターも、もっと早く取り除くことができます。
昔のカードのみならず、新しいエンチャント・タイプである英雄譚とも相性は良好です。《大海の心臓、致清》があれば、同じ章の効果が何度も使えます。同じ色の《キオーラ、海神を打ち倒す》のⅠ章が特に魅力的です。(ロック系のデッキが好きな人は、Ⅱ章の方がもっと魅力的かもしれません。)
《灰は灰に》
上記したように黒はクリーチャー破壊に優れた色ですが、元々同色のクリーチャー除去には困る上に、アモンケットやテーロスの神々に代表される破壊不能能力を持つクリーチャーが増えている今ではさらに手を焼きます。そこで、この《灰は灰に》の出番です。対象にさえ取ることができれば、神であろうとクリーチャー2体をゲームから追放してくれます。《荒廃鋼の巨像》のようなアーティファクト・クリーチャーはあいにく対象にはできませんが、これほど使えるクリーチャー除去呪文はなかなかありません。ライフ5点という代価は通常のゲームなら大きいかもしれませんが、統率者戦ならこの程度はまったく気になりません。
《砕岩を食うもの》
私のまわりのプレイヤーは、全体土地破壊のテキストは好みません。が、《イス卿の迷路》や《ガイアの揺籃の地》、《セラの聖域》など放っておくと問題になる土地があることも事実なので、《露天鉱床》や《不毛の大地》のようにピンポイントで土地を破壊できるカードも存在します。しかし、それらですと1枚の土地にしか対処できません。
そこで、《砕岩を食うもの》がお勧めです。これは時間カウンターが置かれているかぎり次々に基本でない土地が壊せるし、最後のカウンターが取り除かれたら速攻付きのそれなりに大きい(はずの)クリーチャーが手に入る。ただし、タイミングが重要です。これが待機になっている間、相手は誰も強い土地カードを出さなくなるので、ある程度土地が並んでから待機した方がいいでしょう。ショックランドなどがよく使われる統率者戦であれば、対象となる土地カードには事欠かないはずです。
《幻触落とし》《霊気のほころび》
名前は違いますが同じテキストを持つカードです。これを2枚目の《解呪》だと思っている人も多いですが、他の使い道もあります。対戦相手が自分のエンチャントやアーティファクトに《解呪》などを打ってきたら、《幻触落とし》で対応すれば対象となっているカードをライブラリーに戻して救うことができます。柔軟性のある、なかなかいいカードです。また、《アカデミーの廃墟》や《墓場波、ムルドローサ》など、最近墓地からリソースを再利用できるカードが増えているので、相手のカードを破壊するよりライブラリーに戻す方が無難かもしれません。
《系図の石版》
マジックには初期の頃、「使い捨てではなく、繰り返しカードを1枚引くのに4マナがかかる」というデザイン傾向がありました。(例:《ジェイムデー秘本》)《系図の石版》もおおよそこの形に沿っていますが、場合によってカードを1枚以上引くことができます。これは、もともとカードドローに弱く、クリーチャーを並べるのが得意な白・赤・緑にかなり向いているカードです。《系図の石版》は手札が0枚でも起動できるので、赤のゴブリン・デッキや緑のエルフ・デッキのように手札を早く消費するデッキならこれで何度も補充できます。ただ、カードを引きすぎてライブラリーアウトしないように注意しましょう。
《セトの虎》
これは色1つを指定しないといけないのが玉に瑕ですが、特に総攻撃してきたトークン・デッキをぎゃふんと言わせることができます。これによって《荒廃のドラゴン、スキジリクス》の攻撃も一回かわせるし、《流血の呪い》なども除去できます。しかも、プロテクションが終わっても3/3というしっかりしたボディーが残ります。ある意味、《対抗呪文》と似ていて、これを1回使ったら次のゲームで{2}{W}{W}を常に残しているとブラフを仕掛けることができます。
※一部に誤った表記がございました。お詫びして該当箇所を訂正いたします。
《夢への放逐》
これは最近よく見かける「青の条件付きクリーチャー除去」です。そしてその条件は、相手のクリーチャーが対象になるとそれを生け贄に捧げなければならないというもの。これが戦場に出ているかぎり、相手は自分のクリーチャーにエンチャントや装備品をつけることはできなくなるという受動的な影響はもちろん、能動的に使うこともできます。例えば、《市長の塔》はアーティファクト対策からクリーチャー除去に変わります。《放蕩魔術師》系のクリーチャーはみんな暗殺者になります。本当に仲間に嫌われたいなら、《浄火の戦術家、デリーヴィー》と組み合わせてください。
《荒廃の一掴み》
上記の《砕岩を食うもの》の項でも書いたように、統率者戦のゲームでどうしても破壊しなければならない土地カードが存在します。そして厄介なクリーチャーもわんさかいます。この1枚を使えば、6マナでどちらも対処できて、一石二鳥です。しかもルール上は無色ですので、黒を使っているデッキでプロテクション(黒)を持つクリーチャーに対処できるので非常に価値が高いカードです。ジャンドを使っていて、対戦相手が《饗宴と飢餓の剣》や《光と影の剣》をクリーチャーにつけて困ったことがあれば、これをぜひデッキに入れてみてください。
《侵略の寄生虫》
この1枚で攻撃することなく、対戦相手への継続的なダメージが狙えます。特に、緑のいわゆるランプデッキ(マナ生産量急増デッキ)に対して有効です。あと、《イス卿の迷路》のような厄介な土地への対策としても有用です。《妖術師の衣装部屋》のような「ちらつき」効果と組み合わせれば、何枚もの土地を追放することができます。(ただし、ダメージが誘発するのは一番最後に刻印された土地と同じ名前のカードのみです。)
《粒選りの収穫》
これは緑が入っているデッキだとだいたい使っていますが、出すたびに必ず誰かに「何それ?」と聞かれ、説明すると「えっ!? それはいいな。何でもっと使われないんだ?」というパターンになります。このエンチャントは要するに「スーパー占術効果」で、緑のどデカいクリーチャーとシナジーがすこぶる高いです。これが戦場に出ていればデッキの中をものすごく早く選り分けることができ、結果的に教示者に近い働きをしてくれます。しかも、使っている人にアドバンテージを与えながら対戦相手に直接害は与えないので、あまりエンチャント破壊の対象になりません。
《運命の塔》
またしても無色のドローソース! 起動コストの高さに引いてしまう人は少なくないと思いますが、一般的に展開が遅くゲームが長い統率者戦ではあまり問題になりません。8マナが揃う中盤だと、カードを4枚引いてもディスカードするようなことはあまりないでしょう。これをマナ・アーティファクトや《巻き戻しの時計》と並べてカードをドンドン引きましょう!
《炎の嵐》
これほど費用対効果のよい火力はなかなか見つかりません。最近の対象をX体取る呪文は、コストが{X}{X}だったり、ダメージを割り振りしたり、与えられるダメージが固定されている場合が多いですが、これは違います。確かにマナを払う代わりにカードを捨てるという代価がありますが、インスタントで7点以上のダメージを与えられる呪文は多くはありません。(一番近いのは7マナかかる《インフェルノ》かな?)プレインズウォーカーも対象にできるので、非常に柔軟性が高い1枚です。上記した《運命の塔》が同じデッキに入っていればカードはすぐ補充できます。
《溶融》
アメリカではなぜか《太陽の指輪》を嫌う人が多いです。特に、1ターン目に出すとすぐ攻撃の的になってしまいます。《太陽の指輪》をゲームの序盤に出すとそのプレイヤーが大きなアドバンテージを持つと思われるかららしいです。そんな《太陽の指輪》が嫌いなあなたには、この1枚があります。低コストで戦場に出ているすべての指輪を溶かすことができます!
このカードの使い方はそれだけではありません。クリーチャーにプロテクションを付ける剣サイクルなどの厄介なアーティファクトも簡単に排除できます。赤はアーティファクト破壊に長けた色ですが、《粉砕》などと違ってこのカードは対象を取らないので、呪禁や被覆を持つカードに対しても問題なく使用することができるのです。ただ、「すべてのアーティファクト」ですから、自分のものも「鉱滓」になってしまうのでご注意ください。
……ふう。これでやっと20枚になりました。人によって懐かしいカードだったり、初めて見たカードだったりしたと思います。結局他の色より赤のカードが少し多くなりましたが、それでいいんです。赤は統率者戦で一番使われていない色とされているのでもう少し脚光を当てたくもあるし、そんな理由で最近個人的に赤が気に入っています。2万枚以上が存在するマジックのカードには、他にもあまり見かけないけれど使ってみると案外いいカードがたくさんあるものです。皆さんもあなたにとっての秘宝を探ってみてはいかがでしょうか?
なお、最後になりますが、一身上の都合で勝手ながら今回の記事で連載を終了とさせていただきます。半年間という短い間でしたが、ご愛読いただきありがとうございました。連載が終わってもマジックと統率者戦はやり続けますので、いつかどこかのイベントでお会いできるかもしれません。その時まで皆さんどうかお元気で!
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